2019年2月25日 月曜日
死亡一時金と相続の関係とは??
職業が自営業やフリーランスなどで、企業に雇用されていなくて厚生年金に加入していない人は、国民年金1号被保険者ですよね。
厚生年金加入期間がなく、ずっと国民年金1号被保険者だった人は、老後の生活は老齢基礎年金のみですから、老後の生活を支えるために蓄えが必要です。
遺族年金も遺族基礎年金だけで、厚生年金のように寡婦年金や中高齢寡婦加算もなく、結婚もしておらず、子供もいない場合は、同居している両親を養っていても、遺族年金が全くもらえないため、国民年金は掛け捨てが多いと思っていませんか?
そもそも、「子供がいても、亡くなった時に子供が大きくなって遺族年金対象者ではなかったら、子供のいない妻や夫と同じで、遺族基礎年金はもらえないのではないか」と思う人もいるでしょう。
しかし、国民年金は掛け捨て保険ではありません。
厚生年金ほど手厚くはないですが、遺族厚生年金の恩恵にあずかれない人には、少しでも厚生年金との均衡を保つ救済措置として死亡一時金があります。
死亡一時金も遺族年金の一種なのです。
そこで、この記事では死亡一時金について解説します。
遺族年金同様、受給権のある遺族が自分で申請しないともらえない一時金ですから知っておくと便利です。
目次
遺族年金とは
遺族年金には、国民年金保険料を財源とした遺族基礎年金と厚生年金を財源とした遺族厚生年金があります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは?
遺族基礎年金とは、国民年金加入者で、65歳になっていなかったり、65歳を過ぎても受給を延長している老齢基礎年金受給資格者、老齢基礎年金受給者が亡くなった時に、その亡くなった方が生計を維持していた配偶者や子供族で、一定の条件を満たした人が受給できる年金型の社会保守制度です。
国民年金1号被保険者が亡くなった場合に限り、寡婦年金や死亡一時金の制度もあります。
遺族基礎年金の条件
18歳の誕生日の年度末(3月31日)を経過していない子供のいる配偶者は、配偶者自身の遺族基礎年金と子供の人数分をまとめて受け取ることができます。
しかし、もし子供が1級・2級という重い障害を患っていて、障害年金を受給している場合は、その子供が自分の障害年金を受給できるようになるまでの20歳の誕生日の前日まで、子供の遺族基礎年金は遺族である母親、あるいは父親が子供に代って受給します。
しかし、子供の分を受給している親が再婚した場合は、親の遺族基礎年金の支給は止まりますが、子供の遺族基礎年金は、子供が受給資格の条件の年齢要件に該当するその日まで子供本人が受給することになります。
配偶者や子供は、「生計を維持されていた」という生計維持要件もあり、自分の力で働いていて、亡き配偶者の遺族年金がなくても生活ができてしまう人は、受給できません。
この生計維持要件は、生前に同居していたことと、前年度の収入が850万円未満、あるいは所得が655万5千円未満(見込み所得含む)であることです。
ただし別居していた場合でも、亡くなった被保険者が仕送りをしていたり、亡くなった被保険者の健康保険の被扶養被保険者であった子供に限り、定められた収入や所得を超えないという条件で、生計維持要件を満たした配偶者や子供が含まれます。
妻が夫と離婚を前提に子供を連れて別居していても、夫が妻子のために養育費などを払っていて、妻や子供の収入が生活維持要件の範囲内である場合、夫婦仲に関係なく、先述した遺族基礎年金受給者の要件に該当する妻子であれば、遺族基礎年金を受給できます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金は、厚生年金加入者・老齢厚生年金の受給資格を満たしているが、まだ受給をしていない人や、老齢厚生年金受給者が亡くなったときに、その亡くなった方が生計を維持していた、配偶者と子供が受給できます。
この遺族厚生年金は、遺族基礎年金に比べて受給者の該当範囲が広く、配偶者や子供がいない場合でも、父母・孫・祖父母の順位で遺された生計を維持されていた遺族が受給できる年金型の社会保障制度です。
