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【手続きの手順・方法 】
相続時に必要な手続きについて手順や方法を説明しています。必要な手続きをせずにいると、後々相続トラブルに発展する可能性もあります。相続の手続きについて手順や方法を知っておきましょう。

2019年3月31日 日曜日

分割相続の方法は4つ!現物分割・換価分割・代償分割・共有分割について

相続人が複数人いる場合、法定相続分に従って相続する方法と、遺留分を考慮した上で遺言書を作成し、遺言書の内容に従って相続する方法のどちらかの方法が取られます。

このとき、どちらにも共通することは、相続放棄をしない限り、被相続人の財産を分割して相続するということです。

しかし、分割相続の方法が4つあることはあまり知られていません

分割相続には財産の種類によってそれぞれ適したものがあるため、相続が発生したときに選択肢として知っておくと、より負担の少ない相続をすることが可能になります。

それでは、分割相続には一体どのような方法があり、それぞれどのような特徴があるかを詳しくご紹介いたしましょう。

分割相続の方法は4つある!

分割相続の方法には、下記のの4つの方法があります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

一口に分割相続といっても、分割の仕方をはじめ、メリットもデメリットもさまざまです。

それでは、それぞれの分割相続の方法について、詳しく見ていきましょう。

現物分割とは

現物分割とは、被相続人の財産をそのまま現物で相続する方法のことをいいます。

たとえば、相続人が長男、次男、三男の3人がいた場合、長男は不動産を、次男は預貯金を、三男は現金を、といったように現物を分割して相続する方法が現物分割です。

このとき、誰がどの財産を相続するかは、遺言書があれば遺言書の内容に従います。

しかしながら、財産を金額に直したときに金額に差があり、不平等な分割になってしまうこともあります。

金額の不平等が相続人同士の揉めごとの原因となり、関係がこじれてしまうことは珍しくありません。

そのため、現物分割は財産を現物のまま相続がすることができるという簡単さはあるものの、いかに平等に相続を行うかという部分で難しさを持っています

ですから、現物分割をスムーズに行うためには、相続人全員が納得していることが重要となります。

つまり、同等の価値がある財産が相続人の数だけ存在し、それぞれ平等に分け与えられる場合は、現物分割が適しており、同等の価値がある財産が複数ない場合は、現物分割が最適な相続方法とは言えないでしょう。

換価分割とは

換価分割とは、被相続人の財産を売却し、売却後の現金を相続人で分割して相続する方法をいいます。

換価分割は、現金を分割するので、相続の割合が明確であり、分割しやすいといった特徴があります。

現金化して相続するため、金額による不平等が起きないといったメリットはありますが、財産を売却するため、時間や手間がかかったり、手続きが複雑になったり、売却することによって、本来相続できる金額が減ってしまったりするなどのデメリットが考えられます。

また、不動産などをそのまま相続したい場合には不向きな相続方法であるといえるでしょう。

代償分割とは

代償分割とは、相続できる財産が不動産など分割して相続することが難しいもののみだった場合に適している方法です。

相続人のうち1人(または複数人)で財産を相続し、その財産を相続できなかった他の相続人に、本来相続するはずだった財産分の金銭を、財産を相続した相続人が支払うといった相続方法です

そのため、相続人には、代償金を支払うだけの経済力が必要とされます。

代償分割を選択する場合は、すでに相続人の誰かが財産である不動産に住んでいて財産を売却できないケースや、相続人が被相続人の事業を相続するため、農地などの事業用の土地を売却できないケースなどが挙げられます。

ただし、不動産などの財産の場合、財産を相続して代償金を支払う相続人と代償金を受け取る相続人の金額の評価の違いによって、トラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。

