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【不動産の相続 】
不動産の相続について説明しています。マンション、土地、貸家建付地、山林など不動産の種類によって、評価額の計算方法が異なります。また相続税の求め方も異なりますので、不動産を相続する場合は注意しましょう。

2019年8月18日 日曜日

相続財産が自宅のみの場合の分割方法とは?

亡くなった親が住んでいた自宅を相続することになったとしましょう。

もしも遺産が自宅のみだったら?

その自宅が、過去に自分も住んでいた思い入れのある家だとすると、そのまま残したいと思うでしょうし、両親と一緒に住んでいたのなら思い出と共に今後もそこに住み続けたいなどと思うでしょう。

しかし、相続人が自分以外にもいる場合にはどうすればいいのでしょうか。

また、高齢になり、人生のエンディングのことを考え始め「相続財産は自宅のみだな」と気付いた方。

自宅のみだからといって、相続の準備を怠ってはいないでしょうか。

自宅のみが残されて相続人が複数人いる場合、物理的に分けられませんので、相続人同士で争いが起こってしまう可能性もあります。

「老後の面倒を見てくれた相続人に自宅のみ譲り渡したい」と思っていても、相続財産の分割のなかでは思ったようにいかないケースもあります。

本記事では、相続財産が自宅のみのケースについてご紹介します。

 

遺産分割とは?

遺産分割とは、亡くなった人が遺言を残さないまま亡くなられた場合に、その遺産を相続人全員の共有の財産とし、相続人で話し合いを行うことによって分配の詳細を決めていくことです。

相続財産が自宅のみの場合、分割せずにそのまま置いておくことも可能です。

遺産分割に期限はありませんが、相続人の共有で持っていた財産の売却や賃貸などが必要となった場合には相続人全員で話し合いをしなくてはなりません。

その時に、兄妹などすぐ連絡が取れる人ばかりが相続人であればいいですが、兄妹がすでに亡くなっていて、その配偶者や子ども、孫など相続人が多数になっていた場合は、全員での協議が難しくなります。

全員が話し合いの場に集まれない場合は、代理人を立てるなどの手間や料金も発生します。

そうした理由で遺産分割は、遺産が亡くなった方の自宅のみというケースであっても、すぐにしておくべきだといえます。

相続財産は、相続割合に基づいて「分ける」必要がありますが、遺産が亡くなった方の自宅のみのように、物理的に簡単には分けることができない場合は、どうやって対応していけばいいのでしょうか。

 

相続財産が自宅しかないとき、トラブルになりやすい理由は?

例えば、亡くなった人に子どもが2人、長男と長女がいたとしましょう。

長男は亡くなった親と同居していて、長女は結婚し県外で暮らしているとします。

この場合、たとえ遺言で「自宅は長男が相続する」という旨があったとしても、法律的には相続人であれば最低限もらえる割合「遺留分」が定められているため、長女が権利を主張すれば相当分の遺産を譲らなければなりません。

しかし、相続財産が自宅のみの場合は先にも記したように、物理的に分けることができないため、場合によっては、その自宅を売却した金額で調整しないといけない場合もあります。

遺産が自宅のみの場合に、仮に遺言がなければ法定相続分の割合の額を支払わないといけません(遺言がある場合は、本来もらえる額の半分が遺留分となります)。

お金に余裕があれば良いですが、長男がこの件によって住む場所に困ってしまうこともあり得ます。

支払えたとしても、自宅のみといっても不動産の額を元にした割合なので支払う額が大きく、相続人の間で遺恨が残ったり、トラブルになってしまったりということもよくあります。

 

遺産が不動産、しかも自宅のみの場合の分割方法は?

