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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年3月28日 木曜日

相続時に配偶者がもらえる相続分や支払う相続税とは

被相続人に配偶者がいた場合遺された夫または妻には、行わなければならない手続きがたくさんあります

そのうちのひとつが、相続税の申告です。

相続税の申告をする際に、配偶者は「配偶者の税額の軽減の制度」という制度(通称は相続税の配偶者控除)を利用することができます。

では、配偶者は相続税の配偶者控除を利用した場合、どのくらいの割合で財産を相続することができ、どのくらいの相続税を支払わなければならないのでしょうか?

配偶者が相続できる財産や相続税率をはじめ、特例である相続税の配偶者控除についても詳しくご紹介いたします

配偶者の相続割合

はどう決まる?

法定相続人と呼ばれる、被相続人と一定の関係がある相続人には、相続配分があらかじめ決められています。

そのうち、配偶者の相続割合は、下記の表のように誰と相続するかによって、その割合が違ってきます。

「法定相続人と相続配分について」

配偶者

子ども

父母、祖母(直系尊属)

兄弟姉妹

配偶者と子ども

2分の1

2分の1

配偶者と父母、祖父母(直系尊属)

3分の2

3分の1

配偶者と兄弟姉妹

4分の3

4分の1

上記の表を見てもわかるように、「配偶者と子どもで相続する場合」は、配偶者と子どもがそれぞれ2分の1ずつ相続します。

このとき、子どもが2分の1を相続するとなっていますが、2分の1を子どもの人数で割って相続することになるため、3人いれば、2分の1の相続分を3人分で割って相続します。

また、子どもがおらず、「配偶者と父母、祖父母(直系尊属)で相続する場合」は、配偶者が3分の2、父母、祖父母(直系尊属)は3分の1を相続します。

父母が両方とも健在の場合、3分の1を父母の2人分で割ってそれぞれ相続することになります。

しかしながら、父母のどちらかがすでに亡くなっており、1人しかいない場合には、3分の1を1人で相続します。

 

そして、子どもも直系尊属である父母や祖母がおらず、「配偶と兄弟姉妹で相続する場合」は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1を相続します。

兄弟姉妹の4分の1は、子どもの相続するときと同じく、兄弟姉妹の人数で割ってそれぞれを相続します。

このように、配偶者の相続割合は、誰と相続するかによって、その割合が異なるといった特徴を持っています。

配偶者が支払う相続税は?

配偶者が支払う相続税は、相続税の配偶者控除の制度を利用すれば、配偶者が取得した財産の金額のうち、「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで、相続税がかからなくなります

そのため、それらのどちらかを超えた分に相続税がかかる仕組みになっています。

それでは、配偶者の相続税率及び相続税率の計算方法について、詳しく見ていきましょう。

配偶者の相続税率

配偶者の相続税率は、相続税の配偶者控除を利用することで下げることができます。

相続税の配偶者控除をまず下記の計算式を用いて求めます。

 

相続税の配偶者控除が適用された金額

=相続税の総額×A÷課税価格の合計額

 

▼Aには、下記3つのうちどれかを当てはめます。

(1)1億6千万円

(2)課税価格の合計額のうち配偶者の法定相続分の相当額

(3)配偶者の課税価格

 

※(1)と(2)はどちらか多い金額が選択されます。

※(1)及び(2)、または(3)はどちらか少ない金額が選択されます。

相続税の配偶者控除が適用された金額が求められたら、相続税の速算表を用いて、相続税の税率を確認します。

≪相続税の速算表≫

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

※国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」の「相続税の税率」より、データを引用し、速算表を再現しています。

※この速算表は、平成27年1月1日以降の場合であり、平成26年12月31日以前に相続を開始した場合の相続税の税率は異なります。

※この速算表は平成30年4月1日現在のものです。

※この相続税の速算表には、法定相続分に応ずる所得金額と税率及び控除額が一覧にまとめられているので、相続財産に関わる相続税の控除額とその税率がわかるようになっています。

相続税率の計算方法

相続税率の計算は、財産から基礎控除額を差し引いた金額に税率を乗じて計算されます。

そのときに使用する相続税の税率は、「2.1配偶者の相続税率」でも掲載した下記の「相続税の速算表」から求めることができます。

≪相続税の速算表≫[H6]

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

※国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」の「相続税の税率」より、データを引用し、速算表を再現しています。

※この速算表は、平成27年1月1日以降の場合であり、平成26年12月31日以前に相続を開始した場合の相続税の税率は異なります。

※この速算表は平成30年4月1日現在のものです。

※この相続税の速算表には、法定相続分に応ずる所得金額と税率及び控除額が一覧にまとめられているので、相続財産に関わる相続税の控除額とその税率がわかるようになっています。

相続税率の特徴は、法定相続分に応じて取得した金額によって変動があるということです。

配偶者の相続税を安く抑えるには?

配偶者の相続税を安く抑えるためには、基礎控除や配偶者の税額の軽減の制度である「相続税の配偶者控除の制度を利用するとよいでしょう。

基礎控除を利用する

相続税の基礎控除の制度は法定相続人であれば、利用することが可能です。

また、相続税の基礎控除は、下記の計算式で求めることができます。

3,000万円+法定相続人の数×600万円=相続税の基礎控除額

このとき、法定相続人の中に相続放棄をした人がいる場合には、相続放棄がなかったとして人数に含めて計算します。

また、法定相続人に養子がいる場合、実子がいれば養子は1人まで、実子がいない場合には養子は2人まで、法定相続人として含められます。

相続税の配偶者控除を利用する

配偶者の税額の軽減の制度である「相続税の配偶者控除 」とは、被相続人の配偶者である夫または妻が、遺産分割や遺贈によって実際に取得した財産の金額において、「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで、相続税がかからないという制度のことをいいます。

