すてきな相続は大切な方を亡くしたあとの手続・届出から、
知っているようで知らない「相続」に関する情報をわかりやすく解説します。

登録税理士
1122人
受付時間 / 10:00〜19:00
0120-052-993

相続対策

> 相続対策 > 相続の基礎知識
【相続の基礎知識】

相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

最新記事

遺産分割調停が始まった場合に弁護士に相談するメリット

この記事を読もうとしているあなたはとても勇気がある人です。

きっと「悪い事が起きた」状況の中で、それでも「相続という現実」を扱おうと立ち上がり、このページに辿り着いた事でしょう。

「遺産分割調停」というキーワードを見た人は、「悪い事が起きた」かのように思うかもしれません。

ですが、今回の記事で勇気あるあなたにお伝えしたいのは、遺産分割調停も、弁護士に相談するのも、「悪い」事ではないということです。

人間は誰もが必ず、何か「悪い事が起きた」ときには「自分の生存」を守ろうとします。

いつもはシンプルに判断できる事も普段の何倍もためらうのが人間であり、誰も抗えない潜在心理です。

「遺産相続のときに家族の本性が出た!」と聞く事がありますが、それはただの機械的・自動的な反応であって、その人の本性とは全く関係なく働いてしまう「潜在的な心理」なのです。

一連の相続手続きにおいて最もトラブルが発生しやすいイベントは、相続人の間で遺産の分割割合を話し合って決める遺産分割協議と言われています。

遺産の分割割合等をめぐり相続人の間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停に移行することになります。

今回の記事では、この遺産分割調停について遺産分割の基本からご説明していきます。

本稿をご覧になったうえで、できれば家族とは関係がなく、「ただ事実を整理して実行できる」弁護士にご相談することを、心からお勧めします。

遺産分割調停とは何か

遺産分割調停が発生するまで

遺産分割調停の提起は、遺産分割協議が上手く行かない、と遺族のどなたかが判断したときに行われます。

本稿では、相続が発生してから遺産分割調停に至るまでの過程についてご説明します。

遺産分割とは

被相続人が亡くなると、それと同時に被相続人の財産(遺産)について相続が発生します。

民法第898条によると、相続発生時の遺産は「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」とあります。

相続発生時は、相続人が1名であれば遺産は一括して当該相続人が承継するだけですが、相続人が複数人いる場合はすべての遺産を相続人全員で相続し、全員がそれを共有している状態です。

しかし、この相続発生時の遺産の共有関係は一時的なもので、その後の遺産分割の話し合いによって最終的に決定されていきます。

土地や建物などの不動産だけではなく、預貯金や有価証券までもが全て相続人全員の共有となりますので、このような状態では、各相続人は自分の一存で遺産を有効に活用することが難しくなります。

したがって、共有状態にある遺産は例えば自宅不動産は配偶者、預貯金は相続人全員で均等に分けるなどというように、相続人それぞれの相続割合を決めてその割合に応じて分割し、それぞれの相続人に帰属させるようにしなければなりません。

これが「遺産分割」であり、遺産分割によって遺産の共有関係は消滅します。

遺産分割協議とは

遺産分割は民法第906条「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とあるとおり、遺産の種類や各相続人の状況などに基づいて協議が行われます。

しかし、遺産分割は民法第907条第1項「共同相続人は、次条の規定(被相続人による遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる」とあるように、亡くなった人が遺言で指定した遺産分割の協議方法以外を禁止する場合、あるいは遺言の執行者が遺言の内容通りの協議方法以外を禁止する場合を除いては、原則的に相続人間同士での協議が行われ相続人全員の合意によって決定されるのです。

このように相続人の間で話し合い、誰が・何の遺産を・どの割合で相続するのがもっとも自然かを決めて合意することが「遺産分割協議」です。

相続人間の協議分割の場合、すなわち遺産分割協議の結果として民法の原則である法定相続割合と異なる分割割合あるいは被相続人の遺言とは異なる分割割合になったとしても、それが各相続人の自由な意思に基づく合意である限り有効です。

遺産分割協議は相続人全員の合意をもって成立します。

できれば、相続人全員が直接会って話し合うことが好ましい形でしょう。

しかし、相続人が各地に分散していて難しい場合は、全ての相続人に遺産分割の内容や各相続人の主張が明確にされていれば、参加できる相続人同士のみの協議も認められています。

