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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年5月31日 金曜日

いとこが亡くなった場合の相続はどうすればいいの?

年齢を重ねていくと、両親や配偶者に先立たれた話を聞くかもしれません。

今では晩婚化が進み、生涯独身だったり、子供のいない夫婦も増え始めました。

例えば、両親に先立たれてしまった後、配偶者に先立たれたり独身だったりして、親や子供や兄弟姉妹といった法定相続人がいなくなってしまう人も、日本の高齢社会では珍しくなくなるでしょう。

そういった場合、身寄りの無い方が亡くなった後、その方の財産の相続はどうなるのでしょうか。

そこで、この記事では、例えば親兄弟姉妹、配偶者や子供といった身寄りのいない「いとこ」が死亡した場合、そのいとこの相続について解説します。

法定相続人と特別縁故者とは

遺言書がなく、法定相続人がいない場合の相続人はどうなるの?

法定相続人とは、亡くなった方(以下「被相続人」という)の配偶者と子、両親・祖父母といった直系尊属、兄弟姉妹が該当します。

しかし、被相続人に法定相続人がいない場合は、被相続人の財産は、原則として国庫に帰属します。

つまり、法定相続人のいない被相続人の財産は、国のものになってしまうということです。

高齢化社会が進み昨今、孤独死する方も増えてきました。

そのため、遺品の後片付けをするサービスが商売として成立してしまうくらいです。

しかし、身寄りが無いと思われていても、人は意外に誰かと繋がっているもので、探せばその親密さに大小の差こそあれ、特別縁故者がいる可能性があるのです。

このように、身寄りの少ない人が亡くなった場合、懇意にしていた一定の関係の人を民法は「特別縁故者」として、特別に相続人となれると定めています。

「特別縁故者に対する財産分与」として、民法958条の3に、以下のように定められています。

第958条の3

特別縁故者に対する財産分与

1

前条(相続人の存在が明らかにならなかった時の相続について)の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

2

前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

特別縁故者とは?

民法第958条で明記されている「特別縁故者」について簡単に解説します・

特別縁故者になるためには、民法の特別縁故者に該当することを家庭裁判所に申し出て、認められなければなりません。

では、どういう人が家庭裁判所に申し出ることができるのでしょう。

民法第958条ではわかりにくいので、解説します。

ここでは亡くなった方を被相続人といいます。

・ 被相続人と生計を同じくする者(別居していても相続維持関係にあるものも含む)

(生計維持関係とは、健康保険の扶養者の条件と同じで収入の制限等もある)

・ 被相続人の介護や療養の世話をしていた者

・ 内縁の妻や親子のように生活していた者等の「特別の縁故があった者」と裁判所が認めた者

このように、概略的ではありますが、該当者が民法に定められていますので、本当に特別縁故者に該当するかどうかは、家庭裁判所の判断によります。

例えば、10年以上愛人と一緒に暮らして、生計維持関係も愛人の方にあったとしても、本妻が現れた場合、法定相続人は、戸籍上だけの本妻なのです。

実生活の関係を重視して、愛人(内縁の妻)が特別縁故者になれるかというと、それは不可能です。

民法では、戸籍上離婚していない以上、「内縁関係は公序良俗に反する」という理由で、法律は認めてくれないからです。

葬儀を行った人が、身内という判断が根付いているとも見れます。

そのため、特別老人ホーム等の葬儀や納骨を行った施設が特別縁故者に認められた判例もあります。

また、遺言書がなくても「全財産を譲る」と被相続人に言われたという裁判所が認める客観的証拠を持った者が、「特別縁故者」として認められた判例もあります。

このように、「その他被相続人と特別縁故があった者」の裁判所の判断は、ケースバイケースであり、過去の判例が大きく影響します。

ただし、家庭裁判所が「特別縁故者」を判断する場合は、遺言書がない場合に限ります。

いとこが亡くなった場合の相続

いとこが亡くなったときに、法定相続人として認められた家族がいる場合、一般的に被相続人のいとこの身分では、相続権は発生しません。

しかし、遺言書は民法の相続規定よりも優先しますので、被相続人が遺言書に「いとこ」に財産を譲る旨を記載していれば、いとこの身分でも、被相続人の財産の相続人となります。

