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【不動産の相続 】
不動産の相続について説明しています。マンション、土地、貸家建付地、山林など不動産の種類によって、評価額の計算方法が異なります。また相続税の求め方も異なりますので、不動産を相続する場合は注意しましょう。

2019年7月14日 日曜日

相続税の節税 | 不動産相続と現金相続、どちらの方が節税になる?

相続することができる財産の種類は多岐にわたります。

多くの方はまず現金、預貯金などの金融資産を思い浮かべるでしょう。株式や国債などもこちらに含まれます。それ以外に、所有している土地や建物などの不動産、家具や車といった動産に分類されるものがあります。

財産の種類によって課税される相続税が異なってくるのはご存知でしょうか。

現金の金額にすれば同じ価値に見える「財産」でも、その種類によって算出される相続税に大幅な差が出てきます

例えば現金で保有している1億円と、1億円分の土地などの不動産では、一見同じ価値でも相続税は現金より不動産の場合の方が安くなります。

だからといって被相続人の死後に遺産である現金を使って不動産を購入しても、土地を相続したとは認められません。なぜなら、原則として「相続開始時」=「被相続人が亡くなった時点」で相続税の計算が行われるためです。

そのため、相続税の節税対策をする上では生前から早めに取り掛かることが重要なポイントとなります。

後悔することのないように、今回の記事では、相続税の対象となる財産のうち現金と不動産を比較して、相続税を節税する上でどのような違いが出てくるのかを見ていきましょう。

 

現金相続と不動産相続、相続税が節税になるのは?

相続税の計算にあたっては、相続財産が持っている価値を具体的な金額にして評価した「評価額」を算出する必要があります。

評価額が下がれば、その分相続税を安くすることができます。あらゆる財産について、評価額を下げられる細かな規定が国税庁による「財産評価基本通達」に定められていますので、これを余さず適用していくことが相続税を節税する上で重要となります。

評価方法の基礎となるのは、相続開始時の「時価」となります。

現金で保有している財産についてはその金額がそのまま100%時価であり、相続税の計算における基礎となる「評価額」となりますが、一方、不動産に対しては時価をそのまま評価額とするのではなく、評価を減額する規定が多くあります。

条件に該当すれば、本来の不動産そのものの時価より大幅に減額して評価することが可能なのです。

 

不動産の評価方法

相続税の不動産評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2通りがあり、どちらの方式で計算を行うかについては自由に選べるわけではなく、予め地域ごとに決められています。

評価の際には、相続する不動産がどちらの評価方式の対象となるのかを国税庁から公表されている路線価図・評価倍率表と照らし合わせて確認します。

 

・路線価方式

路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、国税庁によって毎年定められます。

この「路線価」という指標によって相続税評価を行う方式が路線価方式です。おもに市街地や住宅地などの土地が該当することが多いです。

路線価方式の場合、一般的に使いやすい土地、例えば正方形に近く平坦な宅地のような土地が想定されています。しかし、土地によっては傾斜があったり形がいびつであったりと全てがそのような使い勝手の良い土地であるとは限りません。

そのため、土地の形状などの特徴によってさらに評価減額が可能な規定が相続税法によって細かく定められています。

 

・倍率方式

路線価が定められていない地域の土地は「評価倍率表」を用いて相続税評価を行います。おもに人口の少ない地方の土地、山林、田畑がこれに該当します。

土地などの不動産の固定資産税評価額に所定の倍率をかけて相続税評価を算出します。

このように倍率方式の場合、固定資産税評価の時点で土地の特徴に応じて評価減額などの調整が行われているため、路線価方式と比較して計算が容易であるといえます。

 

現金は不動産にしたほうが相続税の節税効果大

不動産に対する評価制度の存在によって、相続税の減額が可能なことがお分かりいただけたでしょうか。

これは、価額がそのまま相続税の基礎となる現金との大きな違いです。

相続税の節税という観点では、現金で財産を保有することはもっとも節税に向かないといえるでしょう。

相続する財産のうち、現金の割合が高ければ高いほど相続税も比例して高額になるのです。

 