遺産が自宅のみの場合にはどのように分割したらいいでしょう。

それぞれの状況に合わせて紹介します。

 

自宅を売るか、残すかで決まる

遺産が自宅のみの場合は、自宅をそのまま残すか売却するかで方法が変わってきます。下記にそれぞれのケースでの分割方法を説明していきます。

 

自宅を残す場合の相続

自宅を残す場合の相続分割方法は、下記の3つの方法があります。

 

共有

1つ目の方法として「共有」があります。

自宅のみである財産を相続人全員で共有するという方法で、例えば、相続人が子ども2人の場合は1/2ずつの権利を持っているという状態のことです。

この場合は、2人とも自宅を自由に使うことができますが、自宅を売却する場合や貸し出しをすることになり賃料が発生するなどという場合は、1/2ずつ利益を享受できます。

 

現物分割

2つ目の方法は「現物分割」です。

相続した財産を金銭ではなく現物を相続していく方法です。

自宅の面積をそのまま分けるという方法と、自宅以外の財産と相当の別財産を分けるという方法の2つがあります。

自宅のみの財産の場合は、前者になります。

しかし、前者の現物分割方法では、自治体が最低敷地面積などを定めている場合に、分けた時にその規定の面積を下回ってはいけないことになっているので、自治体への確認が必要です。

運良く分けられたとしても「将来、その敷地に建て替えなどをしたい」といった場合、建て替えの要件となる建ぺい率や、容積率などの問題でどちらか一方が建て替えができ、どちらか一方はできないなどということも起こり得ます。

現物分割の後者の方法は例えば、長男には自宅、長女には車や預貯金といったように、それぞれの財産にそれぞれ相続人を当てていく方法です。

しかし、相続財産が自宅のみの場合や、自宅とそのほかの財産では価値に差があるといった場合、相続人が納得しないと適用できない方法ともいえます。

 

代償分割

3つ目の方法は「代償分割」です。

自宅のみなど簡単に分割できない遺産を相続した人が、そのほかの相続人にその相続分を金銭で支払う方法です。

しかし、この方法は、その金銭を払うだけの財産余力があることが前提とされ、自宅や不動産の評価方法や評価額をそのほかの相続人にも納得してもらうことが必要です。

自宅をそのまま残したい場合に、この方法が有効となります。

 

自宅を売却する場合の相続

次に、財産は自宅のみで、それを売却する場合の相続分割方法を見ていきましょう。

 

換価分割

自宅を売却する場合の相続分割方法には「換価分割」という方法があります。

換価分割とは、自宅を売却して得たお金を相続分に従って分割する方法です。

遺産が自宅のみで資金に余力がなく、ほかの相続人に代償金を支払うことができない場合や、財産は自宅のみだが、そこに住む予定がなく自宅をそのまま残すことにこだわりがない場合、こちらの方法が有効です。

しかし、売却するには名義の書き換え手続きが必要になります。

デメリットとしては、購入してくれる人を見つけるのに手間がかかったり、売却時の金額が購入者との交渉の末、減ってしまったりすることなどが挙げられます。

うまく換金できた際は、故人の葬式や、未払いの医療費・病院代、税金を立て替えている相続人に精算した後に分けることを忘れずに行ってください。

 

トラブルにならないための対策とは?

これまでのように、遺産が自宅のみだった場合の相続は、相続人の間でトラブルになりやすい要素が含まれています。

自宅のみを相続する場合でも、相続人同士でトラブルにならないようにできることがいくつかありますので、紹介していきます。

 

遺言による自宅を相続する人の明示

遺産が自宅のみの場合、遺言を作成することによって、トラブルを防ぎ、トラブルが起こっても遺留分のみで済ませることができるのです。

遺言に自宅のみの財産を誰に相続するかを明記し、生前にそのほかの相続人に対する遺留分に見合う預貯金を残しておくと、上記で紹介した現物分割が可能となります。

自宅のみの財産で預貯金が足りない場合も、遺留分のみの金額に抑えることができ、誰かに自宅を相続させたいと思う場合には有効な方法といえます。

有効な遺言書としては「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、自筆証書遺言は無料で作成ができますが、不備があれば意思が無効になってしまう場合もあるので、専門的知識の面で不安が残る方は、公証役場で作成できる公正証書遺言を作成しておいた方が無難でしょう。

 

