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【相続事例・問題 】
相続時に発生する問題、トラブルについて、事例を交えて説明しています。相続において問題やトラブルが発生するのは珍しいことではありません。事例をもとに対策を知り、相続問題の解決にあたりましょう。

2019年6月13日 木曜日

DINKSの相続はトラブルになりやすい?なりにくい?

自分や家族の誰かが亡くなった後の相続を考えることは、家族との別れを想像するということなので、できれば先延ばしにしておきたくなります。

それは、自分が亡くなった時のことであっても、老齢の家族のことであっても同じでしょう。

子どものいない夫婦二人だけの生活スタイル・DINKS(ディンクス)で暮らす夫婦にとっても、相続を考えることは信頼できるパートナーとの生活が終わりを迎えることを意味するので、想像したくはないでしょう。

しかし、DINKSの相続は、子どもがいないために思いもよらない人が相続権を得ることもあります。

どちらが先に亡くなるか、どちらが残されるかは分かりませんが、お互いのために、しっかりDINKSの相続を勉強しておきましょう。

 

DINKSとは?

日本は、多様な家族の形が許容される社会になってきました。

今や女性が仕事を持ち働くことが当たり前になり、専業主婦のいる世帯と共働き世帯の数は平成初期に逆転しました。

夫婦共働きの家庭の中でも、意識的に子どもを持たない夫婦は、Double Income No Kids(ダブルインカムノーキッズ:2収入、子どもなし)、頭文字を取ってDINKSと呼ばれています。

DINKSの夫婦は大人同士、自立したパートナーとして互いを尊重しながら生活を送っています。

これまでの価値観は「結婚したら子どもがいて当たり前」「子どもを育てるために結婚する」というように、子どものいない夫婦にとっては生きづらい社会でした。

しかし、芸能界のDINKSのご夫婦が、理想の夫婦像としてメディアで紹介されていることも多く、DINKSへの認識が高まり、子どもがいなくても幸せな結婚生活を送っている夫婦がいることが知られるようになってきました。

総務省の2015年の調査によると、結婚している夫婦のうち「子どものいない共働きの夫婦」の割合は約3割に上ります

この中にはDINKSももちろん含まれますが、子どもを望んでいるけれど授かることができない夫婦、高齢で結婚したため子どもを持てない夫婦なども含まれます。

この割合を妥当と思われますか。それとも意外と思われるでしょうか。

 

DINKSの相続はトラブルになりやすい

DINKSのご夫婦は共働きで、教育費などの「子ども費」などがかからないため、家計に余裕のあるご家庭も多いでしょう。

仕事に思う存分力を入れることもできますし、趣味にお金と時間を使うことができます。

 

しかし、考えたくはないことですが、誰しも今の生活を永遠に続けられるわけではありません。

例えば、どちらかが先に亡くなった場合、子どもがいれば相続人は配偶者と子どもになりますが、子どもがいないと相続人が家庭外に広がり、相続は複雑になってきます

 

ケース別DINKSの相続

では、DINKSの場合、財産がどのように相続されていくのか、ケースごとに説明していきます。

 

