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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年2月25日 月曜日

相続人がいない場合に必要な相続財産管理人とは

亡くなった人に身寄りがない場合、あるいは相続人全員が相続放棄をした場合は、民法に規定する「相続人不存在の規定」が適用されます。

亡くなった人の遺産は親族や利害関係者、あるいは検察官の申立てにより家庭裁判所より選任された「相続財産管理人」により債務の弁済などが行われ、余った遺産は最終的に国庫に帰属することになります。

相続財産管理人は一般の人にとって馴染みが薄く、実際に相続財産管理人が選任されるような相続は少ないようです。

しかし、もしあなたの身内が死亡して、その身内が多額の借金を残しており相続人全員が相続放棄した場合、親族として相続財産管理人の選任を申し立てることになります。

あるいは、亡くなった人と利害関係が無く希望する場合は、あなたが相続財産管理人になることもあり得るのです。

そのような事態に少しでも備えていただくため、本コンテンツでは相続財産管理人の概要についてご説明します。

相続財産管理人を選任する

相続財産管理人とは

相続は、人が亡くなると同時に発生しますよね。

そして、相続人は相続発生時に亡くなった人の財産に属した、一身専属以外の一切の権利義務を相続することになります。

しかし、亡くなった人の財産を引き継ぐ相続人がいないということも生じ得ます

すでに財産の所有者が死亡という形で不在であり、相続人も不在であるわけですから、当該財産を所有・管理する人が不在という異常な状態です。また、相続人がいないわけですから相続手続きを行う人がいないため、このままでは亡くなった人の財産の名義は未来永劫亡くなった人のままになってしまいます。

この場合、下記の民法第25条の規定により、家庭裁判所は亡くなった人の利害関係人や検察官の請求に基づいて亡くなった人の財産や債務を調査して目録を作成し、相続人などへの財産分与や利害関係人との清算手続きを行い、最終的に残余財産を国庫に帰属する手続きを行う人を選任します。

従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする

このように相続人がいない場合に亡くなった人の遺産の管理や処分などの手続きを行う人が、「相続財産管理人」です。

相続財産管理人を選任するケース

以下の場合は、相続財産管理人の選任が必要と考えられます。

  • 亡くなった人の戸籍謄本などによる調査の結果、身内に民法第887条、第889条および第890条で定められた法定相続人の地位にある人がいないと判明した場合、あるいは法定相続人の生死が不明の場合
  • 遺言がない場合、あったとしても家庭裁判所により無効とされた場合あるいは受遺が不明な場合
  • 相続人全員が相続放棄した場合
  • 亡くなった人の特別縁故者と推定される人がいる場合

相続財産管理人の役割

相続財産管理人の役割は、以下のように一連の相続人不存在の手続きの流れで見ていくとわかりやすいでしょう。

相続財産管理人選任の公告

先述のとおり、相続財産管理人は亡くなった人の利害関係者または検察官の申し立てにより家庭裁判所によって選任されます

ここでいう利害関係者とは、相続放棄した遺族や亡くなった人にお金を貸していた人、内縁の配偶者あるいは愛人などである場合が多いようです。

相続財産管理人が選定されると、民法第952条第2項「前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない」の規定に基づき、家庭裁判所は相続財産管理人を選任した旨を2ヶ月間にわたって官報などで公告します。

これは、相続人を捜すための第一回目の公告として、亡くなった人の相続人が現れることを促す意味もあります。

相続財産管理人は亡くなった人の遺産を詳細に調査し、財産目録を作成します。

この時点で、亡くなった人の遺産は民法第951条「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」の規定に従い、相続財産管理人・亡くなった人・家庭裁判所および亡くなった人の財産の間の権利関係が複雑化することを避けるために、法人となります。

ただし、その後の過程で相続人が現れた場合は民法第955条「相続人のあることが明らかになったときは、第951条の法人は、成立しなかったものとみなす。

ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない」にあるとおり法人は消滅しますが、それまでに亡くなった人の遺産に対して相続財産管理人により為された職務行為については有効なものと扱われます。

相続債権者および受遺者への債権申出の公告

相続財産管理人選任の公告を行い、2ヶ月を経過しても相続人が現れない場合、下記の民法第957条の規定に基づき、相続財産管理人は全ての債権者(亡くなった人にお金やモノを貸している人)や受遺者(亡くなった人の遺言で財産をもらう相続人に指定されている人)がいる場合は申し出る旨を伝えるため、官報などで2ヶ月間以上にわたり「相続債権者および受遺者への債権申出の公告」を行います。

