2019年2月1日 金曜日
遺産相続の期限が過ぎてしまった場合の対処法3つ
「遺産相続が発生したけれど、さまざまな手続きに期限があることを知らなかった」なんて困っている人は少なくありません。
遺産相続には期限があるので早めに手続きを完了させなければならないですが、人が亡くなったということでバタバタしていて期限が過ぎることもあるはずです。
しかし、相続税の申告や納付の期限に間に合わなかった場合には、ペナルティとして追加の税金が発生してしまいます。
まずは遺産相続の期限について理解して、期限にまだ間に合う手続きには専門家に頼って早急に終わらせるべきです。
もしも期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早めに終わらせることができるように専門家に相談に行くことをおすすめします。
今回は遺産相続の手続きや期限、過ぎてしまったときのデメリットや対処法をご紹介するので、参考にしてみてください。
遺産相続とは
まずそもそも、遺産相続の期限の話の前に、遺産相続について経験したこともなく、ほとんど知識がないという人も多いはずです。
遺産相続は人生において何度も起こるようなことではないので、初めて経験した場合には戸惑うことも多いと考えられます。
しかし、遺産相続が起きてから相続について調べていたら、遺産相続の期限に近づいていってしまいます。
したがって、遺産相続の基礎的な知識をおさえてから期限や手続きについて考えていきましょう。
遺産相続とは、人が亡くなったことによって起こる財産の引継ぎのことだとされています。
遺産相続が起こった場合、引き継ぐ財産の金額に応じて税金が発生するので気をつけておかなければなりません。
特に、土地や家屋などの高額になりやすい遺産の相続が発生した場合には、相続税について意識しておかなければ後から大変なことになってしまいます。
したがって、遺産相続が起こったのであれば税金についても考えるべきです。
遺産相続の税金について考えるために、まずは、相続税がどのような財産を対象としているのかを知っておきましょう。
相続税の課税対象となるのは、亡くなった人の遺産です。
遺産とは、亡くなった人が死亡時に残してくれた財産のことを言います。
財産と言っても、現金だけではありません。
現金以外には、不動産、動産、債権、株などが考えられます。
ここで注意が必要なのは、このようなプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も引き継ぐことになるという点です。
マイナスの財産とは、たとえば、借金や保証債務、買掛金、預かり品の返還義務などが考えられます。
相続が起こったときに課税対象となるものが知りたい場合には、プラスの財産である資産とマイナスの財産である債務をリストアップした相続財産目録というものを作らなければなりません。
ただし、相続財産目録に含むことができない、相続できない財産も存在しています。
それは、一身専属権と使用貸借権です。
一身専属権とは、亡くなった人しか権利を行使できない親権や扶養料請求権などのことを指しています。
一身専属となっている権利や義務は、亡くなった人の死亡したタイミングで消滅してしまうのです。
したがって、消滅しているので相続はできず、相続財産目録にもリストアップすることができません。
次に、使用貸借権とは、物を無料で貸借する権利のことを言います。
使用貸借権は、貸している人と借りている人の特別な契約関係で成立しているので、契約当事者のどちらかが亡くなってしまうと効力を失うのです。
しかし、例外もあります。
不動産の使用貸借については、相続を認めてもらえる可能性も出てくると考えられているのが実際のところです。
不動産の使用貸借を相続することになった場合には、専門家に契約関係などを確認してもらったほうが安心できます。
基本的には、一身専属権と使用貸借権以外の財産は相続財産となるので課税対象です。
以上が、遺産相続についての基礎的な知識でした。
これらのことを頭に入れた上で、次は遺産相続の手続きや期限について見ていきましょう。
遺産相続には期限の定めがある
遺産相続は、亡くなった人の財産である遺産を引き継ぐことだとわかってもらえたと思います。
亡くなった人にはさまざまな財産があるはずなので、ゆっくり時間をかけて残された人たちでどのように分けるのかを考えていきたいというケースは多いです。
しかし、遺産相続には期限のある手続きも存在しているので、時間を気にせずにじっくり相談することは難しいのが実状です。
したがって、遺産相続が起きたら期限のある手続きは優先的に行っていきましょう。
どのような手続きには期限があり、どのような手続きには期限がないのかを見ていきます。
期限のある手続き
