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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年5月31日 金曜日

独身の人が亡くなった場合の相続はどうなるのか?

独身の人が亡くなった場合、両親に、親がいなければ兄弟姉妹に、亡くなった人の財産は相続されます。

世の中の高齢化と晩婚化で、昨今は、一生独身のままの人も増え始めました。

国勢調査の「生涯未婚率(50歳まで結婚歴が無い人の割合)」の直近のデータ(2015年)によると、男性が23.7%、女性が14.06%、つまり男性の4人に1人、女性は7人に1人が50歳現在独身だということになります。

また、2分で1組の夫婦が離婚してしまう時代でもあります。

法定相続人としての両親や子、兄弟姉妹がいれば問題ないのですが、両親が他界していたり、兄弟姉妹も子もいなかったりした場合の相続は、果たして誰が相続するのでしょうか。

この記事では、このような独身者が亡くなった時の相続についてあらゆるケースを解説します。

法定相続人がいない独身者であっても、相続を行えるケースがありますので、ぜひ大切な人への相続の形を見つけてください。

法定相続人と法定相続分

法定相続人

まず、冒頭で述べた法定相続人について解説しましょう。

法定相続人は、亡くなった人の配偶者、子、直系尊属(両親と祖父母)、兄弟姉妹ですが、この法定相続人の相続順位が以下のように決まっています。

1位:配偶者

1位:子

2位:直系尊属

3位:兄弟姉妹

相続順位が上の相続人が存在する場合は、下位の相続人には相続権がありません。

例えば、相続順位1位の配偶者と子がいない場合のみ、直系尊属や兄弟姉妹にも相続の可能性が生じます。

相続順位が上の直系尊属がいる場合は兄弟姉妹には相続権が無く、両親や祖父母、曾祖父母等、直系尊属が1人もいない場合、初めて兄弟姉妹に相続権が生じるのです。

法定相続分

法定相続人に配偶者と子がいる場合は、亡くなった人(以下「被相続人」という)の財産は、全て配偶者と子に相続されます。

しかし、配偶者に子がいない場合、配偶者は直系尊属や兄弟姉妹の相続順位の上の続柄の人達と、被相続人の財産を分けることになります。

その分割比率は以下の表の通りです。

配偶者

配偶者と相続財産を分ける法定相続人

法定相続分

子がいない配偶者 直系尊属がいる場合 直系尊属 配偶者:直系尊属=2:1
子がいない配偶者 直系尊属がいない場合 兄弟姉妹 配偶者:兄弟姉妹=3:1

「直系尊属」とは、直近の尊属1世代のみで、父親と祖父(2世代)がいた場合、直近の世代の尊属とは、父親のみです。祖父は法定相続人にはなりません。

また、直近の尊属1世代が父だけの時は1人で、父母の2人いた場合は2人で、被相続人の財産の3分の1を相続し、人数割りする事になります。

兄弟姉妹は何人いても、全員で被相続人の財産の4分の1を相続します。

配偶者がいない場合は、相続順位通りに法定相続人となり、被相続人の全財産を人数で均等割りか、協議して各々のそうっ族人が納得した比率で分割する事になります。

独身の人が亡くなった場合の相続

遺言がある場合は、遺言書が故人の遺志として法定相続人よりも優先されます。

しかし、ここでは遺言が無い場合として解説していきます。

親や兄弟姉妹がいる場合

子のいない独身の人の場合、相続順位1位の配偶者・子がいないので、相続順位2位と3位の親や兄弟姉妹が法定相続人となる可能性が生じます。

親がいる場合は、親が独身の被相続人の法定相続人となり、下順位の兄弟姉妹は法定相続人になれません。

親がいない場合、あるいは、親が相続放棄した場合、兄弟姉妹が法定相続人となります。

独身だが子どもがいる場合

独身だが子がいる場合は、相続順位1位の「子」に被相続人の全財産が相続されます。

子がいても、認知して戸籍に繁栄していない場合は、法定相続人の「子」とは認められませんので、そのままでは相続できません。

しかし、今の時代、DNA鑑定をすればすぐに親子鑑定は99.5%以上の可能性で確定されますので、家庭裁判所に死後認知を申し出て、戸籍上、被相続人を父親にする事も可能です。