配偶者の親が健在

亡くなった人の親、つまり義理の両親が健在の場合には、亡くなった人の遺産を配偶者が2/3、義理の両親が1/3を相続します

義母・義父共に健在の場合でも、相続する遺産は合計で1/3です。

遺言書などで配偶者の取り分を多く書いておいた場合でも、義理の両親には最低限の遺産の取り分(遺留分)が法律上保障されています。

配偶者と義理の親が相続する場合には、義理の親には相続内容の1/2の遺留分が保障されています。

主な相続財産が夫の名義の自宅で、そのほかに相続する財産がなければ、義理の親が1/3を相続するとなると困ってしまいます。

自宅を売って相続分を渡すか、何らかの手段でお金を工面しないといけなくなります

例えば、DINKS世帯の亡くなった人名義の6,000万円のマンションを相続する際には、配偶者4,000万円、義理の両親が2,000万円相続することになります。

遺言書などで義理の両親の相続は遺留分のみになったとしても1,000万円を相続します。

しかも、建物のみ相続をしていても、暮らしていくための費用も必要です。

人生100年といわれる時代、老後にお金がかかるのに、相続のためにも資金を用意しておかなくてはなりません。

経済的にゆとりのあるDINKSの生活でも、先を見据えておかないと、後々に大変なことになるようです。

しかし、新しい法令により、これまで住んでいた自宅に住めなくなり路頭に迷う、という最悪の事態は避けられるようになりました。

2018年7月に1980年以来、38年ぶりの民法の大改正が行われ、亡くなった人の配偶者が、相続開始後にずっと住んでいた建物を無償で使用することができるという権利「配偶者居住権」がつくられました

2020年7月12日までの政令で定める日に施行されます。

具体的な方法としては、遺産分割や遺贈、家庭裁判所の決定があれば、配偶者居住権が取得できます。

配偶者居住権では生きている間、その建物に住むことができます。それとは別に、配偶者が遺産分割終了または相続開始後6カ月間は、自宅に居住することも認められました。

DINKSの夫婦が仕事に励み、築き上げてきた快適な住まいを相続のために手放す必要がなくなるのは嬉しいですね。

 

配偶者の親は死亡しており兄弟姉妹がいる

亡くなった配偶者の義理の親は既に他界しているが、配偶者に兄弟姉妹がいる場合、配偶者は3/4、兄弟姉妹は複数人合計で1/4を相続します。

義理の兄弟姉妹の仲の良し悪しに関係なく、もちろん相続権が発生します。配偶者を介して付き合っていた義理の兄弟姉妹が、配偶者が亡くなると、兄弟姉妹とあなたとの直接的関係になります。

家族だから許容できていた義理の兄弟姉妹の発言や振る舞いを、直接感じるようになると、寛容な関係でなくなる可能性があります。

付き合いがなかった義理の兄弟姉妹なら、なおさらです。

相続権があるから義理の兄弟姉妹は配偶者の相続の話をしてくるはずですが、パートナーを失って自失の中では余裕がないはずです。

義理の兄弟姉妹を「私たちが築いた財産なのに。お金目当てに近づいてきた嫌な人」と感じてしまうこともあるでしょう。

 

配偶者の親や兄弟姉妹がいないが姪や甥がいる

義理の両親や兄弟姉妹がいない場合、今度は姪や甥に相続権が生じます。この場合、配偶者は3/4、姪や甥は複数人で合計1/4を相続します。

こちらは法律上、保障された遺留分はありません。

徐々に関係性が薄い親族まで相続権が及ぶことになります。一度も顔を合わせたことがない人と相続で初めて関わっていく、という可能性も出てきます。

 

配偶者に離婚歴があり元配偶者との間に子どもがいる

今はDINKSとして結婚生活を送っていても、これまで子どもがいる家庭をつくっていたことがあるかもしれません。

亡くなった配偶者に子どもがいた場合、その子に1/2の相続権があります

子が複数人いても合計で1/2という割合です。法律で保障されている遺留分は離婚しても消えません。但し、元配偶者に相続権はありません。

それでも、元の配偶者が新たな家庭を築いていて、特別養子縁組が成立していれば、親子関係断絶されたということになり、相続権はなくなります。

元配偶者との間の子が相続するということになった場合、連絡を取ることすら難しいかもしれません。

その子が未成年者だった場合には、その代理人の参加も必要になります。相続人が1人でも欠けた状態で行う相続は無効です。

 後々、問題が起こらないように協議の結果は「遺産分割協議書」という書類に残しておきます。相続人全員に連絡ができないと遺産分割協議書を作成することができないため、相続手続きが滞ることもあり得ます。

相続人全員を何としても探し出し、相続のテーブルにつかせなければいけないのです。

 

