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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年6月16日 日曜日

外国籍の人が被相続人、もしくは相続人の場合に注意すべきこと

外国籍の人が被相続人や相続人の国際相続の場合、日本人同士での相続とは違う手続きが生じます。相続税のかかり方も、どの国の法律に従ったら良いか混乱しがちです。

被相続人が外国籍、相続人が外国籍、多重国籍の場合のそれぞれを、相続手続きと相続税とに分けて詳しくお伝えしていきます。

 

外国籍の人が被相続人の場合

外国籍の人が被相続人の場合には、相続手続きと相続税を考える際にそれぞれ気を付けるべきことが発生します。詳しく見ていきましょう。

 

相続手続きにおいて気を付けるべきこと

被相続人や相続人が外国籍の人の場合の相続手続きや、アメリカのように、州によって法律が違う国では、どこの法律に従えばいいのでしょうか。

 

相続手続きをする場合、どの国の法律を適用するか

相続手続きの際、被相続人の本籍のある国の法律に従うことが原則で、相続人の本籍は関係しません。

しかし例外として、特に不動産は本籍の国の法律ではなく所在している国の法律に基づくと定めている国があります。例えばアメリカやイギリス、中国などです。被相続人がアメリカ人で日本に不動産がある場合は、日本の法律に基づき相続することになります。これを「反致」と呼びます。

 

地域によって法律が違う国の場合、どこの法律を適用するか

被相続人の国籍が、地域によって法律が異なる国であった場合は、「その国の規則に従い指定される法を当事者の本国法とする」と日本の民法で規定されていて、「規則のない場合には、当事者に最も密接な関係のある地域の法」を当事者の本国法とする、と定められています。

例えばアメリカは州ごとに法律が違いますが、このような憲法の下、従うべき法律の場所が決定されていきます。

 

相続税を考える際に気を付けるべきこと

被相続人の財産を相続した場合、その財産には相続税が発生します。その課税対象となる財産の範囲は、財産の所在や被相続人と相続人の国籍や住所によって異なります。

海外財産に対する二重課税の控除など、その内容について見ていきます。

 

財産があるのは国内か、海外か

日本の相続税がかかるかどうかは、財産の所在が日本にあるのか海外にあるのかによって異なります。

日本の不動産を所有しているのであれば、たとえイタリアに住むイタリア人が持っていたとしても、日本の相続税がかかります。イタリアに住んでいるイタリア人が、その国の家族に相続させたとしても、日本の不動産には日本の相続税がかかるのです。

来日してもらい、日本の税務署で手続きをする必要があります。日本国内に所在する財産には、どんな人が持っていたとしても問答無用に日本の相続税が発生するのです

 

被相続人と相続人の居住地がどこにあるのか

日本の相続税は、人によって国外にある財産にも課税される場合と、国外にある財産には課税されない場合の2つのパターンがあります。

課税されるパターンは、被相続人、相続人のどちらかが日本に住所を持っている場合です。

課税されないパターンは、被相続人も相続人も日本を離れ海外に住んでいて、被相続人が日本を離れて10年以上経っていた場合、且つ相続人が外国籍だった場合です。この場合のみ、日本にある財産だけに相続税が課税されます。

 

海外財産に対する相続税額の控除

海外にある財産にも課税されるパターンで、海外と日本で二重課税になる際、それを回避するために、相続人は「外国税控除額」という控除特例の制度を受けることができます。

海外で支払う相続税の一部を、日本で支払うことになる相続税から控除できるという内容です。国外の財産を相続し、その国において相続税に相当する税が課税された者に対して適用されます。

この外国税額控除の適用には、相続税申告書第8表と添付書類として海外での課税を証明する書類(海外の相続税申告書)が必要です。決まった書式が国税庁のページからダウンロードできます。

 

相続人が外国籍の場合

相続人が外国籍の場合には、相続手続きや相続税を考える際において注意すべきことがあります。

 

