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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年5月31日 金曜日

駐車場を相続した場合の相続税は?

もし、一家で駐車場を所有していて、その名義人である人が死亡してしまった場合、駐車場を相続するにはどうすれば良いのでしょうか。その際、相続税はかかるのでしょうか。

実は、駐車場の相続を行う場合、その駐車場の形態や運営方法によって相続の方法が大きく変わってきます。

ここでは、どのような条件で土地の評価額に違いが出るのか、少しでも相続税を減額する方法など、駐車場を相続する際に知っておくべきことをご紹介していきたいと思います。

 

駐車場を相続した場合、相続税はかかるのか?

そもそも相続税とは何か?

相続税とは、被相続人の遺産を相続や遺言によって受け継いだ際に、その遺産総額が大きいとかかってくる税金のことを言います。

相続税の課税対象となる財産の代表的な例が土地や建物などの「不動産」で、駐車場もこの区分に含まれます。

相続税を納める義務がある人は基本的に、遺産を承継した相続人または遺贈を受けた人となります。ただし、小規模住宅や配偶者控除の特例が認められた場合、遺産を継承したとしても相続税を払わなくてもいいケースがあります。

また、海外資産を相続した場合にも、課税対象外となることがあります。この点に関しては、また後ほど詳しくご紹介していきます。

 

駐車場の相続税はかかるのか?

上記で述べたように、相続税の課税対象となる「不動産」の区分に駐車場も含まれるので、駐車場を相続した場合には相続税がかかります。その額は土地の評価額によって決まるものなので、駐車場の形態など様々な条件によって異なってきます。

しかし、駐車場の形態によっては更地で相続した場合に比べて納税額が低くなる場合もあり、駐車場を所有した状態で土地の相続を行うことは、相続税対策にもなり得るのです。

では、駐車場の相続税評価額はどのように決められるのでしょうか。次の章で具体的に見ていきましょう。

 

駐車場の相続税評価額の求め方

土地の所有者が自分で駐車場業務を行っている場合

駐車場の価額は、ほとんどの場合「雑種地」としてその土地が評価されます。雑種地とは、法律で定められている土地の利用区分(23類)に該当しない土地のことを言います。実際の評価方法は、その雑種地と似た付近の土地についての1平方メートルあたりの価額を基準に、それぞれの土地の形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価します。

つまり、周りの似たような土地の評価額を調整して、自分の土地の評価額を決めるということになります。

これを算式に置き換えると、

駐車場を宅地として評価した場合の1㎡あたりの価額-宅地に転用する場合の1㎡あたりの造成費相当額)×地積

ということになります。

もしこの駐車場に、地盤改良や伐採、土盛りや土止めなどの工事が必要であった場合、「1㎡あたりの価額」から「宅地に転用する場合の1㎡あたりの造成費相当額」を控除することも可能ですが、都市部にある大半の青空駐車場の場合そういった状況になることはほとんどないと言っても良いでしょう。

 

駐車場業者に土地を貸して経営している場合

被相続人が貸駐車場一家で所有している土地の有効的な利用方法として、貸駐車場を運営しているというケースは多いのではないかと思います。

貸駐車場を評価する際には、土地をそのままの状態、つまり青空駐車場として貸付けているのか、利用者が屋根等の施設を自らの費用で造ることができる契約かどうかによって評価方法が大きく異なります。それぞれ、具体的に見ていきましょう。

 

土地を青空駐車場として貸し付けている場合

土地所有者自身が、所有している土地をそのままの状態、いわゆる青空駐車場として駐車場経営業者などに貸し出している場合、相続税評価は「自用地」として評価されます。

つまり、所有自身が土地をそのままもしくは砂利やアスファルトを敷いたり、フェンスを設置したりしたうえで、貸駐車場として利用した場合、自用地評価となり貸地としては評価できません。