また、代償分割をするときには、遺産分割協議書に代償分割をした旨をしっかり記載する必要があります。

代償分割と記載していない場合、贈与とみなされ、贈与税が課税されてしまうことがあるからです

共有分割とは

共有分割とは、財産を共有で相続することをいいます。

財産を共有して相続するため、相続人の誰か1人が勝手に売却などを行えないだけでなく、共有分割をした相続人の誰かが亡くなった場合にほかの相続人に権利が移って、次第に相続人が増えていく可能性もはらんでいます

また、共有分割は、相続人が共有で相続するため、財産が不動産だった場合、固定資産税の支払いや誰が住むのかなど、細かい部分でトラブルが起きやすく、相続人同士の関係がこじれてしまうことも珍しくありません。

そのため、共有分割は、どうしても他の分割相続ができない場合に選択する方法として考えるとよいでしょう。

現物分割とその他分割方法との違い

現物分割とその他の分割方法には、大きく分けて2つの違いがあります。

まず、1つ目の違いは、「分割にかかる手間が少ないこと」が挙げられます。

これは現物分割のメリットの1つでもありますが、他の分割方法では売却や的確な評価が必要なのに対し、現物分割にはそれらが必要ありません

そのため、分割相続に関わる手間や時間が少ないといった違いがあります。

2つ目の違いは、「不平等な相続になる可能性が高いこと」が挙げられます。

これは現物分割のデメリットの1つでもありますが、他の分割方法では、公平さがあるのに対し、現物分割の場合には、きっちり平等に割り切れるような相続はほぼ不可能です。

ですから、他の分割方法に比べ、不平等な相続になる可能性が高いといえるでしょう。

このように、現物分割には、他の分割方法とは大きく違う2つの点があります。

この違う2つの点はそれぞれメリットとデメリットであるため、分割相続の際に何を最優先にするかによって、現物分割が他の分割方法と比べ、メリットとデメリットのどちらが大きいと感じられるかが異なってくるといえるでしょう。

現物分割で分割相続するメリット・デメリット[H5]

現物分割で分割相続するには、メリットだけでなく、デメリットもあります。

それでは、どのようなメリットとデメリットがあるか詳しく見ていきましょう。

現物分割のメリット

現物分割のメリットは大きく分けて、3つあります。

 

まず、1つ目のメリットは、「代償分割や換価分割に比べ、手間が少ないこと」が挙げられます。

財産相続には期限があり、更に相続税の申告にも期限が定められているなど、行わなければならないことが数多くあります。

できる限り手間が少ない方が、相続人にとっては相続が楽になるため、手間が少ないことは、現物分割を行う上でのメリットになります。

 

2つ目のメリットは、「現物分割は他の分割方法に比べ、権利について明確であること」が挙げられます。

現物分割はそれぞれの財産を現物で相続するため、複雑さがなく、権利について明確にすることができるといったメリットがあります。

 

3つ目のメリットは、「被相続人が誰に何を受け取ってほしいかという気持ちを叶えられること」が挙げられます。

遺言書に現物分割として、どの財産を誰に相続させるかという記載がある場合は、被相続人が誰に何を受け取ってほしいかといった気持ちが明確に表れているといえます。

そのため、被相続人の意思を尊重することができるといったメリットがあるといえるでしょう。

 

このように、現物分割には全体的に手間や時間がかからないといったメリットが多く、相続人の負担が少ないといった傾向があります。

相続人同士が現物分割で納得できる場合には、相続人の負担を減らせる現物分割は最善の相続方法であるともいえるでしょう

現物分割のデメリット

現物分割のデメリットは、大きく分けると4つに分けられます。

 

1つ目のデメリットは、「相続人に相続財産の不平等が起きること」が挙げられます。

被相続人の財産が必ずしもすべて同じくらいの価値があるとは限りません。

むしろ、同じくらいの価値がないことの方が可能性としては高いでしょう。

そのため、それぞれが現物分割をしたとしても、たくさん財産をもらえる人と少ししか財産がもらえない人が出てくる可能性があります

 