価値の変動のない現金の方が安心であるという考え方も根強くあるでしょう。実際に相続税を支払う際には現金が必要になりますから、不動産化すると支払い時に困るという懸念もあります。

しかしながら、バブル時代のようにそれなりの金額の現金を預金しておけば利息が期待できるということもなくなり、保有する現金をそのまま預金しているだけでは結局相続税の支払いによって目減りしてしまいます。

そのため、できるかぎり相続人の相続税負担を減らすためには、金融資産も利息に頼らず投資・運用したり、生前贈与などを行ったりといった相続税対策をしておくことが当たり前になりつつあります。

そのような現金の相続税対策のひとつとして、現金の不動産化が注目されているのです

現金の不動産化と言っても、単に不動産を購入すればよいというわけではありません。更地のような土地だけの状態で保有している場合と、土地の上に建物がある場合など、その不動産の形態や利用状況に応じて相続税評価額を減額できる割合が変わってくるからです。

例えば、現金1億円をそのまま相続した場合はそのままの価額である1億円が相続税の対象となります。

1億円を土地に変えた場合の評価額は一般的には公示価格の70%、建物を建設した場合、実際にかかった建設費用のうち50%~70%となることが多いです。

さらに、建築物を賃貸物件とし実際に借家人が存在する状態の場合、借家権割合の30%が差し引かれます。

 

不動産の評価額を減額する方法

では、不動産の評価額を減額する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

実は不動産評価とその減額制度は非常に複雑になっており、どの制度を利用するかによって相続税の計算結果に大きな差が出ます。

ここでは主に節税効果の高いものを紹介します。

 

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)が居住や事業などのために使用していた土地を相続する場合、宅地の価格を最大で80%減額して評価する制度です。

この特例を利用すれば、例えば本来の評価額が1億円の土地であれば、最大額減額された場合、価格は2,000万円となります。

なぜこれほど大幅な減額が可能なのかというと、相続人にとって居住用・事業用の土地は重要な生活基盤だからです。

相続税額が高額になってしまうと相続後に家に住み続ける、あるいは事業を継続することが困難になってしまう恐れがあります。遺族がそのような事態に陥ることを防ぐ救済策としての制度なのです。

この制度は一定の条件を満たす必要がありますが、相続開始後でも申告期限に間に合えば利用することができます。

 

借地権・借家権分の評価減額

借地権とは、建物を建てるための賃借権または地上権のことをいい、借家権とは、建物の賃借権のことをいいます。

相続人はこれらの「権利」を相続し、借地人または借家人となるのです。

借地権の場合、「自用地」(自分の居住用や事業用の土地)としての評価額に「借地権割合」をかけて計算します。借地権割合は、地域によって30%~90%の間で設定されており、その割合は毎年国税庁から発表されています。

一般的に利用価値の高い土地ほど割合が高くなります。また、一部地方の町や村では借地権割合のない土地もあり、その場合は0%=「相続税評価額がない」ことになります。

このように、借地権、借家権は立地によって評価減額が可能です。また、条件を満たせば先ほどの「小規模宅地等の特例」も適用することができます。

 

現金の不動産化にはリスクもある

このように、財産を不動産化して相続することで大幅に相続税が節税できるというのは非常に魅力的です。

しかし、不動産を相続する上で現金相続にはないリスクがあることもあわせて理解しておく必要があります。

ただ不動産化をするだけで相続税対策になる、ということではないのです。

投資額も大きいケースが多いため、リスクを知っておくことは大変重要です。

 

