2019年3月30日 土曜日
包括遺贈とは??特別遺贈との違いを解説!
被相続人が亡くなり、財産がある場合、プラス財産であってもマイナス財産であっても法定相続人がいれば、相続が発生します。
また、被相続人が生前に遺言書を作成している場合には、財産を受け取る人と遺言者の関係によっては、相続でなく、遺贈となる場合があります。
遺贈には包括遺贈と特別遺贈の2種類があり、これらには共通する点もありますが、異なる点ももちろん存在しています。
では、包括遺贈と特定遺贈の違いは一体どんな点なのでしょうか?
それぞれの違いだけでなく、遺贈という財産の受け取り方についても詳しくご紹介いたします。
目次
そもそも遺贈とは
被相続人が亡くなったときに、遺言書が存在しなくても被相続人の財産を相続することができるのは「法定相続人」と呼ばれる被相続人と一定の関係がある人です。
しかし、遺言書があれば、被相続人と法定相続人の関係になくとも、被相続人は財産を第三者である受遺者(遺贈を受ける人)に残すことができます。
このとき、被相続人が遺言書によって財産を譲ることを相続とは呼ばず、遺贈と呼びます。
そのため、第三者だけでなく、法定相続人に対しても遺贈という言葉を使用することがあります。
また、相続と遺贈では財産を受け取る人と被相続人の関係性が異なるだけでなく、財産を受け取ったときの課税される税率においても違いがあります。
一定金額を超えた場合には、相続税が発生しますが、遺贈ですと、受遺者は法定相続人が支払う相続税を1.2倍支払うことになります。
また、相続では基礎控除が認められていますが、遺贈では特別な理由がない限り、基礎控除の対象とはなりません。
このように、遺贈は相続と似ているものの、財産を受け取るといった根本的な部分が同じだけであり、その他は相続とは大きく異なるといった特徴があります。
包括遺贈と特定遺贈
遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類が存在しています。
包括遺贈と特定遺贈については、民法(包括遺贈及び特定遺贈)第964条において、遺言者が包括遺贈または特定遺贈として、財産の全部または一部を処分することができることが定められています。
また、遺留分においては、規定に違反することができないことについても定められています。
包括遺贈も特定遺贈もそれぞれ、相続と同じように財産を受け取りたくない場合は、民法(遺贈の放棄)第986条において、受遺者はいつでも遺贈の放棄ができると定められているように手続きさえすれば、遺贈の放棄をすることが可能です。
また、民法(遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)第989条では、遺贈の承認と放棄は撤回することができないと定められています。
そのため、遺贈の承認と放棄を選択するためにも、被相続人の財産について、正確に判断することが求められます。
それでは、包括遺贈と特定遺贈について、さらに詳しく見ていきましょう。
包括遺贈とは
包括遺贈とは、財産のすべて、または被相続人が財産の割合を指定して、受遺者に遺贈することをいいます。
たとえば、「Aに財産の4分の1を遺贈する」といったような形での遺贈が包括遺贈です。
ここで注目すべき点は、マイナス財産がある場合には、受遺者はプラス財産だけでなく、マイナス財産も受け取るということです。
これが包括遺贈の難しいところでもあるといえるでしょう。
マイナス財産が多い場合には、手放しで遺贈を喜べないケースもあると考えられます。
ですが、遺言書を作成したときとは、財産の状況が変わっていたとしても、財産の割合での遺贈となるため、基本的には全くもらえなくなるといった問題が生じづらいともいえます。
また、包括遺贈を受ける人のことを包括受遺者と呼びます。
特定遺贈とは
特定遺贈とは、財産を指定して遺贈をすることをいいます。
たとえば、「Aに財産のうち、預貯金を全額遺贈する」といったように財産を指定して遺贈するため、プラス財産しか遺贈しないのが特徴です。
遺言書にマイナス財産が指定されていない限り、マイナス財産を遺贈することがないので、受遺者としては安心できる遺贈方法であるといえるでしょう。
また、特定遺贈を受ける人のことを特定受遺者と呼びます。
包括遺贈と特定遺贈の違いは?