代償金を考慮した生前の対策

誰かに自宅を相続させておきたい場合、現物分割するために自宅を相続しない人の遺留分となる代償金を貯めておく必要がありますが、年金暮らしでそのような余裕がないという方にも2つの方法があります。

それは生命保険に加入することです。

自宅のみの財産の場合、自宅の相続人を保険金受取人に指定しておき、その保険金をほかの相続人に支払う代償金に充ててもらいます。

きょうだい2人が相続人の場合などは、兄に自宅、弟に生命保険金といった相続内容で、2人が納得してくれそうなら、あらかじめ決めておくこともいいでしょう。

この場合の保険金は「500万円×法定相続人の数」の金額までは非課税ともなるので、相続税の対策にも有効です。

相続税の対策という意味では、一時払いの終身保険という手段もあります。

終身保険であれば亡くなった時に必ず支払われ、一時払いであればまとまった資金を一気に生命保険に変えておくことができるため「相続財産が自宅のみだから相続対策をしていなかった!」などという場合も相続後のトラブル対策や相続税の節税効果が期待できます。

また、一時払いの終身保険は健康状態のチェックが緩く、年齢も85歳まで入れるものもあるので、自宅のみでも相続対策が必要だと気づいた時点でも入れる可能性が高いです。

もう1つ、自宅のみが相続財産の場合の相続方法として、生前に自宅を譲りたい相続人に贈与しておく方法があります。ほかの相続人から特別受益と指摘されたり、ほかの相続人が持つ遺留分を侵害している、といった主張があった場合は、相続人の共有財産となってしまったり、自宅のみの遺産を相続した相続人がほかの相続人に遺留分相当の金額を支払わなければなりません。

特別受益とは生前に自宅などの贈与を受けたり、相続によって遺贈を受けたりしたことを指します。

特別受益がある場合は、法定相続分から贈与額を引いたものが相続財産となります。

トラブルが起こるリスクがある場合は、遺産が自宅のみであれば生前贈与は厳しいといえます。

自宅のみが相続財産ではないのなら、ほかの相続人から特別受益だと主張があっても、ほかの相続財産総額から自宅分は金額として引かれてはしまいますが、自宅を差し出す必要はありません。

しかし、特別受益だと指摘され、相続財産が自宅のみの場合などは、代償金を支払えなければ、ほかの相続人と自宅を共有することになります。

相続財産が自宅のみではないが、そのほかの資産も特定の相続人にあげたいと考えている場合は、特別受益についても頭に入れておく必要があります。

特別受益がある場合の遺産相続は、ほかの相続財産とその特別受益を合算したものを相続財産と見なして遺産の分割を行います。こうしたことは「持戻し」と呼ばれています。

亡くなった方が、「持戻し」をしなくていい、という意思を示していた場合には特別受益分を相続財産に組み入れない「持戻しの免除」という方法もあります。

また、贈与の場合は、贈与税がかかるので注意が必要です。

通常、110万以上の財産は贈与税がかかるのですが、自宅のみの場合など、贈与財産が高額になる場合は相続時精算課税制度という方法もあります。

贈与する人が60歳以上で、20歳以上のその子どもや孫に贈与する場合、2,500万までは贈与税が非課税になる制度です。

2,500万を超える財産の部分について贈与税を支払います。この制度であれば、相続税計算の際に2,500万以上の部分の贈与税を先に支払っているので、その分の相続税は免除になります。

遺産が自宅のみで、あらかじめ贈与しておく方法は、遺留分請求などが発生し、トラブルが起こりそうな場合はおすすめできませんが、そのような状況になく相続税の対策として利用するのであれば、おすすめの方法といえます。

 

まとめ

相続財産が自宅のみの場合は、相続人が複数に渡るとき、遺産分割の方法でもめる可能性があります。

被相続人が、遺産相続について考えているなら、生前から準備ができることはたくさんあります。

分割方法を確認し、生前に生命保険に加入しておくなどの対策を取り、贈与についても考えてみるなど、相続財産が自宅のみの場合でも、すっきり相続できるように準備しておくことが大切です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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