相続手続きにおいて気を付けるべきこと

相続手続きにおいて気を付けるべきことは、外国籍の方の相続登記に時間がかかることや、不在者財産管理人の選任です。

 

相続した不動産の相続登記に時間がかかる

相続登記とは、遺産のうち不動産を得たときに、対外的にも相続されたことを示すために行う登記のことです。

2018年に成立した改正法により、この相続登記をしていない場合、最悪相続財産を失ってしまう可能性もあるので注意が必要です。相続登記の手続きには、住所を証明する書類を添付する必要があります。

 

外国人登録制度が廃止された平成24年7月9日以降の中長期在留者や特別永住者などは、比較的楽に住民票の写しを得られるのですが、それ以前については、「外国人登録原票の写し」を法務省から取り寄せる必要があります。これにより、結果的に相続登記に時間がかかってしまう場合があるのです。

 

不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人とは、連絡の取れない相続人がいるとき、その財産を管理する人の事です。

家庭裁判所の許可を得て、不在者に代わり遺産分割を行えます。

 

遺産分割協議には、相続人の全員が参加し、それぞれが合意して遺産分割協議書を作成する必要があります。不在者や行方不明者がいるときの協議には代理人が必要です。

相続人が海外在住で連絡が取れないときに、その不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい、その人に遺産分割協議に参加してもらう必要があるのです。

 

不在者財産管理人の選任申し立てが出来るのは、利害関係者と検察官です。

管理人には親族、相続人などの利害関係ではない人が選任され、候補者のいない場合、弁護士や司法書士などの専門士業が選任されます。

 

「不在者」とは、相当な期間行方不明である必要があります。海外に住所がある外国人が相続人に含まれており、相続人調査をしても一定期間連絡が取れないことが明らかな場合、不在者財産管理人が選任できます。

 

相続税を考える際に気を付けるべきこと

相続人に外国籍の方がいる場合に、戸籍のない外国籍の人の相続税申告はどうしたら良いのでしょうか。

金融機関の相続手続きもどういったものになるのか解説します。

 

相続税申告をする際の身分証明

相続税申告は、全ての相続人の戸籍謄本の添付が必要です

相続人が外国籍の場合、いわゆる日本の戸籍謄本が存在しないのですが、その場合は、外国が発行した身分証があればそれを添付することで代用が可能です。何らかの書類で相続人が非居住者と分かれば良いのです。

例えば、元々日本国籍で、外国籍を取得した場合には、日本で除籍謄本を取得すればその謄本で外国籍が証明できます。

 

金融機関の相続手続き

日本国籍がなく外国籍を持ち、日本で住民登録していない方や海外在住の方は、金融機関で口座の開設ができません

そのため、被相続人の口座を解約しても、それを移すための口座を持つことが困難な状態になります。代理人の口座に一時的に保管してもらうか、直接海外の口座に送金してもらうか、措置をとる必要があります。

しかし、金融機関によって対応が分かれてきますので、詳しくは各金融機関にお問い合わせください。

 

国籍が複数ある場合は?

日本では多重国籍が認められていません。しかし、海外では許可されている国もあり、日本で亡くなった外国籍の方が多重国籍である事があります。国籍が一つではない被相続人がいた場合、どこの国の法律に従い相続手続きをすることになるのでしょうか。

また、相続税についても、国籍がはっきりしないと税を課税する際に従う法が決定できません。国籍の判断方法とはどういったものなのでしょうか。

 

相続手続きにおいて気をつけるべき

殊国籍を多重に持つ場合、どこの国を本国法とするのかについては、

 

  1. 日本を本国法とする場合
  2. 常居所がある国の法律を本国法とする場合
  3. 最も密接な関係がある国の法律を本国法とする場合

 

上記の順番で優先順位があります。

日本で国籍を複数持つケースは、親が外国籍、出生した場所が外国、養子・結婚などで他国の国籍を得た場合や、帰化によって日本国籍を取得した人で従来の国籍も有している場合などです。