逆に言えば、一人でも相続人の主張が明確でなければ、その協議は無効となります。

遺産分割協議が進まない場合の、遺産分割調停または遺産分割審判

遺産分割の方法は、遺産分割協議の他にも遺産分割調停と遺産分割審判を選ぶことができます。

相続人の間で遺産分割協議が調わない場合、協議内容や他の相続人の主張を不服とする相続人は民法第907条第2項「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる」にあるとおり、家庭裁判所における調停または審判により定められることになるのです。

なお、遺産分割調停では審判の前の調停無しに審判や裁判に移行することも可能ですが、多くの遺産分割事案では審判の前に調停を行っているのが現状です。

遺産分割調停の流れ・申立て手順

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停では、家庭裁判所が選出した調停員を介して

最新記事を見る
2019.3.22

代償分割で分割相続をする前に気をつけたいこと

相続人として被相続人の財産を相続することになった場合には、どのような財産があり、自分がどの程度の財産を相続するかということを正確に知る必要があります。

被相続人が遺言書を作成していれば、遺言書に従って財産を相続することになりますが、遺言書に法的効力があることが前提となるだけでなく、遺留分がきちんと考慮されているかなど、遺言書通りの相続が可能であるかも確認しなければなりません。

また、遺言書がない場合は、法定相続を行いますが、不動産など分けることが難しい財産しかないことも珍しくありません。

このような、さまざまな状況に応じて相続方法を選択するために、相続する日が来る前に分割相続の方法を知っておくことが大切です。

本コンテンツでは、代償分割をはじめとした、分割相続について詳しくご紹介いたします。

分割相続のパターン

相続人が複数人いる場合は、基本的には財産を分割して相続することになります。

分割相続をする場合には、代償分割・現物分割・換価分割・共有分割の4パターンを選択して相続することになります。

これらは基本的には、財産の種類や相続人の都合などによって、選択をすることができます。

ただし、遺言書がある場合には、遺言書の内容が優先されるため、遺言書の内容に従って相続します。

今回は代償分割・現物分割・換価分割の3つの分割方法について、詳しく見ていきましょう。

代償分割

代償分割とは、共同相続人が複数人いる場合に、1人または複数人が財産(現物)を相続して、その相続人たちが財産を相続しなかった他の相続人に、本来相続するはずだった額の金銭を支払う相続方法のことです。

このとき、財産を相続した相続人が支払う金銭のことを代償金といいます。

財産を相続した相続人は、代償金を支払うだけの資力が必要となるため、代償分割をする際にはその点も含め、考慮する必要があります。

また、代償分割は、財産に不動産しかない場合など、相続人で財産を分割して相続することができない場合などに選択される傾向があります。

現物分割

現物分割とは、財産をそのままの形で相続する方法のことをいいます

たとえば、預貯金、現金、不動産、貴金属といった財産があり、相続人が長男と長女だった場合、長男に預貯金と不動産、長女に現金と貴金属といった形で財産を相続させる相続方法のことです。

現物分割だと、わざわざ財産を売却して換金する手間などがなく、比較的楽に分割相続することが可能となります。

ただし、相続財産が同じくらいの価値があることは珍しいため、財産を公平に相続することが難しく、不平等な分割が生じる可能性が高いという特徴があります。

そのため、同じくらいの価値がある財産がない場合は、トラブルの原因となることが多いので、不向きな相続方法であるといえるでしょう。

換価分割

換価分割とは、財産を売却して現金に換えたのち、相続人がそれぞれの割合に応じて現金を相続することをいいます。

換価分割は売却するといった手間があるものの、現物分割のように不平等が起きづらく、平等に財産を分割相続できるといった特徴があります。

また、代償分割のように代償金の支払いを巡り、トラブルになるといったこともありません

ただし、不動産を売却するときに、手数料などがかかり、本来の財産の価値よりも受取金が安くなってしまう可能性が考えられます。…

2019.3.22

贈与時に課税対象となる”みなし贈与財産”とは何か

財産を贈与されたときに、ある一定の金額を超えると贈与税が課せられます。

この贈与税の課税方法には2種類あり、金額や誰から財産を贈与されたかによって、選択できる課税方法が違うという特徴があります。

そして、贈与税の課税対象には、贈与された財産だけでなく、財産とみなされた「みなし贈与財産」も含まれます

では、みなし贈与財産とは一体どんなものなのでしょうか?

