2019年1月31日 木曜日
遺産相続のトラブルは起こりがち。トラブルへの解決法と予防策
相続のトラブルなんて、自分には無関係だとお思いではないでしょうか?
しかし、そんなことはありません。
遺産相続のトラブルはお金が絡む問題ということもあり、相続の際に起こりがちな問題です。
実際、それは司法統計からも明らかになっています。
もし遺産相続のトラブルが起こってしまったら、適切な解決法を取る必要があります。
そして、できれば、予防策を講じ、未然に遺産相続のトラブルを防ぐことが望ましいと言えるでしょう。
それでは、遺産相続のトラブルの解決法と予防策について、ご紹介いたします。
目次
最近では遺産相続トラブルが起こりがち?
遺産相続のトラブルの増加は、「遺産分割事件数 終局区分別 家庭裁判所別」からも明らかです。
平成12年では8,889件だった遺産相続のトラブルは、平成29年には12,166件に増加しており、17年の間に約1.4倍になっています。
また、下記のグラフと表からもここ10年間の推移から遺産相続のトラブルが増加していることを知ることができます。
|
平成20年度 |
平成21年度 |
平成22年度 |
平成23年度 |
平成24年度 |
平成25年度 |
平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
平成29年度 |
全国総数 |
10,202 |
10,741 |
10,849 |
10,793 |
11,737 |
12,263 |
12,577 |
12,617 |
12,179 |
12,166 |
調停成立 |
6,485 |
6,769 |
6,879 |
6,732 |
7,397 |
7,595 |
7,515 |
7,153 |
6,641 |
6,736 |
調停に代わる審判 |
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200 |
838 |
1,434 |
1,883 |
1,993 |
※裁判所ホームページ 司法統計 各年度の「遺産分割事件数 終局区分別 家庭裁判所別 」の数値を引用し、平成20~29年度分のデータを元にグラフと表を作成しています。
※「調停に代わる審判」においては、平成25年度からのデータしかないため、5年分のデータのみとなります。
平成23年度や平成29年度には全国総数が若干減少していますが、全体的にゆるやかな増加傾向にあります。
また、平成25年度には200件しかなかった調停に代わる審判が平成29年度には、1,993件にもなっています。
調停では解決できずに審判まで進んでしまうほど、遺産相続のトラブルは深刻さを増していると言えるでしょう。
どんな時にトラブルが起こる?
遺産相続のトラブルが起こりやすいのは、大きく分けると4つの場合に分けられます。
まず、1つ目は「元々、家族の仲が悪い場合」です。遺産相続をする際、遺言書の内容が優先されますが、すべての法定相続人がその遺言書の内容に同意する必要があります。
もし、遺言書の内容に納得がいかなければ、本来受け取れる遺産について遺産分割協議をすることになります。
このとき、家族の仲が悪いと、遺産分割協議の話し合いではおさまらず、遺産分割調停手続の申し立てを行う可能性が高くなると考えられます。
調停でも結論が出ない場合は、審判に進んでしまうので、相続トラブルが長期化してしまうことになります。
長期化した場合、費用の負担はもちろんのこと、時間的にも精神的にも負担を強いられることになってしまいます。
2つ目は「共同相続人がいるにも関わらず、遺産のほとんどが不動産である場合」です。
不動産の場合は、分割することが難しいといった問題点があります。
すでに遺産の不動産に住んでいる法定相続人がいる場合、その人を追い出してしまうとその人の住むところがなくなってしまいます。
そのため、遺産である不動産を売り、現金に換えて分割して相続するということができないことがあります。
そうしたときに、不動産を1人の法定相続人が相続し、本来ほかの法定相続人が相続する予定だった遺産分を、不動産を相続した法定相続人から現金で受け取るという方法があります。
