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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年6月20日 木曜日

同時死亡における相続はどうなるのか?

年齢に関係なく、ある日突然お別れの日が来るかもしれません。

また、事故や災害によって、一度に複数の大切な人を亡くしてしまう可能性もあります。

自分には関係ないと思うかもしれませんが、いざという時の知識を持っておくことに越したことはありません。

知らないことに対処するには、知っていることに対処するときの何十倍ものエネルギーを使わなければなりません。

ここでは、家族が複数同時に、あるいは死亡日時の前後関係が不明なまま亡くなってしまった場合の相続に関して、詳しく解説していきます。

 

同時死亡における相続では死亡日時が重要

同時死亡における相続では、死亡日時が非常に重要です。

被相続人と相続人が亡くなった際の先後関係によって、最終的に相続する人物が、どのような形式で受け継ぐかを明確にする基準となるためです。

しかし、事故や災害等によって複数の家族が亡くなってしまった際、死亡時の先後関係を明らかにすることが難しい場合もあります。

ここでは、同時死亡が起きてしまった際の相続関係や、相続に関する用語について詳しく解説していきます。

 

同時存在の原則

相続人となる人物は、相続の開始時に生存していなければなりません。

これは、「同時存在の原則」に基づいているためです。

遺産相続に際して、被相続人に属する財産と全ての権利義務が相続人に承継されます。

この相続制度の大原則は、相続開始時に、相続人が生存していなければ、権利義務の承継は認めらません。

即ち、「同時存在の原則」は、相続するに際して、相続人が生存していなければならないということを条件づける制約です。

 

同時死亡が起こってしまった場合の相続人

「同時存続の原則」によって、同時死亡が起こってしまった場合は、被相続人より前に亡くなったか、後に亡くなったかが相続人を明確にする上で重要となります。

相続人となるはずの人物が既に生存していない場合は「代襲相続」、被相続人より後に亡くなった場合は「数次相続」となります。

 

相続人の優先順位①

配偶者を除いた他の相続人には、定められた順位によって、遺産を分与されます。

法律上正式に結婚しており、現在も婚姻関係を継続している配偶者は、原則として、「全ての場合における相続人」となります。

即ち、配偶者以外に相続人がいる場合も、相続人として最も優先される立場であり、遺産を分与される割合も高くなります。

 

相続人の優先順位②

配偶者の次に高い順位と定められている相続人は、被相続人の子や孫です。

2番目に順位が高い相続人は、被相続人の父母や祖父母です。

父母も祖父母も存命している場合は、父母が相続人として優先されます。

1番目、2番目の法定相続人がともに不在の場合は、3番目の順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人にあたります。

被相続人に配偶者がいた場合は、子あるいは孫とともに配偶者、父母が相続人であれば、ともに配偶者、兄弟姉妹が相続人であれば、ともに配偶者、等のように、配偶者は常に相続人となり得ます。

 

代襲相続とは

代襲相続とは、相続人となるはずであった人物が、被相続人より先に亡くなってしまった場合や、相続欠格や推定相続人の廃除によって相続権を失った場合、その人物に代わって相続人となる人物のことを指します。

例えば、子が亡くなっている場合は、代襲相続人は孫、孫も亡くなっている場合は、代襲相続人はひ孫、というように、血の繋がりがある限り代襲相続は延々と続きます。

ただし、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までと制限されています。

また、代襲相続の際に相続放棄した人物の子や孫は、代襲相続をすることが出来ません。

 

相続欠格・推定相続人とは

相続欠格とは、ある人物の相続に関して、不正を働いた人物を、当該相続において相続人や受遺者(遺言によって遺産を受け取れる人物)になることを禁止する制度です。

推定相続人とは、相続権を有し、現段階で生存している人物(代襲相続人も含む)の中で、優先順位が最も高い人物のことを言います。

推定相続人の廃除となる原因として、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行等があげられます。

 

数次相続とは

数次相続とは、被相続人の「名義変更」「遺産分割協議」「移転登記」等の手続きを終える前に相続人が亡くなった場合に、その地位を相続人の法定相続人が遺産相続の権利を引き継ぐことを言います。

