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【手続きの手順・方法 】
相続時に必要な手続きについて手順や方法を説明しています。必要な手続きをせずにいると、後々相続トラブルに発展する可能性もあります。相続の手続きについて手順や方法を知っておきましょう。

2019年2月13日 水曜日

遺産分割協議書を使わずできる相続とは

被相続人が亡くなったときに相続が発生します。

基本的には、遺言書があれば遺言相続といって、遺言書に記載されている内容が優先され、遺言書にしたがって相続が行われます。

しかし、法定相続人には、遺留分といって民法で遺産を相続できる割合が保障されています。

このため、遺留分を無視している場合は、スムーズに遺言相続が行われないこともあります。

そして、遺言書がなく、法定相続も行われなかったときに、遺産分割協議が行われます。

遺産分割協議書とは、この遺産分割協議を行った際に作成するものです。

それでは、遺産分割協議をはじめ、遺産分割協議書を使わずできる相続は、どんな相続であるかについてご紹介いたします。

また、遺産分割協議書とは、一体どんなものであるかということについてもご紹介いたします。

遺産分割協議の役割

遺産分割協議とは、被相続人の遺産の分割について、問題が起きた際に、共同相続人が被相続人の遺産をどのような配分で相続するかを話し合うことをいいます。

遺産分割協議は、遺産相続で相続する割合を決めるため、共同相続人全員で行う必要があります。

ただし、法定相続人の中に未成年者がいる場合などは、代理人を立て、代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議を行います。

遺産分割協議には、遺産分割をどのように行うかを決められるといった役割があるため、とても重要です。

このとき、遺産分割の方法を現物分割にするのか、換価分割にするのか、代償分割にするのかなどの詳細も決め、基本的に後日やり直しを行うことはありません。

遺産分割協議書が必要になる場合

遺産分割協議書が必要になる場合とは、遺産分割協議をしたときです。

遺産分割協議で決まった内容は、遺産分割協議書として記録する必要があります。

遺産分割協議書が必要な相続

遺産分割協議書が必要な相続とは、基本的に遺産分割協議が行われた場合です。

そして、遺産分割協議書が相続において必要な状況は主に4つ考えられます。

1つ目は不動産の名義変更(相続登記)をする場合です。

不動産の名義変更(相続登記)をする際には、遺産分割協議書が必要とされ、用意されていないと手続きをすることができません。

遺産分割協議書があれば、どのように遺産を分割したかが明確にわかります。

不動産の名義変更(相続登記)には、遺産分割協議書以外にも被相続人と法定相続人全員の戸籍謄本や法定相続人全員の住民票など必要な書類がたくさんあります。

複雑な手続きが必要となるため、遺産分割協議書を作成する段階から、不動産の名義変更(相続登記)を行える司法書士に依頼するとよいでしょう。

また、遺言書がある場合は、遺産分割協議書の必要はありません。

2つ目は相続の申告をする場合です。相続税の申告を行う場合は、遺産分割協議書が必要となります。

また、相続税に関する特例などを利用した場合は、遺産分割協議書の提出は必須です。

3つ目は法定相続人同士の相続問題がのちに起こりそうな場合です。

遺産分割協議書を公正証書として作成した場合、遺産の分割において強制執行することができます。

そのため、遺産分割協議後に、遺産を独り占めしようとする人がいて、なかなか自分が相続するはずの遺産を相続できないといった場合でも、遺産分割の強制執行により、相続が可能となります。

ですから、法定相続人同士の相続問題がのちに起こりそうであると、少しでも思うならば、遺産分割協議書を公正証書として作成しておいた方が良いでしょう。

手間や費用はかかりますが、遺産分割協議公正証書は改ざんや紛失などの心配もないため、強制執行以外にもメリットがあります。

4つ目は被相続人の預金口座が多い場合です。

被相続人が亡くなってから、預金を引き出そうとした場合、金融機関の指定している用紙に法定相続人全員が記入すれば、預金を引き出すことが可能です。

しかしながら、被相続人の預金口座が多い場合は、毎回金融機関の指定している用紙に全員で記入するのは時間も手間もかかり大変です。

 

