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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年2月3日 日曜日

相続前には知っておきたい法定相続人の順位

高齢化社会となった昨今、50代の半ばを超える頃には、終活を始める人が増え始めたと言われています。

日本で核家族化が進行しはじめてからというもの、昭和の時代のように三世代での同居は当たり前では無くなってきました。

そのため、身体が動かなくなったときの準備やお墓の準備、遺影の準備…etc.終活にはたくさんの項目があります。

とくに、家族に内緒の家族や財産を与えたい大切な人がいる人は、遺言書の準備も必要かもしれません。

また、子供のいない家庭や、子供のいない兄弟がいる方々、孫がいない方々は、もしも遺言書がなければ、平穏だった遺された家族の生活が、いきなり相続争いの渦中に巻き込まれてしまうかもしれません。

そこで、そのような不幸を未然に防ぐためにも、この記事では法定相続人の順位について解説します。

法定相続人について知っておく

法定相続人とは

法定相続人とは、亡くなった方が、自分の財産についての遺言書を残していない場合、法(民法)で定められた相続人のことです。

また、法定相続人とは、相続が実際に実行され、相続人が整理されるまで確定しません。

もしかしたら、亡くなった方に周囲が知らなかった親や子供や兄弟姉妹が突然現れるかもしれません。

あるいは、本来相続する人が相続実行直前に亡くなって法定相続人が変ってしまうこともあります。

そのため、法が定めた相続人が確定して相続が実行されるまでの間、将来法定相続人となるであろうと推定される人のことを、「推定相続人」といいます。

法定相続人の範囲

法定相続人の範囲は、配偶者・子・直系尊属、兄弟姉妹です。

直系尊属とは、一般的に血縁関係のある両親・祖父母、曾祖父母であり、婚姻によって生じた義理の親子関係、義理の直系尊属関係は含みません。

ただし例外的に、血縁関係がなくても養子縁組をすることで、法定相続人となれる親子関係を作ることはできます。

法定相続人の順位

一般的に、法定相続人は、戸籍上の血縁関係で判断します。

亡くなった被相続人との続柄(義理を含まない)によって、相続順位は次の通りです。

1位:配偶者

1位:子

2位:直系尊属

3位:兄弟姉妹

一般的に、亡くなった方(以下「被相続人」という)に配偶者がいた場合は、配偶者が1位です。

子供がいたら、子供も配偶者と同様に1位です。

子供がいたら、配偶者と子供以外に財産が相続されることはありません。

子供については、法で定める要件があります。

ちなみに、養子の場合は血縁関係がなくても血縁関係のある子供と相続上は同じ地位です。

しかし、認知しているだけで、父親の戸籍に入っていない子供(非嫡出子)相続分割割合は、戸籍上の両親との間の子供(嫡出子)の半分となります。

財産の取得割合は?

被相続人に配偶者と子供がいる場合

法定相続人の場合、被相続人の続柄で財産の取得割合が決められています。

配偶者と子がいる場合は、配偶者と子だけで、被相続人の全ての財産を相続します。

配偶者と子供の相続割合は、「配偶者:子=1:1」ですが、日本の場合、戸籍上の配偶者は1人だけですが、子供(養子を含む)は複数いる場合があります。

子には、非嫡出子も含みます。

「配偶者:子=1:1」とは「配偶者1人:子供全員=1:1」です。

このとき、養子を含み嫡出子は1人を「1」と数え、非嫡出子は1人でも、権利は半分ですから「0.5」と数えます。

例えば、戸籍上の子供(養子を含む)3人と認知した愛人の子供(非嫡出子)が1人いた場合は、子供3.5人となり、財産の半分を3.5で割った額が子供1人の財産の取り分であり、非嫡出子はその半分となります。

被相続人に配偶者はいるが子供がいない場合

被相続人に配偶者はいるが子供はいない場合で、親と兄弟がいたとします。

法定相続人の順位は、2位が直系尊属、3位が兄弟姉妹なので、被相続人の法定相続人は配偶者と親になります。

兄弟は法定相続人になりません

この場合の財産の取得割合は「配偶者:親=2:1」となります。

配偶者は1位、直系尊属である親は2位なので、この数字に注目すると、取り分の割合の数字が順位の数字と逆になっているのをお気づきでしょうか?

