2019年1月31日 木曜日
相続のよくあるトラブル事例と覚えておきたい対処法
人生において、相続する機会は何度も訪れるものではありません。
だからこそ、相続するために必要なものや方法を知らない人が多く、実際に相続するときになって、さまざまなトラブルに巻き込まれて困ってしまうのです。
そんなことにならないためにも、相続のよくあるトラブル事例とその対処法についてご紹介いたします。
目次
相続のトラブルはすごく多い
有名人の相続トラブルは、ワイドショーなどで見聞きしたことがある方も多いことでしょう。
しかし、相続のトラブルはなにも有名人に限った話ではありません。
平成29年度の「遺産分割事件数―終局区分別―家庭裁判所別」によると、遺産分割事件数(相続のトラブル)の全国総数は12,166件もあります。
これだけ多くの相続トラブルが存在しているのです。
その中でも、調停まで進んだものと調停に代わる審判の合計数は8,729件あり、多くの時間とお金が費やされているといった現状があります。
また、中には最高裁まで争った遺産分割事件もあり、穏やかではありません。
事件化させないためにも相続でよくあるトラブルのパターンとその対処法を知っておくことは重要だといえるでしょう。
相続でよくあるトラブルパターンと対処法
相続でよくあるトラブルは、「複数の共同相続人がおり、遺産の分割で話がつかない場合」です。
このような場合は、2つの対処法があります。
まず、1つ目は「徹底的に話し合う方法」です。
すでに遺産の分割で話がついていないため、共同相続人だけ話し合うことは避け、税理士や弁護士など相続に詳しいプロの手を借りて、遺産の分割をどのようにすべきかのアドバイスを仰ぐと良いでしょう。
プロに相談するのはお金もかかるし、不安だという方は、無料相談を実施している税理士事務所で無料相談を利用してみてから決めるということもできます。
2つ目は「家庭裁判所に遺産分割調停手続をする方法」です。
この方法は相続のトラブルがどうしても解決できないときの最終手段です。時間もお金もかかるため、デメリットもある方法であるといえます。
遺産分割調停手続では、家庭裁判所が相続人(遺産分割の内容に納得しておらず、遺産分割調停手続きを申し立てた人)や相手方(共同相続人で遺産分割調停手続きを申し立てられた人)の希望している分割方法の聞き取りをしたり、遺産の分割に関する解決案の提示や解決するための助言をしたりします。
また、遺産分割調停手続には、用意しなければならないものが7点あります。
≪遺産分割調停手続をする際に用意しなければならないもの≫
- 被相続人1人につき収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便切手
- 申立書1通とその写しを相手方の人数分
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本、 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証
これらをすべて用意し、遺産分割調停手続に臨みます。
もちろん、これ以外にも調停をとり行うため、弁護士費用も必要になります。
また、このほかにも調停で必要とされる資料は随時提出しなければなりません。
ちなみに、平成29年度の遺産分割事件数の全国総数12,166件のうち、調停成立した事件数は6,736件、調停に代わる審判数は1,993件です。
このように、半数以上が和解せずに最終手段である調停やそれに代わる審判を対処法として選択しています。
家族・兄弟間での割合問題
遺産を相続する場合、立場によってその割合は異なります。
遺産を相続できる人のことを法廷相続人と呼び、妻または夫、子ども、両親、兄弟がこれに当たります。
たとえば、自分が子どもの立場で両親のどちらかが亡くなった場合、両親のどちらかが顕在で一人っ子であれば、遺産の半分を手にすることができます。
このときの内訳は、父または母が遺産の2分の1、子どもが2分の1となります。
しかし、兄弟がいる場合は子どもが相続する2分の1の遺産をさらに兄弟の人数で分割することになり、両親ともに亡くなった場合は子どもだけで遺産を分割して相続します。
また、子どもがいない夫婦の場合は夫または妻が3分の2、両親が3分の1を相続することになります。
そして、子どもがいない夫婦でなおかつ両親もすでにいない場合は、夫または妻が4分の3、兄弟が4分の1を相続することになります。
そのほか、夫または妻しかいない場合、親しかいない場合、兄弟しかいない場合は、それぞれがすべての遺産を相続することになります。
内縁関係の場合では、遺産相続が認められないことがありますが、相続人が誰もいない場合は、特別縁故者として遺産相続ができることもあります。
分割の割合は民法で定められているので、家族や兄弟間で遺産の分割の割合問題が浮上した場合、まずは民法に則り、遺産相続の分割を考える必要があります。
遺言書に遺産の分割内容が記載されている場合は、すべての相続人の承認を得ることができれば、遺言書に記載されている分割内容で相続することができます。
しかし、異議を唱える相続人がいる場合は、相続順位によって相続の権利を主張することができます。
不動産に関する問題
不動産を複数の相続人が相続する場合、問題となるのが「不動産自体を綺麗に等分することはできない」という点です。
不動産をどうしても分割相続したい場合は、売却して現金にしてから、複数の相続人で分割するという方法を取らざるを得ません。
これを「換価分割」と言います。
しかしながら、それ以外にも不動産を分割する方法がないわけではありません。
不動産のある土地を2つに分割し、相続する「分筆」という方法もあります。
また、複数の相続人が共有の名義に名義変更をして相続する「共有分割」という方法や不動産を一人だけが相続し、不動産を相続していないほかの相続人に不動産を相続した人が現金を受け渡す「代償分割」という方法もあります。
遺産のほとんどが不動産である場合は、どのような相続方法を選択するかという問題が起こることがあります。
遺産を独り占めしようとしている場合
複数の共同相続人がいる中で、遺産を独り占めしようとしている人がいる場合もトラブルが起きやすくなります。
例えば、
