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【贈与税 】
贈与税について説明しています。相続税対策として生前贈与を行う方が増えていますが、贈与には贈与税が発生します。贈与税についての計算方法、贈与税の注意点などについてまとめています。

2019年7月20日 土曜日

「不動産」と「現金」、贈与税を抑えられるのはどっち?

皆さんは贈与税について考えたことはありますか?

贈与税とは、個人から不動産や現金などの経済的な価値のあるものを無償でもらった場合、もらった側にかかる税金のことです。(もらう人の譲り受けることに対する了承がないと贈与とはみなされません。)

もらった不動産や現金などが年間110万円以内だったり、生活費として現金を授受したりした場合、贈与税はかかりません

特例を使えば、贈与税を非課税にできるケースもあります。

しかし、両親や祖父母から現金をもらい、使わずに貯金した場合、バレないから大丈夫と思っている方は気を付けてくださいね。

税務署はしっかり現金をもらったタイミングを遡ってチェックします。

さて、不動産や現金の贈与は、贈与税の税率が高いから生きているうちは考えなくても良いのでは、と考える方もいますよね。

しかし、贈与税の仕組みや制度をうまく活用することが出来れば不動産や現金の資産を有効に引き継ぐことができます。

不動産と現金どちらがより贈与税がお得なのか、知識も合わせてご紹介していきます。

 

不動産と現金、どちらが贈与税がお得?

不動産や現金を贈与されればされるほど、贈与税として支払わなければならない金額が増えます。

贈与税として支払う金額を少なくするには、贈与される金額を出来るだけ抑えることが必要となります。

不動産も現金も価値は同じなので、贈与税は変わらないのでは?と思いますよね。

実は不動産と現金では支払う贈与税が違うんです。

贈与税の計算の仕組みも合わせて、不動産と現金で贈与税がお得なのはどちらか、比較してみましょう。

 

そもそも贈与税の計算の仕組みとは?

まず1月1日から12月31日までの1年間で、贈与により譲り受けた不動産や現金などの財産の価格を計算します。

複数の人からの不動産や現金の贈与があれば、それも計算に含めます。

その合計金額から基礎控除額110万円を差し引き、残りの金額に税率を乗じて税金を計算します。

一般贈与財産の場合と特別贈与財産の場合では税率が違うので気をつけましょう。

特別贈与財産は、直系尊属(父母や祖父母など)から、その年の1月1日時点で20歳以上の子や孫に贈与する財産を指し、300万円を超えると一般贈与より税率が低くなります。

 

贈与を受けた合計金額-基礎控除額110万円=課税価格(1,000円未満は切り捨て)

課税価格×税率=贈与税額(100円単位)

 

「一般贈与財産の場合の税率」

200万円以下 10% 控除額なし

300万円以下 15% 控除額10万円

400万円以下 20% 控除額25万円

600万円以下  30% 控除額65万円

1,000万円以下 40% 控除額125万円

1,500万円以下 45% 控除額175万円

3,000万円以下 50% 控除額250万円

3,000万円超 55% 控除額400万円

 

「特別贈与財産の場合の税率」

200万円以下 10% 控除額なし

400万円以下 15% 控除額10万円

600万円以下 20% 控除額30万円

1,000万円以下 30% 控除額90万円

1,500万円以下 40% 控除額190万円

3,000万円以下 45% 控除額415万円

4,500万円以下 50% 控除額415万円

4,500万円超 55% 控除額640万円

 

重要なのは不動産の『評価額』

不動産を贈与する場合は、土地や家屋がどのくらいの価値の財産なのか評価をしなければなりません。

まず母屋の評価額についてですが、自宅や空き家の場合、固定資産税の納税通知表に書かれている金額が相続税等評価額となります。

マンションの場合にも納税通知表に書かれている評価額は、自分の所有する面積のものなので、そのまま相続税等評価額として使うことができます。

貸付用の母屋の場合、借家権という借り手の権利があるので評価額は下がります。

計算方法は固定資産税評価額×(1-借家権の割合)で評価額を出すことができます。

国税庁のホームページに都道府県ごとの借家割合が載っているので、贈与した年分を確認しておくと良いでしょう。

 