こういった手間や時間を省くためにも遺産分割協議書を作成することは必要であるといえるでしょう。

ちなみに遺産分割協議書を金融機関に提示することにより、法定相続人が金融機関の指定している用紙に全員で記入する必要はなくなります。

このように、遺産分割協議書とは、さまざまなシーンで必要となるものです。

もちろん、遺言書がある場合などは必要がありませんが、遺産分割協議を行った際は必ず作成するようにしましょう。

遺産分割協議書が必要のない相続

遺産分割協議書がいらない相続には、4つのケースがあります。

まず、1つ目は法定相続人が1人しかいないケースです。

法定相続人が1人しかいないということは、遺産を分割する必要がないため、遺産分割協議自体が必要なく、そのため、遺産分割協議書がいりません。

また、法定相続人が1人しかいないということは、遺留分を求められることもないと考えられます。

2つ目は遺言書があり、遺言書の通りにすべての財産を相続するケースです。

基本的に遺言書がある場合、遺言相続といって、法定相続よりも遺言書に書かれている内容が優先されます。

しかしながら、法定相続人には、遺留分といって、民法で保障されている財産を一定の割合で相続できる権利があります。

そのため、遺言書があっても、この遺留分を侵害している場合は、法定相続人が遺留分減殺請求を行うなど、遺留分をめぐってトラブルになってしまうこともあります。しかしながら、遺言書の内容が遺留分を考慮したものであったり、考慮していなくても法定相続人が遺言書の内容に納得し、遺言書の通りに相続を行うことを同意したりした場合は、遺言相続がなされるため、遺産分割協議をする必要がなく、遺産分割協議書もいないということになります。

3つ目は、遺言書がなくても、法定相続人が法定相続分通りに遺産を相続するケースです。

法定相続人の中に独り占めをしようとしたり、寄与分を主張したりする人がおらず、法定相続分通りに相続をする場合には、遺産分割協議を行うことがないため、遺産分割協議書もいりません。

4つ目は、被相続人の財産が預貯金とたんす預金だけのケースです。

預貯金に関しては、相続人全員が金融機関の指定の用紙に記入すれば、引き出すことが可能であるため、引き出すためだけに遺産分割協議書を作成しなくても問題はありません。

また、たんす預金の場合は、届け出る必要がないため、遺産分割協議書が必要ありません。

このように、遺産分割協議書とは、なくても遺産を相続できるものでもあります。

しかしながら、遺産分割協議書を作成する必要がまったくない場合以外は、遺産分割協議書を作成しておいた方がよいでしょう。

なぜなら、のちのち、相続トラブルに発展する可能性がないとは言い切れないからです。

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書には決まった書き方は存在していません。

書き方も用紙のサイズも自由です。

ただし、遺産分割協議書とは、遺産分割協議で決定したことがわかるように書かなければならないものです。

ですから、遺産分割協議書だとわかるように、タイトルには「遺産分割協議」と書くとよいでしょう。

 

タイトルを書いたら、次に遺産分割協議で決定したことを詳細に記載していきます。

遺産分割協議書に記載することは、まず、被相続人の名前、被相続人の死亡した日にち、被相続人の最後の住所、被相続人の最後の本籍地、被相続人の登記簿上の住所です。

 

これらを記載したら、次に遺産分割協議の結果である被相続人の遺産を誰がどのように相続したかを書きます。

たとえば、配偶者が預貯金を相続した場合は、銀行名と口座番号、預貯金額を記載します。

また、長男が土地を相続した場合は、土地の住所と面積を記載します。

このように、ほかの遺産分割についても内容を漏れなく詳細に書きましょう。

 

すべての結果を書き終えたら、後日、遺産分割協議をした財産以外の財産がほかにもあることが判明した場合にどのような対処をするかについて記載します。

基本的には「再度、協議する」と記載します。

 

