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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年7月22日 月曜日

相続税の税務調査|絶対に知っておくべきポイント

相続税を申告するには、不動産・現金などの金融資産、債権など、さまざまな遺産を申告する必要があり、複雑で難しい点も多いものです。それ故に、申告漏れなども起こりやすいといえます。

そこで気になるのは「税務調査」について。

自分が税務調査の対象になるのか、ならないのか。税務調査がある場合、自分に何か落ち度があることが確実なのか。など、不安に思ってしまうと思います。

今回は、そんな税務調査について詳しく解説いたします。

 

相続税についての税務調査とは?

税務調査とは、税金が正しく申告されているかどうかを確認する調査です。

税務署が税金の計算間違いや、申告漏れの案件など、申告内容を調査し、正しい申告になっているか調べることを準備調査、必要であれば申告した人に直接確かめる実地調査があります。

相続税は、一定の控除額以上の遺産を受け継いだ相続人が課税される税金のため、高額になる事例が多いです。

また、相続税の申告手続きは複雑なので、申告内容に漏れや計算の誤りが起こりやすいため、税務調査の対象として税務署から目を付けられやすい手続きでしょう。

相続税もほかの税金と同じで国の収入になるため、税務署は調査を行い、納付漏れを防いでいるのです。

 

税務調査の対象をどのように選んでいる?

自分自身では正しく申告をして、税金を納めているつもりなのに税務調査が入るとなったら、不安になりますよね。

税務調査を受けやすい人の例を挙げていきます。

 

全体の20%が税務調査の対象

全相続税申告のうち、税務調査が入る割合はおよそ20%です。税務調査は、相続税の申告を受けたもの、申告を受けなかったもの併せて対象になります。

20%ですから、5人に1人は税務調査(実地調査)の対象ということです。

税務調査の結果、不備が見つかった割合は、80%前後です。

相続税の申告漏れが発見されたもののうち、事実を隠したり、虚偽の申請をしたりした人には、重加算税という最大40%も課税される罰金が課せられます。

 

税務調査対象となる原因

相続税についての税務調査が行われる対象は、相続税が課税される財産(現金、有価証券、不動産など)を相続した人です。

相続税を申告すると、計算の誤りなどを機械でチェックしています。

相続税の申告をしていなかった人に対しては、税務署は故人・相続人のほぼ全ての所得や財産に関する情報を持っているため、相続税申告の内容との誤差を確認し、税務調査の対象とします

税務署は、KSK(国税総合管理)システムに亡くなった人の名前を入力して、亡くなった人の生前の給料や保険金の受け取り内容、不動産収入の内容、退職金の金額、有価証券・不動産の売買状況など、お金に関するさまざまな情報を得ることができます。

情報と相続税申告の内容の誤差が見つかった人は税務調査の対象として挙げられます。

税務署は相続税法第58条にて、市町村長などに対して、死亡届を受理した日の翌月末までに税務署に死亡の旨を通知することを義務付けているため、死亡の事実を遅くとも死亡日から2カ月以内に知ることができます。

 

税務署は無作為に税務調査対象を選んでいるのではありません。

準備調査をして、その調査の結果、間違いや嘘の可能性が高いものを選定します

準備調査の後に、ふるいにかけるのは以下の2点です。

・相続税の申告内容は誤っていないか。計算や評価に誤りや漏れがないか
・相続税申告書に嘘の記載をしている疑いがあるか

適正な申告をしていれば、実地調査の対象になる割合を大幅に低減できます。

準備調査では、次に挙げる相続財産、被相続人、相続人についてのデータを調査しています。

・不動産(家賃収入など)
→市区町村の役場から、死亡届と同時に不動産情報が届けられます

・銀行預金の出金・入金履歴(直近10年)

・有価証券の移動履歴(直近10年)

・生命保険金の支払い履歴
→生命保険会社から税務署宛に支払い報告書が提出されています

・所得(株式の配当金なども)
→所得税の確定申告書や源泉徴収票、役員である法人の法人税申告書を確認し調査しています

 

