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【不動産の相続 】
不動産の相続について説明しています。マンション、土地、貸家建付地、山林など不動産の種類によって、評価額の計算方法が異なります。また相続税の求め方も異なりますので、不動産を相続する場合は注意しましょう。

2019年7月21日 日曜日

小規模宅地等の特例とは?|宅地の相続における必須知識

大切な人が亡くなって悲しんでいるときに、すぐに相続税のことを考えられる方はそういないでしょう。

ですが相続税の納期は、悲しみに浸っている間にどんどん迫ってきます。「相続税を早く支払わなくては」と焦って支払いを済ませてしまうと、様々な特例を利用せずに、税金を多く払いすぎてしまう可能性があります。

今回ご紹介する「小規模宅地等の特例制度」も、相続税を減額することが出来る特例のひとつです。

では、小規模宅地の特例とは、どんな制度なのでしょうか。小規模宅地等の特例を賢く使えば節税になるかもしれません。いざというときのために、知識として備えておきましょう。

 

小規模宅地等の特例とは?

土地を相続することになったとき、都市部の土地だったために価格が高く、相続税も高くついてしまい、相続税の支払いのためにしぶしぶ土地を手放した、といった話を聞いたことがありませんか?

亡くなった方から譲り受けた土地を手放すのはとても残念なことです。そうならないためにも、小規模宅地等の特例を利用することで土地の評価額を下げ、それによって相続税も引き下がるという節税制度が「小規模宅地等の特例制度」です。

実際にはどのように節税につながるのか、小規模宅地等の特例について詳しくみていきましょう。

 

小規模宅地等の特例の概要

国税庁のHPには、「個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。」と書かれています。

ちょっと難しいので、わかりやすくいいかえると「小規模宅地等の特例とは、条件に合えば亡くなった方が残してくれた居住用の土地や事業に使っていた土地を相続する際に適応できる制度で、小規模宅地等の特例を利用することで、土地の評価額を引き下げることができる。」ということになります。

この小規模宅地等の特例を使うと、土地評価額を最大80パーセント減額できます。このことから、小規模宅地等の特例は非常に大きな節税対策といえます。

小規模宅地等の特例を利用すれば、相続税額が抑えられるので、税金を支払うために土地を手放すといったことが起きずに済むかもしれません。知っておかないと損をするといっても過言ではないでしょう。

 

小規模宅地等の特例、使う/使わないでこんなに違う

それでは、具体的に小規模宅地等の特例を使う場合と使わない場合では、相続税にどのくらいの金額の違いが出るのかみていきましょう。

例えば、父、母、子供、3人の家族構成で、大黒柱である父が亡くなってしまったとします。亡くなった父の財産は、住んでいる家6,000万円と現金や生命保険などを合わせた2,000万円です。

・小規模宅地等の特例を使わない場合

相続財産(家6,000万円+その他2,000万円)8,000万円ー基礎控除(3,000万円+相続人(3人)×600万円)4,800万円=相続税640万円

・小規模宅地等の特例を使った場合

相続財産(家6,000万円×20%+その他2,000万円)3,200万円ー基礎控除(3,000万円+相続人(3人)×600万円)4,800万円=相続税0円

後者は基礎控除が相続金額を上回ったため、相続税は0円となります。

この計算に出てくる基礎控除とは、税金がかからない範囲の金額を示します。仮に、相続財産がもともと少なかった場合には、小規模宅地等の特例を使わなくても相続税が0円になるケースも考えられます。

 

注意すべき点は、相続税が0円でも税務署への申告が必要となる点です申告がない場合、小規模宅地等の特例は受けられません。申告をして初めて、小規模宅地等の特例が適用になるので、申告は忘れずに行いましょう。

