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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年3月25日 月曜日

特別代理人を選任した未成年者の相続とは?

未成年者が相続人にいる場合は、未成年者単独で相続の手続きを行うことができません

そのため、法定代理人を立てるのですが、法定代理人が立てられないときには特別代理人を選任して、相続手続きを行う必要があります

また、成年後見人と成年被後見人との間に利害関係が生じる場合にも特別代理人の選任をしなければなりません。

では、特別代理人はどのように選任すればよいのでしょうか?

特別代理人の選任方法や手続きなど、詳しい情報とともにご紹介いたします。

特別代理人を選任した相続

特別代理人を選任して、相続をしなければならないことがあります。

特別代理人とはどんな存在であり、どのようなときに特別代理人が必要となるかについて詳しく見ていきましょう。

特別代理人とは

特別代理人とは、相続人が未成年である場合成年被後見人と成年後見人が同じ財産の相続人になった場合に裁判所で選任される代理人のことをいいます。

基本的に未成年者が財産の相続を行う場合には、親権者である父親または母親が法定代理人となりますが、父親または母親も相続人である場合、利益相反行為が生まれてしまいます。

そのため、親権者とは別に代理人を選任する必要が出てくるのです。

また、成年被後見人と成年後見人が同じ財産の相続人になった場合も利益相反行為が生まれるため、特別代理人を選任する必要があります。

 

特別代理人になるには、特別な資格は必要ありません

特別代理人に求められるものは、特別代理人として、しっかりと職務を全うすることです。

ですから、選任される場合には、利害関係の有無などによって、その人が特別代理人として適格であるかどうかを判断されます。

特別代理人が必要なケース

特別代理人が必要なケースは、相続人が未成年者であり、親権者である父親や母親といった親権者との間に、お互いの利益が相反する行為がある場合以外にも、さまざまなケースが考えられます。
たとえば、下記のようなケースが該当します。

  • 夫が死亡し、妻と未成年者で遺産分割協議をする行為
  • 複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする行為
  • 親権者の債務の担保のため、未成年者の所有する不動産に抵当権を設定する行為
  • 相続人である母(または父)が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする行為
  • 同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の申述をする行為
  • 後見人が15歳未満の被後見人と養子縁組する行為

(引用:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html)

上記のように、さまざまなケースで特別代理人は必要とされています。

特別代理人の選任手続き方法

特別代理人を選任する場合には、手続きが必要となります。

特別代理人の選任手続きに必要なもの、および特別代理人の選任手続き方法について、詳しく見ていきましょう。

選任手続きに必要なもの

特別代理人を選任するためには、申立てを行う必要があります。

その場合に必要なものは下記の8点です。

  • 申立書

※申立書とは、「特別代理人選任申立書」といい、2枚に渡っています。詳細は下記の通りです(親権者とその子との利益相反の場合)。

 

【1枚目】

特別代理人申立書と書かれている下の欄に、800円分の収入印紙を貼付します。

このとき、貼付した収入印紙に押印してはいけません

次に太枠の中に必要事項を記入していきます。

まず、管轄の裁判所名を記入し、その下にある日付記入欄に日付を記入します。

そして、申立人の署名押印の欄には、申立人のフルネームを記載し、押印をします。

添付書類の欄には、さまざまな書類名が記載されているので、該当する書類にチェックをいれましょう。

申立人の欄には、申立人の住所(郵便番号含む)、電話番号、氏名(フリガナ含む)、生年月日、年齢、職業を記入し、未成年者の場合には記載されている未成年者との関係に丸をつけます。

次に未成年者の欄には、本籍地、住所(郵便番号含む)電話番号、氏名(フリガナ含む)、生年月日、年齢、職業または在校名を記入します。

 

【2枚目】

申立ての理由の欄に記入します。

利益相反する者には該当するものに丸をつけ、利益相反行為の内容にも該当するものに丸をつけるか、その詳細を記入します。

また、特別代理人候補者の欄には、住所(郵便番号含む)、電話番号、氏名(フリガナ含む)、生年月日、年齢、職業、未成年者との関係を記入します。

  • 収入印紙800円分(子ども1人につき800円分)

※特別代理人選任申立書に貼付します。

  • 連絡用の郵便切手

※申立てをする家庭裁判所によって、連絡用の郵便切手は金額やその内訳が異なります。連絡用の郵便切手の金額とその内訳は、申立てをする家庭裁判所のウェブサイトで確認するか、電話で問い合わせて確認しなければなりません。

≪標準的な申立添付書類として≫

  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者、または未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 特別代理人候補者の住民票、または戸籍附票
  • 利益相反に関する資料

※遺産分割協議書案、契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本など)を指します。

  • 利害関係を証明する資料

※戸籍謄本(全部事項証明書など)

※利害関係人からの申立ての場合に必要になります。

(参考:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html)

同じ書類は1通あれば問題がないとされています。

ただし、審理をするために必要だと判断された場合は、追加の書類を提出する必要があります。

もし、申立をする前に入手が難しい書類がある場合には、申立をした後に提出してもよいことになっています。

選任手続き方法

特別代理人の選任の手続きを行う場合には、まず「特別代理人選任申立書」に必要事項を記入し、収入印紙800円分を貼付します。

また、連絡用の郵便切手の金額とその内訳について、申立てを行う家庭裁判所のホームページで確認するか、電話で問い合わせをして用意します。

このほか、標準的な申立添付書類として、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)、親権者または未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)、特別代理人候補者の住民票または戸籍附票、利益相反に関する資料(遺産分割協議書案や契約書案など)、利害関係を証明する資料を取り寄せます。