これは単に、車を置かせてあげるというサービスについてお金を貰っているに過ぎないので、土地の賃貸借にはあたらず、貸地としては評価できません。貸

駐車場とはあくまで、一定期間自動車を保管することを引き受けることを目的とした契約であり、駐車場の利用という目的での貸付けに限定されます。

つまり、土地利用そのものが目的である賃貸借契約とは根本的に異なる権利関係であり、駐車場の利用権利は土地そのものには及ばないとされているのです。

この場合、駐車場用地全体の権利を貸し手側が持っているため、雑種地の評価額の100%が貸し手側の財産となります。

 

借主が自らの費用で駐車場の整備を行っている場合

それでは、所有している土地を駐車場経営者などに貸して、その業者が車庫などの構築物を建てて駐車場経営を行っている場合の土地評価はどうなるのでしょうか。

被相続人が、事業者に土地を貸し付ける際、事業者が自らアスファルト舗装や駐車設備の設置を行うとの契約を結んでいる場合、被相続人の目的は自動車の保管ではなく、「土地の賃貸借」になると考えられます。よく街中で見かけるコインパーキングなどは通常このケースが多いです。

この場合、その土地の自用地評価額から賃借権の価格を控除した金額を評価額となります(相続を開始する時点で、実際に借主が設置した構築物がその駐車場上に存在することが前提条件となるので注意しましょう)。控除できる賃借権価額は下記の区分に応じたそれぞれの価格とします。

 

■地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権

この場合、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金や一時金の支払があるもの、堅固な構築物の所有を目的とするもの等が該当します。

算式で表すと、

雑種地の自用地評価額×雑種地の自用地評価額×契約の残存期間に応じる割合(注1)

となります。

※(注1)

自用地としての価格に乗じる割合賃借権の残存期間

5年以下…5%
5年超10年以下…10%
10年超15年以下…15%
15年超…20%

 

■上記に掲げる賃借権以外の賃借権

この場合、算式で表すと、

雑種地の自用地評価額-(雑種地の自用地評価額×契約の残存期間に応じる地上権の割合×1/2) (注2)

となります。

※(注2)

賃借権の残存期間による自用地としての価格に乗じる割合

5年以下:2.5%
5年超10年以下:5.0%
10年超15年以下:7.5%
15年超:10.0%

少し複雑なので、具体的な事例で計算をしてみましょう。例えば、雑種地の自用地評価額が5,000万円、賃貸借契約の残存期間が3年の場合、

(1) 50,000,000円-(50,000,000円×5%×1/2)=48,750,000円

(2) 50,000,000円×(1-2.5%)=48,750,000円

となります。実際に出てきた数字をみると、元々の自用地評価額とそれほど変わらないので、賃借権の控除で差し引かれる額は、借地権ほど大きくはないことが分かります。

 

貸しビルやマンション、店舗棟の専用駐車場の場合

駐車場の場合、他に考えられる状況として、貸しビルやマンション、店舗棟の専用駐車場として使用しているケースが挙げられます。この場合、貸しビルなどの敷地と一体化して使用していると考えられるので、それらの敷地と同様、貸家建付地として評価をします。

一方、一体として貸し付けが行われているかどうか、他の利用者がいないか、契約書の内容や実態をよく調査して確認するようにしましょう。

 

相続税が控除される場合について

何かと負担になる相続税ですが、少しでも相続税を減らす方法はあるのでしょうか?結論からいうと、自用地で駐車場を経営している場合や駐車場業者に土地を貸して駐車場を経営してもらっている場合に限り、更地で相続する場合よりも相続税が安くなる場合があります。利用できる特例について、以下で詳しく解説していきます。

 

小規模宅地等の特例が使えるケース

駐車場を相続することになった場合、「小規模住宅地等の特例」によってその土地の評価額から50%の減額を受けることができる可能性があります。小規模宅地の特例とは、「建物または構築物の敷地のために使われている土地」を相続する時に利用できる特例のことです。この小規模宅地等の特例を使うには、以下の3つの条件のうちのどれかを満たす必要があります。