この相続の制度は、最初の相続である一次相続、続いて行われる相続である二次相続、というように、相続が2回以上重なるため、「数次相続」と呼ばれます。

この制度は、相続の権利を有する人物がまだいれば、三次相続、四次相続と引き継がれていきます。

ただし、相続の回数を増すごとに、相続の関係性は複雑化していきます。

 

数次相続の例

数次相続の例として、「父が亡くなり、父の遺産に関して遺産分割協議を行う前に、相続人の1人である母も亡くなった場合の状態」があげられます。

この場合の子は、父と母の両方の相続人にあたります。

本来、父の遺産分割協議は、母と子で行わなければなりません。

しかし、母も父の後に亡くなってしまっているため、子は、父の相続人であると同時に、母の立場として父の遺産分割協議を行わなければなりません。

即ち、二次相続が起きていることになります。

 

代襲相続と数次相続の違い

代襲相続は、「生きていれば相続するはずだった」人物の子がその人物に代わって子が相続人になります。

数次相続は、「相続は始まったが、遺産分割協議を行う前に相続人が亡くなり、新たな相続が始まる」ことを言います。

即ち、代襲相続と数次相続の違いは、「被相続人が想定される順番ごとに亡くなったか、否か」によって判別されます。

 

法定相続人とは

法定相続人とは、「民法で定められた相続権がある人物」のことを言います。

多くの人が持つイメージとして、「故人の親族が相続人となる」という認識がありますが、親族には各家系によって複雑な場合もあります。

親族が多く、複雑化している場合、どの人物が相続人となるかを明確にすることが困難になります。

従って、遺産分割を行うに際して、混乱やトラブルを防ぐために、法定相続人が定められています。

 

再転相続とは

再転相続とは、被相続人が亡くなった際に(一次相続)、その人物の相続人が確定する前に、法定相続人であった人物が亡くなり、その人物の相続も始まってしまうこと(二次相続)を言います。

原則として、被相続人が亡くなった際は、その法定相続人は、相続開始時から「熟慮期間」と呼ばれる3ヵ月以内に、相続するか放棄するかを選択する義務があります。

一次相続の法定相続人が、承認か放棄の選択をしないうちに亡くなってしまい、二次相続が開始してしまうことが「再転相続」です。

 

再転相続の例

例として、被相続人Aが亡くなり、相続が開始したとします。

その場合、配偶者Bと子のCとDのみが、Aの法定相続人にあたります。

被相続人が亡くなってから、1週間後に配偶者Bも亡くなりました。

子のCとDのみが配偶者Bの相続人にあたります。

この事例は、高齢夫婦の場合に想定されるケースです。

子であるCとDは、AとBの両者の法定相続人にあたるため、それぞれの相続について、承認か放棄かを選択しなければなりません。

 

再転相続と数次相続の違い

再転相続と数次相続の違いは、「承認するか放棄するかという選択の有無」です。

再転相続は、法定相続人が一次相続に関して承認か放棄か選択する前に亡くなってしまう場合を指します。

一方、数次相続は、法定相続人が一次相続に関して承認する選択をしたものの、具体的な遺産分割を行う前に亡くなってしまった場合を指します。

従って、再転相続では、それぞれの相続に関して承認か放棄かを選択できますが、数次相続では、既に一次相続が承認されているため、二次相続の法定相続人は、一次相続を放棄することは認められていません。

 

再転相続と代襲相続の違い

再転相続と代襲相続の違いは、「法定相続人が亡くなった先後」によるものです。

代襲相続は、法定相続人が、被相続人が亡くなるよりも前に亡くなった場合や欠格や廃除の場合に為されます。

しかし、再転相続は、本来亡くなることを想定されている順番通りに亡くなった際に適用されます。

再転相続は2つの相続を同時に、代襲相続は、1つの相続を行う、という点で大きく異なります。

 

死亡の前後が分からない場合「同時死亡の推定」とは

同時死亡となった人物は、互いに相続人とはなり得ません。

「同時存続の原則」に反するためです。

ここでは、同時死亡であるとみなす「同時死亡の推定」と、その例や誤解されやすいポイントについて解説していきます。

 