これは被相続人が男性の場合の話です。

一方、被相続人が女性で、若いときに結婚しないまま産んだ子を養子に出して、独身を貫いた場合、生まれて死ぬまでの戸籍を集めると、子の存在が戸籍上明らかになります。

養子に出した子でも、法定相続人の最優先順位の「子」である事に間違いないので、その子に被相続人の全財産が相続されます。

親や兄弟姉妹、子どもがいない場合

身寄りの無い人が亡くなった場合、何もしなければ、亡くなった身寄りの無い人(被相続人)の財産は、原則として国庫に帰属します。

しかし、「特別縁故者」として家庭裁判所に認められたら、一定の手続きを得た上で、特別縁故者が被相続人の財産を相続できます。

民法の規定の法定相続人に当てはまらなくても、下記のような条件に該当する人だと家庭裁判所に認められれば、相続権を持つ「特別縁故者」になれるのです。

民法第958条で明記されている「特別縁故者」を紹介します。

① 被相続人と生計を同じくする者(別居していても相続維持関係にあるものも含む)

(生計維持関係とは、健康保険の扶養者の条件と同じで収入の制限等もある)

② 被相続人の介護や療養の世話をしていた者

③ 内縁の妻や親子のように生活していた者等の「特別の縁故があった者」と裁判所が認めた者

3番目の「『特別の縁故があった者』裁判所が認めた者」というのは、過去の判例を参考に判断されます。

家庭裁判所は偽りの「特別縁故者」を出さないために、かなり厳しい審査基準を設けています。

例えば、特別養護老人ホーム等の施設が、身寄りの無い入居者の葬儀・埋葬をしたケース、血縁関係では無いものの、「死んだら財産を譲る」と約束した、といった過去の判例があります。

特別縁故者といえる状況というのは、「被相続人との密接な関係性が存在する」、という事ですが、その関係性は、多くの場合、周囲の人が知っています。

しかし、家庭裁判所は「周囲の人の陳述」では、客観的な証拠とは認めてくれません。

どういった物が家庭裁判所を納得させる証拠かというと、長年にわたるメールやラインのやり取り、旅行に行った証拠の写真や日常の写真等、誰が見ても被相続人との関係性が親密である事がわかる証拠なのです。

しかし、寝たきりの高齢者がメールやラインをするのか、介護の最中に写真を撮るのか、あるいは、一緒に釣や麻雀をやっていたとしても、その写真はあまり残っていないのが一般的です。

長く患わずに元気な人が急に亡くなった場合も、最近の高齢者はメールやラインをする人もいますが、しない人もいますので、特別縁故者の明確な証拠が無いケースが多いのです。

一方、葬儀をあげた特別養護老人ホームのスタッフや代表が特別縁故者に認められた判例は、「葬儀をしてあげるほど親密な関係」と裁判官に推測され、特別縁故者として認められました。

同じ推測なら、周囲の人の証言が証拠にならないのはおかしな話ですが、陳述を作り上げることができる可能性も確かにあるので、難しいところとも言えます。

独身の人の相続時に確認すべきこと

周りの人が知らない子どもの存在

独身の人が亡くなった場合、周りが知らない間に結婚して離婚している可能性もあります。

このような場合、被相続人には離婚した元配偶者との間に子がいる場合があります。

そういった場合、死んだとき独身だった被相続人の、生まれてから死亡するまでの全ての戸籍を集めたら、子の有無は明らかになります。

周囲が知らない婚姻歴は、この被相続人の戸籍収集の過程で明らかになるからです。

過去に結婚していた間に生まれた子がいる場合は、独身の人の全財産をその子が相続することになります。

被相続人の食事の世話から葬儀や埋葬まで全て親身になってお世話してきた家族がいたとしても、そして、法定相続人となった子が、たとえ被相続人の存在を知らずに育ってきたとしても、その子が財産を相続できるのです。

事実婚の相手の存在

周囲も夫婦だと信じ込んでいるほど仲良く生活していたとしても、それが事実婚の場合、亡くなった人(被相続人)の財産を相続する権利は、事実婚の相手(以下「パートナー」という)にはありません。

法定相続人になれるのは、戸籍上の配偶者なのです。

そのため、配偶者そのものである事実婚のパートナーに子がいない場合は、被相続人の全財産は、被相続人の両親や兄弟姉妹に相続されてしまいます。

ただし、被相続人の事実婚のパートナーに子がいた場合は、その子の戸籍がどうなっているかが問題となります。

今はDNA鑑定をすれば確実に親子鑑定を証明できますので、被相続人の子が事実婚のパートナーの戸籍に父親のいない子として明記されていたとしても、家庭裁判所に申し出て死後認知してもらえば、被相続人、いわゆる事実婚のパートナーの財産の相続権を、被相続人の子が全て相続することになります。