① 配偶者が相続をする場合

② 同居親族が取得して所有・居住を継続する場合

③ 持ち家のない別居中の親族が取得する場合

配偶者が相続する場合は、無条件で小規模宅地等の特例を使うことができます。また、被相続人と同居していた親族が自宅を相続した場合も特例の対象となります。もし、被相続人に配偶者がいなかった場合、同居していなくても親族が取得する場合にも適応されます。

 

青空駐車場は、対象外

注意しなければいけない点は、構築物がない駐車場、いわゆる青空駐車場では小規模宅地等の特例を適用できない点です。ロープを張ったり、止め石を置いたりと簡易的な設置は構築物といえないので、小規模宅地等の特例の適用ができないことに注意しましょう。また砂利や芝生に関しても、構築物と呼べるかどうか判断が難しい場合があります。

ポイントとなるのは、駐車場事業を行うために、資本を投下して設置しているか否か、つまり事業性があるか否かが判断基準になってくるでしょう。例えば、砂利を宅地の一部にしか敷かない場合に比べて、分厚く宅地全体に敷き詰める場合にはある程度のお金がかかり、駐車場業を行なおうとする意思表示になります。具体的な条件としては、駐車場の敷地上に構築物(アスファルトや砂利、機械式)構築物があることです。

 

面積は200平方メートルまで

貸し付けしている駐車場の面積が200㎡を超える場合、超えた部分は小規模宅地等の特例が適用できないため減額はできません。

例えば、250㎡の宅地を相続した場合にどのくらい相続税評価額が減額されるのでしょうか。相続した駐車場の価額が5000万円だと仮定すると、この特例による減額効果は、2000万円となります。(5000万円×200㎡/250㎡×50%=2000万円)

 

小規模宅地等の特例を適用するためにやるべきこと

駐車場での小規模宅地等の特例を適用するためにすべきことは、主に2つあります。

1つ目は、相続税申告書に、小規模宅地等の特例の適用を受ける旨を記載し、所定の計算明細書を添付することです。

2つ目は、「相続開始前3年を超えて貸付事業を行っていた」又は「事業的規模であった」ことを証する書類を添付することです。

証明書類に関しては、駐車場の賃貸借契約書・所得税の確定申告書の写しなどを添付することで、駐車場事業の規模感を報告することができます。

 

駐車場を相続した場合に相続税以外で対処すべきこと

契約者・利用者への連絡

駐車場を相続する際には、その駐車場の契約者や利用者への連絡を忘れないようにしましょう。土地所有者名義の引き継ぎや、契約の更新などを円滑に進めるためにもなるべく早く報告するようにしましょう。

連絡の方法として、相続登記の作成をお勧めします。登記簿に相続人の名前が記載されるので、その写しなどを駐車場の契約者や利用者に見せることで、自分が新しい地主として引き継ぎしたと説明することができます。

 

収入がある場合は所得税申告

被相続人が所有していた駐車場が収入を生む遺産だった場合、それを相続する際には、その受け取った収入に対して、所得税の確定申告を行う必要があります

例えば、被相続人が7月15日に亡くなったとしましょう。その場合、その年の1月1日から7月15日までに関わる収入は被相続人の収入としてカウントされ、7月16日から12月31日までに関わる収入はその土地を相続した相続人の収入として確定申告の手続きを行う必要があります

の被相続人に関わる収入の確定申告のことを、準確定申告と言い、死亡日から4か月以内に行う必要があります。相続人の確定申告は通常の確定申告と同様、翌年の3月15日までに行えば大丈夫です。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。駐車場の相続は一見複雑そうには見えますが、所有している駐車場の特徴、これまでの事業内容や契約内容などをよく知っておくことで、相続の手続きも円滑に進めることができます。相続税の金額の大きさに戸惑うことも多いと思いますが、この記事でご紹介した適切な土地の評価や、相続税を減額する方法などを参考にしていただければと思います。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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