以下で詳しくご紹介します。

 

<1.日本の法律を基準とする場合>

国籍を複数持つ人の場合で、その中の一つが日本国籍であった外国人が亡くなった際の相続の法律は日本法に従うことになります

法の適用に関する通則法38条「二つ以上の国籍を有する場合、その国籍のどれかが日本であるときは、日本方を当事者の本国法とする」と定められているためです。

 

<2.常居所がある国の法律を基準とする場合>

被相続人の多重国籍に日本国籍を持たない際に、被相続人の国籍がある国に常居所がある場合はその国の法律を本国法とします

 

<3.密接な関係がある国の法律を基準とする場合>

被相続人の多重国籍に日本国籍がなく、国籍がある国に常居所がない際には、被相続人の密接関係地が相続に適用される本国法となります

例えば、二重国籍がアメリカと中国であったとしても、多くの期間日本に住居を持つ外国人の相続には、日本法が適用される場合があるということです。

 

相続税を考える際に気を付けるべきこと

相続税法とは、相続税の納税義務者や課税財産の範囲、相続税の計算や申告について規定した法律です。国により相続税法の中身が変わるため、どの国の法に従うかどうかは重要です。しかし多重国籍者の国籍をどのように決定するかについては相続税法では規定されていないため、多重国籍者の国籍の判断は二つの主義によって決定します。

 

相続人に国籍が二つ以上ある場合、国籍の判断方法

その人の国籍の判断方法は2つあります。「父母両血統主義」と「生地主義」です。

 

父母両血統主義とは、父もしくは母のどちらかが自国の国籍を持っている場合には、その子も自国の国籍を取得することが可能です。

 

生地主義は、の国で生を受けた場合その子には生を受けた国の国籍を取得することが可能です。

 

国によって採用している主義が異なりますが、日本では父母両血統主義を採用していますが、生地主義を採用している国で生を受けた日本人の子の場合には、日本国籍と出生国の二つの国籍を持つこととなります。

国籍法の第14条にて、一定の年齢に達するまでにいずれかの国籍を選択することと規定されています。しかし必ずしも国籍の選択を必要としていない国もあるため、その国では複数の国籍を持つ人が存在します。

 

状況判断が難しい場合は専門家に相談したほうが良い

外国籍の方が日本で被相続人になった場合、本籍の国の法律によって相続を行います。

また、本籍の国の法律が地域によって異なる際や多重国籍の際は、どこの法律に従うかどうかは高度な判断が必要です。

 

日本にある不動産の相続登記についても、日本の法律に基づきますが外国では戸籍制度がない国が多いため、手続きに使う資料の取り寄せに時間がかかります。

 

相続税は、被相続人や相続人の国籍ではなく住んでいる場所によって課税対象が決まります。

日本居住であれば、財産が海外にあっても日本の相続税が課税されます。

 

このように被相続人もしくは相続人が外国籍の際には、難しい判断が要求されるため、法務・税務の両面で国際相続に詳しい専門家に相談したほうがいいでしょう。

弁護士は法律の専門家として国際相続をサポートしてくれます。

 

他にも、相続税の知識が豊富な税理士や、不動産を鑑定できる不動産鑑定士、土地に登記を代行することができる司法書士など、各士業に相談し、サポートを求めることができます。

 

まとめ

被相続人が外国籍、もしくは相続人が外国籍の場合に注意することについてご説明してきました。

 

注意が必要なのは、被相続人が外国籍、相続人が外国籍、多重国籍の場合の相続手続きや相続税おいて、どの国の法律を適用するかでした。

 

相続手続きでは被相続人の本籍の国の法律を適用し、相続税では財産の所在での判断や、被相続人と相続人の居住地のある国の法律が適用されます。

国際相続において不安なことや疑問に思うことは、問題が起こる前に、経験豊富な弁護士や税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。トラブルのないスムーズな相続ができるよう、準備を周到に行いましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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