先述した通り、国民保険が財源の遺族基礎年金よりも、手厚い保障となっています。
遺族年金の1階部分が遺族基礎年金だとしたら、2階部分が遺族厚生年金です。
そして、遺族基礎年金をもらえなかった人でも、遺族厚生年金はもらえる場合もあります。
そもそも、国民年金は保険料が日本国民全員同額であるのに対し、厚生年金は給与の標準報酬月額に応じて保険料率が定められていて、その半分を会社が負担してくれています。
そのため、給与の支給額に応じて厚生年金の保険料が異なり、たくさん稼いだ人はたくさん厚生年金保険料を払っていて、その分老後の厚生年金の額も大きくなる仕組みになっています。
老齢厚生年金を受給中の人が亡くなった場合は、老齢厚生年金の4分の3の額が遺族厚生年金として、引き続き遺族に支給されます。
しかし、遺族厚生年金を受給していない人の場合は、死亡した原因となった傷病の初診日が厚生年金加入中(会社に勤めていたとき)にあるのが絶対条件です。
しかし、60歳になって定年退職した人の場合は、退職後老齢厚生年金をもらい始めるまでの5年間の空白期間があります。
その期間をカバーするために、定年退職した人が死亡した場合、会社勤めの時に初診日がある傷病が死因の場合に限り、その後5年以内の死亡なら、条件を満たす遺族の場合、遺族厚生年金の受給が可能となります。
この救済措置と同様に、会社勤めの間に初診日がある人は、定年前に会社を退職し、自営業を興して死亡した場合でも、初診日から5年以内の死亡なら、条件に当てはまる遺族は遺族厚生年金の受給者になれます。
亡くなった際にはフリーターだったとしても、会社に勤めている間に初診日があり、会社を辞めて国民年金1号被保険者になっている間に死亡した場合でも、受給ができます。
つまり、逆をいえば、無職の間にかかった病気や怪我が原因で亡くなった人の遺族は、遺族厚生年金を受給できないということです。
たまたま転職中で無職の期間が数週間あり、その間に病気になって、回復してから再就職し、その後、その病気が再発してしまって亡くなった人の場合、遺族厚生年金は受給できないのです。
遺族厚生年金の金額は、亡くなった時点での平均標準報酬と保険料納付済期間で老齢厚生年金の額が計算されます。
老齢厚生年金の受給資格は厚生年金加入期間25年ですから、まだ受給資格を満たす前に亡くなった人は、厚生年金加入期間が25年すなわち300月あったものとみなして計算されます。
上記のように計算された老齢厚生年金の4分の3が遺族厚生年金の金額です。
遺族厚生年金は、子供のある配偶者だけでなく、子供のいない配偶者もその恩恵を受けることができます。
もちろん妻の方が手厚く、同じ子供のいない配偶者でも、妻と夫では遺族厚生年金の金額も要件も異なります。
妻は、子供がいなくても30歳以上なら遺族厚生年金がもらえます。
30歳未満でも、5年間だけ遺族厚生年金が受給できます。
40歳を超えても、子供のいない妻が籍を抜かずに未亡人のままだったら、40歳の誕生日月から中高齢寡婦加算という一定の金額が加算され、そのまま65歳まで受給可能です。
夫に先立たれたまま未亡人として65歳まで過ごすには、自分で生計を維持するために働く必要もあります。
65歳からの老後の生活については、自身の国民年金と厚生年金で維持するようにして、それまでの間を援助してくれる非常に手厚い保障なのです。
子供のいない妻に加算される中高齢寡婦加算は、子供のいる妻にも加算されます。
ただし、子供の遺族年金を受け取れなくなった後、かつ40歳以上になったときのみです。
この中高齢寡婦加算は妻だけに適用される制度です。
なお、子供のいない夫も遺族厚生年金は受給できますが、妻よりもずっと遅い年齢で、55歳以上からです。
子供も配偶者もいなかった場合に、遺族厚生年金が受給できる父母や祖父母も55歳以上からです。
孫の場合は、子供の年齢要件・生活維持要件と同じ要件で受給できます。
余談ですが、遺族厚生年金は、このように受給できる遺族の範囲が広いので、掛け捨てになる可能性は非常に低いといえます。