今回は、みなし贈与財産について詳しくご紹介いたします。

そもそも贈与とは

贈与とは、民法(贈与)第549条において、当事者の一方が自分の財産を無償で相手に与える意思を示した上で、相手がその贈与を受けることで効力が生じるものであることが定められています。

また、民法(書面によらない贈与の撤回)第550条において、書面で贈与についての契約を交わしていない場合には、それぞれの当事者(贈与をする人、贈与を受ける人)が撤回できるとされています。

しかしながら、すでに贈与された部分についてはこの限りではないと定められています。

贈与には、下記のようなさまざまな種類のものが存在しています。

  • 一般的に贈与と呼ばれる生前に贈与をする生前贈与
  • 贈与者(贈与をする人)が亡くなったときに効力を生じる死因贈与
  • 受贈者(贈与を受ける人)に負担を負わせる代わりに贈与をする負担付贈与
  • 毎月または毎年一定額を贈与する定期贈与(連年贈与)
  • 受贈者が約束を達成したときに成立する停止条件付贈与 など

贈与時にかかる税金

贈与をする際にかかる税金のことを贈与税といいます。

贈与税がほかの税金と異なる点は、2種類の課税方法があることなどが挙げられます。

それでは、贈与時にかかる税金について詳しく見ていきましょう。

贈与税とは

贈与税とは、個人から財産の贈与をうけた際にかかる税金のことをいいます。

法人から財産の贈与を受けた場合においては、贈与税がかかりませんが、その代わりに所得税がかかります。

また、贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類の課税方法があり、条件によって、どちらの課税方法を選択するかが決まります。

まず、「暦年課税」の場合、1月1日から12月31日までを1年間と定義し、その間に個人からもらった財産が110万円以下なら贈与税がかからないといった課税方法です。

ただし、財産の合計額から基礎控除額である110万円を引き、それを超える分の金額から贈与税がかかります。

110万円以下で贈与税がかからなければ、贈与税の申告は必要ありませんが、110万円を超える場合には贈与税の申告をする必要があります。

次に「相続時精算課税」の場合、暦年課税と同様に1月1日から12月31日までを1年間と定義し、この間に個人からもらった財産の合計金額から2,500万円を控除することができます。相続時精算課税の場合、2,500万円を超える分の金額から贈与税がかかります。…

2019.3.22

みなし相続財産は課税対象となるの?

相続の対象となる資産は多種多様ですが、財産の相続の方法は家族構成や状況によってさらに変化していきます。

なかには、身内の方が現役で働いている年代にもかかわらず亡くなり、生命保険金の死亡保険金や死亡退職金、死亡弔慰金を、遺族として受け取る方もいらっしゃるかと思います。

ところで、「みなし相続財産」という言葉をご存知でしょうか。

相続の手続きにおいて、上記のような、生命保険金の死亡保険金・死亡退職金・死亡弔慰金はみなし相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります

しかし、各種の控除制度が設けられていることから、相続税を計算する際には、他の相続財産とはやや異なった計算をする必要があるのです。

本コンテンツでは、みなし相続財産の基本についてご紹介します。

相続財産にかかる税金

相続によって財産を取得した人に課される税金(国税)のことを、相続税といいます。

2019年3月時点における相続税率は、以下のとおりです。

別途算出された相続財産評価額に以下の税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して得られた額が相続税となります。

  • 1,000万円以下:10%(控除額なし)
  • 3,000万円以下:15%(50万円)
  • 5,000万円以下:20%(200万円)
  • 1億円以下:30%(700万円)
  • 2億円以下:40%(1,700万円)
  • 3億円以下:45%(2,700万円)
  • 6億円以下:50%(4,200万円)
  • 6億円超:55%(7,200万円)