相続財産の金額によって差はありますが、小規模宅地等の特例を使った場合と使わなかった場合、上記の例では相続税が640万円から0円になるという大きな差がでました。

相続税を支払うことになれば、640万円のために生前大切にしていた車やコレクションの骨董品などを泣く泣く売らねばならないかもしれません。

土地以外の高価な相続遺産は、亡くなった方の思い出の品でもあるため、できれば相続税対策として手放したくはありません。小規模宅地等の特例はそれを回避できる可能性があるのです。

 

相続後でも適応可能

原則、小規模宅地等の特例の適応は相続税を申告する前に行うこととされています。

相続財産などを事前にしっかりと把握して財産分与をされていれば、申告期限に間に合いますが、準備不足の場合は申告期限に間に合わなかったケースもあります。救済処置として決められた手続きを行えば、申告期限を過ぎてしまっても小規模宅地等の特例が利用できます

相続後でも申請ができる条件は、以下の3つです。

・相続税の申告期限までに遺産の分割ができていたか。
・相続税の申告期限後の3年以内に分割見込み書を税務署へ提出できたか。
・遺産の分割が相続税の申告期限3年以内にできたか。

遺産相続の分割がすんなり決まる場合もあれば、なかなか決まらない場合もあります。少子化の影響で大家族は少なくなっていますが、大家族の場合には遺産の分割で争いになるケースも、悲しいことに起こり得るのです。

反対に、ひとりっ子の場合は分割する兄弟がいないので、遺産相続の争いは起こらないようにみえます。

ですが、父親が亡くなった時の相続となると、母親と2人で分割することになります。場合によっては相続税の額が高くなることもあり、分割の方法を決めるまでに時間がかかってしまうこともあります。

もしも申告期限内に遺産相続の分割ができず諦めてしまっても、3年以内ならば申告書と一緒に遺産分割見込み書を提出すれば適用ができます。

本来の10ヶ月の申告期限よりも猶予があるように思いますが、やはり期間がありますのでなるべく早く申告をした方が、申告漏れを防ぐことができます。

 

小規模宅地等の特例の要件

では、実際に小規模宅地等の特例を使うときは、どのような要件を満たせばよいのでしょうか。

宅地と聞いて最初に浮かぶのは住居ですが、その他にはどのような宅地が対象になるのかご説明します。

 

対象となる小規模宅地とは?

まず、小規模宅地等の特例の対象となる宅地は4つあります。

1.特定居住用宅地等ー亡くなった方が実際に住んでいた住居のある土地
2.特定事業用宅地等ー亡くなった方が事業用として使用しており所有していた土地
3.特定同族会社事業用宅地等ー法人名義で会社として所有している土地
4.貸付事業用宅地等ー亡くなった方が賃貸用の不動産として貸していた土地

対象の土地は、大きく分けると居住用と事業用に分けられます。

ここで気になるのは土地の評価額の減額率。

4の貸付事業用宅地では最大50%が引き下げられ、そのほかは最大80%まで引き下げることができます。

例えば、特定居住用宅地、1億円相当を相続するとします。

小規模宅地等の特例を使えば、評価額を2,000万円まで引き下げることが可能となります。

しかしながら、土地には適用範囲の条件もあります。

具体的な土地の適用範囲を、下記にまとめました。

1.特定居住用宅地等ー330㎡
2.特定事業用宅地等ー400㎡
3.特定同族会社事業用宅地等ー400㎡
4.貸付事業用宅地等ー200㎡

土地の適用範囲は、貸付にしてしまうと小規模宅地等の特例の中でも範囲が小さくなり、評価額の減額率も最低ラインになります。

ですので、相続する土地がどのくらいの範囲で賃貸としているのかなどは、予め確認しておくとよいでしょう。

土地の適用範囲の1〜4それぞれを、さらに詳しくみてみましょう。

 