しかし、金銭的な問題で遺産分のお金をねん出することが難しいケースがあります。
その結果、本来受け取るはずだった遺産を不動産に住んでいないほかの法定相続人が相続できないことで相続のトラブルに発展することがあります。
3つ目は「明確な遺産がわからない場合」です。
法定相続人がそれぞれ遺産の内容に異なった認識を持っていると、トラブルの原因となることがあります。
共同相続人のうち、1人は遺産が1,000万円あると言い、もう1人は遺産が3,000万円あるはずだと主張すれば、分割された遺産が異なるだけでなく、手元に入る遺産の試算金額が自ずと異なるため、相続のトラブルに発展してしまうことがあります。
遺産の把握は遺言書があれば、簡単に把握することができますが、遺言書がない場合、法定相続人が自ら確認するか、専門家に調査を依頼するしかありません。
自力で遺産を調査するのには限界がありますし、調査を依頼すると費用も時間もかかるので解決には近づくものの、一時的に事態が悪化する可能性があります。
4つ目は「遺言書の中の相続人に法定相続人以外の人がいる場合」です。
たとえば、隠し子(非嫡出子)がいるなど、家族が知らない人が相続人として現れたときに、遺産相続のトラブルになることがあります。
非嫡出子は認知されていれば、法定相続人となりますが、認知されていなければ、相続権を持たないのでトラブルになりやすいと言えます。
また、認知されている場合でも、法定相続人である子どもが本来相続できると思っていた遺産が減ってしまうので(遺産は配偶者が2分の1、子どもが2分の1を受け取れますが、子どもは2分の1の遺産を子どもの人数でさらに割って相続します)、取り分が減ることで相続トラブルにつながることもあります。
よくあるトラブル事例集
よくあるトラブルとして挙げられる事例は「遺言書に書かれている内容では法定相続人が遺産をもらえない場合」と「法定相続人のうちの1人が寄与分を主張、または独り占めしてしまう場合」の2つです。
「遺言書に書かれている内容では法定相続人が遺産をもらえない場合」は、遺留分のある法定相続人がいるにも関わらず、それを無視して、遺産を第三者や特定の法定相続人に相続させるという内容で遺言書が作成されてしまっているので、遺産相続のトラブルに発展してしまいます。
遺言書の内容まで、法定相続人が把握することは難しいので、このような相続トラブルが発生してしまうことがありえるのです。
このような場合、法定相続人は遺産分割調停手続きや遺留分減殺請求などを行い、遺留分の相続ができるような手続きをしなければなりません。
また、「法定相続人のうちの1人が寄与分を主張、または独り占めしてしまう場合」は、なぜ寄与分を主張しているかを確認する必要があります。
介護をしていたり、被相続人の事業に金銭的な援助をしていたりしたため、お金も時間も労力も使ったことが理由ならば、寄与分は認められる傾向にあります。
しかし、それでも、ほかの法定相続人が納得いかない場合は、遺産分割協議を行うことになります。
それでも、話し合いが上手くいかなれば、遺産分割調停手続きへと移り、調停も成立しなければ審判へと移行します。
また、独り占めしてしまう場合は、理由のいかんに関わらず、遺産分割協議を行うことになるでしょう。
これは法定相続人には、遺留分が認められているからです。
ただし、被相続人の兄弟姉妹は該当しないため、遺留分を主張することはできません。
しかし、この場合の遺産相続のトラブルは生前に被相続人が法的な効力のある遺言書を作成しておくことで、未然に防げるトラブルの1つでもあります。
たとえば、自分が介護をされていたり、事業に金銭的な援助をしてもらっていたりした場合は、それらをしてくれた法定相続人に寄与分を認める趣旨の遺言書を作成すればよいのです。
また、独り占めも遺言書があれば、遺言書の通りに遺産相続が実行されるので未然に防ぐことができると言えます。
この2つの事例からもわかるように、遺言書は正しく作成することでしか、その意味を持ちません。
遺言書があるから、遺産相続のトラブルには発展しないというわけではない、ということをしっかり認識しておかなければなりません。
解決法と予防策はあるか?