家族構成のパターンに応じた相続税の速算表をよく見かけますが、それらは法定相続割合のみを考慮したものとなっていることがほとんどです。

実際の各相続人の相続税額は、遺産分割協議によって決まった分割割合や、特別受益の有無、相続時精算課税制度の活用の有無などに応じて、大きく変わります。

そのため、速算表だけで自分の相続税を完璧に計算することは難しいです。

利用する際は、あくまでも参考程度にしておきましょう。

相続税の計算方法は、諸制度や法律、さらには相続関係者たちの個別の事情が組み合わさったものですので、非常に煩雑で分かりにくくなっています。

そのため、相続税や各種制度、法律について何も知らない人が計算・申告をすると、過大申告・過少申告となってしまう可能性があります

もし、うっかり計算方法を誤って過少申告になってしまった場合でも、税務署に”故意に誤った悪質な過少申告”と判断されてしまうと、追徴課税などが課されてしまうリスクがあります。

したがって、相続税の計算・申告や税務署との折衝については、多少のコストが生じたとしても、税理士などの専門家に依頼することが安全です。

 

各相続人の相続税額は、以下の算式およびステップによって計算することができます。

(1)で各項目の評価額を誤ると、適正な相続税額そのものが算出されなくなりますので、相続税評価額は慎重に行う必要があります。

 

(1)相続人それぞれの課税価格

=A+B-C-D+E…

2019.2.25

相続時に相続登記を法務局に申請する手順

相続に関する諸手続きは、数多くあります。

そのひとつである「相続登記」は他の手続きと同様に、専門的な知識と煩雑な手続き、そしてたくさんの時間を要するものです。

本コンテンツでは、今後相続手続きを控えている方向けに、相続登記を法務局に申請する方法と、その具体的な手順についてご紹介していきます。

相続とは

相続は、被相続人(亡くなった人のこと)が死亡または失踪宣告・認定死亡を受けたことで発生し、被相続人の配偶者や子どもなど特定の人が被相続人が所有していた財産や権利義務を、各相続人の割合に応じて引き継ぐ制度のことです。

相続の方法は、大きく分けて下記の3つがあります。

  • 遺された財産を誰が・何を・どの割合で相続するかを、相続人の間で話し合って決める協議分割
  • 被相続人が生前に作成した遺言によって財産を受け取る遺贈
  • 贈与者が死亡したら受贈者に財産を残す契約を、生前に贈与者・受贈者間で締結していたことにより財産を受け取る死因贈与

相続は民法や相続税法などの各種法律や制度により規定されています。

これに基づき、被相続人から財産を引き継ぐ相続人は、遺産分割、相続税の申告・納付などの一連の手続きを行わなくてはなりません。

このなかで特に、不動産を相続する際に重要な手続きのひとつが、相続登記なのです

相続登記とは

まず、登記の総論からご説明します。

日本国内に所在する土地や建物などの不動産については、その所在地・所有者・種類・面積・権利の状況などを「登記記録」として国の機関である法務局に公示します

登記記録は法務局で誰でも閲覧することが可能であり、手数料として登記印紙を添え登記記録の写しを申請すると、「不動産登記事項証明書」を取得することができます。

※ちなみに、登記記録は電子化されており、一部の地域を除きインターネットでも取得することが可能になっています。

これが不動産登記の制度です。

不動産登記には「公信力」が無く、つまり登記されている内容が必ずしも全て正しいとは限らないのですが、所有権など当該不動産に関する法的な権利を第三者に主張することができる「対抗力」があります。

このため、不動産登記は所有者などの権利関係や当該不動産の状況を公示するとともに、売買や抵当権などで円滑な権利の移転や設定などを可能にする役割を持っています。

不動産登記事項証明書は、「表題部」「甲区」「乙区」の3つで構成されています。

表題部では、当該不動産の所在地・面積・種類などの情報、甲区では当該不動産の所有者、乙区では抵当権や賃借権など所有権以外の権利がそれぞれ記載されています。

さらに、不動産登記事項証明書にはこれまでの所有者や権利の変遷など、当該不動産がどのような歴史をたどって現在に至るかが記載されています。

そして、相続登記とは相続が発生した際に甲区に記載されている不動産の所有者の名義を、被相続人から当該不動産を相続する相続人の名義に変更する手続きのことです。

なお、相続登記は法的に義務付けられているものではなく、相続登記をせず甲区記載の名義を被相続人のままで放置しておいたとしても罰則などが課されるわけではありません。

しかし、相続登記をしなければ、以下のような問題が後々に発生することが考えられます

(1)売りたいときに売れず、担保にも含めることができない

不動産を売却したり、融資を受けるために銀行などへの担保とする場合、不動産会社や金融機関から必要書類として当該不動産の登記事項証明書の提出が要請されます。

その際、もし当該不動産の相続登記が行わなれておらず名義が被相続人のままだと、当該不動産は売主または抵当権設定者と名義が相違することになってしまいます。

このような状態の不動産の売却を仲介する不動産会社や、抵当権者となり融資を実行する金融機関はいないと考えていただいてよいでしょう。…

2019.2.22

相続時に必要な準確定申告とは?

