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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年2月20日 水曜日

相続人には相続順位がある。優先順位や法定相続分を解説

相続が発生してから、自身は相続人としてどのような地位にあるのか戸惑ってしまう人は少なからずいます。

そこで今回は、相続が始まっても慌てたり戸惑ったりする必要がないように、相続の分野で基礎中の基礎ともいえる相続人の定義と優先順位および法定相続分について、民法の各条文を交えながら解説していきます。

法定相続人とは

被相続人の相続人には、民法の欠格事項や廃除要件に該当しない限り基本的に誰でもなることが可能ですが、それでは相続人の地位や相続割合をめぐり収拾がつかない事態も想定されます。

そこで、相続人になれる人の目安のひとつとして民法第887条、第889条および第890条に規定された相続人を、「法定相続人」といいます。

法定相続人の範囲

被相続人の配偶者(内縁関係や愛人関係を除く)・子(養子を含む)または孫・親・兄弟姉妹が法定相続人とされています。

また、民法の規定において法定相続人と認められるのは、血の繋がりがある直系の家族である「血族」です。

このため、義理の親や義理の兄弟姉妹などと呼ばれる人たちは、法定相続人に該当しません

相続順位のパターン

優先順位

【常に相続人】配偶者

民法第890条では、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条(被相続人の子の規定)又は前条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」とされています。

つまり、配偶者は被相続人に子や両親などの血族相続人がいたとしても、順位を問わず被相続人の遺産を共同相続し、もし血族相続人がいなければ単独の相続人となります

なお、配偶者とは法律上の夫婦つまり民法上の婚姻届を経て婚姻関係となった夫ないし妻だけであり、いわゆる内縁の配偶者や愛人は該当しません。

また、婚姻期間の長短は関係なく、たとえ一日だけの婚姻関係でも法律上の夫婦であれば配偶者としての相続権が認められます。

(1)【第1順位】子

民法第887条第1項「被相続人の子は、相続人となる」および民法889条「次に掲げる者(被相続人の直系尊属及び兄弟姉妹)は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。」から、被相続人の子は第1順位の相続人となります

子とは被相続人と法律上の親子関係にある者であり、子である限りは性別、年齢、既婚・未婚、実子・養子、嫡出子・非嫡出子、氏の相違、国籍等は問われません。

なお、胎児も相続人になります。

ただし、父親が被相続人の場合は認知されていない限り事実上実子であってもここでの「子」にはあたりません。

一方で、母親が被相続人で実の子である場合は非嫡出母子関係は分娩という事実により当然に生じるという考えから、仮に戸籍に記載が無くても子は相続人となります。

なお、他の夫婦と普通養子縁組を結んだ子は実父母の相続人にもなることができます。

一方で特別養子縁組の場合は、これにより養子になった子と実父母および血族との親族関係は終了するため実父母や実兄弟姉妹の相続人になることはできません。

(2)【第2順位】直系尊属

第2順位は被相続人の両親や祖父母などの直系尊属です。

直系尊属は、被相続人に子、子の代襲相続人および再代襲相続人がいない場合に相続人となります。

なお、祖父母も直系尊属人として全員が固有の相続権を有しますが、父母と祖父母のように親等の異なる続柄が相続人である場合は被相続人と親等の近い父母だけが相続人となります。

また、もし養子に第1順位の相続人がいない場合は養親と実親が共同相続人となり、養親が死亡しておりその父母がいると同時に実親が存命の場合は実親だけが相続人となります。

(3)【第3順位】兄弟姉妹

兄弟姉妹は、被相続人に子(代襲相続人・再代襲相続人も含む)・直系尊属がいない場合にのみ相続人となります。

いわゆる異父母の兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)も相続人となります。

なお、他の法定相続人と異なり兄弟姉妹には遺留分が認められていません

(4)【その他の相続人】代襲相続人

民法第887条第2項から、代襲相続人の定義を確認することができます。

「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」

つまり、代襲相続とは、子または兄弟姉妹が相続開始前に死亡し、相続欠格に該当または廃除されたときに、子または兄弟姉妹(被代襲者)の子でかつ被相続人の直系あるいは傍系卑属である人が、被代襲者の順位で被相続人の遺産を相続することです。

なお、子の代襲者が上記に該当していれば、代襲者の子が再代襲者となります。

したがって、被相続人から見て、子が死亡していれば孫(代襲相続人)または曾孫(再代襲相続人)、兄弟姉妹が死亡していれば甥姪ということになります。

なお、配偶者と直系尊属には代襲相続は認められていません。

また、相続人が相続放棄した場合には放棄者が子または兄弟姉妹であっても代襲相続は認められません。

よくある相続順位のパターン

(1)子と配偶者が相続人である場合

配偶者の相続分および子の相続分は2分の1ずつです。

子が数人いる場合には、子それぞれの相続分は均等になり、これは嫡出子と非嫡出子が混在している場合でも同様です。

また子の全員が非嫡出子の場合は全員嫡出子の場合と同様に均等で相続します。

なお、先妻(夫)の子と後妻(夫)の子の間には相続人としての地位に差はありません。

(2)配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者の相続分は3分の2、直系尊属(父母・祖父母)の相続分は3分の1となります。