不動産の贈与のほうが、贈与税はお得

贈与される金額を可能な限り抑えることができれば、贈与税の額も少なくてすみます。

現金や預貯金などは贈与された金額そのものが贈与額となりますが、不動産の場合は取引価格よりも低くなります。

個々のケースで評価額は変わってきますが、土地は路線価または倍率方式を元に算出し、時価の70%~80%、建物は60%程度に収まるようにされています。

つまり、不動産を贈与したほうが現金よりも贈与税の額を節税することができます。

 

不動産と現金の贈与税額比較

不動産の贈与のほうが現金より贈与税がお得ということがわかったと思いますが、現金を不動産化することで節税につながります。

 

現金を不動産化して節税

前述の通り、不動産の評価額は取引価格よりも低くなります。

現金をそのまま贈与すると税金がかかってしまうので、現金をアパートやマンションなどの不動産にかえる方もいるでしょう。

この方法で贈与税の税金対策をされる方もいますが、現金の不動産化には気を付けなければいけないポイントがあります。

アパートやマンションを建てるとローンが発生します。

満室になることを前提としてローンの返済計画をしていると、利息の支払いに困る場合もあります。

またリフォームなどの維持費がかかるので将来設計をよく考え、不動産を購入せねばなりません。

 

不動産贈与における注意点

贈与する人が生きているうちに不動産を贈与すると、確実に渡したい相手に贈与することができます。

ですが生前贈与について詳しく理解していないと、かえって費用がかさむ場合があるので気を付けなければなりません。

不動産を生前贈与する場合の流れは、

・贈与契約書の作成
・登記申請
・必要書類を集める
・贈与税の申告

となります。

注意点としては、

・口約束だけでの贈与はトラブルが発生しやすいので、かならず贈与契約書を作成する。
・暦年贈与と相続時精算課税制度どちらを利用するか見極める。
・申告期限が贈与税の場合は2月1日~3月15日まで(納付期限3月15日)と決まっていて、期限を過ぎると加算税や滞納税がかかるので気を付ける。
・小規模宅地等の特例が適用されなくなる場合がある。

が挙げられます。

もう少し詳しくみていきましょう。

 

贈与税の支払いが可能か

現金の贈与より不動産の贈与のほうがお得ということはわかったと思いますが、不動産贈与の場合、贈与税額がかなり大きくなってしまう為注意が必要です。

不動産の名義変更では、登録免許税(固定資産税評価額×2%)、不動産取得税(固定資産税評価額×3%)、贈与税がかかります。

では不動産を分割して110万円以下になるよう、毎年贈与していけばいいのでは?と思う方もいますよね。

この方法だと毎年名義変更する必要があるのでとても大変ですし、かなり長い年月がかかるのでおすすめできません。

 

手続きの手間や手数料がかかる

不動産を生前贈与する場合には、多くの必要書類があります。

・対象不動産の登記識別情報通知
・贈与をする人の3ヶ月以内の印鑑証明書
・贈与を受ける人の住民票
・固定資産評価証明者
・不動産贈与契約書
・登記申請書

これ以外にも書類が必要となる場合があり、自力で集めようとすると労力が必要です。

司法書士などの専門家にお願いすると楽にはなりますが、仲介料がかかります。

 

贈与税に関するその他の知識

贈与税についての知識を事前に知っていると、いざ不動産や現金を贈与されたときに慌てることがありません。

亡くなった後に財産を譲るよりも、生きている間に財産を譲るほうが税金を抑えられるケースが増えています。

親子だけでなく、祖父母から孫への不動産や現金の贈与も認められるようになりました。

相続時の課税制度には暦年課税と相続時精算課税制度の二通りがあります。

また生前贈与には配偶者控除もあります。

それぞれのメリット、デメリットをみていきましょう。

 

暦年課税

生前贈与の基礎であり、1月~12月までの1年間に受けた不動産や現金の贈与に対して課税する制度です。

暦年課税のメリットは3つあります。

・贈与する人も贈与を受けた人も制限なく利用できる。
・贈与した人ごとに、年間110万円が非課税になる。
・年間110万円と少ないが確実に相続財産が減る。

暦年課税のデメリットは2つあります。

・現金も不動産も対象となりますが、法人からの贈与の財産などは対象にならない。
・1年間に110万円のみしか非課税にならない。
・何回にも分けて贈与することになるので時間がかかる。