相続手続きの手順のひとつとして、準確定申告というものがあります。

準確定申告は、給与所得や年金のみで生計を立てていた被相続人(亡くなった人のこと)の場合には、手続きそのものが不要とされている場合が多いことから、相続税の申告・納付と比べると知名度は低いものです。

一方で、生前の被相続人に確定申告が必要な所得があった場合には、相続人が確実に行っておく必要があるため、この基礎知識を得ておくことは他の相続対策と同様に重要です。

本コンテンツでは準確定申告の基礎知識および手順についてご紹介します。

準確定申告とは

所得税の確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合に当該過不足を精算する手続きのことです。

通常、所得税の確定申告は前年1年間の所得について翌年の2月16日から3月15日の間に原則として本人が行います。

これに対し準確定申告とは、被相続人の確定申告を相続人が代わって行うことです。

相続人本人の所得に関する確定申告ではありませんので、ご注意ください。

具体的には、被相続人の相続が発生(亡くなること)した年の1月1日から相続が発生した日までの所得に対する所得税を、遺族などの相続人が申告・納付します。

生前に確定申告を必要とする所得があった被相続人の遺族など相続人は、必ず被相続人に代わって準確定申告を行わなければなりません。

また、被相続人が以下に該当する場合は、準確定申告を行うことで、被相続人が生前に支払っていた税金の還付を受けることが可能な場合もあります。

・高額の医療費を支払っていた場合

・高額の寄付を行っていた場合

・収入が給与または年金のみで源泉徴収の対象であり、その年の年末調整未了のまま亡くなった場合

・年末調整を受けていない生命保険料や地震保険料など各種控除を受けることが可能な支払いがある場合

・住宅ローンの残債がある場合(一定の要件有り)

・認定住宅新築等特別税額控除の対象となる自宅を新築していた場合

・盗難や自然災害などによる被害を受けていた場合

なお、準確定申告により各相続人が負担した税額は、相続人の相続財産額から債務として控除され、同じく準確定申告により各相続人が還付を受けた金額は相続財産に加算されます。

また、被相続人の所得金額が38万円以下の場合、生前に同一生計だった相続人については配偶者控除や扶養控除を受けることが可能です。

申告期限について知っておく

準確定申告の申告および納税期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」と定められています。

期限までに申告・納税が為されない場合や過少申告を行った場合、加算税(無申告加算税・過少申告加算税・不納付加算税・重加算税)や延滞税などの追徴が課されることになり、さらに悪質と判断された場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が課されることになりますので、ご注意ください。

また、前年に確定申告の必要な所得があった人が翌年の確定申告を行う前に亡くなった場合は相続人が被相続人の前年分の確定申告を行わなくてはならず、これについても準確定申告と同様の期限とされています。

なお、準確定申告が不要であり還付金を受け取るために申告する場合は、上記の期限内でなくてもよいとされています。…

2019.2.22

親の連帯保証は相続される?相続時の対処法

せっかく相続財産が手に入ると思っていたら、実は被相続人に連帯保証があり請求を受けてしまった…。

このような事例は少なくありません。

連帯保証は、債権者に対して法的に極めて強い弁済義務を負うものであり、そのことを知らずに相続して自己破産に陥ったという事例もあるほどです。

そのような事態を防ぐために、今回は『連帯保証とは何か』という基礎知識から、『被相続人に万一連帯保証があった場合に相続人としてとるべき方策』までをご説明します。

相続時の連帯保証の扱い

連帯保証とは?

