2019年1月29日 火曜日
家族が死亡して受け取るお金「死亡一時金」とは?
死亡一時金とは、亡くなった方の配偶者や子供、父母などの遺族が受けることができる現金です。
家族が亡くなった時にもらえる死亡一時金の最高支給額は32万円となります。
死亡一時金の受給対象者は優先順位があり、必要書類を添えて市町村役場へ手続きが必要となります。
今回は、家族が死亡した時に支給される死亡一時金の優先順位や支給額、必要書類、手続き方法を解説していきます。
目次
相続とは?
家族が亡くなった時によく「相続問題」という言葉を聞きます。
そもそも「相続」とはどういう意味があるでしょうか?
相続とは家族が死亡した時に、残された他の家族の人が亡くなった人の「財産」を引き継ぐという意味です。
財産の所有者が亡くなったら、誰かがそれを受け継ぐ必要があるため、遺された家族が所有者となります。
残された家族の人は「相続人」となり、亡くなった人の財産を受け取るわけです。
相続する財産とは、現金、預貯金、不動産だけでなく借金などの負債や権利も対象です。
死亡者に借金があるときも、債権者が不利にならないように相続が引き継がれて取引は安全に保たれます。
相続人は配偶者や子などの親族が該当しますが、民法で優先順位が定められています。
亡くなった人の配偶者は常に相続人となり、子供、父母や祖父母、兄弟姉妹と続きます。
家族間で遺産の相続が上手く行かない場合は、いわゆる相続問題に発展してしまうので注意が必要です。
日本は高齢化社会が深刻化しており、資産相続も他人事ではなくなってきました。
どうすれば相続をスムーズにできるか、相続税の節税なども関心が高まってきています。
亡くなった人の遺産に借金があると自分が相続人になりたくないケースもあり対処しなければなりません。
家族を相続人にするのではなく、他の人に遺産を渡したい人は遺言書を残すケースも多いです。
死亡一時金とは?
国民年金法の制度の「死亡一時金」とは、家族が死亡した時に遺された遺族に支給されるお金です。
死亡一時金は、一定の要件を満たした人が死亡したときの遺族に1回だけ支払われるので年金ではありません。
死亡一時金は、死亡日の前月までに、国民年金の第1号被保険者として36ヶ月以上保険料を納めたことが条件です。
国民年金第1号被保険者の保険料の免除期間があった場合も、保険料の納付期間に含まれます。
遺族基礎年金、寡婦年金を受け取っていた場合は支給されませんので注意しましょう。
死亡一時金は亡くなった方が保険料を納めた月数に応じて、12万円から32万円の範囲で受け取ることができます。
死亡一時金を受ける権利には2年間の時効があるので注意が必要です。
死亡一時期を受ける権利は、死亡した日の翌日から2年間と決められており、それ以降は時効となり支給されません。
そのため、遺族は死亡一時金を受ける場合、死亡日の翌日から2年以内に請求するようにしましょう。
亡くなった人が不明の場合は、失踪宣告の申立てを行い審判が確定した場合、確定日の翌日から2年です。
死亡一時金の受給対象者や必要書類
ここからは、死亡一時金の受給対象者と必要書類を詳しく見ていきましょう。
死亡一時金を受け取る遺族は、優先順位が決められています。
支給対象となる遺族は、亡くなった人と生計を同じくしていた以下の人が対象です。
▼死亡一時金を受け取る遺族の優先順位
- 配偶者
- 子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
上記の順位の中で最も優先順位の高い遺族に死亡一時金が支給されます。
死亡一時金は一時金ですから、最上位者のみに支給されます。
例えば、遺族基礎年金や寡婦年金は配偶者や子供に限られますが、死亡一時金は受給者の範囲が広めです。
死亡一時金は、配偶者や子ども以外にも、同一生計の歴史がある父母、祖父母、孫、兄弟姉妹にも受給される権利があります。
死亡一時金の受給資格に該当する遺族は申請手続きが必要となります。
▼死亡一時金の受け取りに必要な書類
- 死亡した方の年金手帳か基礎年金通知書
- 請求人の預金通帳、印鑑(認印可)
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の住民票(世帯全員分)
- 死亡者の戸籍謄本(全部事項証明)
- 生計同一証明(同居してない場合のみ)
死亡一時金の受給者は以上の書類を揃えて市町村役場へ提出します。
死亡一時金の受給者が子供や父母など、複数人が該当する場合は、そのうちの一人が請求します。
死亡一時金が受給された後、他の受給権者に分割して渡します。
受給対象者の条件
死亡一時金を受け取ることができる条件は、亡くなった人側と受け取る側にも条件があります。
