2019年1月30日 水曜日
銀行で預金の相続をするために知っておきたい基礎知識
預貯金の相続については、仮に遺産分割協議(相続財産についての分割方法・割合について、相続人の間で話し合って決めること)が決了済みだったとしても銀行など金融機関に対して進めなければならない手続きであるため、非常に煩雑です。
しかし、銀行預金は相続人の今後の生活や相続税の納税資金としても必要な場合があり、面倒だからといって後回しにすべきものではありません。
本コンテンツでは、銀行預金の相続手続きをするために最低限知っておいて頂きたい基礎知識についてご紹介いたします。
目次
銀行預金の相続で掛かる相続税
まず相続についておさらい(相続の基本知識~相続税とは)
相続税は、被相続人の遺産を法定相続人が相続した場合や、法定相続人以外でも遺言で遺産を受け継いだ場合(遺贈ともいいます)、相続財産額が大きいとかかる税金です。
相続をしたすべての人が対象となる税金ではなく、相続人の人数に応じた基礎控除額が決められていますので、その金額を超えないようであれば相続税の申告は必要ありませんし、もちろん納税の必要もありません。
相続税の課税対象となる財産は、現金や銀行預金(貯金)、株式などの金融財産をはじめ、土地や建物などの不動産、自動車や貴金属、会員権など財産として分かりやすいものから、著作権や商標権、特許権などのほか、売掛金や損害賠償請求権などの債権者としての権利など、保有している権利も含みます。
銀行預金と相続税の関係
相続税法上、銀行預金は当然に相続税の課税対象となります。
また、被相続人名義の銀行預金は他の財産と同様に遺産分割の対象であり、相続税の課税対象となります。
従来、銀行預金は遺産分割の対象外というのが通説でした。
しかし、2016年12月の最高裁によってこの通説が覆り、銀行預金についても遺産分割の対象であるとの判決が下されました。
つまり、銀行預金については相続人間の遺産分割協議に基づき分割割合が決定され、それに応じて相続税が課税されるのです。
なお、銀行預金の相続税課税上の評価は銀行預金の額面とされます。
土地や建物、生命保険の死亡保険金などに適用される評価額に関する減額評価の特例はありません。
そのため、多額の銀行預金を持つ富裕層の多くは、収益マンションやアパートの購入や相続人を死亡保険金の受取人とする生命保険に加入するなどして相続税対策を行っています。
そして、国税庁による基礎控除額や配偶者控除額の範囲に収まらなかった相続税額の速算表は、以下の通りです。
相続財産額に税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して得られた額が相続税となります。
- 1,000万円以下:10パーセント(控除額なし)
- 3,000万円以下:15パーセント(50万円)
- 5,000万円以下:20パーセント(200万円)
- 1億円以下:30パーセント(700万円)
- 2億円以下:40パーセント(1,700万円)
- 3億円以下:45パーセント(2,700万円)
- 6億円以下:50パーセント(4,200万円)
- 6億円超:55パーセント(7,200万円)
インターネットでは家族構成のパターンに応じた速算表を見かけます。
しかし、その多くが法定相続割合のみを考慮したものに留まっています。
各相続人の相続税額は実際の分割割合や特別受益の有無、相続時精算課税制度の活用の有無などに応じて変わりますので、速算表だけで計算すること自体に無理があるという点をご認識ください。
そして、相続税の計算方法は諸制度や法律、さらには個別事情を複合的にしたものですので、非常に煩雑で分かりにくいものです。
このため、相続税や各種制度、法律について何も知らない人が単独で計算・申告をすると、過大申告あるいは過少申告となる可能性があります。
特に過少申告になってしまい税務署が悪質と判断した場合は、追徴課税などが課されてしまうリスクがあります。
したがって、相続税の計算・申告や税務署との折衝については、多少のコストが生じたとしても税理士などの専門家に依頼することが確実です。
相続税の控除
相続税は、銀行預金を相続した人の全てに課税される性質の税金ではありません。
他の遺産を含めた相続財産額が、「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」の基礎控除の範囲内に収まるのであれば、相続税は課税されません。