直系尊属が数人いる場合は、それぞれに均等に分けます。

父母が相続人となる場合には、実父母と養父母との間には相続人としての地位に差はありません。

祖父母は父母がいない場合に相続人となりますが、この場合も父方と母方の祖父母の地位に差はありません。

(3)配偶者と兄弟姉妹とが相続人の場合

配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。

兄弟姉妹が複数名いる場合はこの4分の1を均等することになります。

ただし、父母の一方のみを同じくする異父母の兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の半分です。

この父母には実父母のほか養父母も含まれますので、夫婦双方の養子とその夫婦の実子とは全血兄弟姉妹として相続分は均等となります。

また、夫婦の一方だけの養子とその夫婦の実子とは、前者は半血・後者は全血の兄弟姉妹となりますので、前者の相続分は後者の半分の割合となります。

(4)配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹だけの相続の場合

配偶者だけが相続人の場合は、被相続人に叔伯父母や従兄弟姉妹がいてもこれらの続柄の人は相続人とはなれませんので、配偶者が全遺産を単独相続するため相続分の問題は生じません。

また、被相続人に配偶者がなく、子、直系尊属または兄弟姉妹のうち一人だけが相続人である場合にも同様に相続分の問題は生じません。

なお、仮に配偶者がいない場合は先述の相続順位に従い子・直系尊属・兄弟姉妹の順番で相続することになります。

(5)二重の相続人の地位がある場合

例えば祖父母が孫を養子にするような場合には、親子間あるいは祖父母との間という血縁関係のほかに養親という法定血族関係が重複して発生します。

このような場合は、相続が開始したときに二つの地位を有する相続人は、養子としての相続権と孫としての代襲相続権の二つの相続分を取得できるとする考え方が通説となっています。

これは、相続人として地位が二重であってもこれを制限する特別の規定もないことから、二重の相続権の併存を否定すべきではないという多数の学説に基づいています。

ただし、養子縁組による相続財産の二重取りを必要とする合理的な根拠はないなどの反対説もあります。

また、実子と養子が婚姻している場合に一方が死亡すると、生存している配偶者は被相続人の配偶者と兄弟姉妹として二重の地位を有するかが問題となります。

これについて、法務省は過去に、生存配偶者は配偶者としての相続権を有し兄弟姉妹としての相続権は有しないとして二重資格の取得を否定しています。

学説はこの見解を支持する説と反対する説に分かれていますが、反対説の方が有力のようです。

特例パターン

この法定相続割合はあくまで原則論です。

遺言で法定相続割合と異なる分割割合が指定されていたり、あるいは遺産分割協議で相続人間が納得すれば、法定相続割合とは異なる割合で分割することは可能なのです。

また、相続人の意向次第では何も相続しない「相続放棄」も可能です。

相続人の法定相続分割合

民法第900条では、法定相続割合について以下のように定めています。

「同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」

上記3.2は、この条文に基づきシミュレーションしています。

相続放棄などで負債を回避することも

相続放棄とは、相続人が相続財産に対して有する権利や義務の一切を放棄し「何も相続しない」とすることです。

相続放棄が認められれば、民法第939条「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」にあるとおり既に相続人ではないのですから、積極財産より消極財産が多くても消極財産を相続することはなく、被相続人に代わって弁済する義務は負わなくなるのです。

相続放棄をするためには、民法第938条「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」にあるとおり、定められた手続きを家庭裁判所で行う必要があります。

被相続人の生前に相続放棄を行うことは認められていませんので、一連の手続きは相続が発生してから着手することになります。

まず、被相続人が亡くなったことを知ってから必ず3ヶ月以内に、各相続人にて被相続人が生前最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所へ、相続放棄をする旨を申し出てください。

もし、相続発生後3ヶ月に到達しつつあるのにも関わらず、承認するか放棄するか決心が付かない場合、あるいは被相続人の連帯保証の有無について調査が未了の場合、家庭裁判所に期間延長の審判を申し出てそれが認められれば、延長してもらえます。

この他に相続放棄で注意して頂きたいこととして、仮に被相続人の子供たち全員が相続放棄した場合、被相続人の父母や兄弟姉妹など法定相続人として後順位にいる人たちが相続することになる点が挙げられます。

消極財産の相続をしないために相続放棄したとしても、後順位の人に相続権が渡ればその人たちに迷惑を掛けることになるため好ましくありません。

相続放棄をする場合は他の後順位の人に自身が相続放棄をすること・被相続人に連帯保証があることなどをしっかりと伝えたうえで、順次相続放棄の手続きを取るようにしてください。

また、遺産分割協議の場で自分は一切財産を受け取らないと表明し、それを明記した遺産分割協議書を作成する方法は、家庭裁判所を通していないため正式な相続放棄と認められず、消極財産を引き継ぐことになりますのでご注意ください。

なお。相続の発生後に債権者からの督促によって初めて被相続人が債務者だったという事実を知ったということも想定されます。

相続放棄は被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に行うものと定められていますが、相続開始後3ヵ月後を経過して初めて被相続人に債務が発覚した場合、それを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てれば例外的に相続放棄が認められることがあります。

まとめ

以上、相続の基礎である相続順位や法定相続分を中心にご紹介致しました。

相続対策として大切なことは、普段からご自身がいつでも相続人になり得るということを忘れずに少しずつでも相続について知っておくことと考えます。

特に資産家の方については、その重要性が一層増します。

このコンテンツが相続人としての相続対策の一助となれば、幸いです。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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