「同時死亡の推定」とは

同時死亡の推定とは、民法で定められた、被相続人と相続人のどちらが先に亡くなったか不明である場合に適用される規定です。

「複数の人物が同時に亡くなった際に、そのうちの1人が他の人物が亡くなった後に生存していた事実を明確にできない場合に、当該複数の人物は同時に亡くなったと推定する」制度となります。

 

「同時死亡の推定」の例

被相続人と相続人が一緒に乗っていた飛行機が墜落した場合が例としてあげられます。

他にも、事故や災害等で2人とも亡くなってしまったが、死亡時の先後関係は不明の場合は、「同時死亡の推定」が適用されます。

また、この制度はあくまでも「推定」であるため、制度の適用が為された後も、被相続人と相続人の死亡時の先後関係を示す証拠が見つかれば、推定を覆すこともできます。

 

「同時死亡」の誤解

同時死亡の推定は、被相続人と相続人の亡くなった順番が不明な場合に適用されるため、死亡原因が同じものであるとは限られていません。

例として、父が海で遭難して亡くなった日と同日に母が火災で亡くなった場合も、同時死亡として推定されます。

 

同時死亡における相続の例

ここでは、「両親と子3人の家庭で、父方の祖父母は存命中、母方の祖父母は死去、両親のどちらにも兄弟はいない」という前提のもとに、亡くなった人物や順番が異なるあらゆる場合の相続例を解説していきます。

また、同時死亡とはいえ、亡くなった際の先後関係は明らかになっているものとします。

 

父の次に母が亡くなった場合

父が亡くなった際は、法定相続人である、母と子が相続します。

しかし、その後に母が亡くなってしまった場合は、子が全て相続することになります。

従って、父の財産は、一部は一旦母を経由した後に、最終的に子に受け継がれます。

この場合は、母が父の遺産相続を承認していれば「数次相続」にあたり、相続の承認も放棄も選択していなければ、「再転相続」にあたります。

再転相続であれば、遺産を相続するか放棄するか選択することが可能です。

 

父の次に母と長子が亡くなった場合

父の次に母と長子が亡くなった場合、絶対的な相続権を持つ配偶者と、第1順位の相続権を持つ子が不在となります。

父方の祖父母は存命しており、兄弟もいません。

従って、この場合は、第2順位である父の両親が相続人となります。

このように、相続するはずだった人物が先に亡くなってしまうことによって、次に優先順位が高い人物に相続権が引く継がれる場合は、「代襲相続」の扱いになります。

 

父方の祖父の次に父が亡くなった場合

父方の祖父が亡くなった場合は、配偶者である父方の祖母と、子である父に相続権が発生します。

しかし、相続人の1人である父も亡くなってしまった場合は、父の相続権は母と子に引き継がれます。

祖母と父は、祖父の財産を1/2ずつ相続し、父が亡くなった場合は、母と子が、父が相続した1/2を2人で割るため、それぞれ1/4ずつの相続となります。

 

父の次に父方の祖母が亡くなった場合

父の次に父方の祖母が亡くなった場合は、「代襲相続」となります。

本来、祖母の配偶者である祖父とともに相続人となるはずだった父が生存していないためです。

遺産相続の割合は、配偶者の祖父に1/2、父が相続するはずだった1/2を代襲相続人である母と子に1/4ずつ分与されることになります。

 

父方の祖父の次に母が亡くなった場合

父方の祖父の次に母が亡くなった場合は、元々の相続人は、祖父の配偶者である祖母と父であるため、相続権は変わりません。

母は、父方の祖父と血のつながりはなく、初めから相続する権利を持たないためです。

 

まとめ

この記事では、同時死亡における遺産相続について解説しました。

死亡の先後関係が不明な場合は、「同時死亡の推定」が適用され、同時死亡したとみなされます。

ただし、亡くなった際の先後関係に少しでもずれが生じることが明確になれば、その先後関係に応じて、遺産相続が為されます。

被相続人の家族構成を念入りに確認し、法定相続人となる人物を明確にして、同時死亡とされたときの相続時のトラブルを避けましょう。

また、同じタイミングで大切な人たちを失うというのは、最も困難なトラブルの一つです。

いくら知識を持っていても、落ち着いて対処するなど不可能な場合もあるでしょう。

そのような時は、専門家に任せて、ご自身の生活を立て直すことに専念できますので、ぜひ一度ご相談されることをお勧めします。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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