そのため遺族厚生年金には、遺族基礎年金のように死亡一時金の制度はありません。
寡婦年金は遺族年金のひとつ
相続の発生後は寡婦年金が支給されます。
寡婦年金とは、夫が死亡し妻が相続した際に、死亡した夫が老齢年金を受け取る前であった場合、それまで夫が支払っていた保険料がそのまま掛け捨てにならないよう、妻に対して支給される遺族年金のことです。
遺族年金のうち遺族基礎年金や遺族厚生年金が支給されない場合に、この寡婦年金を受給することができます。従って、これも相続財産ではありません。
遺族年金は、死亡した人が国民年金や厚生年金などに加入、または受給条件を満たして受給していた場合に、一定の条件を満たしている遺族が受け取れるものですが、寡婦年金はその中でも妻に対して支給されるものを指します。
このほか、相続財産ではない遺族年金の1つに死亡一時金があります。
では、相続が発生した後の寡婦年金と死亡一時金には、どのような違いがあるのでしょうか。
遺された配偶者が妻で、18歳未満の子がいない場合は死亡した夫は国民年金1号被保険者に適用され、妻は相続の発生後に寡婦年金または死亡一時金のどちらかを選択できます。
一方、遺された配偶者が夫の場合は寡婦年金の受給権はなく、相続の発生後は死亡一時金だけ申請できるという違いがあります。
また、寡婦年金は相続の発生後5年間支払われますが、死亡一時金は寡婦年金とは違って一時金として1回のみ支払われます。
寡婦年金は、相続が発生した後も遺された妻に複数年に渡って支給されるのに対し、死亡一時金は遺された妻または夫に1回のみ支払われるところに大きな違いがあります。
なお、死亡一時金については、他の章でくわしくご説明します。
寡婦年金の受給条件
相続の発生後、この寡婦年金を受給するためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。
具体的には、相続財産に該当しない寡婦年金は、下記4つの条件を満たしている場合に支給されます。
1)夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を10年間納めており、その夫と10年以上の婚姻期間があり生計が維持されていた妻であること
2)死亡した夫が障害基礎年金の受給権者に該当せず、老齢年金も受けていなかった妻であること
3)老齢基礎年金を繰り上げによって受給していない妻であること
4)受給権が発生してから5年以内に請求していること
このように、相続財産に該当しない寡婦年金は、夫が自営業者であった妻が受給対象となっています。
一方、死亡一時金は、国民年金第1号保険者として保険料を納付している期間が36ヶ月以上あることが条件です。
この死亡一時金は、遺された配偶者が妻であることは要件ではありませんが、死亡した人が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していないことが条件となっています。
なお、子のいない妻の場合には、寡婦年金あるいは死亡一時金のどちらかを選んで受給することができ、子のいない夫は死亡一時金だけ受給できます。
もし、このような配偶者が遺されていなければ、死亡一時金は、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に受給することが可能です。
寡婦年金の支給額
寡婦年金の支給額は、死亡した夫が生きていれば受け取ることになる老齢年金の4分の3の額に該当します。
実際に、20歳から60歳まで国民年金の保険料を全て支払った場合には、老齢基礎年金の満額は779,300円となります。このうち、死亡した夫が支払っていた年数分の4分の3が支給されます。
たとえば、夫が38歳で死亡したとすると、40年間払うべき年金のうち18年分を支払ったことになるので、その額は「779,300円 × 18/40年 = 350,685円」です。
このうちの4分の3にあたる額を受給できることになるので、「350,685円 × 3/4 = 263,013円」となります。