まずは、亡くなった人は国民年金第1号被保険者として国民年金の保険料を3年以上納めていたこと。
国民年金の保険料の支払い期間は、免除期間を含まれます。
次に、老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とも受け取っていないことが条件です。
死亡一時金を受け取る側は、亡くなった人と生計を同じくしていた事実があり、遺族基礎年金を受けられないことが条件です。
生計が同じ事実とは、亡くなった人と遺族が住民票上、同一住所・同一世帯で同居していたこと、別の住所でも生計が同じであると認められた場合です。
亡くなった被保険者と生計を同じくしていた遺族との証明が必要となります。
死亡一時金の支給条件はあまり厳しくなく、幅広く設定されているのが特徴です。
注意点としては、死亡一時金の申請は亡くなった日から2年以内に行う必要があります。
死亡一時金の申請は、2年を過ぎてしまうと時効となり支給されないので注意しましょう。
死亡一時金と遺族基礎年金、寡婦年金のすべての支給要件を満たしている場合は、どれかを選択する必要があります。
▼死亡一時金と寡婦年金の比較
比較項目 |
死亡一時金 |
寡婦年金 |
期間 |
一時金 |
60歳から65歳になる前の間(5年間)の有期年金 |
死亡者の保険料納付 |
1号として36月以上 |
1号として10年以上 |
受給権者 |
配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹 |
婚姻期間が10年以上の妻 |
受給権者の生計維持要件 |
生計同一であれば支給 |
生計維持であること |
受給権者の年齢要件 |
年齢要件なし |
65歳未満 |
遺族年金との調整 |
遺族基礎年金が優先 |
いずれかを選択 |
繰上老齢基礎年金との調整 |
併給可 |
老齢基礎年金を繰上受給すると寡婦年金は失権 |
60歳台前半老齢厚生年金との調整 |
併給可 |
選択 |
死亡一時金、遺族基礎年金・寡婦年金はどれか一つしか支給されませんので、有利な方を選択する必要があります。
死亡一時金は1回の支給で終わるので、年金として継続的に受給される寡婦年金のほうが有利な場合が多いです。
ただし、配偶者が老齢基礎年金の繰り上げ受給をした場合は、死亡一時金しか受け取れなくなります。
寡婦年金は65歳になると受給できなくなるので、受給できる期間が短い場合は死亡一時金の方が有利です。
60歳台前半の老齢厚生年金総額と死亡一時金を合わせてもらったほうが、寡婦年金総額よりも高い場合は、死亡一時金を選択したほうがお得になります。
必要書類と手続き方法
ここからは、死亡一時金の必要書類と手続き方法を詳しく見ていきましょう。
▼死亡一時金の必要書類
- 死亡した方の年金手帳か基礎年金通知書
- 請求人の預金通帳、印鑑(認印可)
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の住民票(世帯全員分)
- 死亡者の戸籍謄本(全部事項証明)
- 生計同一証明(同居してない場合のみ)
上記の書類には、死亡者との続柄および請求者の氏名・生年月日の確認できるようにしましょう。
死亡者と生計が同一であることを証明するために、亡くなられた方の住民票および請求者の世帯全員の住民票の写しも必要になります。
年金受給者が亡くなった場合、市町村役場にて「年金受給権者死亡届」の提出も必要となります。
未支給年金を受けられる遺族がいる場合は、未支給年金の請求と合わせて提出する必要があります。
死亡一時金の必要書類の日付は、受給権発生日以降で提出日から6ヶ月以内に交付されたものに限ります。
受取先の金融機関の通帳は、本人名義の口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカード(コピー可)、印鑑を揃えておきましょう。
▼請求書はどこで入手できる?
死亡一時金の受け取りには請求書が必要になりますので、市区町村役場、または年金事務所および街角の年金相談センターの窓口で受け取りましょう。
区町村役場の公式サイトか請求書をダウンロードすることもできます。
▼請求書の提出先
死亡一時金の請求書は市区町村役場の窓口または年金事務所、街角の年金相談センターへ提出します。
亡くなった方に、厚生年金や共済年金の加入期間がある場合は、死亡一時金の他、遺族厚生年金や遺族共済年金の支給も受けられることがあります。
死亡一時金と寡婦年金の両方を受給できる場合は、どちらかを選択する必要があります。
どれを受け取ればよいか悩んでいる方は、担当者に相談しましょう。
▼死亡一時金の振込み日は?