民法では、連帯保証人はこのように記載されています。

民法第446条

第1項:保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

第2項:保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

第3項:保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

この内容をまとめると、「連帯保証人とは、お金などを借りている主たる債務者が債務の弁済を行わないときに、主たる債務者に代わって債務の弁済を行う義務を負うことを契約(デジタル方式でも可)により保証した人のこと」と定義されます。

連帯保証人には、主たる債務者の債務弁済について強い拘束力が課されており、通常の保証人とは以下の点が異なります。

・「催告の抗弁権」が無い
債務の弁済について主たる債務者と連帯保証人のどちらかに請求することは債権者の任意です。
しかし、連帯保証人には債権者に対して主たる債務者に先に請求するように要求する権利がないのです

・「検索の抗弁権」が無い
連帯保証人から主たる債務者に先んじて債務弁済の請求があった場合、主たる債務者に弁済する財産があったとしてもそれを理由に債務弁済を拒む権利がありません。

・「分別の利益」が無い
通常の保証で保証人が複数いる場合、保証人の人数で按分した金額しか保証債務はありません。

しかし、連帯保証は保証人が複数いる場合でも保証人全員が主たる債務者の全ての債務を保証する義務を負います。
したがって、被相続人に連帯保証がある場合、相続人の利益が過度に侵害されないように、慎重に相続手続きを進める必要があります。

連帯保証に対する相続人の義務は?

民法896条に、相続発生時の相続人に対する連帯保証の扱いが定義されています。

民法896条:
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

『権利』とは被相続人が遺した不動産や預貯金、あるいは貸付金のような債権などプラスの財産(積極財産)と解釈できます。

また、『義務』とは未払いの税金や被相続人が弁済義務を負った借金の支払いなどマイナスの財産(消極財産)と解釈できます。

連帯保証については、この消極財産の範疇に入るものと考えられます。

つまり、「連帯保証人が亡くなった場合、その相続人は基本的に連帯保証債務も相続する」ことになるのです(ただし、一部例外はありますので、この点は後述します)。

さらに、連帯保証債務を相続すると相続人は原則として債権者からの債務弁済の催促に応じなければなりません。

なお、相続人が複数以上いる場合、法定相続割合に応じて、あるいは相続人間の話し合いで決めた割合に応じて、各相続人は債務の弁済を行うことになります。

被相続人の連帯保証を調査する

生前に自身が連帯保証人であることを周囲に話している被相続人は、少ないかもしれません。

したがって、被相続人の連帯保証の有無については相続が発生してから相続人によって調査して発覚することが多いと考えられます。

以下で代表的な調査方法をご紹介しましょう。

(1)契約書を確認する

先述のとおり、連帯保証は書面で契約が締結されていなければ無効です。…

2019.2.13

遺産分割協議書の書き方、注意点

遺産相続のトラブルに巻き込まれると、行わなければならないのが遺産分割協議です。

遺産分割協議には、法定相続人全員が参加する必要があり、その結果を記録した遺産分割協議書を作成しなければなりません。

このとき、覚えておかなければならないのが、遺産分割協議書の書き方です。

いくつか注意点もあるので、書き方と併せて、ご紹介いたします。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の遺産(財産及び義務)をどのように相続するか配分について話し合う協議のことです。

遺産分割協議をする際には手順があります。

まず、遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書があれば、遺産分割協議を行わずに遺言相続を行い、遺産分割をスムーズに行うことができます。

もし、遺言書がない場合は、被相続人の財産をすべて把握します。

被相続人の財産の把握は、負債も含めて、きちんと行わなければなりません。

自分で被相続人の財産を調べるときには、預貯金の通帳(通帳が見当たらない場合は、取引明細書・取引履歴の確認)やインターネットバンキングでの取引履歴、郵便物、不動産であれば、登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で、資産明細・名寄帳を市町村の役場で取得しましょう。

今挙げただけでも、これらすべてを自分の力だけで調べ上げるのはとても難しいことです。

どれだけの財産があるかということを調査するということは、不動産の価値についても把握しなければなりません。

すべてとは言わなくとも、自分でも調査できる部分があり、最初から専門家に依頼するのは気が引けるという場合は、自分で行えるところまでは自分で調査を行い、難しい部分だけ司法書士などの専門家に依頼して調査してもらうのもよいでしょう。

専門家に依頼すると、費用はかかってしまいますが、的確な遺産の把握をすることができます。

遺産分割協議は新たな財産が見つかった場合、再度協議することになりますが、二度手間三度手間になってしまい、時間も労力もかかるので、できるかぎり、一度で遺産分割協議をすませた方がスムーズです。