遺産相続の手続きには、主に遺産分割協議と相続税の申告や納付があります。
まず、遺産分割協議では、相続人となる人たちが集まって、亡くなった人の財産をどのように分配するのか話し合いをしなければなりません。
このとき、上手く話し合いが進まないようであれば専門家に間に入ってもらうことも有効です。
第三者が話し合いの場にいるだけで、全員が冷静に考えられることもよくあります。
遺産分割協議を行ったら、相続人は相続税を申告して納付することが必要です。
相続税の申告は相続が起きてから10ヶ月以内にしなければならないので、出来るだけ早めに遺産分割協議に取り掛かることをおすすめします。
遺産相続が発生しているということは、葬儀などの遺産とは関係のない手続きも行わなければならないでしょう。
そのようなことを行っていると、実質的に遺産分割協議や相続税の申告と納付を行える期間は限られています。
遺産相続が発生したときには手続きの期限を常に意識しておいてください。
ちなみに、遺産を引き継いだときの相続税が心配ならすべてを相続しないという選択もとることができます。
そのことは相続放棄と呼ばれ、プラスの遺産だけではなくマイナスの遺産も引き継がないようにすることが可能です。
しかし、相続放棄は相続税の申告期限よりも短い3ヶ月という期限が設定されています。
したがって、もしも遺産相続をしたくないというのであれば、相続が発生してからいち早く相続放棄の手続きを行わなければなりません。
3ヶ月を過ぎてしまうと相続放棄の手続きができなくなってしまうので、期限が過ぎないように気をつけるべきです。
期限のない手続き
実は、期限のない遺産相続の手続きも存在しています。
期限のない遺産相続手続きとは、相続登記のことです。
相続登記とは、不動産を相続して引き継いだときに名義変更をするというような手続きとなっています。
相続登記には明確な期限がないので、亡くなった人の名義で放置され、そのままになっていることも多いです。
しかし、相続登記を行わないまま遺産である不動産を放置し、その不動産がさらに次の世代である自分の子供たちに引き継がれることになったとき、相続人が増えてしまったり、必要な書類が手に入らない場合があり、手続きが非常に面倒になります。
したがって、手間はかかりますが相続登記は行っておくべきです。
相続登記をせず、亡くなった人の名義のままにしておくと、不動産を売ることもできません。
将来的に引き継いだ不動産を売りたいと考えているのであれば、出来るだけ早く相続登記を行っておいたほうが安全です。
また、自分の子供や孫、ひ孫たちに迷惑や手間をかけさせたくないのであれば、自分が亡くなる前に、相続登記をしておきましょう。
相続登記を自分で行うのが面倒なのであれば、専門家のサポートを受けてでも行っておくべきです。
期限を過ぎてしまった場合のデメリット
遺産相続の手続きの期限が過ぎると、ペナルティとして追加の税金が発生してしまいます。
ちなみに、相続税には、控除の制度が存在していますが、期限内に相続税額の申告をしなければ使うこともできなくなります。
例外があるケースもゼロではありませんが、特別な理由がない限り、期限内に申告を済ませておくべきでしょう。
相続税の申告は、人が亡くなってから10ヶ月以内とされています。
まずは以下の控除が利用できるかどうかをチェックし、利用できるのであれば相続税の期限が過ぎる前に申告を行いましょう。
そうでなければ、控除が利用できなくなる上にペナルティも課せられてしまいます。
- 贈与税額控除
- 配偶者の税額軽減
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
- 外国税額控除
これらの控除制度を利用することで、相続税額を軽減することができます。
各制度について、順番に説明していきます。
▼贈与税額控除
相続開始前3年以内に贈与された財産は相続税の課税価格に加算される制度のことです。
このとき、相続税が控除されていないのではないのかと思うかもしれませんが、心配いりません。
既に納めている贈与税の金額で、加算された分の金額は相続税の金額から控除されます。
相続が起こる3年前までに贈与された財産があるというときには、注意しておいてください。
▼配偶者の税額軽減
こちらは、配偶者にのみ特別に控除が認められている制度です。
相続税の申告期限である10ヶ月以内に遺産分割が確定していることが要件とされています。
亡くなった人の配偶者にあたるのであれば、早めに遺産分割を行って控除の制度を利用しましょう。
ちなみに、この制度を利用できる配偶者とは戸籍上の配偶者のみとなっていますので、覚えておいてください。
内縁関係でずっと夫婦のように生きてきたという場合も、利用することはできません。