包括遺贈と特定遺贈の違いは、大きく分けて3つあります。
まず、1つ目の違いは「財産の受け取り方」が挙げられます。
包括遺贈は受遺者を指定した上で、財産のすべて、または被相続人が指定した割合で受け取りますが、特定遺贈は被相続人が遺言書であらかじめ遺贈する財産を指定しており、その指定された財産を受遺者が受け取ります。
2つ目の違いは「マイナス財産のあり方」が挙げられます。
包括遺贈の場合は、財産の割合が指定されているため、マイナス財産があれば、マイナス財産も受け取ることになりますが、特定遺贈の場合は、受け取る財産があらかじめ指定されているため、マイナス財産を受け取ることがありません(ただし、マイナス財産が特定遺贈の対象となっている場合にはこの限りではありません)。
3つ目の違いは「権利義務について」が挙げられます。
包括遺贈の場合、受遺者は放棄をする なら、遺贈を受けることを知ってから3ヶ月以内に放棄の手続きを行わなければなりません。
ですが、特定遺贈の場合は、いつでも放棄することが可能です。
これは、民法(包括受遺者の権利義務)第990条において、包括受遺者は相続人と同等の権利義務を有していることが定められています。
このように、包括遺贈と特定遺贈には、大きな違いが存在しているので、遺贈をする際にはどちらの方法を利用するかをよく考えて選ぶことが大切です。
包括遺贈を活用するメリットとデメリット
包括遺贈を活用することには、メリットとデメリットの両方が存在しています。
包括遺贈を活用することを考えている場合には、メリットもデメリットもよく理解した上で活用することが重要です。
包括遺贈を活用するメリット
包括遺贈を活用するメリットは、遺贈者と受遺者によってメリットが異なります。
まず、遺贈者における1つ目のメリットには、「遺贈者が財産を譲りたい人に譲ることができること」が挙げられます。
法定相続人以外に財産を譲りたい第三者がいた場合に、遺贈者は自分の財産を遺留分さえ考慮していれば、自由に遺贈することが可能です。
次に遺贈者における2つ目のメリットには、「遺言書に包括遺贈の内容を記載するため、秘密にしておくことができること」が挙げられます。
贈与の場合は、契約となるため、内容について財産を贈る側と受け取る側で確認し、同意する必要があります。
ですが、包括遺贈の場合は遺贈者が一方的にどのような遺贈を行うかを決めることができるため、包括遺贈が行われるそのときまで内容を秘密にしておくことが可能です。
受遺者における1つ目のメリットには、「放棄できること」が挙げられます。
包括遺贈を知った場合、相続と同じく遺贈を知ってから3ヶ月以内に遺贈を受けるか放棄するかを選択すればよいことになっています。
包括遺贈の場合、場合によっては、マイナス財産の遺贈もありうるため、遺贈者の財産の内容を調査してから、遺贈を受けるか放棄するかを選択するとよいでしょう。
次に受遺者における2つ目のメリットには、「財産の変動があっても問題なく、遺贈を受け取れること」が挙げられます。
遺言書を作成した時期と遺贈者が亡くなった時期では、財産に変動がある可能性があります。
ですが、包括遺贈の場合は、財産の割合を指定して遺贈するため、財産に変動があった場合でも指定された割合は変わらず、遺贈を受けることができます。
そして、受遺者における3つ目のメリットには、「不動産取得税が課税されないこと」が挙げられます。
不動産取得税とは、売買や贈与などで不動産を取得した際に課税される税金のことです。
この不動産取得税は特定遺贈の場合には、課税されますが、包括遺贈の場合には課税されないといった特徴があります。
このように、包括遺贈を活用するメリットは、遺贈者と受遺者によって、その中身が異なります。
それぞれメリットがありますので、それらを理解した上で包括遺贈を活用するとよいでしょう。
包括遺贈のデメリット
包括遺贈のデメリットには、大きく分けて4つのデメリットがあります。
まず、受遺者における1つ目のデメリットには、「マイナス財産を受け取らなければならないこと」が挙げられます。
