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【相続放棄について 】
相続放棄について説明しています。相続放棄のメリットやデメリット、相続放棄が有効なケース、注意点や期限などについてまとめています。

2019年2月19日 火曜日

相続財産を受け取らない方法、相続放棄とは

相続人は財産を相続する権利がありますが、被相続人の残した財産の状況によって、相続の方法を選択することができます。

相続の方法には、被相続人の財産をすべて相続する単純承認、相続人が相続で得た財産の上限により、被相続人の借金を返す義務も相続する限定承認、被相続人のすべての財産の相続を放棄する相続放棄の3つの方法があります。

この中で、相続財産を一切受け取らない相続方法は、相続放棄のみです

では、相続放棄とは一体どんな相続方法であり、どのような手続きが必要になるのか、詳しくご紹介いたします。

相続放棄とは

被相続人が亡くなったとき、相続人が相続する財産をすべて放棄することを相続放棄といいます

相続放棄が受理されると、民法(相続の放棄の効力)第939条によって、最初から相続人ではなかったとみなされるといった特徴があります。

また、相続放棄をする場合は期限内に必要な手続きを行わなければなりません。

相続放棄には期限がある

相続放棄をするときには、相続放棄の申述という手続きを行います。

この相続放棄の申述は、被相続人の財産を相続する立場にあることを知ってから3ヶ月以内に行わなければなりません。

この3ヶ月以内という期限は、単純承認や限定承認でも同じであり、民法(相続の承認又は放棄をすべき期間)第915条で定められています。

しかしながら、被相続人の財産の調査をしていても、すべての財産がわからないなどの理由で相続放棄をするべきか限定承認すべきかなどの判断ができない場合は、相続放棄の期限を延長する「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で行うことが可能です。

この相続の承認又は放棄の期間の伸長は、相続人を含む利害関係人または検察官のみが行うことができます。

そのため、相続放棄を3ヶ月以内にできない場合は、相続の承認又は放棄の期間の伸長を行い、手続きの期限を延ばすとよいでしょう

この相続の承認又は放棄の期間の伸長についても、民法(相続の承認又は放棄をすべき期間)第915条で定められています。

また、相続の承認又は放棄の期間の伸長を行うためには、相続人1人につき、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手の費用が必要ですが、連絡用の郵便切手は各家庭裁判所によって金額が異なります。

たとえば、相続の承認又は放棄の期間の伸長の手続きをするには、東京家庭裁判所の場合、82円×4枚と10円×4枚の合計368円分が必要となり、水戸家庭裁判所の場合、82円×5枚と10円×5枚の合計460円分、長野家庭裁判所の場合、82円 ×1枚の合計82円分が必要となります。

そのため、各家庭裁判所に事前の確認をしなければなりません。

確認方法は、各家庭裁判所に電話をする方法と、ホームページの該当ページで調べる方法の2種類があります。

また、相続の承認又は放棄の期間の伸長には、申立書と標準的な申立添付書類が必要になります。

申立書は「家事審判申立書」の「事件名」の欄に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」と記載し、申立人または法定代理人の名前などの必要事項を記入します。

また、標準的な申立添付書類をそろえければなりませんが、これは申立人の立場によって必要な書類が異なります。

下記の表は相続の承認又は放棄の期間の伸長の標準的な申立添付書類の一覧です。

 

≪相続の承認又は放棄の期間の伸長の標準的な申立添付書類の一覧≫

※○は共通の該当書類を示します。

相続の承認又は放棄の期間の伸長
被相続人の住民票除票又は戸籍附票

利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合、戸籍謄本等)

伸長を求める相続人の戸籍謄本

被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※1 〇

申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※2 〇

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3 〇

※4 〇

被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3 〇

※4 〇

被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいる場合も、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3 〇

※4 〇

被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4 〇

申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4 〇

部分該当の場合は、下記それぞれとなります。

※1被相続人の配偶者に関する申立ての場合

※2 被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)に関する申立ての場合

※3 被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)に関する申立ての場合

※4 被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)に関する申立ての場合

(引用:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html

このように、相続の承認又は放棄の期間の伸長の手続きを行うためには、相続放棄の手続きを行うときと同じように、申述書や標準的な申立添付書類、必要な費用(収入印紙800円分と連絡用の郵便切手)を用意して、手続きを行わなければなりません。

相続の承認又は放棄の期間の伸長の手続きを行うことによって、相続放棄に関しての手続きの期限を伸長することは可能ですが、その分手間が増えてしまうことは否めません。

相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続き方法は、相続放棄の申述書に記入して提出すれば終わりといった簡単なものではありません。

相続放棄の手続きを行う場合、大きく分けると下記5つのステップが必要になります。

  • 相続放棄の申述書を用意し、記入する
  • 相続放棄に必要な費用を用意する
  • 相続放棄に必要な書類である標準的な申立添付書類を用意する
  • 相続放棄の申述書、標準的な申立添付書類、必要な費用を家庭裁判所に提出する
  • 照会書を確認し、必要事項を記入の上、返送する

相続放棄の手続きの手順を1つずつ詳しく見ていきましょう。

相続放棄の申述書を用意し、記入する

相続放棄の申述書は家庭裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。

ダウンロードした相続放棄の申述書に上から順に必要事項を記入していきます。このとき、「相続放棄に必要な費用を用意する」でも記載している収入印紙800円分を貼付する欄があるので、貼付するのを忘れないようにしましょう。