死亡一時金は市役所で受付されると年金機構へと処理されて、約1~2ヵ月後に支給されます。
死亡一時金の受給額
ここからは、死亡一時金の受給額を詳しくみていきましょう。
死亡一時金の受給額は、亡くなった方の保険料納付済期間に合わせて最低12万円、最高32万となります。
▼死亡一時金による受給額
保険料納付済期間 |
金額 |
36月以上180月未満 |
120,000円 |
180月以上240月未満 |
145,000円 |
240月以上300月未満 |
170,000円 |
300月以上360月未満 |
220,000円 |
360月以上420月未満 |
270,000円 |
420月以上 |
320,000円 |
付加保険料を3年以上納付していた場合は、死亡一時金に8500円が加算されます。
死亡一時金と寡婦年金のどちらも受け取り条件に満たしている場合は、寡婦年金の方がお得です。
しかし、配偶者が老齢基礎年金を繰り上げして受給した場合は、寡婦年金を受け取れないので死亡一時金を貰うべきです。
死亡一時金と遺族厚生年金は併給できる?
家族が亡くなったら、お葬式や税金などでお金が必要になることがあります。
そのような時のためにも、死亡一時金のほかに遺族厚生年金がもらえる可能性があることを覚えておいてください。
死亡一時金があったとしても、生活の不安は残りますが、遺族厚生年金がもらえるなら心強いことでしょう。
遺族厚生年金はどのくらいの金額がもらえるかご存知ですか?
もしかしたら遺族厚生年金と死亡一時金の併給はできないのではないかと思っていませんか?
死亡一時金と遺族厚生年金が併給できるのかどうか、詳しく見ていきましょう。
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している(会社員や公務員など)被保険者が亡くなった時に、その家族が死亡一時金以外でもらうことのできるお金です。
平成27年に公務員等が対象だった共済年金と統合したことにより、遺族厚生年金の対象者は自営業などの国民年金加入者の遺族まで拡大し、死亡一時金の他にも遺族厚生年金をもらえる人が増えたのです。
遺族厚生年金を始めとする「遺族年金」は、「夫を亡くした妻のための年金」という性格が強かったのですが、亡くなったのが妻(厚生年金の被保険者)で遺されたのが夫の場合も、一定の条件を満たしてさえいれば、死亡一時金を受給した上で遺族厚生年金をもらうことができます。
このことはあまり知られていないかもしれません。
共働き世帯が増えている現代では、妻がフルタイム勤務をする家庭も珍しくありません。
そのため妻に対しての遺族厚生年金として、死亡一時金以外のお金をもらえるかもしれないので、死亡一時金の受給を逃さないためにも、いざという時のために遺族厚生年金の仕組みを知っておきましょう。
遺族厚生年金の受給資格
では、死亡一時金とは別に遺族厚生年金を受給できるのはどんな人なのでしょう。
下記の条件に当てはまる時は、死亡一時金以外に遺族厚生年金を受けとることができます。
【遺族厚生年金の受給資格】
- ・厚生年金加入者である被保険者が亡くなった時
- ・厚生年金加入者が病気やケガが原因で初診日から5年以内に亡くなった時
- ・障がい者の厚生年金の1級・2級を受けている人が亡くなった時
- ・老齢厚生年金の受給資格の期間が25年を超える人が亡くなった時
受給資格は上記となりますが、さらに亡くなった側にも条件があります。
- ・亡くなった人が厚生年金加入者で、保険料納付期間の3分の2以上厚生年金加入期間がある
- ・令和8年4月1日より前に死亡していて、亡くなった日に65歳未満であり、亡くなる2ヶ月前までに納付しなければならない期間における保険料の滞納がない
【支給対象者は?】
支給対象者は、「亡くなった人が生計を維持していた人」となりますが、どのような人がお金を受け取れるのでしょうか?
