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【不動産の相続 】
不動産の相続について説明しています。マンション、土地、貸家建付地、山林など不動産の種類によって、評価額の計算方法が異なります。また相続税の求め方も異なりますので、不動産を相続する場合は注意しましょう。

2019年6月18日 火曜日

ペアローンの相続は?配偶者が亡くなった場合、親が亡くなった場合

家を買うという事は、人生においての大きな決断の一つであり、絶対に失敗を避けたい場面の一つでしょう。

夫婦でローンを組んで、より住みやすい家を買いたいと考えているのなら、ペアローンというローンの組み方があります。

ペアローンは共働きの夫婦にはうってつけで、現代の夫婦の形にも適したローンであると言えます。

しかし、このペアローンを「相続」するとなると、注意点がいくつかあります。

円満な相続のために、この記事を参考にしてみてください。

 

ペアローンとその仕組みとは?

そもそも、ペアローンとは何でしょうか。

ローンとひと口にいっても多種多様な形が存在します。

ペアローンは一般的には夫婦で組むことが多く、パートナーと手を取り合い一蓮托生で負債を返済していくローンです。

夫婦で家を購入し、新たな門出を成功させるために、この章ではペアローンの仕組みや成り立ちを多方面から解説します。

 

ペアローンを組む事とは

ペアローンは一人でローンを構築する際、希望の借入額に届かないケースに採用するのがほとんどです。

ペアローンを組むことによって、二人で一つのローンを組むことになるので、借入額が上がり一人でローンを組む時よりも高額な物件を購入することが可能となります。

 

ペアローンの大まかな仕組み

ペアローンとは相互関係で借入をするパートナーの連帯保証人になることを意味します。

連帯保証人制度とは万が一、借り入れた借用人が返済する能力が認められなかった時、借用人に代わり連帯保証人が全額返済する義務を負う制度のことです。

そのため連帯保証人とは極めて責任の重い役割であると言えます。

ペアローンは、お互いがお互いの連帯保証人になることで、有事の時はパートナーの全責任を負うリスクと引き換えに、一人の時よりも条件の良い家に住むことを叶えるのです。

 

ペアローンのメリット・デメリット

ペアローンのメリットの一つは、二人の年収で借りたほうが借入額を増やすことができ、金利の優遇が大きくなる可能性があることです。

また、二人で住宅ローン控除を受けられる等も利点です。

一方で、気を付けなくてはならないデメリットもあります。

互いの連帯保証人になるというペアローンの礎が、二人で心強いというメリットと表裏一体のデメリットであるといえます。

例えば、ペアローンを借り入れたパートナーが仕事を失い、収入がゼロになったとします。

その場合に連帯保証人であるがために、パートナーの返済まで負担することとなります。

また、返済が滞るなどすると、場合によっては借入先に一括返済を求められるケースもあります。

 

配偶者が亡くなってもペアローンは相続の対象ではない

配偶者が亡くなっても、自らが負担する負債を完済しない限り、ペアローンを利用して購入した物件は相続できるわけではありません。

この場合、手元に現金があるなら、夫か妻のいずれかのペアローンを完済する方法がおすすめです。

一方のペアローンを完済すると住宅の名義や持分割合はそのままで、抵当権のみが抹消されます。

また、完済すれば債務はすでに終了しているため、贈与税も発生しません。

ただし、一括返済をする場合、完済する当人の預貯金から出金することが必要です。

 

配偶者が亡くなった場合は二人分を返済するくらいの覚悟が必要

もし、ペアローンを組んでいるパートナーに不幸があり、亡くなった場合、ペアローンにより購入した不動産は亡くなった側のローンはゼロになりますが、もう一方の負債はそのまま残ります。

なぜならば、団体信用生命保険は亡くなった方の負債にしか適用されないからです。

そのため自らの負債はしっかり残るので、それらを完済するつもりでないといけません。

 

ペアローンで購入した不動産には団体信用生命保険の効力が及ばない

不動産を購入した際、多くの場合は団体信用生命保険(以後、団信)に加入します。

団信に加入する利点は、ローン債務者が死亡した場合や三大疾病・五大疾患を患ってしまった時に、ローンをなかったことにして、ローン債務者の家族の暮らしを保証する保険です。

ここで非常に重要なことですが、ペアローンで購入した不動産は団信の保険が適用されません。

正確には、亡くなった側のローンのみがゼロになるだけなのです。

しかしながら、ペアローンを組む必須条件が団信の加入です。

団信に加入できていないとペアローンを組むことはまず難しいのが実情です。

 