そして、その子が未成年の場合は、その子を養育する者として、事実婚のパートナーが被相続人の全財産の管理を子に代わって行う事になるのです。

しかし、被相続人に法定相続人となるべく身寄りがいなかった場合、子のいない事実婚のパートナーが「特別縁故者」として家庭裁判所に申立て、家庭裁判所が認めた場合、特別縁故者として、被相続人の財産を相続できます。

遺言書の存在

独身で亡くなった人(被相続人)の生まれた時から死亡した時までの全ての戸籍を集めて、慎重に法定相続人を認定したとしても、被相続人が生前に、遺言書を残していたら、相続関係や相続順位が一変してしまいます。

法定相続人は、民法で定めた相続順位のルールに過ぎないので、被相続人の生前の意思である、遺言が何より優先するのです。

被相続人の相続協議に入る前に、遺言書の存在を確認することは非常に大切です。

被相続人が、どこに遺言書を隠しているかわからないので、自宅だけでなく、思い当たる場所、全てを探さなければなりません。

周囲の人や弁護士等、信頼できる人に預けていることもあります。

そういう場合は、被相続人が亡くなったことを知った遺言書を預かった人は、自ら名乗り出てくれるでしょう。

2019年7月からは、法務局が遺言書を預かる制度が施行されるので、法務局にも問い合わせる必要があります。

財産を相続する人がいない場合はどうなる?

もともと法定相続人となるべく身寄りの無い人だけでなく、先述したように相続人全員が相続放棄をした場合も含め、亡くなった人の財産の相続すべき人がいない場合は、原則としてその財産は国庫に帰属します。

高齢化社会と晩婚化で、高齢化社会の問題の一つとして「孤独死」する人が増え始め、遺品整理のサービスが活躍する時代です。

このような社会ですから、高齢の独身者が亡くなって、遺言書も無く、財産を相続すべき法定相続人もいない場合は、意外に多いのです。

また、法定相続人がいたとしても、長年疎遠であれば、よほどの財産がない限り、相続権を放棄されてしまうことも多いのが実情です。

例えば、身寄りのいない高齢者の孤独死の事例をご紹介しましょう。

まず、ご遺体の確認と引き取りのため、警察が身寄りを探し出して連絡します。

警察から連絡があって遺体の引き取り手続きをして遺体を引き取った時に、警察は自宅から持ち出した遺留品も一緒に渡してくれます。

警察が保管している遺留品は、金融機関の通帳、年金手帳、健康保険証、現金、免許証のような身元確認に必要なものです。

ですから、孤独死した被相続人の財産というべき物を整理してくれたりしません。

貸金庫のカギや、株券・証券、生命保険の証書、遺言書、宝石や宝物なんかは自宅に行って、自分で探さなければならないのです。

大きな財産が無い場合は、そういったことが面倒だという理由で、法定相続人であることを放棄してしまうケースも現れてきました。

しかし、身寄りがあっても無くても、たとえ独身で亡くなったとしても、必ず誰かと人間関係を持っているものです。

そのような人が「特別縁故者」と名乗り出て、家庭裁判所に申立て、家庭裁判所が認めた場合は、その特別縁故者が被相続人の財産を相続することができます。

ただし、家庭裁判所が特別縁故者として認められるには、徹底した証拠が必要なだけでなく、費用もかかるし、例え認められたとしても煩雑な手続きも必要なので、よほどの財産がない限り、リスクやハードルが高いと思ってしまうのも現実なのです。

まとめ

いかがでしたか。

高齢化社会が進んだ昨今、高齢の独身者は、法定相続人がいないケースが増えてくるでしょう。

若い人も高齢の人も、今現在、生涯独身でいることを考えている人は、親や兄弟姉妹に先立たれた年齢になったときのことを考えて、大切な人に財産が遺せるように遺言書を作成することを考えてみてはどうでしょう。

家があるなら、家をどうするのか、死亡保険金をかけていたなら、大切な人を受取人にしておくのもお勧めです。

例え思いも寄らない法定相続人が出てきても生命保険金は、被相続人が指定した個人に振り込まれるからです。

このようなことを考えてみると、「自分が死んだ後財産を遺したい」と思える大切な人が誰なのかを考えるきっかけにもなります。

財産があっても無くても、一度、人生を振り返ってみて、あなたが生きた人生の残し方を考えてみるのも良いかもしれません。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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