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【手続きの手順・方法 】
相続時に必要な手続きについて手順や方法を説明しています。必要な手続きをせずにいると、後々相続トラブルに発展する可能性もあります。相続の手続きについて手順や方法を知っておきましょう。

2019年2月13日 水曜日

遺産分割協議書の書き方、注意点

遺産相続のトラブルに巻き込まれると、行わなければならないのが遺産分割協議です。

遺産分割協議には、法定相続人全員が参加する必要があり、その結果を記録した遺産分割協議書を作成しなければなりません。

このとき、覚えておかなければならないのが、遺産分割協議書の書き方です。

いくつか注意点もあるので、書き方と併せて、ご紹介いたします。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の遺産(財産及び義務)をどのように相続するか配分について話し合う協議のことです。

遺産分割協議をする際には手順があります。

まず、遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書があれば、遺産分割協議を行わずに遺言相続を行い、遺産分割をスムーズに行うことができます。

もし、遺言書がない場合は、被相続人の財産をすべて把握します。

被相続人の財産の把握は、負債も含めて、きちんと行わなければなりません。

自分で被相続人の財産を調べるときには、預貯金の通帳(通帳が見当たらない場合は、取引明細書・取引履歴の確認)やインターネットバンキングでの取引履歴、郵便物、不動産であれば、登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で、資産明細・名寄帳を市町村の役場で取得しましょう。

今挙げただけでも、これらすべてを自分の力だけで調べ上げるのはとても難しいことです。

どれだけの財産があるかということを調査するということは、不動産の価値についても把握しなければなりません。

すべてとは言わなくとも、自分でも調査できる部分があり、最初から専門家に依頼するのは気が引けるという場合は、自分で行えるところまでは自分で調査を行い、難しい部分だけ司法書士などの専門家に依頼して調査してもらうのもよいでしょう。

専門家に依頼すると、費用はかかってしまいますが、的確な遺産の把握をすることができます。

遺産分割協議は新たな財産が見つかった場合、再度協議することになりますが、二度手間三度手間になってしまい、時間も労力もかかるので、できるかぎり、一度で遺産分割協議をすませた方がスムーズです。

自分で調査することによって、新たな財産が見つかってしまう可能性が上がってしまうことを考えると、費用はかかっても、被相続人の財産の調査は依頼した方がよいといえるでしょう。

次に法定相続人の調査及び確定をします。

このとき、行わなければならないことは、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて、親族関係を確認することです。

家族や親族なのにどうしてそんなことが必要なのか? と思われるかもしれません。ですが、自分が知らないだけで、被相続人には離婚歴があって異母兄弟がいたり、実は隠し子がいて認知したりしている可能性もあります(隠し子である非嫡出子は認知されていると法定相続人となり、嫡出子と同等の法定相続が認められています)。

遺産分割協議を無事に終えて、公平に遺産を分割して相続したあとになって、実はほかにも法定相続人がいたことが判明し、相続トラブルに発展してしまうことも考えられます。

そういった最悪の事態を避けるためにも、法定相続人の調査及び確定は重要なものであるといえます。

法定相続人が判明したら、全員に遺産分割協議を行うことを通知しましょう。

通知方法は、通知したことが証明できる内容証明郵便を利用すると安心です。

内容証明郵便を利用するのは、郵便窓口に赴き手続きをしなければならないため、面倒に感じるかもしれませんが、現在ではe内容証明(電子内容証明サービス)といい、家にいながら、24時間いつでも好きなときに内容証明郵便を発送することができます。

e内容証明を利用する際は、内容証明文をWordファイルで作成し、インターネット上にアップロードするだけなので、忙しい人でも遺産分割協議を行う旨の通知を楽に行うことができます。