基礎控除をうまく使えば節税効果も期待できますが、定期贈与とみなされると余計な税金を払うことになるので注意が必要です。

 

相続時精算課税制度

不動産や現金の贈与を受けたときに、特別控除額及び一定の税率で贈与税を計算し、贈与した人が亡くなった時に相続税で精算するシステムです。

相続時精算課税制度を利用するために、以下の3つの条件を満たす必要があります。

・贈与した年に贈与した人が1月1日時点で60歳以上である。
・贈与を受けた年に贈与を受ける人が1月1日時点で20歳以上である。
・贈与した人と贈与された人が親子か祖父母と孫の関係である。

 

相続時精算課税制度のメリットは5つあります。

・子供や孫に対する2,500万円までの贈与は非課税になる。
・2,500万円を超えた場合の贈与については一律20%の贈与税となり、大幅に税金が免除される。
・土地などは贈与したときの時価で税金の計算をするので、将来土地の価値が上がったとしても相続時には影響がない。
・賃貸物件など収益を生む資産を子どもなどに贈与すれば、相続税の対象にならない。
・精算する相続税額より贈与税額が大きいと還元される。

 

相続時精算課税制度のデメリットは4つあります。

・相続時精算課税制度を選んだ場合、贈与税の非課税枠が利用した年以降使えなくなる。
・生前に贈与されたものなので、後で相続税が課税される。
・贈与を受けた年は金額にかかわらず申告が必要で、手間や費用がかかる。
・相続税が高く支払えない場合、お金の代わりに相続した物(物納)で税金を納めることが出来るが、相続時精算課税制度を適応していると物納できない。

賃貸物件や再開発地など確実に値上がりが予想される財産がある場合や生前贈与を急ぎたい時は、相続時精算課税制度を利用したほうが良いとされています。

 

配偶者控除

住居用の不動産や土地の贈与のために金銭の授受が行われ、婚姻期間が20年を超える夫婦間の贈与は2,000万円までが贈与税の非課税対象となります。

この特例を受けるための適用条件は5つあります。

・夫婦として婚姻期間が20年過ぎた後に不動産や現金の贈与があること。
・今までに贈与税の配偶者控除を受けていないこと。
・贈与される財産は、居住用の不動産または居住用の不動産資金、どちらかであること。
・贈与された年の翌年3月15日以降も引き続き居住(見込みでも可)すること。
・納付税額が0円でも贈与税の申告が必要なこと。

 

配偶者控除のメリットは3つあります。

・2,000万円までなら非課税で贈与ができる。
・基礎控除(110万円)と併用することができるので、合わせて2,110万円までが非課税になる。
・配偶者控除を利用して贈与された不動産や現金などの財産は、3年以内に相続があっても相続財産には加算されないこと。

 

配偶者控除のデメリットは3つあります。

・贈与した配偶者が先に亡くなった場合、相続税が増える可能性がある。
・不動産取得税や登録免許税といった費用がかかる。
・同一夫婦で1度だけしか使えない。

配偶者控除については相続税の軽減にあまり効果がないといわれています。適用するかは専門家に相談することをおすすめします。

 

まとめ

不動産と現金、どちらの贈与税がお得かわかりましたでしょうか。

現金は贈与した金額そのものに贈与税がかかり、不動産贈与は財産の価値について贈与税がかかります。

現金の贈与より不動産の贈与のほうがお得だということがわかりました。

贈与税について何も知らずに現金を授受していると、後々大変なことになります。

無駄な贈与税を支払う前に、正当な手順を踏んで進めることが大切です。

贈与税は納税をする人が自分で申告しなければならず、特例も自分で申告しなければ適用されません。

不動産や現金を贈与されたときに慌てることがないように、自分で仕組みを理解しておくことが必要です。

現金を贈与する場合、さほど難しい手続きではありませんが、不動産贈与の場合は難しいので専門家に依頼することも大切です。

2019年7月20日
暦年課税制度を使った生前贈与の方法を徹底解説
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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