ただし、法定相続人が持つ遺留分減殺請求権を妨げることはできません。

ここでは、遺言書がなかった場合で解説します。

いとこに配偶者や子がいる場合

いとこ(以下「被相続人」という)に配偶者や子といった法定相続人がいる場合は、民法の法定相続人の相続分の規定に従って相続がなされます。

配偶者と子供がいる場合には、配偶者と子供で2分の1ずつ相続します。

子供がいなくて配偶者だけがいた場合は、直系尊属(両親や祖父母)、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹と、次の割合で財産を分割します。

・ 配偶者:直系尊属=2:1

・ 配偶者:兄弟姉妹=3:1

直系尊属も兄弟姉妹もいない場合は、配偶者が被相続人の全財産を相続します。

このように、配偶者や子供がいる場合は、被相続人のいとこの身分の方に相続権は発生しません。

いとこに配偶者や子はいないが親や兄弟姉妹がいる場合

では、いとこ(以下「被相続人」という)に配偶者や子はいなくても、親や兄弟姉妹がいた場合はどうなるのでしょう。

親がいる場合は、親が被相続人の全財産を相続します。

被相続人に親や祖父母もいなくて、兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が被相続人の全財産を相続します。

よって、この場合、被相続人の「いとこ」の身分の方に財産を相続する権利はありません。

いとこに配偶者や子、親、兄弟姉妹がいない場合

いとこ(以下「被相続人」という)に配偶者も子も親も兄弟姉妹もいない場合、被相続人には、法定相続人がいないことになります。

また、法定相続人がいても法定相続人が相続放棄したり、相続欠格だったりした場合には、被相続人の「いとこ」に特別縁故者として相続する可能性が出てくることもあります。

この場合、被相続人のいとこの身分の方が、「特別縁故者」と家庭裁判所に認められた場合、相続権が発生します。

いとこが亡くなって相続人となったときにすべきこと

「特別縁故者」と家庭裁判所に認めてもらいたい人は、家庭裁判所に「特別縁故者」として申し立てる前に、すべきことがあります。

他の相続人の有無を確認

特別縁故者と認めてもらいたい人は、まず亡くなった人(以下「被相続人」という)の法定相続人がいないことを確認しなければなりません。

相続財産管理人の専任の申し立てをすれば、裁判所が官報に公告することで、相続人捜索をして、「相続人不存在」の確定をしてくれます。

遺言書の確認

次に、被相続人の遺言書があれば、相続に関しては、それが何よりも優先するので、遺言書の有無を確認する必要があります。

相続財産の確認

次に、相続財産の確認が必要です。

本人が生前に残した財産とは、預貯金や不動産等のプラスの財産ばかりではありません。

相続するということは、プラスの財産と一緒に借金等のマイナスの財産も一緒に受け継ぐことになります。

そのため、本人の弁済すべきマイナス財産の確認も必要です。

相続した後に、借金の督促状や保証人になったことによる取り立てがきた場合、相続人がそれらの弁済を迫られることになるからです。

被相続人は、既に亡くなっているのですから、本人しか知らない借金について聞く事もできません。

そのため、特別縁故者になりたい人は、被相続人の借金や弁済すべき債務の有無を確認するために、家庭裁判所に相続財産管理人の申立てをして、相続財産管理人の専任をしてもらいます。

すると、先ず裁判所は、被相続人の相続財産管理人を選任したことを一定期間(2ヶ月ほど)官報で公告します。

その後、官報や裁判所の掲示板で被相続人の債務者や受遺者(財産を受ける約束をした者等)がいないか、心当たりがある人は申し出るように、一定期間(2ヶ月以上)呼びかけます。