税務調査が入りやすい傾向にある人

税務調査を受けた人のうち、約8割は不備が発見されており、これはなかなか高い確率です。この、不備が発見された人の傾向を見てみると、「税務調査を受けやすい人」の傾向があることが見えてきます。

具体的には次のような人です。

・相続税がかかるのに、申告を行っていない人
これは当たり前ですが、相続税が掛かるのにもかかわらず無申告の場合は確実に対象になります。

・税理士に頼まないで、相続税を自分で申告した人
税理士が付いてないので、相続税の申告内容にミスが生じやすくなっているためです。

・富裕層
税務署はKSKシステム(国総合勢管理システム)で高額商品となる不動産や高級な車などの購入者、また、国債を持っている人などをチェックしています。その情報から資産総額の予想を立てており、その予想と実際の申告書の金額がかけ離れていると、対象とされやすいです。

・多額の金融資産を相続した人
お金や株などの金融資産を多く相続した人は対象とされやすいです。金融資産は、不動産に比べると価値が明確に捉えやすく、税務調査しやすいためです。

無申告の場合、相続税について尋ねる内容の書類が相続開始の6〜8カ月後に税務署から送られてきます。中には、返信用の書類が同封されています。
返信をしないまま放っておけば、確認が取れませんので、税務調査が入るきっかけになるでしょう。

 

税務調査は、具体的に何が行われる?

税務調査とは具体的にどこで何を調査して、その調査結果によってどのような事態になるのでしょうか。

 

税務調査の種類

税務調査には任意調査と強制捜査という2種類の捜査があります。

 

任意調査

任意調査とは事前に税務署が連絡した後に調査を行うことです。

税務署から調査に来た調査官の質問に回答していくことで行われます。

強制的に家の中を捜査されたり、物を差し押さえられてしまったりすることはありません。

 

強制捜査

強制捜査とは俗にいう『マルサ』と呼ばれている国税庁の査察官が、事前の連絡なしに、抜き打ちで訪問し、強制的に自宅などの捜査や証拠物の差し押さえをすることです。

強制捜査は任意調査を拒んだ時や、脱税額が高額になるなど、明らかに悪意があると疑われる際に行われます。

強制捜査が行われることはまれです。

 

税務調査の内容

税務調査の準備調査の末、実地調査の対象となった際は、申告の次の年、又は、その次の年の8月から11月に税務署から通知が届きます。税理士さんに相続税の申告書作成を依頼していた場合は税理士さんに通知が届きます。

その内容は税務調査の日程調整です。

税務調査は、亡くなった人の最後の居住場所である自宅で実施されることが多いですが、税務調査の時にそれを売却してしまった場合などは、相続人の自宅や、被相続人の遺品や資産を保管する場所で行われます。

普通は1日で税務調査は終了します。

しかし、終わらない場合もあり、そのような時は別日程で再度実施されます。

 

調査の日に相続税の申告を依頼した税理士さんや、新たに依頼することに決めた税理士さんに立ち会ってもらうこともできます。

当日は午前10時開始。午後3時〜5時の間で終了することが多いです。

当日は2人調査官が訪れます。午前中は調査官の質問に答える時間です。調査官の質問は主に下記が予想されます。

・亡くなった人は、どのように財産を貯蓄していたか、どのような収入源があったか
・亡くなった人の財産を築いてきた歴史、手段
・亡くなった人の出費用途(毎月の生活費用、お金が掛かっている趣味はあったか、介護費用・医療費)
・亡くなった人はどのように死んだのか(入院の有無、時期・病名など)
・相続開始直前に大きな出費がある際は、それを何に使ったのか
・亡くなった人がつけていた家計簿・手帳・日記の有無
・亡くなった人の取引があった金融機関、貸金庫の有無、投資の様子
・亡くなった人が実施していた贈与・寄付行ため
・亡くなった人の印鑑について(贈与していた際は、契約書などの書類に押印された印鑑は亡くなった人のものか)
・亡くなった人の家族関連(配偶者・子など)=相続を受ける人の財産状況、年齢、仕事など
・相続人の住まいの購入金額・売却金額(過去の住まいも全て)
・相続人の家族の年齢、学校名
・相続人と税理士の関係について

