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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年5月31日 金曜日

相続税を滞納するとどうなるのか?

故人が亡くなった日から10か月以内に、相続税の申告と納税をする必要があります。
では、相続税をこの10カ月を超えて滞納した場合はどうなるのでしょうかどうなるのでしょうか。

不注意による滞納でなくても、遺産分割協議が進まずに払えないというケースも考えられます。もしくは、10カ月を超えてから新たな財産が見つかり、再度、申告、納税をするケースもあるでしょう。

本稿では、相続税を未払いにした際のペナルティとその対策法について解説します。

 

相続税を滞納した場合のペナルティとは

延納の手続きも取らずに相続税を期限までに申告せず、未払いにしていた場合は、延滞税のペナルティが課されます

また、申告をしなかった場合、正しい申告をしていなかった場合も無申告加算税のペナルティが発生します

まず、延滞税ですが、これは未払いの税金に対する利子として発生します。本来の納付期限の翌日から最終的に相続税を納付した日までの期間に対してかけられます。

税率は納付までの期間によって以下のように異なります。

 申告書の提出期限の翌日から2か月以内に相続税を納付:年2.6%

 申告書の提出期限の翌日から2か月以降に相続税を納付:年8.9%

 

無申告加算税は税務署調査を受ける前と後で税率が異なります。

自主的に誤りや、申告漏れに気付き、申告を行った場合は、税率は低くなります。

 税務署の調査の事前通知より前に自主的に申告:5%

 

税務署の税務調査の事前通知を受けてから、税務調査を実際に受けるまでの間に申告を行った場合の税率は以下です。

納付する税額のうち50万円まで:10%

納付する税額のうち50万円を超えた部分:15%

 

税金が高くなるのは、税務調査を受けてから申告を行った場合です。

納付する税額のうち50万円まで:15%

納付する税額のうち50万円を超えた部分:20%

 

また、過去5年間に相続税の無申告加算、重加算税をかけられた経験がある場合は税金がより高くなります。

納付する税額のうち50万円まで:25%

納付する税額のうち50万円を超えた部分:30%

 

確定申告の期限から1カ月までの間は猶予期間が設けられています。その1カ月の間に自主申告を行い、税金を期限内に納付していれば、無申告加算税は発生しません。

課税を免れるために財産を隠す、書類を偽装するなどを行った場合は悪質な行為とみなされます。その場合、無申告加算税ではなく、税率40%の重加算税が課されます。重加算税も、過去5年間に相続税の無申告加算、重加算税をかけられた経験がある人の場合は税率が50%になります。

未払いを続けると他の相続人が代わり支払うことになるので注意しましょう。連帯納付義務といい、同じ故人から遺産を相続した人は、連帯して相続税を納める義務が発生しています。1人の相続人が相続税の未払いを続けた際に、他の相続人へ税務署から通知が送付されることがあります。その際、他の相続人は自身が相続した遺産の範囲内で未払いの分の税金を納付します。

ちなみに相続税の納税には時効が存在します。一般的なケースでは納税期限の翌日から5年、悪質な場合でも7年で時効です。ただし、税務署の調査から逃れることは困難です。他の相続人に迷惑がかかることもあるため、故意で納税逃れを考えることは絶対にやめましょう。

 

相続税を払うための現金が用意できない場合の対処法

事情により、相続税を払うための現金が用意できないというケースもあると思います。

例えば、相続財産の多くが不動産で現金がほとんどなかった場合、不動産はすぐに現金に変えることができません。
被相続人の遺言書が存在せず、分割方法が決まらないというケースもあります。
その際は、被相続人の預金口座が凍結されたままとなり、現金を引き出せません。そういった病むを得ない場合の対処法はないのでしょうか。

まず、第一に相続税を分割で支払う延納という手法があります。
延納は、相続税をすぐに支払うことができない人に向けて作られた最大約20年間にわたって相続税を分割払いできる制度です。認められるためには次の要件を満たす必要があります。

相続税額が10万円を超えている

金銭で納付することが困難な金額である

延納申請書、担保提供関係書類を期限までに提出する

延納税額に相当する担保を提供する

 

相続人が個人的に現金を保有している場合は要件を満たすことはできません。

続いて、相続税をモノで納める物納という手法もあります。物納では不動産など、現金以外のモノを相続税として納付することができます。物納は、延納による納付も難しい方が利用する制度です。認可のハードルもその分、高くなっています。物納を行う際、納めることのできる資産は故人から相続した資産に限られます。

また、物納で最も注意が必要な点は、物納で納める財産が相続税評価額で評価されることです。そのため、基本的に実際の時価より低い金額になります。物納するより、時価で不動産を売却した上で、獲得した現金で納税することの方が、お得といえるでしょう。

相続した遺産を売却して、納税するという方法もあります。不動産などのすぐにはお金にならない資産でも相続税の申告期限までに売却が完了すれば、納税に充てることができます。
ただし、不動産の取引は時間や手間がかかります。また、期限を設けて売却先を探した際にいい買い手が見つからず、損をすることもあります。そもそも買い手がつかないケースもあります。注意して早めの手続きを行うようにしましょう。

金融機関から資金を借りることも考えられます。人によっては不動産などの財産を手放したくないと考える人もいるでしょう。ただし、金利や貸付の条件にもよって、借りるか否かの判断は変わってくるものです。金融機関に相談の上で検討してみましょう。

 

遺産分割協議が進まずに払えない場合の対処法

相続人が複数いるものの、故人が遺言書を残さない場合ももちろんあります。その際は、該当する相続人の間で遺産の分割方法を決める必要があります。この話し合いを遺産分割協議と呼びます。分割方法まとめ、相続人全員の実印を押印した書面を遺産分割協議書と呼びます。この遺産分割協議書を持って、不動産の移転登記、銀行口座の解約を行うことができます。

