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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年4月10日 水曜日

相続人が勾留されている場合、相続手続きはどうなる?

もし、家族の中に被疑者として勾留されている人がいて、会うこともできない場合の相続はどうなるのでしょう。

相続実行の手続きには、遺産分割協議書と相続者全員の戸籍謄本と印鑑証明が必要です。

しかし、勾留中の相続人は協議にまともに参加することは難しくなります。

このような場合、いったい相続の手続きはどうしたら良いのでしょう。

結論から申し上げると、勾留または服役中の相続人がいるケースにおいては、弁護士にご依頼することを強くお勧めします。

この記事では、拘留中の相続人がいる場合の、相続実行の方法について解説します。

相続人が勾留されているとき

勾留とはどういう状態?

勾留とは、取り調べや裁判の判決が下るまでの期間、被疑者の身体を拘束する事をいいます。

勾留の目的は、逮捕されて検察に送られる前の警察の取調中の被疑者が証拠隠しや逃走されないよう、警察署の留置所に拘束したまま取り調べを行うためです。

起訴前の勾留は原則最大20日以内となります。

被疑者が検察に送られた後も、被疑者は拘置所に入れられ、検察の取り調べが始まります。

その後、検察による起訴が決まると、裁判が始まるまで、あるいは裁判中は被疑者は管轄裁判所内の拘置所に移送されます。

この間、証拠隠滅・逃走の可能性がないと裁判官が判断した場合は、保釈されることもあります。

拘留中は、まだ刑が確定されておらず無罪の可能性がある人なのであり、犯罪者でない人の身柄を拘束しているわけですから、最低限の人権保護に配慮がなされています。

なお、刑罰が確定した人が服役している状態のことを「拘留」と言います。

「勾留」と「拘留」も、読み方は「こうりゅう」ですので、間違えないように注意しましょう。

相続人が勾留・服役中の場合

遺産分割協議書の作成にあたって

遺産分割協議書には、全ての相続人本人の住所・氏名を手書きで署名し、実印を押します。

住所・氏名は、ワープロやパソコンの印字でも法的に無効というわけではないのですが、実印の押印だけでは、本人が押印していない等のトラブルが発生する可能性もあるので、住所・氏名も手書きの方がお勧めです。

遺産協議書には、実印を押しますので、印鑑証明も必要になります。

印鑑はどうする?

在監者による拇印

本人が拘留・服役中の場合、印鑑証明が登録されていたとしても、市区町村で印鑑証明を発行する事はできません。

その場合、明確な規定が民法にあるわけではないのですが、下記のように、不動産登記の先例として、拘留・服役中の場合、印鑑証明の代わりに拇印で対応する事が可能となっています。

不動産登記先例 (昭和39年2月27日民事甲第423号)
刑務所在監者が登記義務者として印鑑証明書を提出できない場合には、本人の拇印である旨を刑務所長又は刑務支所長が奥書証明した委任状を添付すべきである。

通常、過去の判例は、先例として法的効力を有します。

刑務所で服役している人が相続人の場合、相続手続きのうち、不動産登記に関する印鑑証明は拇印で対応できるため、まだ犯罪者ではない勾留中の被疑者の立場にある相続人にも同じように対応されるのが一般的です。

金融機関やその他相続手続きの窓口によって、規定が異なる部分もありますが、事情を話せば、一般的に拇印(奥書証明付)対応が可能です。

そのため、全ての相続手続きの窓口で、事情を話して拇印の奥書証明で、印鑑証明に替えることができるかどうかを確認しておきましょう。

奥書証明

「奥書(おくがき)」とは、本文の最後に、著者や持ち主、あるいは書物を読んだ人による手書きの文章を言います。

例えば、昭和39年の判例による先例は、服役者の拇印に本人のものであることを、刑務所長や刑務支部長に「奥書」してもらうことで、その拇印が間違いなく現在服役中の相続人のものであることを証明し、その奥書証明書付の拇印を印鑑証明代わりに利用したのです。

しかし、印鑑証明書代わりの奥書証明付の拇印を用意できても、勾留または服役中の相続人は、遺産相続協議に参加することはできません。

そのような事情を持つ相続人の代理人として、弁護士や司法書士が相続人の意思通りに相続協議に参加し、相続協議と手続きをしてもらうことになります。

つまり、相続協議とその手続きの委任状も必要になります。

特に、刑務所での手続きは、さまざまな検閲を通過する必要があるので、非常に困難で時間がかかります。

ですから、拇印奥書証明の申請だけでなく、委任状やその他遺産分割に関する希望等、できる申請は一度にすることをお勧めします。

勾留または服役している者に代わって、手続きを代理してもらう委任状を添えることで、その印鑑証明書代わりの拇印を扱い、遺産相続協議やその手続きに参加することができるようにするのです。