両親がペアローンで購入した物件を相続する場合

両親がペアローンを活用して購入した物件を、子らが相続する場合、その相続の方法はいくつかに分かれています。

ここで注意が必要ですが、遺産は一般的に財産だけでなく、負の財産である借金も遺産とみなします。

そのため物件を残してくれていても、それを上回る負の財産がある場合は限定承認をするのが賢明です。

 

相続の方法

相続は3つの方法に分類されます。

そのうちの一つは財産を相続することを放棄するということなので、実質相続する仕方は2種類です。

 

単純承認

直系尊属が残してくれた遺産を全て相続することを指します。

なにも対策せずに各種申請等をしない場合は、この単純承認が適用されます。

相続する場合のほとんどは、この単純承認で相続を行っていると言っても過言ではありません。

単純承認はしようという意思が明確になかったとしても、一部の土地等を名義変更などして自分名義にしてしまうと、単純承認をしたとみなされてしまう場合があるので、後述する限定承認を考えているのなら注意が必要です。

 

限定承認

限定承認とは、プラスの資産額を限度額として、プラスとマイナスの財産を両方相続する方法です。

例えば被相続人に3000万の借金があり、300万円の物件を所有していたとします。

ここで限定承認の手続きを行えば、300万円の負債を返済すれば、300万円の物件資産は手放さずに借金を相殺することが出来ます。

しかし、限定承認は手続きも非常に複雑で手間がかかるので計画的に手続きを進めることをおすすめします。

また、限定承認の手続きは相続開始があることを知ってから3か月以内に取り行う必要があります。

この3か月の期間を熟慮期間と呼びます。

限定承認には先買権という権利があり、共同相続人が充分な資産を有していれば、残したい遺産の評価額を弁済することで遺産を手元におくことができるのです。

 

相続する場合の注意点と特例、配偶者控除とは

被相続人の財産、例えば不動産等を名義変更して自分名義に変えてしまうと、単純承認したとみなされてしまいます。

すると、その後に被相続人に多額の負債があることが判明しても、財産放棄に切り替える段取りがうまくいかないケースがあります。

そのため、相続をする際には細心の注意を払い、身辺調査をするより早くに相続登記をすませてしまうことは控えるようにすることが肝要です。

ペアローンで持分を渡す際に、贈与税を回避するには、持分移転する不動産の価値を知ることが絶対条件です。

不動産の評価額を確認しておけば、贈与税のリスクをあらかじめ確認・回避することが可能です。

 

配偶者控除のメリットとは

婚姻期間が20年の夫婦では、自宅として使っている不動産を、2000万円分贈与しても贈与税を課税されない配偶者控除という制度があります。

配偶者控除には得をする面と場合によっては損となってしまう面があります。

相対的に得をするケースとしては、新しく不動産を購入する際に、金銭として2000万を妻、または夫に贈与する場合です。

この場合には金銭なので、不動産取得税や登録免許税、そして司法書士費用もかかりません。

そもそも相続税の性質として、財産額に大きな隔たりがある夫婦よりも、財産額が均等となっている夫婦の方が税額は安くなります。

例を挙げるなら、5000万所有する夫と1000万所有する妻よりも3000万ずつ所有する夫婦のほうが相続税は安価です。

以上のことから、財産を多く持っている方から、財産が少ない方へ2000万円分の金銭の贈与をするのは相続税を減らす方法として効果的です。

 

配偶者控除のデメリットとは

配偶者控除は婚姻20年の夫婦ならば特例として、2000万までの不動産を非課税で相続させることができる制度なので、一見する方が手放しでお得であると思いがちです。

しかし、デメリットもあるということと、安易に配偶者控除を適用してしまうと損をする可能性もあるということをお伝えします。

夫婦間の相続であれば無税で、1億6千万円を限度に配偶者の相続税額軽減の制度があります。

生前に配偶者控除を適用し、2000万円の相続をしなくとも、夫、または妻が亡くなった時、1億6千万円まで無税で相続できるのです。

状況が1億6千万円に上乗せして1億8千万非課税で贈与したいというのなら話は別ですが、それは珍しいケースで法に精通した方の発想でしょう。

また、自らの没後に身内の相続トラブルが心配という方もいらっしゃるかもしれませんが、それは遺言書をしかるべき手法でしっかり残せば問題はありません。

そして配偶者控除で注意すべきデメリットが不動産取得税と登録免許税です。

これらは配偶者控除で贈与税を回避できても、必要な税金としてかかってきてしまいます。

不動産取得税とは、その名称通り、不動産を取得した時に発生する税金です。

土地は1.5%、家屋は3%の税率をかけて計算します。

仮に2000万円の土地を贈与した場合には、2000万×1.5%=30万円が不動産取得税として徴収されます。

もう一方の登録免許税の税率は2%ですので、2000万×2%=40万円の税金が必要です。

二つの税金の合計が70万円で不動産取得税と登録免許税としてかかります。

それに対して、贈与ではなく、相続で不動産を取得する時は、不動産取得税は非課税で登録免許税は0.4%です。

このことから贈与税は回避できても、その他の税金によって損をしてしまう可能性をはらんでいる、ということをしっかり認識したうえで、配偶者控除の制度を利用するとよいでしょう。