また、支払いもクレジットカードと料金後納の2種類から選べるので手間はあまりないといえるでしょう。

法定相続人に滞りなく通知ができたら、遺産分割協議を実施します。

遺産分割協議は日程を合せて対面で話し合いを行うのがベストではありますが、遠方に住んでいて、全員で顔を合わせて行うことが難しい場合もあるでしょう。

そのようなときは、メールや電話、書面などで行うことも可能です。

実際に対面して遺産分割協議を行わない場合は、議事録をしっかりつけておきましょう。

これは遺産分割協議書を作成するときに必要になります。

遺産分割協議で遺産の分割について結論が出たら、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書には決まった書き方はありませんが、書かなければならない項目がいつくもあります。

その詳細については、次の「遺産分割協議書の書き方」で詳しくみていきましょう。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、手書きで書いてもパソコンで書いてもどちらでも構いません。

ただし、詳細に書かなければならないことが多いので、手書きで書くよりもパソコンを使用した方が簡単に作成することができるでしょう。

また、遺産分割協議書の用紙のサイズも常識の範囲内なら問題はありません。

このように、書き方に絶対的な決まりがないのも遺産分割協議書の特徴でもあります。

遺産分割書の書き方ですが、まず、遺産分割協議書のタイトルを書くことから始めます。

遺産分割協議書であることがはっきりとわかるタイトルをつける必要があるので、オーソドックスに「遺産分割協議書」とするのがよいでしょう。

タイトルを書いたら、被相続人の名前、被相続人が死亡した日にち、被相続人の最後の住所、被相続人の最後の本籍地、被相続人の登記簿上の住所を記載します。

次に、遺産分割協議の結果である「被相続人のどの遺産を誰が相続人として分割したか」を書きます。

このとき、遺産分割協議で決まった内容を詳細に記載しなければなりません。

たとえば、不動産であれば、建物や土地の場所(住所)と面積、預貯金であれば、銀行名と口座番号と預貯金額、株式であれば株数などを誰がどの程度相続するからについて記載します。

また、後日、財産があることが判明した場合にどのように対処するかを記載します。基本的には再度協議する旨を記載するのが一般的です。

そして、遺産分割協議を行った日付を記載し、相続人全員の署名と実印での捺印が必要となります。

もし、遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、割印を忘れずにしましょう。

 

遺産分割協議書はこのように自分で作成することが可能なものです。

しかし、遺産分割協議書を難しくて作成できないと感じた場合は、遺産分割協議書のフォーマットを用意している税理士事務所や司法書士事務所から無料でダウンロードし、記入していきましょう。

書き方がわからない場合は、遺産分割協議書のサンプルを見ながら作成するとよいでしょう。

書き方の注意点

相続人の立場によって、遺産分割協議書の異なる書き方に注意

遺産分割協議書には、相続人に未成年がいたり、代償分割があったりする場合、その書き方は基本の書き方とは少々異なります。

基本の書き方は、「2.遺産分割協議書の書き方」に書いた通りですが、相続人に未成年、障がい者、意思の疎通が困難な人がいる場合、特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。

特別代理人は、家庭裁判所に親権者や利害関係人が特別代理人選任申立書を提出することで家庭裁判所が選任します。

特別代理人選任申立書は、裁判所のホームページでダウンロードすることができるので、そこに特別代理人選任申立書に必要事項を明記し、必要な書類と必要な費用(特別代理人選任申立書に800円分の収入印紙を貼ります)を併せて提出することで受理されます。

また、特別代理人には特に資格はありませんが、未成年者などのために特別代理人として代理権などを行使するため、適格性及び利害関係の有無を裁判所が判断します。

代償分割がある場合の遺産分割協議の書き方の注意

代償分割があった場合も遺産分割協議書は基本の書き方と異なります。

まず、代償分割についてですが、代償分割とはすべての遺産を1人が相続し、ほかの相続人には遺産をすべて受け取った人が代償として金銭を支払う分割の方法のことを言います。