従って、妻は、60~65歳の最大5年間に毎年、263,013円を寡婦年金として受給することができます。
相続の発生後、死亡一時金は一度だけの受給なので、場合によっては寡婦年金を選択した方がよい場合もあります。
中高齢寡婦加算とは
このほか、相続の発生後、遺された妻には中高齢寡婦加算がありますが、これも相続財産ではありません。
この中高齢寡婦加算とは、以下の3つの条件を全て満たしている場合に、妻の遺族厚生年金に加算される65歳までの有期年金のことです。
1)夫が死亡した当時、夫により生計が維持されていた妻であること
2)遺族厚生年金が長期要件に該当する場合には、死亡した夫の厚生年金被保険者である期間が20年以上あること
3)夫が死亡した時点で妻が40歳以上または40歳の時に遺族基礎年金の支給対象となる子がいること
中高齢寡婦加算は、妻が受給できる期間は40歳~65歳までですが、遺族基礎年金の受給期間は支給が停止されます。
なお、夫が死亡した時点で妻が40歳未満で遺族基礎年金を受給しない場合には、中高寡婦加算の加算がなく、遺族厚生年金は5年間で支給が停止となる可能性があります。
また、妻が40歳の時点で遺族基礎年金の受給要件を満たしている子がいる場合には、夫が死亡した時に妻が40歳以前であっても、遺族厚生遺族厚生年金に対して中高齢寡婦加算が適用されます。
ただし、妻が40歳以降であっても遺族基礎年金を受給している間は、中高齢寡婦加算は支給停止となります。
また、子がいる場合でも、妻が40歳以前にその子が18歳年度末に達するなどの理由によって遺族基礎年金の受給権利を喪失(失権)した時には支給されないため、注意が必要です。
この場合は、子にとっての父が死亡したことで母と子は遺族基礎年金の受給権を得ます。
このとき、子が母と同居している場合は母に遺族支給年金が支給されるため、子の遺族基礎年金は支給停止となります。
その後、事情によって子が一人暮らしをするようになった時には、母の遺族基礎年金の受給権が失権し、子の支給停止が解除となって遺族基礎年金が支給されますが、18歳年度末になると、子の方も失権して遺族基礎年金が支給されなくなります。
このような場合は、妻が40歳以前には中高齢寡婦加算は支給されないことを知っておきましょう。
なお、寡婦年金と同様に、中高齢寡婦加算も妻が死亡した場合は夫に支給されません。
このように考えると、相続において死亡一時金が受給者となりうる遺族の範囲が広い社会保障制度であるのに対し、寡婦年金および中高齢寡婦加算は配偶者である妻のための制度ということができます。
これは、日本がかつて妻が家を守り夫が外で働くことが当たり前だった時代の社会制度が相続にも反映されているということでしょう。
死亡一時金は遺族年金のひとつ
遺族厚生年金は、亡くなった方に配偶者や子供がいなくても、その故人に生計を維持されていた父母や祖父母、孫まで受給資格者が広がっています。
そのため、一般的に会社勤めの厚生年金加入者が亡くなった場合は、遺族基礎年金をもらえなくても、遺族厚生年金でカバーをすることが可能です。
しかし、国民年金1号被保険者が亡くなった場合は、遺族にこの遺族厚生年金の恩恵はありません。
そこで、国民年金1号被保険者が亡くなった時に限り、60歳以上65歳未満までの寡婦年金を設けましたが、これは未亡人となった妻だけのもので、遺された夫は受給対象外となっています。
つまり、亡くなった方が国民年金1号被保険者の場合、独身だったり、子供のいない家庭や、子供が遺族基礎年金の対象外の家庭には、遺族基礎年金は支給されないケースも多いのです。
死亡一時金は、このような掛け捨て防止のために設けられた制度で、国が遺族本人に当てた社会保障制度です。
だから死亡一時金は、相続ではなく遺族基礎年金の一種なのです。
ちなみに、相続でも贈与でもなく本人の収入ですから、所得税がかかります。
死亡一時金の受給条件
子供のいない家庭の場合、遺された配偶者が妻の場合は、夫が国民年金1号被保険者に限り、寡婦年金あるいは死亡一時金のどちらかを選択して受け取れます。