配偶者の税額軽減の金額は、相続した財産のうち、法定相続分までの金額か1億6,000万円までの金額のいずれか大きい方の金額が適用されます。
少なくとも1億6,000万円は控除されるので、配偶者にとっては大変有難い制度となっています。
1億6,000万円までであれば、相続税は納める必要がありません。
しかし、相続税を納めなくても良い場合でも、相続税の申告書の提出は必要です。
もし、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらないという場合は、申告書に申告期限後3年以内の分割見込書を添付してひとまずの申告を済ませましょう。
申告してから3年以内であれば、遺産分割を終えて更生の請求を行うことで配偶者の税額軽減の制度を利用することが可能です。
▼未成年者控除
法律で定められた法定相続人が未成年者であれば、満20歳になるまでの年数に応じた控除が利用できる制度のことです。
1年間につき、10万円の控除をすることができます。
つまり、相続人が16歳だと仮定した場合、満20歳になるまでに4年間かかるので、「10万円×4年間=40万円」という金額が控除できるのです。
ちなみに、年数に1年未満の端数があれば、1年に切り上げることができます。
未成年者が相続するのであれば、知っておいて損はない制度です。
▼障害者控除
法律で定められた相続人が障害者の場合は、85歳になるまでの年数に応じて障害者控除が適用されます。
1年につき10万円が最低でも控除されるので覚えておいてください。
たとえば、85歳になるまでの年数が8年間であれば、「10万円×8年間=80万円」という金額が最低でも控除されます。
▼相次相続控除
短い期間で立て続けに相続が発生した人の負担を軽減するために作られた制度です。
10年以内に2回以上の相続が起こったときには、最初の相続にかかった相続税の一部分を2回目に起こった相続税から控除することができます。
連続して相続が起こると、場合によっては相続税がたくさん課せられる可能性が出てくるので、注意が必要です。
10年以内に2度目の相続が発生したときには、相次相続控除制度のことを思い出してください。
▼外国税額控除制度
こちらは、相続財産の中に外国の財産があったときに利用できる可能性のある制度です。
相続財産の中に外国の財産が含まれていると、相続した人が日本に住んでいれば、日本での相続税を納めるだけではなく、財産があった国でも税金が発生することがあります。
税金の二重課税が起こってしまうので、これは避けなければなりません。
このようなことになった場合には、外国で課せられた税金の金額を日本の相続税額から控除することができます。
相続する財産がすべてわかった時点で、、忘れずに外国税額控除制度を利用しましょう。
以上が、相続を期限内に行うことによって利用できる相続税の控除制度でした。
控除制度を利用すれば、かなりの額が節税できるので、必ず期限内に相続手続きを行ってください。
期限が過ぎた場合の対処法3つ
遺産相続の期限が問題になるときには、3つのパターンが考えられます。
- 遺産分割協議がまとまらず申告期限に間に合わない場合
- 相続税の計算が難しく申告期限に間に合わない場合
- 相続税の申告が難しく申告期限に間に合わない場合
このいずれのパターンでも、期限のことを考えたら専門家に相談しに行くのが一番良いです。
専門家に相談しに行けば、間に合う手続きは迅速に行なってもらえ、間に合わなかった手続きも最低限のペナルティで済むように行ってもらえます。
自分だけでどうにかしようとしても、期限がどんどん過ぎていき状況は悪くなる一方です。
どうしても専門家に相談しに行けないというときには、税務署に相談に行ってみてください。
どのような手続きを今から行えば良いのかは職員に教えてもらえるはずです。
また、専門家にも税務署にも相談に行けないのであれば、他の相続人に専門家に相談に行ってもらうという対処法もあります。
しかし、それぞれの相続人によって遺産の割合が違うこともあるので、自分で専門家に相談に行くのがベストな選択肢です。
まずは専門家のところに行ってみてください。
まとめ
遺産相続には期限があるので早めに手続きを完了させなければなりません。
しかし、人が亡くなったということでバタバタしていて期限が過ぎることもあるはずです。
そうは言っても、相続税の申告や納付の期限に間に合わなかった場合には、ペナルティとして追加の税金が発生してしまいます。
まずは遺産相続の期限について理解して、期限にまだ間に合う手続きには専門家に頼って早急に終わらせるべきです。
もしも期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早めに終わらせることができるように専門家に相談に行くのが安心できます。