質問のねらいは、以下の内容が考えられます。

・相続財産として申告を忘れた金融資産はないか
・相続人が家を購入した時に、孫の進学・結婚などに際して資金の援助(贈与)はなかったか
・相続財産として申告し忘れた手元現金はないか
・相続人が仮装・隠蔽の意思があるかの確認

 

以上の質問が終わると、昼休みを挟みます。調査官は外で昼食を食べるので、食事を用意する必要はありません。

調査官は午前中の聞き取りの内容から、午後の打ち合わせを行ないます。

午後は、預金通帳などの財産が分かる資料や、貴重品を保管する場所などを確認し、申告漏れの有無を確認します。具体的な指摘が入ることもあります。

午前中に調査官から質問され、回答した内容を、調査官がその場でまとめ、その書面を確認して、内容に間違いがなければ署名し、押印します。

立ち会いを税理士に頼んでいる場合は、税理士にも確認した上で、署名押印することをおすすめします。

 

税務調査の末、申告漏れや納付漏れが見つかった場合、追加で税金が掛かってきます。

主に、以下2つの種類があります。

加算税
加算税とは、適切に申告が行われていない場合、加算される罰金です。

延滞税
延滞税は、適切に納付できなかった場合発生する、利息のような税金となります。

加算税が掛かる場合は、適切に納付もされていない状況ですので、加算税と延滞税の2つが掛かってきます。

適切に申告をできていたが、納付できていなかった際には延滞税が生じます。

 

さらに加算税は相続税の場合、下記の3種類に分けられます。

・無申告加算税
申告を行わなければいけないが、申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日〜10カ月以内)までに申告をしなかった人に課せられる税金です。本来納付すべき税額に対して、50万円までは15%。50万円を超える部分には20%の税率が掛かります。

・過少申告加算税
申告はしているが、申告した金額が実際の金額より過少だった人に課せられる税金です。
新たに収めることになった税額に対して50万円までは10%、50万円を超える部分は15%の税率が掛かります。

・重加算税
事実をでっちあげたり、隠したりして、申告をしなかった場合や、過少申告をした際に課せられる税金です。

無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%と重い税率となります。

延滞税については、納期が遅れた場合の利息となります。税率は、納付期限から2カ月以内とそれ以降で異なり、金利とも連動して変動します。

相続税を脱税してしまうと、裁判で有罪となった場合、懲役や罰金が課せられることもあります。

故意に税を免れようとして申告していない場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、故意ではなかった場合でも1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

税務調査が行われる前に正直に申告をすれば、ベナルティは10%に軽減されます。

 

税務調査に備えた準備とは

調査官の質問にスムーズに答えられるように、税務調査に向けて準備しておいた方がいいでしょう。
具体的に、相続税についての税務調査では下記の資料を準備するといいでしょう。

・相続税を申告する際に使った資料の原本
・預貯金通帳(亡くなった人と相続人のもの)
・土地の権利証や不動産購入時の資料
・相続人の認印

また、税務調査までに、税理士と一緒に申告書を見直して、相続税の計算や財産の評価方法に間違いはなかったか、申告漏れの財産がないかを確認するといいでしょう。

申告時に税理士を頼んでいなかった場合や、相続税が専門ではない税理士を付けていた場合には税務調査の実地調査前に、相続税専門の税理士に相談し、対策を講じてもらうのもいいです。

 

まとめ

相続税は、ほかの税金に比べ税務調査が入りやすいです。相続税の申告をする時、節約の意味で、税理士さんに頼まず自分で相続税の申告をする方法もありますが、後の税務調査で結果的に税金が多く掛かってしまうということもあり得ます。

相続税の申告は難しいということを念頭に置いて、じっくり丁寧に相続税の申告を行いましょう。

「相続税申告は難しい」と感じたなら、無理せずに無料相談を実施している税理士などに相談してみましょう。

また、申告した相続税の内容について税務調査が決まった場合には、大変な事態になる前に、直ちに相談しましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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