そのため、代償分割があった場合の遺産分割協議書は、「2.遺産分割協議書の書き方」に記載すること以外に「A(すべて相続した相続人)がB(Aではない相続人)に対して、金●●円を支払う」などの文言の記載が必要となります。

不動産の相続についての書き方に注意

不動産の相続について記載する場合は、登記簿と同じように記載する必要があります。

なぜなら、登記簿に記載さているものと同じ内容であるとわかるものしか、登記所では判断してもらえないからです。

また、不動産を共有して相続する場合も2.遺産分割協議書の書き方」とは少々異なり、「次の不動産は甲Aが持分2分の1、Bが持分2分の1の割合をもって相続する」などの文言が必要となります。

公正証書にする意味合い

遺産分割協議書を遺産分割協議公正証書にする意味は、強制執行力や証拠力など、遺産分割協議書にはないメリットがあるからです。

遺産分割協議書は公証人に作成してもらうことで公正証書としての役割を果たします。

公証人とは、準公務員であり、長い間、法律関連の仕事に就いている弁護士や検察官、法務局長などがつとめています。

遺産分割協議書を公証人に作成してもらうことで、遺産分割協議公正証書となり、遺産分割協議書にはない強制執行力があるので、共同相続人の間で遺産分割について話し合いがなかなかまとまらず、遺産分割協議後に揉めることが想定できる場合や代償分割することになった場合(代償分割の場合、遺産が不動産しかないときに不動産を相続した人がほかの相続人に対して、本来相続するはずだった相続分を金銭で支払う遺産分割方法のため、金銭の支払いをしてもらえない可能性があります)は、強制執行力のある遺産分割協議公正証書を作成した方がよいでしょう。

 

また、裁判に発展して遺産分割協議の無効を主張された場合でも、遺産分割協議公正証書は、証拠力が高いため、無効にされる可能性が低いと考えられています。

 

また、遺産分割協議書に求められるものとして、正確性があります。

この正確性は一般人である相続人が作成するよりも、プロである公証人が作成した遺産分割協議公正証書の方が信頼性は高いといえるでしょう。

 

なぜ、信頼性や正確性が必要であるかというと、遺産分割協議書が必要な場面というのは、相続に関する手続きの中で多くあるからです。

たとえば、相続税の申告や金融機関の預貯金の名義変更などがこれにあたります。

このほか、遺産分割協議公正証書には、公正証書がこの日に確実にあったと証明できるが確定日付が付与されるので、偽造や改ざんなどの心配がありません。

また、遺産分割協議公正証書は、公証役場に20年間保管されることが決まっているので、紛失をすることもありません。

 

このように、遺産分割協議書ではなく、遺産分割協議公正証書にする意味合いは、多くのメリットがあるからでしょう。

もちろん、遺産分割協議公正証書の作成を依頼すれば、費用はかかります。

しかし、そのデメリットよりも、遺産分割協議公正証書で得られるメリットの方が大きいというのが、遺産分割協議公正証書の特徴です。

遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書が必要なケースとは、遺産分割協議をした場合です。

遺産分割協議書は、被相続人の遺産を誰がどのような配分で遺産分割したかという記録でもあります。

このほかにも遺産分割協議書が必要なケースというのがあります。

それは、「4.公正証書にする意味合い」でも記載いたしましたが、相続税の申告や金融機関の預貯金の名義変更で必要になる場合です。

このほか、被相続人の名義の預貯金を引き出す際にも提示する必要があるため、遺産分割協議書が必要となります。

まとめ

遺産分割協議を行った際には、遺産分割協議書を作成することが必要です。

遺産分割協議書の書き方や注意点はいくつもあるので、それらに気を配り作成するようにしましょう。

自分で遺産分割協議書の作成が難しい場合は、専門家に依頼する方法もあります。

また、遺産分割協議書を遺産分割協議公正証書にするだけで、さまざまなメリットがあるので、遺産分割協議公正証書での作成も視野にいれるとよいでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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