第952条第1項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

これに対して申し出た人は、相続財産管理人や家庭裁判所による確認手続きを経て、相続財産から申出人が受け取るべき財産相当額の払い出し等を行います。

債権の申出期間が終了しても債権者が現れない場合は、清算手続きに移行します。

相続人探索の公告

「相続債権者および受遺者への債権申出の公告」から2ヶ月経過すると、相続財産管理人または検察官が請求することにより、家庭裁判所は民法第958条の1「前条第一項(相続債権者および受遺者に対する弁済)の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない」に基づき、官報などで「相続人探索の公告」を6ヶ月以上に渡って行います。

この申出期間を経過しても相続人が現れなければ、民法第958条の2「前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない」に基づき、「相続人不存在」が確定します。

特別縁故者への財産の分与

特別縁故者に対する相続財産の分与については、民法第958条の3第1項に下記のように記されています。

前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

つまり、特別縁故者とは亡くなった人の法定相続人や受遺者ではないが、同一生計だった人・亡くなった人の看護に尽力した人など、亡くなった人にとっては実の親族と同等に堅密な関係があった人のことを言います

「相続人探索の公告」の期間が満了した後、自身が亡くなった人の特別縁故者であることを家庭裁判所に申し出て認められた場合は、亡くなった人の財産の全部または一部を受け取ることができます

特別縁故者には亡くなった人の内縁の配偶者や介護などを行っていた親族が認められるケースが多いようですが、極めて献身的な介護を行っていた看護師が認められたケースもあります。

なお、民法第958条の3第2項に「前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない」にあるとおり、家庭裁判所に対して自身が亡くなった人の特別縁故者であり財産の分与を請求する場合は、相続人探索の公告が満了した後3ヶ月以内に行う必要があります

残余財産の国庫への帰属

債権者への清算や、特別縁故者への財産分与を行った後も残余財産がある場合、相続財産管理人は民法第959条「前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する」の規定に従い、残余財産を国庫に帰属させる手続きを行います

債権者への清算や特別縁故者への財産分与、あるいは国庫への帰属の過程で、相続財産管理人は家庭裁判所の許可を前提に、不動産などの換価可能な固定資産は売却のうえ金銭で行うこともあります。

なお、第三者と共有持分となっている財産については国庫に帰属せず、民法第255条「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」に基づき、他の共有者のものになります。

相続財産管理人の選任方法

選任要件

相続財産管理人は家庭裁判所が亡くなった人との利害関係を考慮しながら選任しますが、そのほかに特段の選任要件はありません。

弁護士や司法書士、税理士などの有資格者が就任することもあるようです。

必要書類

家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立てる際は、以下の書類および費用の支払いが必要です。

  • 申立書(家庭裁判所のホームページからダウンロード)
  • 亡くなった人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 亡くなった人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 亡くなった人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 亡くなった人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 亡くなった人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としての甥または姪で死亡している人がいる場合、その甥または姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 亡くなった人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)、金銭消費貸借契約書写し等)
  • 財産管理人の候補者がいる場合、その人の住民票又は戸籍附票
  • 収入印紙800円
  • 官報公告料3,775円
  • 連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所により異なる)
  • このほか、必要に応じて家庭裁判所から要請される書類等

相続財産管理人に掛かる費用は?

先述のとおり、相続人不存在の手続きには申立て時に収入印紙800円、官報公告料3,775円、連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所により異なる)が必要です。

この他に、親族以外の人が相続財産管理人に就任する場合は、当該相続管理人に対する費用が別途必要であり、これは民法第29条第2項「家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる」にあるとおり、亡くなった人の遺産から支弁します。

ただし、この費用は相続人不存在の手続きの難易度によりケースバイケースであり、明確な基準がありません。

なお、遺産が少なく相続財産管理人への費用支払いに不十分と考えられる場合は、申立人は家庭裁判所から約20万円から100万円程度の予納金、つまり費用の前払いが要請されます。

相続財産管理人の選任は専門家に任せましょう。

相続財産管理人は申立人による推薦制度がありますが、最近は家庭裁判所が事前に選定しておいた候補者の中から案件ごとに選任するため推薦しても認められない傾向があるようです。

したがって、相続財産管理人の選任は家庭裁判所に任せることが現実的です。

なお、申立ての手続きは弁護士に依頼することが可能ですし、必要書類である戸籍謄本や登記簿謄本の収集は司法書士に依頼することが可能です。

申立て手続きに時間を割くことが難しい場合は、専門家に依頼することが一案です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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