このルールでいくと、親がいなくて、「1位:配偶者」と「3位:兄弟姉妹」が法定相続人となった場合は、「配偶者:兄弟姉妹=3:1」となります。

直系尊属の取得割合は、その合計人数分となりますので、1人なら3分の1ですが、2人なら3分の1の2分の1で6分の1ずつとなります。

ちなみに、兄弟姉妹の中に非嫡出子がいた場合は、0.5人と数えます。

財産の4分の1を合計人数分で割った分が1人の取得割合です。

そして、非嫡出子の場合はその半分となります。

被相続人が天涯孤独で、親も兄弟姉妹もいない場合は、配偶者が全てを相続します。

被相続人が配偶者も子供もいない場合

法定相続人の1位(配偶者と子)がいないのですから、2位の直系尊属に相続権が発生します。

両親ともいなくても、祖父母のどちらか、あるいは両方がご存命なら、あるいは曾祖父母がご存命なら、といったように、最近は高齢社会なので、若くして亡くなればこの辺まで法定相続人が広がる可能性もあります。

とにかく、直近の直系尊属が1人でもいれば、兄弟姉妹には相続権は発生しません。

しかし、直系尊属が全くいない場合は3位の兄弟姉妹に相続権が発生します

相続人がいない場合は?

代襲相続とは

直系尊属と配偶者を除く、子・兄弟姉妹が法定相続人の場合、被相続人に子や兄弟姉妹が法定相続人になる場合、その法定相続人が亡くなっている場合は、その子供や孫といった直近の直系卑属に相続権が移行します。

これを代襲相続といいます。

「子」に相続権があって、その「子」が亡くなっている場合は、その子や孫といった直系卑属が相続することを、「代襲相続」といいます。

相続すべき子(代襲相続を含む)がおらず、兄弟姉妹に相続権が発生し、さらにその兄弟姉妹が亡くなっていて直系卑属がいる場合は、その直系卑属が代襲相続できます。

配偶者や直系尊属には、代襲相続の概念がありません。

代襲相続は、子や兄弟姉妹の地位にいる人のみの概念となります。

相続財産管理人の選任が必要な場合

両親も祖父母も亡くなっていて、一人っ子で、結婚もしていなくて、子供もいない場合、法定相続人がいないことになります。

その場合は、利害関係のある者が家庭裁判所に申し出ると、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらえます。

相続財産管理人は、被相続人の財産を整理して、精算を済ませた後、残った財産から相続財産管理人の報酬等を差し引いて、残った財産を国庫に帰属します

利害関係がある者とは、被相続人に債務があって、その債務を弁済したい者や、特別縁故者です。

債務を弁済したい者は、相続財産管理人に弁済することで、被相続人への債務を帳消しにして貰えます。

また「特別縁故者」とは、被相続人の内縁の妻、被相続人を最後まで扶養したり介護したりしていた者、一緒に不動産や会社等の財産を共有していた者等の、法定相続人ではないが、国庫よりも財産を相続する権利があると家庭裁判所が認める者です。

ですから、自分が特別縁故者だと思うものは、自分から名乗り出て、家庭裁判所に「特別縁故者」として認めてもらう必要があります。

ちなみに特別援護者にも順位があります。

順位の例をあげます。

1位:内縁の妻や内縁の夫、自治体が発行した結婚証明書を持つ者

2位:介護や看護、家政婦等で、日々被相続人のお世話をしていた者

3位:共同経営者や共有財産者となる者

家庭裁判所が特別縁故者と認められた者は、相続管理人が被相続人の財産を整理し全ての財産の精算を済ませた後、残った財産を相続することができます。

遺言があるとどうなる?