包括遺贈の場合は、財産を被相続人の決めた割合で受け取るため、マイナス財産がある場合は、割合に応じてマイナス財産も受け取らなければなりません。
ただし、包括遺贈の場合は、「包括遺贈の放棄の申述」の手続きを行うことで財産の受け取りを放棄することが可能です。
受遺者における2つ目のデメリットには、「放棄をする期間が決められていること」が挙げられます。
放棄を選択することができること自体はメリットであるといえるのですが、相続と同じように放棄をする場合には、3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。
特定遺贈の放棄の場合には、このような期間はないため、包括遺贈特有のデメリットであるといえるでしょう。
受遺者における3つ目のデメリットには、「遺産分割協議に参加しなければならないこと」が挙げられます。
包括遺贈の場合、相続人と同じ権利があるので、包括遺贈を受けた場合には、財産の分割に際し、遺産分割協議への参加が必要となります。
包括遺贈について、遺言書に記載があったからといって、何もせずに受け取れるわけではなく、手間がかかります。
この手間は一種のデメリットであるといえるでしょう。
受遺者における4つ目のデメリットには、「相続人とのトラブルが発生する可能性があること」が挙げられます。
包括遺贈は遺贈者(相続人から見た場合の被相続人)が勝手に遺言書に記載している可能性が高いと考えられます。
しかも、包括遺贈の場合は、財産の割合しか指定されていないため、遺産分割協議の場で話し合いがなかなかまとまらず、トラブルが発生する可能性があります。
このように、基本的に遺贈者のデメリットではなく、受遺者におけるデメリットが目立つのが特徴です。
包括遺贈の受遺者となった場合には、これらのデメリットを良く理解した上で、遺贈を受けるか放棄するかの選択をすることが大切です。
包括遺贈での注意点
包括遺贈をする場合には、遺贈者と受遺者によって、注意点が異なります。
まず、遺贈者の注意点には、「法的効力があり、遺留分を考慮した遺言書を作成すること」が挙げられます。遺言書は正しく作成されなければ、法的効力がなく、無効となってしまいます。
また、遺留分は法定相続人が必ず相続できる財産の割合なので、それらを考慮せずに遺言書を作成してしまうと、遺産分割をする際にトラブルの原因となってしまいます。
これら2つの点に気をつけて、遺言書を作成し、包括遺贈について記載することが、受遺者や相続人が遺産分割をスムーズに行える方法であるといえるでしょう。
また、受遺者の注意点には、「どのような財産があるか的確に把握すること」が挙げられます。包括遺贈の場合、財産の割合を指定されて受け取ります。
そのため、マイナス財産があれば、プラス財産と一緒にマイナス財産も受け取らなくてはなりません。
包括遺贈は、放棄をする場合には、包括遺贈を知ってから3ヶ月以内に手続きをすることになっていますから、3ヶ月以内に遺贈者にどのような財産があるかを的確に把握し、放棄するのか承認するのかを決めなくてはなりません。
このとき、遺贈者の財産の調査は複雑であるため、相続人との協力が必要になります。
ですが、関係性によって無理な場合には、専門家に依頼して調査をしてもらうなど、きちんと遺贈者の財産を把握できるように動くことが大切です。
このように、包括遺贈での注意点は、遺贈者と受遺者という立場の違いによって、大きく異なります。どちらの立場になった場合でも正しく判断できるように、注意点について知っておくことが重要です。
まとめ
遺贈とは相続に似ているものの、その性質は異なるものです。
ですが、包括遺贈の場合は、受遺者が相続人と同じ権利を有する点もあるため、一概に異なると言いきれない部分も存在しています。
また、遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類があるため、それぞれの特徴を理解して、どちらの遺贈がより適しているかといった判断ができるようにしておくことも大切です。