2つ目のデメリットは、「相続人同士が現物分割に納得せずに揉めごとに発展する可能性があること」が挙げられます。

1つ目のデメリットである「相続人に相続財産の不平等が起きること」から派生して、現物分割の不平等に納得できず、揉めごとに発展し、遺産分割協議などが行われることが考えられます。

遺産分割で揉めてしまうと、たとえ兄弟であっても仲を修復することができなくなってしまったり、遺産分割が長引いてしまったりと、精神的にも時間的にも問題が起こってしまいます。

 

3つ目のデメリットは、「評価しづらい財産が多い場合に問題に発展しやすいこと」が挙げられます。

貴金属や株式などの評価しづらい財産が多く、たとえば、不動産、預貯金、貴金属と株式といった3分割をした場合、貴金属と株式を相続した相続人だけが財産を少なく相続してしまうこともありますし、多く相続してしまうこともありえます。

そのため、評価しやすい財産ではない場合、相続人の同意を得られる可能性が低いといったデメリットがあります。

 

4つ目のデメリットは、「分筆になった場合、土地の価格が下がってしまう可能性があること」が挙げられます。

分筆とは、土地を分割することをいいます。

現物分割する際に土地を分割して相続することがあるのですが、その土地を利用する範囲(使用の仕方)が狭められてしまう可能性が高く、土地自体の価格が下がってしまう可能性があります

このように、現物分割にはさまざまな種類のデメリットが存在しているため、デメリットの方が大きく感じられる場合には、現物分割は不向きであると考えられるでしょう。

現物分割がおすすめなケース

現物分割がおすすめのケースは、大きく分けて3つあります。

 

まず、1つ目は「同じくらいの価値がある財産が複数あるケース」が挙げられます。

相続人が複数いる場合でも、相続人の人数分、同じくらいの価値がある財産があれば、財産の不平等さで揉める心配がありません

現物分割は相続する方法の中でも比較的楽な相続方法のため、相続人の人数分、同じくらいの価値がある財産がある場合は現物分割がよいといえるでしょう。

 

2つ目は「貴金属など、価値を決定しづらいものがたくさんあるケース」が挙げられます。

貴金属が財産としてたくさんある場合、一つずつ評価をし、価格を出していくというのは途方もない作業です

もちろん、時間もかかります。

ですから、そのようなときは、それぞれの相続人が好きな貴金属をもらうといった現物分割が現実的であるといえるでしょう。

 

3つ目は「すでに財産の不動産に相続人のうちの誰かが住んでおり、他にも財産があるケース」が挙げられます。

たとえば、財産の不動産に長男が住んでおり、同じくらいの価値がある現金と預貯金が別にあった場合、現金を次男が、預貯金を三男が相続するという現物分割であれば、問題なく、現物分割が行えるでしょう。

このとき、すでに誰かが財産の不動産に住んで生活を送っているということで、他の兄弟の同意を得られやすい傾向があります。

ただし、このケースのポイントは、他にも同じくらいの価値がある財産があるという点です

他に同じくらいの財産がない場合は、現物分割をするのは厳しいといえるでしょう。

現物分割での留意点

現物分割を行う場合、平等になることはありえないといっても過言ではありません。

そのため、現物分割を行う場合には、相続人の同意が重要であるといえます。

現物分割を考えている場合は、遺言書を作成する前に被相続人が相続人に対して、現物分割を考えている旨を話し、事前に同意をもらっておくことが望ましいといえるでしょう。

まとめ

分割相続の方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の4つの方法があります。これらの分割相続の方法には、特徴があり、財産によって、その向き不向きが存在しています。

さまざまな財産がある場合には、どういった分割相続の方法がよいかをよく考え、遺言書を作成しておくことが大切です。

また、遺言書がない場合には、専門家の力を借りて、どのような分割相続の方法が適切であるか、判断を仰ぎながら、遺産分割協議などを行うことで無駄な揉めごとを起こさずに相続することができるでしょう

相続人の立場になったときには、冷静に対処することが重要です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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