困ったときは専門家である税理士に相談する事がトラブル回避の確実な方法です。

 

相続をしないという選択

財産を残してくれたからといって、必ずしも相続しなければならないということではありません。

相続をしないという選択をすることもできるのです。

多くの場合、被相続人が正の財産だけを残さなかった時に財産放棄を検討されます。

相続放棄をすれば被相続人の借金を相続する必要がなく、生前に被相続人がこしらえてしまった負の財産を相続せずに済みます。

このように、被相続人に多額の負債があるとき、財産放棄は非常に有効な手段となるのです。

同様に被相続人が生前に連帯保証人になっていた場合も、財産放棄をすることで、保証人の地位を引き継がなくて済みます。

財産放棄の手続きは相続が開始することを知ってから、3か月以内に速やかに取り行う必要があります。

財産放棄をしようと考えている場合は注意が必要で、正の財産も全て放棄することが財産放棄の条件となります。

そのため、相続登記いわゆる不動産の名義変更等をしてしまうと、単純承認をしたとみなされて相続放棄が難しくなってしまうケースがあるのです。

 

物件購入は相続対策になるが、ペアローンは相続対策にならない?

物件購入は相続する際の税金対策として有用に使えることがあります。

ただしペアローンで購入した物件は相続対策には有効ではない場合があります。

なぜならば、ペアローンで購入した物件には多くの縛りがあるためです。

例えば、夫婦で別契約なので、契約書も2本分必要です。

手数料や印紙代等の費用も二倍となります。

何より、負債が残っているペアローン住宅を子らが相続する場合は、限定承認か相続放棄が検討されるでしょう。

このような場合に相続対策を有効にし得る小規模宅地等の特例という制度がありますので、ご紹介します。

 

相続対策に有効な小規模宅地等の特例とは

不動産は現金と異なり、その土地の価値が時期によって変動します。

これを活かして節税対策をとることが可能です。

それに対して現金は10年後も現在も100万円は100万円で価値が増減することはありません。

不動産があることで、時価の下がった時に相続させることで、それだけで相続税対策になります。

そのような場合に有効な小規模宅地等の特例という制度があり、端的に説明すると、亡くなった人が自宅として使用していた土地については、8割引の金額で相続して良いという制度です。

この制度により、今後も住宅の運用次第で利益が出るのであれば、手元の現金を使って負債を返済するか、銀行から借り入れをするかの判断ができます。

相続する人でこの特例を使えるのは3パターンあります。

 

配偶者

配偶者が自宅を相続した場合には、無条件でこの特例を利用することが可能です。

 

同居親族

住民票が一緒なだけでは不可で、期間は具体的に定められていませんが、同居をしていたことが条件となります。

税務署から本当に同居していたのか徹底的に調べられるので、亡くなる前に一時的に相続対策を狙って同居をするなどはまず不可能です。

 

亡くなった方と別居していて、かつ、3年以上自分の持家に住んでいない親族

平成30年4月1日から税制改正され、上記の親族も小規模宅地等の特例を使うことが出来るようになりました。

ただし、配偶者や同居している相続人が存在しないことが条件です。

 

物件を相続する際の注意点

物件を相続する時は、まず相続をして税金面で損をしないかどうかしっかりと見極める必要があります。

例えば贈与税は控除できても、不動産取得税がより多くかかってしまうなどの場合もあり得ます。

相続に関しては専門家のアドバイスを仰いで、特に慎重に事を運ぶ必要があると言えます。

 

まとめ

いかがでしたか?今回はペアローンを相続した場合にかかる相続税についてご紹介しました。

ペアローンは通常のローンに比べて制約があるため、勘違いして相続対策として採用してしまう傾向があります。

不動産を相続対策に活用するなら、専門家である税理士に相談することがトラブルを回避し、節税へと繋がる一番の近道でしょう。

今までは見えなかった解決策をアドバイスしてくれる可能性もありますので、率直に課題をお話ししてみてください。

ご自身で相続対策を実施される方も、この記事を参考に、正しく相続、相続対策を行ってくださいね。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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