同じく子供のいない夫には寡婦年金の受給権はないので、死亡一時金だけとなります。
その他、遺族厚生年金の遺族に該当した配偶者以外の人、それらの人がいなかった場合は、生計を維持されていた兄弟姉妹も死亡一時金を受給できます。
ただし、亡くなった本人の国民年金保険料納付済期間が36ヶ月以上でなければなりません。
この制度は、あくまで国民年金の掛け捨て防止制度ですから、亡くなった本人が障害基礎年金や老齢基礎年金の受給者でないことが条件です。
死亡一時金の受給者
もし、遺された遺族が子供のいない夫であったり、65歳以上の子供のいない妻だったりした場合は、亡くなった方が国民年金1号被保険者であれば、掛け捨て防止を防ぐために、死亡一時金を受給することができます。
受給者は子供や配偶者だけではありません。
亡くなった国民年金1号被保険者に生計を維持されていた下記の人の中で、最も優先順位の高い人が死亡一時金を受給できます。
- 死亡一時金の候補者順は、
- 遺族基礎年金対象外の配偶者
- 遺族基礎年金対象外の子供
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
もしも両親が最優先順位だった場合は、どちらか一人が代表して手続きをして受け取り、両親で分ける、あるいは一緒に使うこととなります。
子供や兄弟姉妹が最優先順位だった場合も、その生計を維持されていた兄弟の誰かが代表して手続きをして受け取り、該当人数で分けます。
このように、複数の人が該当する場合は、代表者が手続きして後は皆で分けることになります。
死亡一時金の支給
死亡一時金は、国民年金1号被保険者としての保険料納付済期間が3年(36ヶ月以上)以上あるのが条件です。
遺族基礎年金や老齢基礎年金の受給要件の場合、納付済期間を数えるときは、減免手続きをした期間も納付済期間として計算されます。
これは受給資格要件ですから、経済的に支払えない事情があっても、きちんと納付しようと減免手続きをしているということで、納付済期間に数えられます。
しかし、死亡一時金の目的は、掛け捨て防止なので、実際に納付した保険料を数えます。
減免期間がある人は、4分の3納付月数は4分の3月、半額納付月数は2分の1月、4分の1納付月数は4分の1月、免除期間は0月として計算されますので注意が必要です。
納付済期間により死亡一時金の額が異なり、12万以上32万未満となります。
詳細は以下の通りです。
保険料納付済月数(保険料納付月+減免月) |
支給額 |
36月以上180月未満 |
120,000円 |
180月以上240月未満 |
145,000円 |
240月以上300月未満 |
170,000円 |
300月以上360月未満 |
220,000円 |
360月以上420月未満 |
270,000円 |
420月以上 |
320,000円 |
死亡一時金は相続財産ではない
死亡一時金は、国民年金に第1号保険者として加入し、36ヶ月以上、その年金保険料を納付していた人が老齢基礎年金や障害基礎年金を一度も受給されないで死亡した時に、その死亡した人と生計をともにしていた遺族に一時金として支給されるという社会保障制度です。
たとえ掛け捨て防止でも、そもそも国民年金の制度の趣旨が生計を維持する家族や夫婦の老後の生活を守るためのものです。
その資金源は、若年層が出資して、高齢者の生活を維持していくという循環型の社会保障制度ですから、皆が平等に恩恵を受けなければいけません。
そういう意味でも、掛け捨ては防止しなければならないのです。
なので、大切な家族を遺して先に亡くなった場合は、その年金で生計を維持していた家族にもその恩恵を授けようというものが、この制度です。
こうした意図の国の社会保障制度によって、死亡一時金は受給権者本人に支給されるものですから、掛け捨て防止の死亡一時金であっても、あくまで受給者本人に当てた国の社会保障制度となり、亡くなった人の相続財産ではないのです。
死亡一時金を受け取る方法は?