委任する代理人の指定には、相続に関与していない第三者がお勧めです。

手続きとしては、奥書証明書の申請と一緒に、代理人を指定した委任状も勾留または服役中の相続人に書いてもらう必要があります。

認印がなくても、委任状の印鑑も拇印で大丈夫です。

これで、勾留または服役中の相続人の印鑑証明書に代わる拇印と、委任状が揃いました。

どこの法務局であっても相続のための不動産登記については、この手続きで可能です。

金融機関やその他の手続き窓口でも、このような手続きで可能なケースが多いのですが、手続き機関によって、さまざまな規定がありますので、念のために事前に確認しておくことをお勧めします。

住所はどうする?

拘留中・服役中の相続人の住所はどうなるのでしょう。

拘留中の場合は、刑が確定されるまでは無罪の可能性があるので、住所の異動がなされることはありません。

住民票が一人世帯だった場合は、刑が確定したら終身刑や死刑の場合のみ、住民票の住所は刑務所の住所に異動します。

家族と同居していた者は、帰る場所があるので、刑に服する前の住民票の住所地のままとなります。

ただし、受刑中に自動車免許の取得をしたときだけ、刑務所の住所が「現住所」となるようです。

相続手続きをするときは、住民票の住所を書くことがほとんどなので、拘留中・服役中の者も、住民票の住所を記載すればよく、刑務所や留置所や拘置所の住所(現在の居所)を書く必要はないでしょう。

ただし、拇印の奥書証明で手続きする場合は、相続実行の際の手続き機関によっては、現在の居所を書くように指示されることもあるかもしれません。

注意点

連絡手段が限られ、時間がかかる

拘留中の被疑者や服役中の犯罪者の相続の意思確認は、本人が拘留・服役中で、携帯電話さえ持っていない状態ですので、警察署や検察・刑務所の窓口を介して面会申請や、手紙や電報を差し入れる方法しかありません。

拘留中の取り調べで急がしい時は、それらの伝達は後回しにされることも多いのです。

なお、刑務所に服役中の場合は、刑務官の検閲が入りますのでさらに時間がかかります。

とにかく連絡が一方通行なので、催促のために何度も拘置所等に足を運ばなければならない可能性が高いのです。

本人に直接連絡がとれないのですから、簡単な確認をするだけでも非常に困難で時間がかかることを覚悟しておかなければなりません。

だから、なるべく確認事項や必要な手続きを整理して、一度ですませるように工夫する必要があります。

その都度思いついたまま連絡していたのでは、相続手続きはいっこうに進みません。

多くの場合、相続手続きの手順に詳しく、経験がある人物が代理人でないと相続税の申告に間に合わないでしょう。

珍しいケースなので専門家に相談

刑が確定した後は面会の自由も多少ありますが、まだ逮捕前や起訴後の刑が確定する前の勾留状態である場合は、家族の面会も許されず、弁護士の接見だけしか認められていないようなケースもあります。

重大犯罪の被疑者の場合は、弁護士でさえも強引に法的な権利を主張しないと、警察官が取り調べを優先して、すんなり会わせてもらえないことも多いのです。

また、差し入れの手紙を家族が渡しても、取調中の被疑者の手元にすぐには届かない可能性もあります。

一般の方が、日々の生活の片手間に取り扱えるケースではないため、拘留中・服役中の者の代理人を立てて相続手続きをするのであれば、一度で必要なことを段取りよく整理できて、警察や検察官等と交渉を行える弁護士に任せることを強くお勧めします。

まとめ

相続問題だけでも手間がかかるのに、そんな時に相続人の一人が事件の被疑者として警察に逮捕され、事件の被疑者として裁判を受けるようなケースは滅多にないことかもしれません。

そんな時に、警察や拘置所に何度も足を運んで、警察・検察等と交渉したり、さまざまな手続きをしたりするのはとても大変です。

警察や検察は、捜査第一ですから、相続の状況を配慮してくれるようなことはまず無いでしょう。

取り調べに不利になると思えば、手紙や書類を渡せずに、拇印奥書証明の申請書なんて、出してくれないかもしれません。

でも、警察はそんな判例を知らない人も多いので、そのことを交渉するのは、法的に警察や検察に抗議ができる、弁護士に認められた権力を行使してもらうのがお勧めです。

ちなみに、警察や検察の司法機関への交渉力は、弁護士>司法書士>行政書士です。

その中で、接見力を行使できるのは弁護士だけです。

相続人が勾留・服役期間の長い刑事事件に巻き込まれた場合は、初めから弁護士に相談することを強くお勧めします。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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