対象者には優先順位があり、下記に優先順位を書きましたので参考までにご覧ください。
順位が高い人から受給できます。
1.配偶者(夫が受給の場合、妻が亡くなる時に55歳以上。妻の場合、年齢制限なし。)又はその子ども
2.故人の父母(亡くなった時に55歳以上)
3.故人の孫
4.故人の祖父母(亡くなった時に55歳以上)
「亡くなった人が生計を維持していた」とは、亡くなった人と同居している、または別居しているが健康保険の扶養に入っていたり、仕送りをしていたりする状態のことを指します。
そして、前年度の収入が850万円未満の人から受給資格の判断し、これらの基準を満たさない場合、次の順位の人へ受給金が移る可能性があります。
優先順位での死亡一時金以外の金額を受け取る流れについて、さらに詳しく見ていきます。
<配偶者>
受け取る人が妻の場合、遺族厚生年金の受給に年齢は関係ありませんが、夫が亡くなった時に30歳以下の子どもがいなけれは、給付期間は5年間です。
夫が受け取る場合、受給権があるのは、妻が亡くなった時に55歳未満の時です。
また、55歳以上であっても60歳までは支給停止のため、すぐに手には入りませんのでご注意ください。
子どもがいる配偶者と18歳未満の子ども(障がい者等級1、2級で20歳未満の子どもも含む)は、併せて遺族厚生年金をもらうことができます。
<子どもや孫>
18歳未満の子ども(障がい者等級1、2級で20歳未満の子どもも含む)は、配偶者と同様に最優先で受給できますが、配偶者が受給した時には支給されません。
孫に至っては、優先順位は低いので受給の可能性は少ないと言えます。
遺族厚生年金の支給額
それでは、遺族厚生年金は死亡一時金以外でいくらくらいの金額が支給されるのでしょうか。
遺族厚生年金の計算方式は2つあります。
どちらかの額で、上回る方が支給額になります。
【本来水準の年金額の計算式】
- ・平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
- ・平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
上記2つを足して、3/4を掛けたものが本来水準の年金額になります。
【従前額保障の年金額の計算式】
- ・平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
- ・平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
上記2つを足して、3/4を掛けたものが従前額保障の年金額になります。
また、昭和13年4月2日以降に生まれた人は0.998をさらに掛けます。
計算式から遺族厚生年金額を計算し、どれくらい死亡一時金以外の金額が入るか確認することは可能ですが、収入額などで金額は変動しますので、金額の提示は困難です。
もし、自分が亡き後に家族が受け取る年金額が気になる時は、上記で示した計算式に当てはめるか、日本年金機構の「ねんきんネット」で受給額を確認できます。
死亡一時金と遺族厚生年金は併給が可能!
死亡一時金と遺族厚生年金は併給できるかについてはズバリ、併給が可能と言えます。
なぜなら死亡一時金は国民年金からの支給され、遺族厚生年金は厚生年金から支給されます。
つまり死亡一時金と遺族厚生年金は年金の種類が違い、全く別のものになるため併給ができるのです。
死亡一時金は、文字通り「一時」なので支給は1回だけに対し、遺族厚生年金は年金として長期にわたって支給されます。
死亡一時金を受け取っても遺族厚生年金が受給できることもあるので、受給条件を満たしているか確かめてみることをおすすめします。
相続税の対象となるのか?
死亡一時金は、受け取った者の一時的な所得となるので、相続税の対象とはなりません。
死亡一時金は「相続財産」には含まれませんので、相続放棄をしたとしても受給できます。
相続財産とは、相続によって相続人に承継される権利義務のことで「遺産」とも呼ばれます。
相続財産の代表的なものとしては、現金、預貯金、不動産、投資信託、株、貴金属や骨董品、ゴルフ会員権などが挙げられます。
相続財産はお金や不動産などの形のある財産に限らず、契約における地位など一切の権利義務が相続人に受け継がれます。
相続において承継される相続財産には、お金や不動産などのプラスの財産だけでなく負債などの義務も含まれます。
亡くなった人に借金があれば、その借金を返す義務が相続人に引き継がれて、返済する義務があります。
相続財産において現金や預貯金などはそのまま評価されますが、不動産や株など価格が変化するものは注意が必要です。
不動産や株は評価する時期により価値が変わるので、いつ遺産分割するのかにより相続税も異なります。
基本的には、遺産分割をする場合は遺産分割時の評価となりますが、相続税を出す時は相続が発生した時が基準となります。
不動産の場合は、どの評価方法を使うべきかもよく論点になります。
不動産の評価方法には、路線価、固定資産評価額、実勢価格、公示地価の4種類あります。
遺産分割の時、相続税支払いの時期や、どの評価方法を選ぶかによって、相続税が変わります。
まとめ
今回は、家族が死亡した時に支給される死亡一時金の優先順位や支給額、必要書類、手続き方法を見ていきました。
死亡一時金とは、亡くなった方の遺族が一時的に受け取れるお金のことです。
受け取る人は優先順位があり、配偶者、子ども、父母、孫と続きます。
支給額は亡くなった人の保険料を納めた月数に応じて異なり、12~32万円です。
死亡一時金は一時金として一度だけ支払われるものです。
受け取る条件は、亡くなった方が36月以上保険料を納めていたこと、遺族が遺族基礎年金の支給を受け取らない場合に支給されます。
死亡一時金を申請する期限は亡くなった日から2年以内と決められており、2年を過ぎると時効となり支給されないので注意しましょう。