相続税申告書にも遺産分割協議書の写しを添付します。相続税は各相続人が相続する遺産の比率に応じて決まります。遺産分割協議書で定められた分割方法を元に相続税額の計算を行うため、その証拠資料として遺産分割協議書が必要です。

相続人の間で行う遺産分割協議が進まないことで、相続税の申告、納税が遅れることもあります。遺産分割協議がまとまっていない状態では、被相続人の預金口座は凍結されたままになります。現金をおろせないため、納税もできません。

遺産分割協議が進まないことを理由に相続税の申告期限の延長が許可されることはありません。そういった際にはどのように対処すればいいのでしょうか。

 

最も基本的な方法は、一部遺産分割協議の実施です。まず、未分割の財産は相続人全員で共有し、民法上の法定相続分に従って取得したものと仮定した上で各相続人の相続税の負担額を計算します。続いて各相続人間で納税資金の分だけの分割協議を行い、預金口座の凍結を解除します。

相続人2名がそれぞれ1,000万円の納税が課せられている場合では、納税に必要な2,000万円のみを先に協議し、分割を行います。残りの資産の分割については納税後に気のすむまで、とことん議論を行うことが可能です。

金融機関に対して、法定相続分の預金の払い出し請求を実施することも可能です。金融機関によって凍結された預金口座でもこの払い出し請求で一部の金額を受け取ることが可能です。手続きは各金融機関に直接問い合わせましょう。

配偶者の税額軽減、小規模宅地等の評価減などの特例も遺産分割協議がまとまっていない場合は適用になりません。申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を作成し、当初の相続税申告書と一緒に期限内に税務署に提出することができます

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、申告期限後3年間にわたり、将来の修正申告において特例の適用を受けられるようになります。これにより申告期限後に遺産分割が行われた場合でも、特例の適用を受けることが可能です。

相続等に関する訴訟が行われているなど、3年を超えても遺産分割協議がまとまらないケースもあります。

やむを得ない事情がある場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」という書類を税務署に提出することができます。
提出期限は申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過するまでです。その書類の内容について、所轄税務署長の承認を受けることができれば、特例の適用が申告後3年を経過したあとでも可能となります、

 

あとから財産が新たに発見された場合は再度申告すればよい

入念に遺産の確認を行っていても、遺産分割、相続税申告が終了した後に新たな遺産が出てきてしまうことがあります。そのような場合はどう対処すればいいでしょうか。

遺産分割協議後に新たに被相続人の財産が見つかった場合は、過去に作成した遺産分割協議書は有効のままにした上で、新たに見つかった財産のみについて再度、遺産分割協議を行う必要があります

一方、新たに見つかった財産の額が高額で、遺産全体の中でも大きな割合を占めるなど、新たな財産の分割協議が進めづらい場合もあるでしょう。新たに見つかった財産が現金ではなく、分割し難い財産である場合もあります。事前に知っていれば、元の遺産分割協議書の分割方法が変わっていたかもしれません。そんなケースであれば、相続人全員が合意した場合は前回の遺産分割協議を無効にして再度、初めからやり直すことができます。相続人が財産を隠していた場合も同様にやり直すことができます。

別の財産が発見される可能性があることが、事前にわかっているケースもあるでしょう。相続人にとって、複数回にわたって遺産分割協議を行うことは、負担が大きいものです。後々の負担を軽減し、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、遺産分割協議書に、新たに財産が見つかった場合のやりとりを予め取り決めておくことも可能です。

相続する財産が増えれば、当然、相続税の金額も変わります。その際は、相続税の修正申告が必要です。相続開始から10ヶ月を過ぎている場合は延滞税の負担も行う必要があります。

延滞税の負担を避けるために新たな財産の存在を隠すのはやめましょう。税務署の調査を掻い潜るのは簡単なことではありません。税務署から指摘されてから相続税の追加申告が必要になった場合、故意に相続財産を隠していたと税務署に判断された場合では課せられる税金の額もあがります。

過少申告加算税といい、新たな財産にかかる税金の10%と、期限内に先に申告した時の納税額と50万円のいずれか多い額を超えている部分については15%の税金が課せられます。
悪質な脱税行為とみなされた場合には重加算税といい、税金総額の40%が課せれられます。

一方、税務署に指摘を受ける前に自主的に修正申告をする場合は過少申告加算税がかかりません。手続きが面倒に思われたり、新たに支払う税金を億劫に感じたりするかもしれませんが、法定通りの手続きを踏んで、しっかりと相続税の修正申告を行った方が結果としては得をするでしょう。

 

まとめ

相続税を滞納した際のペナルティと対処法について解説していきました。相続税の未払いは、本来の相続税よりも大きな税金を負担することになります。連帯納付義務が発生し、他の相続人に迷惑をかけるかもしれません。

遺産分割協議が進まずに払えない場合など、やむを得ないケースについては、いくつかの救済策も用意されています。一方、修正申告、更正の請求の手続きには多大な手間と労力が必要になります。なるべく、遺産分割協議は10ヶ月以内にまとめることが得策でしょう。

また、どんな場合であっても故意に新たな財産を隠したり、申告を先に延ばしたりするのは止めましょう。申告を先延ばしにしていると遺産隠しとみなされ、過少申告加算税、悪質な場合は重加算税が課されます。

相続税の申告、納税は早めの準備を進めましょう。申告が面倒な方は税理士に相談することをおすすめします。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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