また、被相続人の配偶者には配偶者控除の規定があり、法定相続割合または1億6,000万円のいずれか大きい金額に相続財産額が収まる場合は、相続税は課税されません。
さらに、相続開始前3年以内に被相続人から相続人へ贈与があり、その贈与財産に相続税が課税された場合は、その贈与税額を控除することが認められています。
他にも障がいを持つ相続人を対象とした障害者控除、20歳未満の相続人を対象とした未成年者控除、相続開始前10年以内に被相続人が他の相続により相続税が課された場合に一定の金額が控除される相次相続、相続時精算課税が適用される財産に贈与税が課されていた場合に当該贈与税額相当額の控除など、相続税には多種多様な控除が認められています。
亡くなった人の預金口座は凍結する
詐欺対策やアンチマネーロンダリングの機運が高まる中、銀行などの金融機関は口座名義人の死亡の事実を知った場合、亡くなった人の預貯金口座の全ての機能を原則として凍結することになりました。
これにより、相続人による銀行所定の手続きが完了するまでは口座への入出金・振込・記帳・貸金庫・公共料金の引き落としなど、原則としてすべての取引が不可能となったのです。
なお、遺産分割協議などが整っていない相続人からの被相続人名義の銀行預金の払い戻し請求については、2018年の民法改正により「相続時の預貯金額×3分の1×法定相続分」を上限に葬儀費用や相続人の生活費、被相続人の債務弁済など用途を限定したうえで例外的に応じることになっています。
いずれにせよ被相続人の銀行預金を相続するために、まず相続人は被相続人の預貯金口座凍結の状態を解除するための手続きを優先的に行わなくてはなりません。
ただ、この手続きには相当に手間と時間がかかります。
なぜなら、手続きのルールや書類の様式などは金融機関ごとに異なり、書類などを作成する負担は被相続人が取引していた金融機関の数に比例して増加してしまうためです。
また、金融機関によっては相続手続きを営業店窓口ではなく「相続事務センター」などで行う場合があります。
その場合、一般的に金融機関とのやり取りは電話や郵送での手続きになることから、金融機関職員と対面で手続きを行う方法よりも時間を要することが想定されるのです。
遺産分割協議をする必要がある
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割割合を協議するものです。
これは基本的に代襲相続人(被相続人の子が存命でいない場合、その子に代わり孫などが相続すること)や包括受遺者(遺言などで財産を特定せず相続することを指定された人)を含む相続人全員で行われるものであり、相続人の一部を除外した遺産分割協議は無効とされています。
そのため、遺産分割協議に入る前は相続人の調査を入念に行う必要があります。
具体的には、被相続人の戸籍謄本を辿って把握していない相続人以外の相続人の有無を調査します。
なぜならば、例えば被相続人が再婚者である場合、その妻子に対して前婚の事実や前妻との間の子供の存在を隠していることも有り得るためです。
相続人が確定した場合は、居住地や連絡の可否を確認します。
もし相続人と考えられる人に行方不明者がいる場合は、戸籍や戸籍附票、住民票等などで居住地の調査をしたり、死亡届が届けられていないかを調査することが大切です。
もし、死亡していることが判明した場合は代襲相続人の有無および有の場合は居住地や連絡の可否を調査・確認します。
しかし、場合によってはいくら手を尽くしたとしても、相続人の居所が不明であったり、生死でさえも不明の場合があります。
このような場合、行方不明となっている相続人に対して何らかの法的な手段を行ったうえで遺産分割協議を進めないと、後日もし行方不明者が現われ家庭裁判所などを通じて遺産分割無効の主張がなされた場合は、再度遺産分割を行わなければなりません。
まず、相続人に行方不明者がいる場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを検討することになります。
失踪宣告が認められると、行方不明者は死亡したこととみなされますので残りの相続人で遺産分割を協議を行うこととなります。
ただし、失踪宣告により代襲相続が発生する場合は、遺産分割協議には当該代襲相続人を加える必要がありますのでご注意ください。