住所地の市区町村の年金課や年金事務所や年金相談センターの窓口に請求書があります。
死亡一時金の請求書は、年金機構のHPからダウンロードすることもできます。
記入例もダウンロードできるようになっています。
- 国民年金死亡一時金請求書(PDF1,255KB)
- 国民年金死亡一時金請求書記入例(PDF162KB)
その他必要な書類は以下の通りです。
- 亡くなった方の年金手帳(基礎年金番号が写ったコピーでも可)
- 戸籍謄本(亡くなった後で提出日より6ヶ月以内に交付されたもの)
- 亡くなった方の住民票(除票)
- 請求者世帯全員の住民票(住民票を返して欲しい場合は窓口に申し出ること)
- 死亡一時金を受け取るための振込口座の通帳あるいはキャッシュカード
(金融機関・支店・口座・名義人のわかるコピーでも可)
- 印鑑(認印)
これらの書類は、亡くなった方の保険料納付状態の確認、亡くなった方と請求している方の続柄や生計維持の確認のための書類です。
確認できたら、その場で振り込み手続きができるように、口座等の写しも必要となります。
ただし、戸籍謄本や住民票を他の手続きで使用したい場合は、窓口で申し出てください。
最近は、窓口が原本を確認したら、原本を請求者に返してくれることもあります。
なお、死亡一時金には亡くなった方の死亡日から2年経過すると時効によって権利が消滅します。
ちなみに、失踪宣告で裁判所から死亡宣告が下った日が死亡日となりますので、その日から2年で時効です。
東日本大震災の後、法務省の通達で、震災等で死亡の確認が遅れた場合、死亡届けが役所に受理された日の翌日から時効が換算されることとなりました。
困ったら相談したい専門家
これまで相続の中でも遺族年金について一通りご説明しました。
いざ、ご家族が亡くなれば精神的な負担があることに加え、寡婦年金と死亡一時金のどちらがよいか、また自分には受給資格があるのかどうかなど、相続について考えなければならないことがたくさん出てくると思います。
これら遺族年金は相続財産ではないため、受給資格のある遺された遺族本人が手続を申請しないと受給することができません。
相続問題において、手続きの方法や何をどう選択をすべきかについて疑問が出てきたら、手続を熟知している市区町村などの役所や年金機構、または年金の相談窓口など年金の専門家に電話などで相談することをお勧めします。
税理士であれば、相続問題における相続税の申告・更正請求や相続財産の評価や生前贈与の手続きなどを行うことができます。
また、死亡一時金や遺族年金などの遺産を相続した場合、相続税についてどういった節税対策が取れるかなども相談に応じてくれますし、要望があれば相続税の申告手続きまで依頼することも可能です。
相続には、死亡一時金などの遺族年金の相続以外にも様々な手続が必要です。また、相続税は相続が開始されてから10ヶ月以内に申告する必要があるため、不慣れな方は専門家に相談する方が安心でしょう。
死亡一時金をしっかり受給するために
昨今は、核家族化が進み、夫婦で共働きをしている家庭も増えました。
また、晩婚化や少子化で子供がいない夫婦や晩年まで独身の人も少なくありません。
そのため、大切な家族が亡くなったときに、扶養関係が成立しなかったり、子供がいなかったり、生計維持関係がなかったり等、さまざまな事情で、亡くなった時に遺族年金の恩恵を受けられない人も増え始めました。
一般的に、遺族年金は子供のいる妻がもらえるものと思ってる方が多いようですが、国民年金1号被保険者の家庭では、被保険者本人が亡くなった場合、配偶者・子だけでなく、両親・祖父母・孫・兄弟姉妹に至るまで、生計維持関係さえあれば死亡一時金の受給権発生の可能性があります。
亡くなられた方ご本人の保険料納付済月数によって金額が変りますが、少なくとも36月以上あればもらえる死亡一時金です。
比較的低いハードルでもらえますので、遺族基礎年金がもらえなくても諦めずに市区町村や年金機構や年金相談窓口に相談してみましょう。
気軽に電話で相談して、もらえそうなときに改めて必要書類を用意して窓口に出向くのがお勧めです。
死亡一時金の場合は、遺族厚生年金をもらっていても、国民年金からの遺族年金がもらえなかった人は、並行してもらえることもありますので、確認だけでもしてみましょう。