ここまで書いたら、あとは遺産分割協議を行った日付と、共同相続人の全員の署名と捺印をすれば、遺産分割協議書の作成は終わりです。

捺印には実印を使うことを忘れないようにしましょう。

また、遺産分割協議書が2枚以上になるような場合は、割印をする必要があります。

 

以上で、遺産分割協議書の作成は終わります。

しかし、これらの内容を遺産分割協議書にどのように記載してよいかわらかないこともあるでしょう。

そのような場合は、遺産分割協議書のフォーマットを無料でダウンロードできる弁護士事務所や司法書士事務所などのサイトがあるので、フォーマットをダウンロードして記入するとよいでしょう。

また、フォーマットの無料ダウンロードだけでなく、サンプルを提示しているサイトもあるので、遺産分割協議書の作成方法がわからない場合は、サンプルを参考にして作成することも可能です。

このほか、弁護士や司法書士、行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼することもできるので、作成しやすい方法を選択するとよいでしょう。

遺産分割協議書は公正証書になる

遺産分割協議書を作成す必要がある場合というのは、遺産分割協議をしたときです。遺産分割協議書とは、「3.遺産分割協議書の作成方法」でもご説明している通りですが、遺産分割協議書については、公証人に作成してもらうことで、遺産分割協議公正証書として作成することも可能になります。

 

遺産分割協議書と遺産分割協議公正証書には、大きな違いがいくつかあります。

まず、作成する人ですが、遺産分割協議書が誰でも作成可能であるのに対し、遺産分割協議公正証書は、長い間、法律関連の仕事に携わっている弁護士や検察官、法務局長などの準公務員が公証人として作成します。

 

次に効力にも違いがあります。

遺産分割協議書には、強制執行力はありませんが、遺産分割協議公正証書には強制執行力があります。

 

また、遺産分割協議公正証書は一般的に作成される遺産分割協議書に比べ、証拠力が高いので遺産分割協議公正証書を作成したあとに、裁判に発展しても無効とするのが難しいといわれています。

代償分割することになった場合や共同相続人の間で遺産分割について話し合いがなかなかまとまらなかった場合などは、のちのちのトラブルを避けるためにも、強制執行力や証拠力のある遺産分割協議公正証書にした方がよいといえるでしょう。

また、金融機関の預貯金の名義変更や相続税の申告など、遺産分割協議書が必要となるシーンは多々あります。

そういった場合に遺産分割協議書の正確性が求められます。

遺産分割協議公正証書であれば、公証人の元で作成されているため、内容に法的な問題がなく安心です。

それだけでなく、遺産分割協議公正証書には、確定日付が付与されているので改ざんなどがされないといったメリットもあります。

このほか、遺産分割協議公正証書の場合、公証役場に20年間保管されるので紛失の心配もありません。

 

このように、遺産分割協議書ではなく、遺産分割協議公正証書とした方が、さまざまな点でメリットがあると考えられます。

ただし、自分で遺産分割協議書を作成するのとは異なり、遺産分割協議公正証書を依頼すると費用がかかるので、その点だけはデメリットであるといえるでしょう。

まとめ

遺産分割協議書とは、遺産分割協議をしていなければ作成する必要のないものです。しかし、遺産分割協議が行われた際は、遺産分割協議書を作成しておかないといろいろと不便が生じます。

たとえば、不動産の名義変更(相続登記)や相続の申告をする場合の際に、遺産分割協議書が必要となるからです。

 

また、のちのちの相続トラブルを回避したり、遺産分割協議で決定したことを執行したりすることを考慮すると、遺産分割協議書よりも遺産分割協議公正証書として作成しておいた方が、強制執行力や証拠力などさまざまな点でメリットがあります。

費用や手間はかかるため、デメリットのように感じるかもれしませんが、遺産分割協議公正証書を公証人に作成してもらうとよいでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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