自分で調査することによって、新たな財産が見つかってしまう可能性が上がってしまうことを考えると、費用はかかっても、被相続人の財産の調査は依頼した方がよいといえるでしょう。

次に法定相続人の調査及び確定をします。

このとき、行わなければならないことは、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて、親族関係を確認することです。

家族や親族なのにどうしてそんなことが必要なのか? と思われるかもしれません。ですが、自分が知らないだけで、被相続人には離婚歴があって異母兄弟がいたり、実は隠し子がいて認知したりしている可能性もあります(隠し子である非嫡出子は認知されていると法定相続人となり、嫡出子と同等の法定相続が認められています)。

遺産分割協議を無事に終えて、公平に遺産を分割して相続したあとになって、実はほかにも法定相続人がいたことが判明し、相続トラブルに発展してしまうことも考えられます。

そういった最悪の事態を避けるためにも、法定相続人の調査及び確定は重要なものであるといえます。

法定相続人が判明したら、全員に遺産分割協議を行うことを通知しましょう。

通知方法は、通知したことが証明できる内容証明郵便を利用すると安心です。

内容証明郵便を利用するのは、郵便窓口に赴き手続きをしなければならないため、面倒に感じるかもしれませんが、現在ではe内容証明(電子内容証明サービス)といい、家にいながら、24時間いつでも好きなときに内容証明郵便を発送することができます。

e内容証明を利用する際は、内容証明文をWordファイルで作成し、インターネット上にアップロードするだけなので、忙しい人でも遺産分割協議を行う旨の通知を楽に行うことができます。

また、支払いもクレジットカードと料金後納の2種類から選べるので手間はあまりないといえるでしょう。

法定相続人に滞りなく通知ができたら、遺産分割協議を実施します。

遺産分割協議は日程を合せて対面で話し合いを行うのがベストではありますが、遠方に住んでいて、全員で顔を合わせて行うことが難しい場合もあるでしょう。

そのようなときは、メールや電話、書面などで行うことも可能です。

実際に対面して遺産分割協議を行わない場合は、議事録をしっかりつけておきましょう。

これは遺産分割協議書を作成するときに必要になります。…

2019.2.13

遺産分割協議書を使わずできる相続とは

被相続人が亡くなったときに相続が発生します。

基本的には、遺言書があれば遺言相続といって、遺言書に記載されている内容が優先され、遺言書にしたがって相続が行われます。

しかし、法定相続人には、遺留分といって民法で遺産を相続できる割合が保障されています。

このため、遺留分を無視している場合は、スムーズに遺言相続が行われないこともあります。

そして、遺言書がなく、法定相続も行われなかったときに、遺産分割協議が行われます。

遺産分割協議書とは、この遺産分割協議を行った際に作成するものです。

それでは、遺産分割協議をはじめ、遺産分割協議書を使わずできる相続は、どんな相続であるかについてご紹介いたします。

また、遺産分割協議書とは、一体どんなものであるかということについてもご紹介いたします。

遺産分割協議の役割

遺産分割協議とは、被相続人の遺産の分割について、問題が起きた際に、共同相続人が被相続人の遺産をどのような配分で相続するかを話し合うことをいいます。

遺産分割協議は、遺産相続で相続する割合を決めるため、共同相続人全員で行う必要があります。

ただし、法定相続人の中に未成年者がいる場合などは、代理人を立て、代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議を行います。

