相続財産の中で損害保険契約が占めるウェイトは、小さいほうかもしれません。
しかし損害保険は被相続人(亡くなった人)の契約内容次第では巨額の保険金の受け取りが発生する場合があります。
また、被相続人が自宅不動産や事業用資産を保険の目的物としていた損害保険契約は、相続発生を機に解約して新たな保険契約を締結するよりも、既存の契約を継続しておいたほうが相続手続き上、スムーズにいくことも多いのです。
本記事は相続財産に損害保険契約があった人向けに、損害保険契約のアウトラインから相続に関する留意事項、相続税など各種税金の取り扱いなどについて基本的なことをご紹介します。
相続税の基本知識
平成30年7月に相続法が改正され、今まで相続について考えたことがなかった方も考える機会が増えたのではないでしょうか。
自分が亡くなったときに、残された大切な家族に少しでも多く財産を残したい、家族には迷惑をかけたくないと思う方も多いでしょう。
自分の家族の場合は相続税はかからないだろうと思って何も準備していなかったが、いざ身内が亡くなって初めて相続税がかかることを知り、多額の税金を支払うはめになったというケースも少なくありません。
今回ご紹介するのは今から知っておきたい相続税に関する基本知識と損害保険金についてです。
損害保険金というとあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、一般的に知られているものですと火災保険や自動車保険などが挙げられます。
損害保険は偶然生じた損害をカバーするための保険で、損害保険金の給付対象は自然災害や盗難、怪我なども含まれます。
被相続人に予期せぬ損害が発生し、損害保険金が給付された場合に税金が発生するケースもあります。
突然のことで損害保険金に相続が関係することを見落としていた、知らなかったということがないように、この記事を読んで一度契約内容を見直してみましょう。
相続税とは?
被相続人が亡くなり遺産を相続した際に課税される税金が相続税です。
相続が発生した場合、全ての方が相続税を支払うと思いがちですがそうではありません。
国税庁によると平成29年に相続税の申告をした方の割合は8.3%と多くはありません。
相続税は遺産を相続した人に課税され、配偶者でなくても相続税がかかるケースもあります。
相続税は遺産の取得割合によって異なります。また、遺産額から予め差し引くことのできる基礎控除という非課税枠が存在します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人は被相続人の配偶者と血族に限定されており、遺産を放棄した人も法定相続人に加算されます。1人であれば相続税の基礎控除額は3,600万円、2人の場合は4,200万円となり基礎控除額以内であれば相続税は課税されません。
相続税を支払う必要がある場合は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に、財産を取得した人の住所地ではなく被相続人の住所地を所轄する税務署に納税します。
みなし相続財産とは?
相続財産には預貯金や土地などの不動産だけではなく、生命保険金や死亡退職金などみなし相続財産と呼ばれものも含まれます。
みなし相続財産とは民法では相続財産にあたらないものの相続税法では相続財産となるものを指します。
生命保険金や死亡退職金は被相続人の固有の財産でありませんが、被相続人が亡くなり相続や遺贈によって取得するものであるため相続税の課税対象となります。
生前は所有していなかった財産であっても、被相続人の死亡が原因で財産を受け取ったとみなされるわけです。
ただし、生命保険金、死亡退職金それぞれに非課税枠があるので一定額までは相続税は課税されません。
生命保険金の相続税非課税限度額=500万円×法定相続人の数
死亡退職金の相続税非課税限度額=500万円×法定相続人の数
その他みなし相続財産には、相続開始前3年以内に贈与された相続財産や定期金に関する権利、生命保険契約に関する権利など様々なものがあります。
相続財産にならないと思っていたものが、実はみなし財産に該当し相続税がかかってしまったという事態にならないよう事前に把握しておきましょう。
損害保険の手続き
まず、損害保険の関係者に関する用語の定義を確認しておきましょう。
損害保険の契約当事者の関係は、預貯金や投資信託などと比べ複雑です。…