また、生死不明でも失踪宣告の要件を満たさない場合や、生きていることは明確であるものの行方不明である場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てることになります。
選任された不在者財産管理人は、当該行方不明者の代わりに、遺産分割協議を行う事となります。
不在者財産管理人は行方不明者の財産の管理・保存行為を行う立場にあります。
そのため、行方不明者の利益を害さないように遺産分割協議の内容次第で、その確定には家庭裁判所の許可が必要とされています。
なお、相続人間での遺産分割協議が相続税申告・納付期限まで整わない場合は、相続財産は「未分割」の状態とされ、いったん法定相続割合で相続財産が分割されたものと仮定し、相続人それぞれが相続税を申告・納税することになります。
また、相続人それぞれの主張が折り合わず、どうしても相続人間では遺産分割協議がまとまらないと考えられる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停・審判を申し立てることも選択肢のひとつです。
手続きに必要な書類を集める
口座凍結解除のための手続きに必要な書類は金融機関ごとに異なりますが、銀行や信用金庫などでは概ね共通して以下の書類の提出を求められているようです。
下記の他に、金融機関ごとに特有の提出書類があるとお考えください。
- 金融機関への相続手続きに関する申込書
- 相続人の戸籍謄本一式
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人の本人確認書類
- 被相続人の公正証書遺言または裁判所検認済みの自筆証書遺言の写し(ある場合)
- 被相続人の戸籍謄本一式(出生時から死亡時までのものであることが前提)
- 被相続人の通帳、キャッシュカード、証書など
- 遺産分割協議書の写し(作成している場合)
この他、デリバティブ預金など金融機関の預かり資産の種類によってはマイナンバーの写しや金融商品取引法関連の確認書などが必要になる場合があります。
また、名義変更の形で相続人が当該金融機関に引き続き預金する場合は、口座開設申し込み書や口座振り替え依頼書、実特法やFATCAなどアンチマネーロンダリング関連の書類の提出などが必要になります。
上記のうち、もっとも取得に時間と手間を要するのが戸籍謄本一式でしょう。
前項でも触れたように、相続手続きには被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。
しかも、その連続性を確認するために戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍と何種類もの戸籍謄本が必要なのです。
さらに被相続人や相続人の本籍地がある役所まで赴かなくては取得できないため、被相続人が生前に本籍地を何度か変えていた場合は本籍地を置いたことのある全ての土地の役所まで赴かなくてはならないのです。
また、昔の戸籍謄本は書体や記載方法の面で読み解くことが非常に難しいものです。
このように、手間や正確性などを考慮した場合は多少費用が発生したとしても司法書士に手配を依頼する事が一案です。
手続きに必要な書類は、遺言がある場合とない場合では違いがあります。以下でそれぞれの必要な書類をご紹介していきます。
遺言がある場合に用意するもの
被相続人の遺言を確認できた場合に、相続人が銀行預金口座等の名義変更手続きのために必要なものを挙げていきます。
- ・被相続人の戸籍謄本
1年以内に発行されたもので、被相続人の死亡が確認できるもの。
コピーではなく原本を市区町村役場で用意する。 - ・受遺者の印鑑登録証明書(原本)
市区町村役場が発行して6ヵ月以内のもので、未成年者が受遺者に含まれる場合に必要なものは、代理人の印鑑登録証明書。 - ・受遺者の実印—預金を代表して相続する受遺者の実印
- ・相続に関する銀行指定の依頼書
- ・印鑑届
預金等を名義変更で相続する場合、新たに名義人となる人はあらかじめ銀行の店舗で印鑑届準備しておく。 - ・被相続人の預金口座通帳など
名義変更する預金口座通帳や証書類、キャッシュカード、貸金庫の鍵など。
上記に加えて以下の遺言に関する書類を用意します。遺言書の内容によって名義変更に必要なものが異なります。