自身に離婚歴があり元配偶者との間に子どもがいる

最後にDINKSとして過ごしていたあなた自身が、元配偶者との間に子どもを持っていたらどうなるでしょう。

先ほど、新たな家庭で親となる人と特別養子縁組をしていれば親子関係は断たれると伝えました。

しかし、普通養子縁組の場合は、新たな親との親子関係は築かれていても、以前の親子関係も重複して存続している状態となりますので、相続権は保たれます。

自分が亡くなった時、配偶者がこの子どもの存在を不安に思わないように、特別養子縁組をしているかどうか、普通養子縁組の場合であれば、子どもを探すのに困らないように住所、氏名、連絡先くらいは伝えておくといいでしょう。

意識的に子どもを持たない夫婦として暮らしてきたのに、相続となれば元配偶者との子どもと積極的に関わっていかねばならず、子どもとの接触に抵抗のある配偶者の場合は、かなり苦労しなくてはなりません。

 

DINKSの夫婦が相続時に気をつけるべきポイント

夫婦のみというコンパクトな結婚生活を送っているDINKSですが、相続となると想像以上に関係を持たなければいけない家族が増えることがお分かりいただけたでしょうか。

連絡を取り、遺産分割に向けて動いていくことにはかなりの労力がかかります。

最愛の伴侶を亡くしたというのに、これでは悲しみに暮れる暇もありません。

できるだけ穏便に、滞りなく相続を終えるにはどうしたら良いでしょうか。

 

義実家の相続人候補と関係を良好に保つ

「もしも」のことは考えたくありませんが、DINKSの相続が大変だということが分かっていれば、あらかじめ何らかの対策をしておくことも大切でしょう。

例えば、配偶者の両親や兄弟姉妹など、相続人となる人と日頃から交流を持って良好な関係を築いていれば、相続時にも残されたあなたのことを配慮してくれるかもしれません。

また、連絡先も共有できるでしょうから、相続の際の連絡もスムーズにいくはずです。

 

遺言書を用意しておく

DINKSの夫婦は、お互いのために財産分与などを記した遺言書を用意しておくと良いでしょう。

その際には相続に関する法律をよく理解しておくことが大切です。

例えば「配偶者に財産を全額相続させる」と記しておいたとしても、義理の両親や元配偶者の子どもは法律上保障された遺留分を持ちますので、その通りにはなりません。

しかし、義理の兄弟姉妹(姪や甥を含む)には遺留分が認められませんので、遺言書を用意しておくメリットは大きいです

 

不動産の名義に注意

DINKSに限らず、家族が所有する大きな財産の一つがマンションや戸建て住宅などの不動産です。

DINKSがそうした不動産を共有名義で住宅ローンを組んだ場合には、所得税から税額が控除される住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられるメリットがあります。

また、DINKSの夫婦どちらかの単独名義だった場合、どちらかが亡くなり相続になると、その不動産の評価額が課税対象になりますが、共有名義であれば、亡くなった配偶者の持ち分のみが課税対象財産となるため、相続税が節税できます。

しかし、共有名義のデメリットとして、DINKSの夫婦どちらかが亡くなり相続が発生すると、その持ち分のみ相続が始まるので、先で述べたように義理の両親や兄弟姉妹、子どもなどが相続に関わってくることになります。

相続人がたくさんいれば、増改築や売却などが簡単にできなくなります。

また、2人で不動産のローンを返済しているのに名義はどちらか片方だった場合、相続人が名義に着目して不動産全体を相続財産と主張することもあり得ます。

法律上は登記ではなく実態が優先されます。

しかし、裁判で実態を証明できないと、登記された名義で判断されることもあり得ます

記録をしっかり残しておいて、パートナーにつらい思いをさせないようにしましょう。

DINKSの夫婦は共有名義にした時に受けるメリット・デメリットをよく考えておくとよいですね。

 

まとめ

日本の1/3の世帯を占める、夫婦だけの世帯。意識的に子どもを持たないという選択をしたDINKSなのに、いざ相続となると、子どもがいないため複雑になる可能性があります。

残された配偶者が一人きりで頭を抱える前に、二人いる今だからこそ一緒に相続について考えておいたほうが良いかもしれません。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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