相続税の申告期限である被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に財産が分割されていない場合には、制度の対象外となってしまいます

申告期限までに分割されていない財産を「相続税の申告書」または「校正の請求書」に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して、相続税の申告期限から3年以内に分割した場合には、配偶者の税額の軽減の制度の対象となります。

それ以外にも、相続税の申告期限から3年を超えてしまっても分割ができないやむを得ない事情があると、管轄の税務署長の承認が受けられた場合には、分割ができない事情が解消された翌日から4ヶ月以内に分割をすれば、相続税の配偶者控除の制度の対象となります。

 

相続税の配偶者控除は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっているため、遺産分割はとても重要であるといえるでしょう。

また、相続税の納税義務を知らないなど、相続税の申告期限内に申告をしていない場合でも、配偶者控除の制度を利用することは可能ではありますが、税務署に申告期限内に相続税の申告をしていないことを指摘された場合には、配偶者控除の制度を利用できなくなることもあるため、注意が必要です

 

このほか、配偶者の新たな財産が見つかった場合には、修正申告の必要がありますが、修正申告をした際でも、相続税の配偶者控除の制度の利用は可能です。

ただし、財産を仮装・隠ぺいした場合には、相続税の配偶者控除の制度を利用することはできなくなってしまいます。

また、仮装・隠ぺいの事実が明らかとなった場合には、制度の利用ができなくなってしまうだけでなく、重加算税が課税されるので、相続税の申告は適正に行うことが重要です。

当たり前のことではありますが、相続税の配偶者控除の制度を利用する場合には、仮装または隠ぺいされていた財産は対象外となります。

 

このほか、相続税の配偶者控除の制度を利用する場合、3つの条件を満たす必要があります。

 

まず、1つ目の条件には、「戸籍上の配偶者であること」が挙げられます。

これは婚姻関係を結び、戸籍上で配偶者である認められていることが必要であるということなので、事実婚の場合は認められません。

 

2つ目の条件には「相続税の申告期限である被相続人の財産を相続することを知ってから、10ヶ月以内に遺産分割が終わっていること」が挙げられます。

これは遺産の分割が終わっていないと、対象となる財産がわからないためです。

 

3つ目の条件には「相続税の申告書を税務署に提出していること」が挙げられます。相続税の申告書を税務署に提出していない場合には、相続税の配偶者控除の適用対象とはなりません。

配偶者控除の手続き手順は?

相続税の配偶者控除の手続きは、相続税の申告期限内である相続することを知った翌日から10ヶ月以内に申告する必要があります。

それでは、配偶者控除をするために必要な準備と手続き方法について詳しく見ていきましょう。

手続きに必要な準備

相続税の配偶者控除を受ける場合には、手続きを行わなければなりません。

その手続きに必要な準備には下記の2つのことが挙げられます。

≪1.遺産分割を済ませること≫

遺産分割が終わっていないと、配偶者がどの財産を相続したかがわからないため、遺産分割を済ませておくことは重要です。

ただし、遺産分割が終わっていない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出をすることで申告の期限を延長することが可能になります。

この制度を利用した上で、3年以内に遺産分割を終え、遺産分割の内容が決まってから4ヶ月以内に「更生の請求」を行うことで、相続税の配偶者控除が適用されます

しかしながら、3年が経っても遺産分割協議が終わらないときには、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、税務署長の承認が得られた場合には、一定の日(判決の確定日など)の翌日から4か月以内に分割されれば、相続税の配偶者控除が適用されます。

このとき、遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内までに「更正の請求」を行う必要があります

≪2.必要な書類をそろえること≫

相続税の配偶者控除には、相続税の申告書、または更生の請求書以外にも添付しなければならない書類があります。

相続税の配偶者控除の制度を利用する場合には、どんな人でも戸籍謄本が必須となりますが、遺産分割の状況や遺言書の有無などによって必要となるものが変わってきます

そのため、どの書類が必要であるかを的確に判断する必要があります。

この2つの準備をして、ようやく相続税の配偶者控除の手続きへと移ることかできます。

配偶者控除の手続き方法

配偶者控除の制度を利用する際には、下記の書類を用意します。

ただし、条件により該当書類は異なります。

  • 相続税の申告書、または更生の請求書

※相続税を申告した後に遺産分割が行われた場合には、分割成立後の翌日から4ヶ月以内に更生の請求を行わなければなりません。

  • 戸籍謄本

※被相続人のすべての相続人が記載されている必要があります。

※相続開始日の10日以降に作成されたものに限ります。

  • 遺言書の写し

※遺言書がある場合

  • 遺産分割協議書の写し

※遺産分割協議書の場合は、印鑑証明書の添付も必要になります。

  • 申告期限後3年以内の分割見込書

※相続税の申告期限内に遺産分割が終わっていない場合のみ必要になります。

申告書以外に必要な書類をそろえたら、管轄の税務署に提出することで、相続税の配偶者控除の制度を利用することができます。

まとめ

相続税の配偶者控除は、配偶者が被相続人である夫または妻の財産を相続する際に税額の軽減をするために利用できる制度です

相続税の配偶者控除をすることで相続税の控除を受けられますが、二次相続なども考慮する必要があるなど、ケースによっては相続税の配偶者控除を利用しない方がいい場合もあります。

また、相続税の配偶者控除には必要な添付書類も条件によって異なる上、申告期限が決まっています。

そのため、相続税の配偶者控除の制度の利用は、相続税の申告同様に時間との勝負でもあります

ですから、相続税の配偶者控除の制度の利用を考えた場合は、早い段階で税理士などの専門家に相談し、手続きをスムーズに行うようにすると良いでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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