養子縁組を行ったものの、さまざまな理由で関係を解消(離縁)する場合があります。
その離縁をした後で気がかりになるのは、相続の問題でしょう。
養子を離縁した場合、果たして養親の死後、養子は相続対象とはならないのでしょうか。
この記事では、死後離縁の話も含めて、養子を離縁した後の相続に関する疑問に答えていきます。
相続で養子を離縁した場合、養子は相続人のまま?

養子縁組は、縁組後に離縁(養子縁組による親子関係を解消すること)することが可能ですが、離縁後は養方の財産を相続することはできません。
つまり、相続で養子を離縁した場合は、養子は相続人でなくなるのです。
なお、離縁前に開始した相続に関しては、離縁は影響しません。
ちなみに、養親の死後に離縁する死後離縁については、養親の遺産を相続することができます。
養子縁組解消(離縁)のメリット
養子縁組を解消(離縁)するメリットは、養子縁組をする上で生じていた親子関係に関する全ての権利義務がなくなることにあります。
具体的な例として、養親は養子を扶養する義務がなくなることが挙げられます。
また、養子は離縁をすることで、養親から将来遺産を受け取ることができなくなりますが、相続によるトラブルなども発生しなくなるので、そのような可能性が考えられる場合にはメリットであるといえるでしょう。
養子縁組解消(離縁)のデメリット
養子縁組を解消(離縁)するデメリットとして、親子関係の権利義務がなくなるため、養子は将来受け取るはずであった相続を受ける権利を失うことが、挙げられます。
相続税対策として養子縁組をしているケースもありますが、離縁してしまえばこれらの優遇措置は受けられなくなります。
また、養子は養親から扶養してもらえなくなることも、デメリットの1つです。
養子縁組解消(離縁)の条件・要件
養子縁組を解消(離縁)する条件・要件としては、普通養子縁組の場合、養親と養子の双方が離縁に同意する必要があります。
また当事者の一方が離縁を望んでいない場合は、他の一方の生死が3年以上分からない、他の一方から悪意で遺棄された、その他縁組を続けることが難しい重大な事由があるなど、いずれかの理由で離縁することが可能です。
上述した、生死が3年以上分からない、とは音信不通だけでなく、生死不明の状態でなければなりません。
また、他の一方から悪意で遺棄とは、例えば、養親もしくは養子のいずれかが金銭的な援助を必要としているのに、援助するだけの資産があるにも関わらず援助をしない、相手のことを顧みないことをいいます。
特別養子縁組の場合は、基本的に離縁は認められていませんが、重大な事由がある場合に離縁裁判で取り消しが可能です。
特別養子縁組とは、6歳未満の子供に対して特別な保護を目的に、家庭裁判所の許可を得て、養親は夫婦共同で、一方が25歳以上で、もう一方が20歳以上の夫婦と入籍している子供のことをいいます。
この場合、養子は実親やその親族とは親族関係が解消されています。
そのため、養親のいずれかが亡くなった場合や、重い病気になった場合、それから養親による虐待があった場合、実父母が相当の監護ができる、また養子の利益のために特に必要であると認められた場合などに限り、裁判所の決定によって離縁が認められることになっています。
相続人であることには変わらないが、死後離縁するケースとは
養子縁組をした後、様々な理由により、養子縁組を解消することもあります。
養子縁組を解消するには、「協議離縁」「裁判離縁」「調停離縁」「審判離縁」の4つの手段がありますが、養親と養子のどちらかが先に死亡したとしても、それだけでは養子縁組は解消されません。
しかし、養親もしくは養子が死亡後、生存している当事者が離縁を望んでいる場合には、家庭裁判所の許可を得て、離縁することが可能です。
これを「死後離縁」と言います。
この死後離縁を行った際に、養親と養子との間の相続関係はどうなるか気になるものですが、既に発生している相続権には全く影響はなく、死後離縁の後も相続人の地位は失いません。
ただし、死後離縁を行うことで死亡した当事者の親族との関係は解消されるので、仮に養親の死後に養子が死後離縁を行うと、養親の親族との間で相続権は発生しません。
死後離縁をするケースとしては、養親が亡くなって養子の方から申し立てる事例が圧倒的に多いです。
養子からみて養親の家族との関係が悪いというケースが良くある例です。…