「公正証書遺言」という遺言書をご存じですか?
公正証書とは、公証人が作成した公の証書という意味です。
公証人とは、元裁判官や元検事等の経験を積んだ人であり、法律事務の専門家です。
公正証書遺言は、その公証人が十分に吟味して作成した公的な文書ですから、偽造や偽証、錯誤、詐欺といった後々のトラブルの原因となる要素が無いと考えられています。
そのため、よほどのことがない限り、公正証書遺言に書かれている内容は、トラブルを招く要因が一切無いものとして、最高裁判所の判決と同等の効力があるといっても過言ではありません。
遺言書を公正証書にしたものが、公正証書遺言です。
法的に有効な遺言書の場合、遺留分を侵害しない限り、遺言内容が民法で定められた法定相続人やその相続分よりも優先するものです。
公正証書になった時点で、その遺言書は既に法的に不備のない、文句のつけようのない(最高裁判決の効力)遺言書なのですから、家庭裁判所の検認さえも必要ないのです。
つまり、遺産相続のトラブルの最も少ない遺言書というわけです。
そこで、この記事では、他の遺言書とどう異なるのかをわかって頂くために、他の遺言書も併せて解説しつつ、公正証書遺言について詳しく解説していきます。
相続でよく耳にする遺言とは
「遺言」の意味と法的効力
「遺言」という意味は、言葉を遺すというという文字通り、日常用語としては「ゆいごん」と読み、「死ぬ前に死後のために言い残すこと」というものです。
日常用語としての遺言(ゆいごん)は、自分の死んだあとも覚えておいてもらいたいこと、守って欲しい約束やお願いです。
一般的に気持ちや願い、心配ごと、お願い事等のさまざまな想いだけでなく、死後の財産の分け方に至るまで、ありとあらゆる内容を含みます。
しかし、相続に関する場合に使われる「遺言(民法960条:いごん)」は、自分が一生築いた財産の分配・身分について、自分の死後にも自分の最終意思に法的効力を及ぼすために、民法に定めた方式に則って遺された「遺言(いごん)」のことを意味します。
遺言(いごん)が法的効力を発する内容は、一般的に財産相続分与等について、死後認知・遺言執行人・未成年・成年後見人等の身分について、自分の死後どうするかという遺言者の最終意思についてです。
死後のことだとしても、信頼関係の絆の強い仲の良い家族・親族の場合は、日常用語としての「遺言(ゆいごん)」として言い残すだけで良いかもしれません。
ただ、家族・親族の法定相続人と考えられる人たちに反対されるであろう内容が含まれている場合に、法的に有効な(民法に定められた形式に則った)「遺言(いごん)」に記すことで、法的な遺言書効力に頼り、自分の思い通りに相続を実行させる役割を果たすことができるのが遺言(いごん)なのです。
遺言書が活躍する場面
子供のない夫婦は、遺された配偶者の事を心配して、「配偶者に財産を残したい」という思いから遺言書を作成します。
妻に知らせていない認知したい子供がいたり、妻以外に愛する女性がいたり、お世話になった人の財産を譲りたい等、相続トラブルの種になるような内容の場合もあります。
相続を確実に実行するために、遺言執行人を指名したり、両親のいない孫に財産を残すために、自分が信頼する人を孫の後見人に指名することも可能です。
遺言の種類
遺言書には4種類ありますので、順番に紹介していきます。
公正証書遺言
最も法的効力の強い遺言書です。
公証役場で、公証人が遺言者と対面で話し、遺言者の意思にそった遺言書を遺言者の代わりに作成した遺言書です。
公証人は、元裁判官・元弁護士といった経歴を持つ、法的文書作成に慣れた法律の専門家です。
他の遺言書の場合は、家庭裁判所の検認が無ければその遺言書は無効となります。
しかし、公正証書遺言は、法律の専門家が作成した遺言書ですから、法的に無効な遺言書を作るはずがないという信頼が強く、裁判所の検認をしなくても「法的に有効な遺言書」とみなされます。
公正証書は、公証人が徹底して、本人の錯誤や偽造を排除するために対面で遺言者の相続に関する意思を確認します。
このように、公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思、相続内容を徹底的に吟味・調査したものですから、法的な不備が一切ない「法的効力のある遺言書」といえます。
しかも、その公正証書遺言が遺言者の意思にそった遺言者本人の遺言書であるということを証明する証人が2人もいる上に、その原本が公証役場に保存されているので、もはや遺言書の存在を否定したり隠したりする事もできません。
ただし、法的効力最大の遺言書でも、…