遺言書(原本)
—公正証書遺言の場合は、遺言書謄本の原本
—自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済証明書(原本)
遺言がない場合に用意するもの
遺言がない状態で相続人が銀行預金口座等の名義変更をする場合には「遺産分割協議書」の有無で銀行預金口座等の名義変更に必要なものが異なります。
「遺産分割協議書」とは、先に記載した相続人全員が参加して遺産相続について協議する「遺産分割協議」の結果を書き残した書類のことです。
まずは、遺言がなく、遺産分割協議書がある場合の銀行預金口座等の名義変更手続きに必要なものを挙げていきます。
- ・被相続人の戸籍謄本
1年以内に発行されたもので、被相続人の死亡が確認できるもの。
コピーではなく原本を市区町村役場で用意する。
※「法定相続情報一覧図の写し」(作成日より1年以内)でも手続が可能。
「法定相続情報一覧図の写し」は法務局で手続き後入手可能。 - ・すべての相続人の戸籍抄本または戸籍謄本の原本
1年以内に発行されたもので、被相続人との関係がわかる戸籍抄本または戸籍謄本
※被相続人の戸籍謄本で確認できる場合は不要。
「法定相続情報一覧図の写し」でも可能。 - ・すべての相続人の印鑑登録証明書(原本)
市区町村役場が発行して6ヵ月以内のもので、未成年者が相続する場合に必要なものは、代理人の印鑑登録証明書。
相続人の1人が、代表してほかの相続人や受遺者の手続も行う場合に必要なものは、代表者だけではなく、すべての人の印鑑登録証明書になる。印鑑は誰でも手に入れられるものため、本人の印鑑だと証明するため。 - ・手続者の実印
相続人を代表して相続手続をする人の実印。 - ・遺産分割協議書
すべての相続人の署名・捺印があるもの。 - ・相続に関する銀行指定の依頼書
- ・印鑑届
預金等を名義変更で相続する場合、新たに名義人となる人はあらかじめ銀行の店舗で印鑑届準備しておく。 - ・被相続人の預金口座通帳など
名義変更する預金口座通帳や証書類、キャッシュカード、貸金庫の鍵など。
遺言書がなく、遺産分割協議書がない場合の名義変更手続に必要なものは以下となります。
- ・被相続人の戸籍謄本
1年以内に発行されたもので、被相続人の死亡が確認できるもの。
コピーではなく原本を市区町村役場で用意する。
※「法定相続情報一覧図の写し」(作成日より1年以内)でも手続が可能。
「法定相続情報一覧図の写し」は法務局で戸除籍謄本等と法定相続情報一覧図などの必要なものを提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれる。 - ・すべての相続人の戸籍抄本または戸籍謄本の原本
1年以内に発行されたもので、被相続人との関係がわかる戸籍抄本または戸籍謄本
※被相続人の戸籍謄本で確認できる場合は不要。「法定相続情報一覧図の写し」でも可能。 - ・すべての相続人の印鑑登録証明書(原本)
市区町村役場が発行して6ヵ月以内のもので、未成年者が相続する場合に必要なものは、代理人の印鑑登録証明書。 - ・手続者の実印
相続人を代表して相続手続をする人の実印。 - ・相続に関する銀行指定の依頼書
- ・印鑑届
銀行の預金等を名義変更で相続する場合、新たに名義人となる人はあらかじめ銀行の店舗で印鑑届準備しておく。 - ・被相続人の預金口座通帳など
名義変更する預金口座通帳や証書類、キャッシュカード、貸金庫の鍵など。
遺言書や遺産分割協議書の有無に関わらず、被相続人が、外貨預金や投資信託、ローンなどを契約していた場合の名義変更手続きや手続きに必要なものは異なります。
銀行によって名義変更手続きに必要なものが異なる場合があるため、事前に銀行に名義変更手続きの詳細について問い合わせしておくといいでしょう。
銀行預金相続の際に注意するべきこと
口座引き落としがあるかを確認しておく
もし被相続人が取引していた金融機関を明らかにしていなかった場合、まず被相続人がどの金融機関と取引していたのかを正確に把握することから始めましょう。
この場合、被相続人が残した金融機関の通帳や残高通知などの定期郵送物、キャッシュカードなどを探し、それで確認することになります。
しかし、もしこれらが見つからない場合、あるいは被相続人がインターネット専業銀行としか取引していなかった場合は、相続財産を特定ことが難しくなります。