価値が下がる恐れ

不動産はその価額でそのまま評価される現金と異なり、常に価値が変動するものです。

不動産の価値が下がる主な要因については、以下のものがあげられます。

・人口の減少によって、住宅などが供給過多になる
・デフレによる不動産価格の下落

その他にも社会情勢や景気動向に関する情報など要因は様々ですが、いったん人々の心理が「売りたい」方向へ傾くと不動産の価値が右肩下がりに下がり続ける、といった事態も起こりえます。

そういった特性に合わせるために様々な評価減額が可能になっている一方で、実際に相続税が算出される相続発生時点において、想定より大幅に不動産そのものの価値が下がってしまっていては元も子もありません。

相続税対策としての現金の不動産化にあたっては、地価の動向を常に注視しておく必要があります。

 

維持費

不動産は現金と違って、常にその状態を維持管理する必要があります。

土地や建物のメンテナンスには様々な費用が発生します。

建物には基本的なインフラの整備・維持、定期的な補修作業に加え、リフォーム費用が必要になることもあるでしょう。

土地であれば災害などを想定した土壌の保持のための措置や、不法投棄対策、草刈りなどの維持管理を委託する費用などが想定されます。

また、所有しているだけで発生する維持費として「固定資産税」と「都市計画税」や保険などが挙げられます。

生前に相続税対策として現金の不動産化を行った時点からそれらの維持費が常に発生し、相続後は相続人が負担し続けることになります

財産としてただ保有するために不動産を取得してしまうと、結局は価値が目減りするのと同じことになります。

ただ保有するだけでなく、収益を生むように活用できる形にしておくことが、維持費という現金による出費を賄う観点からも重要になってくるのです。

 

相続時に分割しづらい

相続にあたっては、相続人が複数いるケースもあるでしょう。

その場合、相続人同士で財産を分け合うことになりますが、相続財産が不動産だけ、または不動産の割合が高い場合、均等に分け合うことが難しくトラブルに発展する可能性があります

分けられない不動産の相続を受けた人が、他の相続人に代償金を支払うなどの対策方法がないわけではありません。しかしながら、現金ではない財産を相続した人がそれなりの額の現金を支払うことは困難であることが多く、話がスムーズにまとまるケースは稀でしょう。

1円単位で分けられる現金と異なり、不動産の財産を相続人全員が納得できるよう分割することは難しい場合が多いのです。

 

相続人の相続税支払い時の問題

相続した財産が現金であっても不動産であっても、相続税は現金で支払うことになります

そのため、相続財産を不動産だけにしてしまうと、相続税を賄えなくなる可能性が出てきます。

不動産は現金化しない限りはあくまで「価値のある資産」であり、現金ではありません。維持費と同様に、現金が必要になることを想定し、試算した上で、相続財産のうちどれほどの割合で不動産化を行うかを慎重に決めることが重要です。

 

リスクを抑えるためには、専門家に相談

このように、相続財産を現金から不動産化すると節税効果がある反面、様々なリスクも想定されます。

また、節税につながる評価減額制度が細かく定められているとはいえ、相続税の申告の際に、税務署から「適用されていない制度がある」などと助言や指摘が入ることはありません。

リスクを抑えながら、現金の不動産化による相続税削減効果を最大限に得るためには、経験豊富な不動産鑑定士やコンサルタント、税理士などの専門家のサポートは必要不可欠です

 

まとめ

現金による相続と不動産による相続の場合にどのような違いがあるのか、また、効果的に節税するためにはどのようなポイントを押さえておくべきか、ご理解いただけたでしょうか。

相続税を節税する上で、現金の財産を不動産化しておくことは大きな効果を期待できますが、一方で、その特性から発生しうるリスクがあることも把握しておく必要があります。
専門家のアドバイスも仰ぎながら、どういった割合で不動産化しておくのがもっとも効率的か検討しましょう。

相続人となる遺族の負担とならないよう、また遺族にとってより価値のある財産を遺せるように、どのような財産のかたちを取るべきか、生前から十分に話し合い、しっかり準備しておくことが重要です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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