遺産相続のトラブルが起こってしまった場合には、「遺産分割調停手続」を行えば解決しやすくなります。
しかし、遺産分割調停手続をせずにすませられれば、それに越したことはありません。
遺産分割調停手続には、弁護士費用などのお金がかかり、調停や必要提出書類の準備などで時間を取られてしまいます。
そのため、遺産相続のトラブルを予防することは重要です。
遺産相続のトラブルの予防策としては、主に「遺言書の作成をすること」や「法定相続人を予め把握しておくこと」、「すべての遺産内容を把握しておくこと」の3つが挙げられます。
被相続人が生前に法的に効力のある遺言書を作成しておけば、相続の段階になって、分割で問題になる可能性を減らせます。
また、法定相続人を予め把握しておくことは、遺産分割の際にどのような分割がなされるかを知っておくことにつながります。
そして、すべての遺産内容を把握しておくことは、申告漏れなどの問題を未然に防ぐために必要なことです。
このように、相続トラブルが起きる前に取れる予防策というのは、それぞれの問題に合わせて異なりますが、きちんと存在しています。
トラブルが起きてしまった場合
遺産相続のトラブルが起きてしまった場合は、速やかに解決することが重要です。
トラブルが長引けば、時間を多く取られてしまうだけでなく、精神的にも体力的にも疲れてしまいます。
また、遺産相続のトラブルは費用もかかるため、トラブルを避けることができるのであれば、できる限り避けるようにしましょう。
ですが、相続に関する準備やトラブルの予防策を立てていても相続トラブルが起きてしまうことがあります。
そのような場合は、ひとりで悩むのではなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。
相続に詳しい専門家はノウハウをしっかり持っているので、解決に導いてくれるはずです。
事前に予防策を打っておく
遺産相続のトラブルが起きないように事前に予防策を打っておくことは、さまざまなデメリットを防ぐ意味でも大切です。
たとえば、「元々、家族の仲が悪い場合」は、できる限り、コミュニケーションを取る努力をする必要があります。
仲良くするのは難しいかもしれませんが、ある程度、コミュニケーションを取っておくことで、遺産の相続が発生したときに話し合いの場を持ちやすくなるでしょう。
また、「共同相続人がいるにも関わらず、遺産のほとんどが不動産である場合」は、複数の法定相続人と被相続人が生前にしっかり話し合っておくことと、「被相続人が法的効力のある遺言書にすでに住んでいる法定相続人に不動産を残す」ということを書いておくことで遺産相続のトラブルを回避することができます。
もちろん、被相続人の配偶者、子ども、両親には遺留分といって、相続できる遺産が配分される保障があります。
いくら被相続人が、すでに住んでいる法定相続人に不動産を残すと遺言書に書いていたとしても、ほかの法定相続人が遺言書の内容に不服であると遺産分割調停手続の申し立てを行い、遺産相続のトラブルと発展してしまうこともあります。
そして、「明確な遺産がわからない場合」は、被相続人が生きている間に財産(借金を含む)を明確にしておくことが予防策になります。
また、被相続人が遺言書を作成してくれなかったり、明確な財産について教えてくれなかったりした場合は、相続する段階になって調査をしなければなりません。
調査は具体的にどうすれば良いのかを事前に調べておくことで多少の予防策になります。
「遺言書の中の相続人に法定相続人以外の人がいる場合」は、残念ながら予防策を立てるのは難しいと言えるでしょう。
事前に法定相続人以外に相続人がいることを被相続人が伝えていない限り、法定相続人は知ることができません。
予防策を取ることが難しいので、相続のトラブルに発展した場合は、できるだけ迅速に対処をするようにしましょう。
トラブルが起きたらすぐに相談!
トラブルが起きたら、自分でどうにかしようとするのではなく、すぐに遺産相続に詳しい専門家に相談することがトラブルを悪化させないためには有効です。
遺産相続に詳しい専門家とは、税理士、弁護士、司法書士で、その中でも各専門家によって得意とする分野は異なります。
遺産相続の相続税については税理士に、遺産分割調停手続などを行うときは弁護士に、不動産の名義変更(相続登記)をするときには司法書士に相談すると、トラブルを解決しやすくなるはずです。
不安に思うことがあれば、ぜひ相談に行きましょう。