このような事態を回避するため、いずれ近いうち相続が発生するかもしれない家族とは、どの金融機関と取引しているのか日ごろからのコミュニケーションで把握しておくことは重要です。
通帳が見つかったら、まずは口座の引き落とし状況を確認しましょう。
これにより、例えば固定資産税等の引き落としや賃料収入の振込みがあれば不動産を所有していること、保険会社への生命保険料ないし年金保険料の引き落としがあれば生命保険契約ないし年金保険契約があること、貸金庫使用料の引き落としがあれば金融機関と貸金庫契約があること、証券会社からの株式や債券などの配当金・利金の自動入金があれば有価証券を保有していることなど、被相続人の様々な財産の状況がわかります。
また、これにより保険会社や不動産管理会社など被相続人が生前に取引していた取引先を辿ることが可能となります。
特に借入金の約定弁済の引き落としがある場合は要注意です。
借入金の金額の多寡によっては、相続の限定承認(預貯金などプラスの財産の範囲内で、借入金などマイナスの財産を相続すること)や相続放棄も視野に入れる必要があります。
また、電気・ガス・水道など公共料金の引き落としがあり、遺産分割に基づく名義変更または払い戻しを行うまで当該口座からの引き落としの継続を希望する場合は、相続人全員の合意のもと金融機関に「公共料金などの引き落とし継続に関する依頼書」を提出してください。
相続トラブルのリスクを避ける
仮にあなたが他の相続人よりも被相続人の財産について多くのことを知り得る立場だったとしても、決して一部の相続財産の存在を隠したり金額を偽るようなことをしてはいけません。
特に被相続人が自分の子や孫など相続人の名義で作成している「名義預金」については、贈与財産ではなく相続財産です。
遺産分割協議の場で名義預金の存在を隠していたことが後日露見し、他の相続人から遺留分侵害請求権を行使された実例もあるのです。
なお、名義預金は相続税課税逃れに用いられる事例が昔から後を絶たないことから、後日の税務署による調査(税務調査)の典型的なターゲットとなっています。
口座凍結前の引き出しに注意する
相続人の中には、被相続人が亡くなった直後に金融機関が口座を凍結する前のタイミングを狙い、銀行預金を引き出す人がいるようです。
被相続人の遺志に基づかず、遺産分割協議が整っていない時点で他の相続人の同意を得ずに被相続人の銀行預金を勝手に引き出すことは不当行為です。
この場合、一般的に他の相続人は銀行預金を引き出した相続人に対して、引き出した預貯金相当額の返還を求める損害賠償請求権または不当利得返還請求権があると考えられています。
もし預貯金引出について疑わしいと感じた場合は、金融機関に「取引履歴明細証明書」の発行を請求してもらい、調べる方法があります。
もちろん、あなたが「少しくらいならいいだろう」と被相続人の口座のお金に手を出すことは厳に慎んでください。
銀行口座の譲渡は禁じられている
銀行の通帳やキャッシュカードを他人に使わせたり、売ったりすることを、どの銀行でも禁じています。
なぜならば、そうした銀行口座が振り込め詐欺などの犯罪に使われる可能性があるからです。プリペイド携帯電話や銀行の預金口座を作れば高額の対価を支払う、というアルバイトを募り、手に入れた携帯電話や銀行の口座で振り込め詐欺を行う人がいます。
うっかり高額報酬に目がくらみ、銀行口座を売ったり、銀行口座を使わせたりするという目的を持ちながら、銀行にそのことを黙って口座を作ってしまうと詐欺罪が成立します。
手元にある銀行の通帳やキャッシュカードを他人に売ったり、貸したりした場合には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」違反の罪が成立します。
銀行の預金等を相続する場合は、しっかりと必要なものをそろえて、名義変更を行いましょう。
不明点がある場合は専門家に相談を
もし相続税の手続きで不明点が出た場合、あるいは他の相続人と何らかのトラブルが予期される場合は、迷わず税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。
特に銀行預金のような客観性が高く誰にでも有用な資産については、相続手続きやトラブル発生時において専門家を交えた適切な対応が重要です。
決して、お一人だけで悩んだりしないようにしてください。