居住用宅地

居住用宅地の場合、まず誰からの相続になるのかによって小規模宅地等の特例が利用の条件が異なります。

亡くなった方の住居に関しては、配偶者・一緒に住んでいた親族・一緒に住んでいない親族が対象とされています。

他に、同じ生計で亡くなった方が住居用として親族に貸している場合も、要件に当てはまります。

ここでひとつ疑問になるのが、「老人ホームなどの施設に入所している場合はどうなるのか?」という点です。

もし老人ホームで亡くなってしまうと、亡くなった時に住んでいた住居でないため、小規模宅地等の特例は利用できなくなってしまうのでは?と考えるでしょう。

この疑問に関しては、心配は不要です。2014年の法改正により、老人ホームなどに入居していても、小規模宅地等の特例が利用できるように変更されました

ですが、亡くなった方が要介護認定を受けていたか、自宅を賃貸で貸し出していないか、未届け老人ホームでないかの条件をクリアしていないと、小規模宅地等の特例を利用することができなくなってしまうことを覚えておいてください。

 

事業用宅地

事業用宅地の場合の要件は以下の2つになります。

・親族が亡くなった方の事業を引き継いで、相続税の申告期限まで引き継いだ土地で事業を営んでいる

・親族が亡くなった方と生計を同じにしており、相続する前から相続税を申告する期限まで共同で事業を営んで使っている土地

上記の要件で相続はしたものの、事業には全く興味がないからといって、事業を廃業すると小規模宅地等の特例は受けられません。

相続税の申告期限までは、相続した土地は持ち続け、事業も続ける必要があります。

 

その他細かな要件に注意

居住用と事業用に分け、大まかな要件をお話ししてきましたが、細やかな要件により小規模宅地等の特例が使えない場合も出てきます。

小規模宅地等の特例に当てはまらないケースは一体どのような場合でしょうか。

 

小規模宅地等の特例が使えない場合も

では、小規模宅地等の特例が使えない場合の例を挙げてみましょう。

二世帯住宅を子供が相続した場合に、小規模宅地等の特例を受けるには「同居」と認められなければなりません。

一緒に住んでいれば同居とみなされるのでは?と思うかもしれませんが、「同居していた」と認められず、特例が使えなかったケースがあります。

例えば二世帯住宅で、一階は親の住まいで登記も親、二階には子供が住んでいて子供の登記になっている場合、小規模宅地等の特例を使うことができません。

これは、区分所有としての登記が原因です。区分所有とは、建物の中を分割して所有していることです。

マンションに当てはめると、ひとつの建物に何世帯もの人がそれぞれ所有し居住している状態をイメージできますよね。

二世帯住宅も同様なのです。

小規模宅地等の特例においては、区分所有登記の場合は同じ建物に住んでいても同居と認められないため、注意が必要です。

他にも、ひとつの土地に建物が複数建っている宅地に関しても、小規模宅地等の特例の適応は不可となります。

この場合は、登記や所有ではなく実際に住んでいるかがみられるからです。

例外として、完全に建物は別々でも渡り廊下のような建物を行ったり来たりできる環境があると、小規模宅地等の特例を認められるケースもありますので諦めずに確認してみましょう。

 

小規模宅地等の特例は専門家への相談がおすすめ

これまで小規模宅地等の特例についてみてきました。

実際に相続税を払うことになると、相続する土地のことや相続税の仕組みなどを理解し、申告に必要な資料の準備をします。

相続税の申告期限は10ヶ月と短いため、少しでも不明点があれば専門家の力を借りた方が手続きがスムーズに進みます。

もしも専門家の力を借りずに進め、申告期限に間に合わなかったなんてことになっては本末転倒です。

全てをひとりで抱えず、専門家への相談も視野に入れておきましょう。依頼費はかかりますが、大きな金額の節税ができればプラスになります。

 

まとめ

小規模宅地等の特例は、相続税を減額したい時に心強い制度です。ただし、様々な要件があるため事前のリサーチは必須です

相続は突然目の前に立ちはだかります。

相続税の申告が必要になった時には、小規模宅地等の特例を思い出してみましょう。

納得のいく遺産相続になるよう、節税につながる制度を賢く利用しましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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