遺言書の効力

法的に有効な遺言書があれば、民法で定めた法定相続人の範囲やその相続順位を、覆すことができます

法定相続人の権利を排除することも、生前に相続権廃除の手続きをした者の相続権の復活の手続きの依頼も可能です。

その他、相続の執行人、相続財産管理人の指定、後見人の指定等、法的な手続きの意思表示もできます。

他にも、法定相続人の相続に条件をつけたり、法定相続人の順位を変更したり、法定相続人の取得割合を変更したり、遺留分請求兼に関わること以外は何でも可能です。

例えば、遺言書で被相続人が、子供に財産を残さず、全額慈善団体に寄付することもできます。

また、不倫をしていた妻に相続させずに、兄弟姉妹や法定相続人以外の恩を受けた人に全財産を残すことも可能です。

配偶者と子以外に、愛人とその子供にも平等に財産を分けたり、相続させる財産の個別指定をしたりすることも可能です。

遺言書は、自分の財産を自分の死後に、自由に分配(遺留分請求兼の取得分を除く)する大きな効力を持つのです

遺言書の種類

遺言書には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類ありますが、公正証書遺言以外は、家庭裁判所の検認が必要です

被相続人が書いたその遺言書が、法的に有効な遺言書かどうか確認するためです。

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が被相続人の遺言を代筆したものなので、既に法的に有効になるよう作成されています。

そのため、改めて家庭裁判所が確認する必要がありません。

また、たとえ法的に有効な書式で遺言書が作成されていても、遺留分請求権のある法定相続人の遺留分請求を否定する遺言の条項は無効とされます。

ただし、被相続人の希望として「遺留分請求をしないで欲しい」と付記事項に書くのは自由ですが法定相続人がその遺言を無視して、遺留分請求を家庭裁判所に申し立てるのも自由です。

相続放棄をすると順位が変わる

相続放棄をすると相続順位はどうなる?

法定相続人が確定した後に相続放棄をした場合、相続順位はそのままで、相続の取得割合が変わります。。

つまり、相続放棄をすれば、特定の人に相続が集中するということです。

例えば、配偶者が相続放棄をすれば、子供に全ての財産を相続します。

また、父親が亡くなったときに、子供達が独立していて、母親の生活のことを考えて、家や土地を含め全ての財産が母親に遺るようにと、相続を放棄することもよくあります。

また、親戚づきあいが良好で、子供のいない夫婦で夫が先に亡くなってしまって、妻が遺されたときに、法定相続人である亡くなった夫の両親や夫の兄弟姉妹が、相続を放棄して、残された妻に全財産を相続させ、残された妻の生活を守ることもできます。

例えば夫の両親が夫の妻を不憫に思って、財産放棄をしたとしたら、財産は妻に集中します。

一方、子のない妻が自分ひとりで生きていける自信がある場合は、妻が相続放棄して、年老いた義父母に夫の財産を全て相続させることもできます。

このように、プラス財産の相続放棄は、法定相続人の誰かに財産を集中させる「温かい思いやり」になります

一方、マイナス財産の相続放棄で、財産を集中させるということは、債務や責任を押しつける「逃げる」行為となります。

相続放棄にはルールがある

「財産を受け取りたくない」という意思表示を家庭裁判所に申し立てれば、相続放棄する事ができます。

一般的には、マイナス財産(借金等)がある場合、借金の返済から逃れるために相続放棄したり、相続財産が売却のできないような不動産や国宝等で、相続税で破産してしまうような場合も相続放棄される例が多いそうです。

人間関係から、「財産を相続したくない」と思うこともあるでしょう。

ただし、相続放棄の手続きは、相続権があることを知ってから3ヶ月以内です。

その3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしなければ、被相続人の債務まで相続したことになり、否が応でも被相続人の債務を自分の債務として返済していかなければならなくなるのです。

また、相続放棄は包括的に行われます。

借金は相続したくないけど、家だけは相続したいというような、一部相続はできません

そして、一旦相続放棄の手続きをしてしまったら、撤回することもできません。

それが未成年の判断によるものや、詐欺や脅迫によって自分の意思ではなかったと家庭裁判所に認められた場合に限り、相続放棄の撤回が例外的に許されます。

まとめ

いかがでしたか?

法定相続人の順位や取得割合についてご理解されましたでしょうか?

法定相続人の範囲や順位、取得割合が事前にわかっていたら、生前に遺言書を遺したり、法定相続人と話し合ったりして、自分(被相続人)の死後に相続争いが起きないように、さまざまな手段を講じることができます

これが終活の大切な項目の一つともいわれています。

また、背負えない債務等を相続しないことで、自分の人生を守ることもできます。

法律を知るということは、自分のためにも、遺された大切な人のためにも、幸せのための必要な武器ともいえるかもしれませんね。

2019年2月3日
相続財産は相続人の順位で分割割合が決まる
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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