必要なすべての書類をそろえたら、家庭裁判所に直接持って行って提出するか、郵送で提出します。

提出方法についても家庭裁判所によって異なるため、確認してから提出するようにしましょう。

 

このように、特別代理人の選任手続きには、特別代理人選任申立書に記入するだけでなく、さまざまな書類をそろえる必要があります。

未成年者がすべてを行うのはもちろん、親権者である父親または母親がすべて行うのは、時間的にも精神的にも余裕がないことが予想されます

そんなときは、司法書士などの専門家にこれらの手続きを依頼することも可能です。

成年後見人との違い

特別代理人と成年後見人には大きな違いが6つあります

また、成年後見人の場合は、法定後見人であるか、任意後見人であるかによっても違いがあるので、それら3つの観点から違いを見ていきましょう。

≪1.申立てを行える人が違う≫

特別代理人の場合、申立てを行える人は「親権者」と「利害関係人」のみですが、成年後見人の場合は、「本人」と「配偶者」、「四親等内の親族」、「検察官」、「市町村長」です。

配偶者や四親等内の親族などがいない場合でも、市町村長が申立権を持っているため、申立てができないといった問題が起きないようになっています。

≪2.必要な書類が違う≫

特別代理人の場合は、以下の6種類の書類が必要です。

  • 申立書(特別代理人選任申立書)
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者、または未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 特別代理人候補者の住民票、または戸籍附票
  • 利益相反に関する資料
  • 利害関係を証明する資料

一方、成年後見人の場合は、下記8種類の書類が必要になります。

  • 申立書
  • 申立書付票(本人以外の申立用)※本人以外が申立てをする場合のみ
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 本人の住民票、または戸籍附票
  • 成年後見人候補者の住民票、または戸籍附票
  • 本人の診断書(鑑定が必要な場合のみ)
  • 本人の成年後見等に関する登記がされていないことの証明書
  • 本人の財産に関する資料

≪3.必要な費用が違う≫

特別代理人の場合は、収入印紙800円分(1人につき)と連絡用の郵便切手が必要となりますが、成年後見人の場合は、収入印紙800円分、登記手数料としての収入印紙2,600円分(登記印紙でも可能)、連絡用の郵便切手、鑑定料(鑑定が必要な場合のみ。鑑定料はほとんどのケースで10万円以下)が必要です。

≪4.行う業務の期間が違う≫

特別代理人は、相続時に職務を全うするだけですが、成年後見人の場合は、法定後見人であっても、任意後見人であっても、成年被後見人が亡くなるまで業務が続きます

≪5.行う業務内容が違う≫

特別代理人は、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書に署名・捺印するのに対し、成年後見人は、法定後見人であるか任意後見人であるかによって、その業務内容は異なります。

法定後見人の場合は、後見・保佐・補助の3つに細分化することができ、それぞれの立場によって同意や取消ができる範囲が異なります。

また、任意後見人の場合は、任意後見契約の内容を成年被後見人が自由に決定することができるため、行える業務の範囲は異なりますが、取消権は持っていないといった特徴があります。

≪6.選任される人が違う≫

特別代理人の場合は、未成年者と利害関係のない人が選任されますが、基本的に誰でもなることができます。

しかし、成年後見人の場合は、基本的に親族や専門家が選任されます。

ただし、法定後見人の場合は、家庭裁判所が選任するのに対し、任意後見人の場合は、成年被後見人が自由に選任することができます。

そのため、任意後見人の場合は、親族や専門家ではないこともあります。

このように、特別代理人と成年後見人には、6つの大きな違いがあります。

そもそも、サポートをするという点では共通する部分があるものの、サポートする内容自体に違いがあり、そのサポートを誰がするかという点にも違いがあります。

特別代理人を選任するメリットとは

特別代理人を選任するメリットは、大きく分けると2つあります。

 

1つ目のメリットには、「相続時の遺産分割協議などがスムーズに行えること」が挙げられます。

相続人が未成年者であり、法定相続人を立てられない場合には、特別代理人が必要となります。

特別代理人がいなければ、相続時に行わなければならないことをスムーズに進めることはできません。

また、成年被後見人と成年後見人に利益相反になってしまっている場合にも特別代理人は必要です。

 

2つ目のメリットには、「相続人である未成年者の権利が確実に守られること」が挙げられます。

特別代理人には、利害関係のない第三者が選任されるだけでなく、職務を全うすることが求められます

ですから、相続人である未成年者が不利にならないようにしっかりと権利を守ってもらうことが可能です。

このように、特別代理人を選任することで、法定代理人が立てられない未成年者が相続人にいる場合や、成年被後見人と成年後見人が利益相反してしまう場合などでも、スムーズに相続をすることが可能となります。

まとめ

このように、未成年者が相続をすることになり、親権者である父親または母親と利益相反行為が起こる場合や、成年被後見人と成年後見人の間に利益相反行為が起こる場合には、特別代理人を立てなければなりません

特別代理人を選任するためには、必要な書類と費用を用意して申立てを行う必要があります。

手続きが受理され、特別代理人が選ばれると、ようやく、遺産分割協議などの相続に関する手続きを行うことができるようになります

ですから、相続人に特別代理人が必要な未成年者や成年被後見人がいる場合には、早めに特別代理人選任の手続きをすることが大切です。

手続きが難しい場合には、司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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