その後相続人捜索のための官報の公告を半年以上行い、誰も申し出なかった場合、相続人不存在の確定を裁判所がしてくれます。

こうして初めて、被相続人には法定相続人がいないということで、特別縁故者の申し立てを受け付けてもらえるのです。

いとこだからといって特別縁故者になれるとは限らない

さて、いとこ(以下「被相続人」という)の相続財産管理人を選任して、裁判所の協力を得て、相続財産の精算等を済ませ、相続人不存在の確定をしてもらったら、いざ、特別縁故者の申し立てができるようになります。

しかし、生前の被相続人との関係が密接だった被相続人の唯一の親族であるいとこであったとしても、そのいとこが特別縁故者となるためには、家庭裁判所に認められるだけの証拠が必要となります。

「家庭裁判所が納得する証拠」を集めるということは、けっこう大変です。

特別縁故者としての関係性はケースバイケースなので、家庭裁判所の判断には、過去の判例が非常に大きな影響を与えます。

そして過去の判例(平成27年2月の比較的新しい判例)では、周囲の人の証言や陳述では客観的証拠無しということで、認められませんでした。

生前の被相続人との密接な関係性を、周囲の人々が証言してくれる(裁判所に陳述する、あるいは陳述書を提出する)だけでは、まず家庭再暗所は、それだけでは特別縁故者として認めてはくれません。

裁判官は、証言だけというのは、「ウソかもしれない」という目で見てしまうからです。

そのため、一緒に旅行に行ったり、日常的に密接に交際していたという事実について、否定しようがないほどの証拠が必要です。

例えば、多くの写真や手紙、メールやラインのやりとり、被相続人の日記等、誰が見ても被相続人と密接な関係で、最後まで面倒を看ていたことが明らかであるという証拠を提出できなければならないのです。

しかし、寝たきりの被相続人の世話をどんなに親身にしていたとしても、寝たきりの被相続人との写真を頻繁に撮影したり、メールやラインをしたりしていないケースの方が多いでしょう。

介護している人が、その様子をビデオに撮影したり、写真を残そうと意識することが無いのが一般的でしょう。

どんなに周知の事実だとしても、周囲の人の記憶による証言は、裁判所では役に立たない、というのが過去の判例です。

いわゆる、長年にわたる密接なお付き合いの事実を証明する客観的な証拠は、高齢者ほど少ないのが現実なのです。

一方で、特別養護老人ホームや介護施設等で、親身になってかどうかは定かではなくても、生前の被相続人の世話をしていたことがうかがえて、業務上、被相続人の葬儀をしたという事実だけで、その施設の代表が特別縁故者に認められた判例もあります。

他人にも関わらず葬儀をするほど親密な間柄だったと裁判所が判断するからです。

このように、特別縁故者を判断する裁判所の見解は、仲が良かったいとこだったと言葉で伝えても、それだけでは特別縁故者に認めてくれないかもしれません。

もちろん、遺産目的でないことを前提に、日頃の気持ちや関係性を形に残す意味で、手紙や写真記録などを使って関係性を深めることで、結果として特別縁故者に認められるかもれません。

まとめ

いかがでしたか。

親密な間柄であっても、それがあまりにも当たり前の関係の場合、その関係性を客観的証拠で示すことは意外に難しいものです。

そのため、配偶者や子や親や兄弟姉妹がいない場合は、遺言書を残すか、いとことの関係を日記に詳細に残すことがお勧めです。

日記は、被相続人のものだけでなく、特別縁故者となるべき、被相続人のいとこのものでも良いのです。

長年にわたる詳細な日記は、写真に優る客観的な証拠となります。

しかし、仲が良いほど、そんな準備をしないケースが多いのが現実です。

このように、家庭裁判所の求める証拠を持たない特別縁故者が非常に多いともいえます。

身寄りのない被相続人のいとこが、特別縁故者として相続することは意外に難しいのです。

法定相続人がいない人の場合は、大切な人に財産を残すために、遺言書を書いておくのが、あるいは書いてもらっておくのが、一番安心ともいえるでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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