法定相続人として遺産を相続する権利があるにも関わらず、遺産の相続権を破棄(相続の放棄の申述)するように求めてきたり、遺産の存在を隠したりすることがこれに当たります。
遺産をすべて把握するためには、調査をする必要があります。
相続人自ら調べる方法もありますが、遺産の調査を依頼できる企業もあるので、遺産をすべて把握しきれない場合などに活用すると良いでしょう。
実際にあったトラブル事例
実際にあったトラブル事例をご紹介いたします。
産経新聞2016年12月19日(引用:https://www.sankei.com/affairs/news/161219/afr1612190019-n1.html)によると、最高裁で審議が翻った判例があります。
判事事項は事件番号平成27(許)11であり、「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか(引用:裁判所ホームページの裁判例情報)」です。
この裁判では、相続人側(遺産分割を求めていた側)は「相手方が生前贈与として、約5,500万円を受けており、特別受益(生前に遺産の贈与や遺贈された財産のこと)にあたるとしていました。
相続人側が遺産分割するのは不公平に値すると申し立てたのに対し、相手方は「現在の法律で解釈をすれば、預貯金は遺産分割の対象外である」との主張をしました。
遺産の多くは、預貯金であり、大阪家裁と大阪高裁では、遺産分割の対象外だと判断されました。
そのため、最高裁まで争われることとなり、共同相続された普通預金債権と通常貯金債権や定期貯金債権は、相続開始された際、預貯金は現金と同じように遺産分割の対象となるといった判決を出しました。
このようになかなか解決しないトラブルでは、家裁や高裁では終わらず、最高裁まで争いが続くこともあります。
事前にトラブル回避方法を知っておく
相続に関するトラブルは事前に回避することが最も重要です。
相続のトラブルが起きてしまうと、話し合いで解決することは難しいことが多く、調停や審判にまで発展することがあります。
調停や審判をするときは、遺産分割調停手続のために家庭裁判所に申立書の提出をすることになります。
調停や審判をするということは、弁護士に依頼しなければならないということです。
裁判をすれば、本来かける必要のなかった時間やお金をかけることになってしまいます。
相続に関するトラブルの回避方法を覚えておくことは人生における時間やお金の浪費を抑えることに繋がります。
生前からコミュニケーションを取る
相続のトラブルを回避するためには、生前から両親をはじめ、兄弟と密にコミュニケーションを取ることが重要です。
遺産や相続について、生前から話すなんて死ぬのを待っているみたいで嫌だと感じる方もいらっしゃることでしょう。
しかし、生前からそのような話題について話すことはトラブルを回避するためには必要なので、折を見てしっかりと話し合う時間を持つべきだといえます。
遺産がある場合、できることならば、相続のトラブルが起きないように、相続人の立場であれば遺言書を作成してもらえるようにお願いしましょう。
また、自分が財産を残す立場であれば進んで遺言書を作成しておくようにしましょう。
遺言書はきちんと弁護士に「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」として作成してもらう方法と、自分で書く「自筆証書遺言」という方法があります。
「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」は作成に費用がかかりますが、「自筆証書遺言」は費用がかかりません。
しかしながら、「自筆証書遺言」の場合は自筆で書くため、必ずしも正しく書くことができるとは限りません。
正しく書いていないと遺言書が法的に有効とはならないため、正しい方法に則って、遺言書を作成することが大切です。
万が一相続のトラブルが起きたとしても、遺言書の内容が優先される(ただし、法定相続人は主張できる権利があるため、遺言書の内容に相続人全員が同意する必要があります)ので、不要なトラブルを回避することにつながります。
また、遺言書のほかにも遺産分割協議書というものがあります。
遺産分割で相続するそれぞれの内容を明確に決めるものであり、共同相続人全員が参加した上で協議を行い、書類に結果を記録として残さなければなりません。
相続の内容を明らかにする
生前から財産がどのくらいあるのか、どのような形態(土地や現金など)のものがあるのか、相続の内容を明らかにしておきましょう。
財産を残す場合は遺言書を書くことで明確化することが可能です。
また、遺産を受け取る場合は生前から財産を残す人に内容を聞いておくか、遺言書を作成してもらうことで相続の内容を明らかにすることができます。
相続の内容を事前に知っておくことで、どのように遺産を分けるべきかを考えておくことができるため、急なに相続になった場合、トラブルに発展する可能性が低くなります。
また、相続のトラブルが起こってしまい遺産分割調停手続をする場合にも正しい遺産を把握する必要があるため、相続の内容はできる限り早い段階で明らかにすることが大切です。
生前から財産について把握できない場合は、相続する段階になってから遺産のすべてを把握するために調査をする必要があります。
相続人の数を把握しておく
相続のトラブルを回避するために忘れられがちなのが、相続人の人数の把握です。
遺産を相続するためには、相続の人数の把握が必須になります。
例えば、父親が亡くなった場合、妻である母親と子どもである自分とその兄弟だけが遺産の相続人だと思っていたのに、実は隠し子(非嫡出子)がおり、遺産の分割内容が変わってしまうなんてこともありえます。
ただし、非嫡出子の場合は認知していることが前提となり、相続人の数の把握も相続の内容と同様に遺産分割調停手続をする際に必要です。
トラブルに巻き込まれたら相談!
このように、いつ相続に関するトラブルに巻き込まれるかはわかりません。
相続トラブルに巻き込まれないようにするためには、家族と常に円滑なコミュニケーションを取るように心がけることも重要です。
しかし、万が一相続のトラブルに巻き込まれたら、自分一人で抱え込むのではなく、相談するようにしましょう。
専門的な知識を持っている弁護士をはじめ、司法書士や行政書士に相談することで、知らなかった法律のことを知れたり、的確なアドバイスをもらったりすることができます。