遺産分割協議には、遺産分割をどのように行うかを決められるといった役割があるため、とても重要です。

このとき、遺産分割の方法を現物分割にするのか、換価分割にするのか、代償分割にするのかなどの詳細も決め、基本的に後日やり直しを行うことはありません。

遺産分割協議書が必要になる場合

遺産分割協議書が必要になる場合とは、遺産分割協議をしたときです。

遺産分割協議で決まった内容は、遺産分割協議書として記録する必要があります。

遺産分割協議書が必要な相続

遺産分割協議書が必要な相続とは、基本的に遺産分割協議が行われた場合です。

そして、遺産分割協議書が相続において必要な状況は主に4つ考えられます。

1つ目は不動産の名義変更(相続登記)をする場合です。

不動産の名義変更(相続登記)をする際には、遺産分割協議書が必要とされ、用意されていないと手続きをすることができません。

遺産分割協議書があれば、どのように遺産を分割したかが明確にわかります。

不動産の名義変更(相続登記)には、遺産分割協議書以外にも被相続人と法定相続人全員の戸籍謄本や法定相続人全員の住民票など必要な書類がたくさんあります。

複雑な手続きが必要となるため、遺産分割協議書を作成する段階から、不動産の名義変更(相続登記)を行える司法書士に依頼するとよいでしょう。

また、遺言書がある場合は、遺産分割協議書の必要はありません。

2つ目は相続の申告をする場合です。相続税の申告を行う場合は、遺産分割協議書が必要となります。

また、相続税に関する特例などを利用した場合は、遺産分割協議書の提出は必須です。

3つ目は法定相続人同士の相続問題がのちに起こりそうな場合です。

遺産分割協議書を公正証書として作成した場合、遺産の分割において強制執行することができます。

そのため、遺産分割協議後に、遺産を独り占めしようとする人がいて、なかなか自分が相続するはずの遺産を相続できないといった場合でも、遺産分割の強制執行により、相続が可能となります。

ですから、法定相続人同士の相続問題がのちに起こりそうであると、少しでも思うならば、遺産分割協議書を公正証書として作成しておいた方が良いでしょう。…

2019.2.12

相続前に知っておきたい相続税の基礎知識

相続に関する税制改正が平成27年に行われたことにより、今まで相続税とは無縁だと思われていた方も相続税を支払う義務が生じる可能性が高まりました。

ここでは相続前に知っておきたい相続税の基礎知識について説明していきます。

相続税とは

相続税とは相続を受けた際に支払う税のことです。

一定額以上の相続を受けた場合には、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から、税務署に10か月以内に申告と納税を行う必要があります

相続税の申告や納税の義務がありながら、その申告を行わない、もしくは期限を過ぎてしまった場合には税務署からペナルティとして追加課税が行われる可能性もあります。

そのため相続を受けた際には必ず相続税を支払う必要があるのかどうかを計算にて確認し、相続税を支払う必要がある場合には期限内にしっかりと申告と納税を行いましょう。

相続税の申告が必要な場合とそうでない場合

相続税は相続を受けた場合に必ず支払う必要があるものではありません。

一定額以上の相続を受けた場合に、相続税の申告と納税の義務が生じるのです。

この一定額のことを基礎控除額と呼びます。

相続する財産の合計が基礎控除額を超える場合に、基礎控除額を超えた財産に対して相続税が課税されます。

そのため相続する財産が基礎控除額を超えない場合には、相続税の申告と納税を行う必要はありません。

ですから相続税の申告が必要かどうかを知るためには相続する財産の合計と、基礎控除額を知る必要があります。

基礎控除額は一律に定められているわけではありません。

次の計算式に当てはめて基礎控除額を導き出します。

基礎控除額の計算式

3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人とは、民法で定められた相続を受けることのできる人のことで、配偶者、子、両親、兄弟姉妹のことです。

そのほか、遺言書等がある場合には遺言書で定められた人も法定相続人となります。

例えば相続する財産の合計が4,000万円で法定相続人が1人の場合を見ていきましょう。

その場合計算式は、3,000万円+600万円×1人となりますので、基礎控除額は3,600万円となります。

相続する財産の合計が4,000万円ですので基礎控除額を差し引くと400万円あります。相続する財産の合計が基礎控除額を上回るため、相続税の申告と納税の義務が生じます。

では次に相続する財産の合計が4,000万円で法定相続人が3人の場合を見ていきましょう。

その場合計算式は、3,000万円+600万円×3人となりますので、基礎控除額は4800万円となります。

相続する財産の合計が4,000万円ですので基礎控除額を差し引くとマイナス800万円です。

相続する財産の合計が基礎控除額を下回ったため、相続税の申告と納税の義務はありません。

このように相続する財産の額が同じ場合でも、法定相続人の数により基礎控除額が異なるため相続税の申告と納税の義務がある場合とない場合があります。

そのため相続を受けた際には相続する財産の合計と基礎控除額を計算し、相続税を支払う必要があるのかないのかを相続人が調べる必要があります

相続税の申告手順

相続税を申告する手順について説明していきます。

申告対象の相続財産を把握する

まずは相続財産を把握する必要があります。

相続財産とは相続や遺贈で得た財産のことです。

基本的には被相続人の財産すべてを計算するということになります。…