また、相続人の年齢が20歳以上と20歳未満では記入しなければならない項目が一部異なります。

20歳未満の場合は仮に相続人が田中花子、法定代理人が山田太郎だった場合、申述人の欄に「田中花子の法定代理人 山田太郎」と記入し、押印をします。

また、「法定相続人等」という項目に相続人との関係にチェックを入れ、住所などを記入しなければなりません。

20歳以上の場合は、基本的に法定代理人ではなく、相続人本人が申述人となるため、氏名欄には申述人の名前を記入し、「法定相続人等」の項目に記入することは特にありません。

相続放棄に必要な費用を用意する

相続放棄に必要な費用は、申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。

連絡用の郵便切手においては、各家庭裁判所によって必要となる金額が異なります

そのため、相続放棄の手続きを行う家庭裁判所のホームページで確認するか、問い合わせをして、金額を確認する必要があります。

相続放棄に必要な書類である標準的な申立添付書類を用意する

相続放棄申述書と並んで、相続放棄に必要な書類である標準的な申立添付書類は、相続人の立場によって用意すべき書類が異なるといった特徴があります。

下記の表は、相続放棄の手続きに必要な標準的な申立添付書類の一覧です。

 

≪相続放棄の手続きに必要な標準的な申立添付書類の一覧≫

相続放棄の申述

被相続人の住民票除票又は戸籍附票

申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本

被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※1〇

※2〇

申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※2〇

被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))が要る場合も、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

※○は共通の該当書類を示します。

部分該当の場合は、下記それぞれとなります。

※1 申述人が被相続人の配偶者の場合。

※2 申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合。

※3 申述人が被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

※4 申述人が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

(引用:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

被相続人の住民票除票または戸籍附票と申述人(放棄する方)の戸籍謄本はどの立場であっても共通して必要な書類です。

ですが、そのほかの書類については、相続人の立場によって必要な場合と不必要な場合があります。

そのため、どの書類が必要であるかを、自分の立場を確認したうえで用意しなければなりません。

これらの必要書類については、裁判所のホームページ「相続の放棄の申述」に記載されているので、確認するようにしましょう

また、自分でそろえることに不安がある場合は、相続の専門家である弁護士や司法書士に依頼することも可能です。

相続放棄の申述書、標準的な申立添付書類、必要な費用を家庭裁判所に提出する

相続放棄の手続きに必要なものをすべてそろえたら、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所に提出します。

提出方法は、持参する方法と郵送する方法があります。

郵送に対応していない家庭裁判所もあるので、事前に確認しましょう

照会書を確認し、必要事項を記入の上、返送する

相続放棄に必要な書類と費用を提出すると、家庭裁判所から照会書が送られてきます。

この照会書に必要事項を記入し終えたら返送します。

記入した内容に問題がなければ、相続放棄申述受理書が送られてきますが、内容に問題があった場合、相続放棄は却下されます

却下された内容に不服な場合は、2週間以内に即時抗告という不服申し立てを行わなければなりません。

相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄にはメリットもデメリットも存在しています。

まず、相続放棄のメリットの1つ目として、「被相続人の負債を相続しなくてすむこと」が挙げられます。

「単純承認」といって、被相続人のプラス財産もマイナス財産もすべて相続する相続方法があります。

この場合、借金などのマイナス財産が多いと、相続人が借金を背負うことになり、相続すること自体が負担になってしまいます。

ですが、相続放棄をすることで、その負担を背負わなくてすみます。

 

2つ目のメリットは、「面倒な遺産相続のトラブルに巻き込まれなくてすむこと」が挙げられます。

相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったとみなされるため、ほかの相続人同士が遺産相続のトラブルを起こしても巻き込まれる心配がありません。

 

3つ目は「相続人が複数いる場合、1人の相続人にすべてを相続させることができること」が挙げられます。

財産を相続させたい1人以外が相続放棄をすることで1人の人がすべての財産を相続することができます。

 

次に相続放棄のデメリットですが、1つ目として、「一度、相続放棄をした場合、撤回することができないこと」が挙げられます。

もし、相続放棄をしたあとで財産が見つかった場合でも相続放棄をしていると、最初から相続人として見なされなくなるため、新しく見つかった財産を相続したいと思っても相続することができません

このような事態を防ぐためには、被相続人の財産を相続することがわかったときに、すべての財産をきちんと把握することが重要です。

自分ですべての財産を把握することが難しい場合は、専門家である弁護士や司法書士などに被相続人の財産の調査を依頼するとよいでしょう。

 

2つ目は「代襲相続ができなくなること」が挙げられます。

これも1つ目と同じで、相続放棄をすることで最初から相続人と見なされないため、相続権がなくなり、代襲相続が不可能となります。

 

3つ目は「相続放棄をすると撤回することができない」ということが挙げられます。

相続放棄は一度行うと、相続放棄の期限内であっても相続できないことが(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)第919条によって定められています。

限定承認の申述照会

限定承認の申述の有無についての照会の申請は、相続人と債権者などの被相続人に対する利害関係人に限られます。

限定承認の申述の有無についての照会の手数料は無料ですが、書類の提出が必要です。

提出しなければならない書類には、照会申請書及び被相続人等目録をはじめ、添付書類として必要なものがあります。

添付書類に関しては、照会の申請をした人の立場によって異なります。

下記の表は、限定承認の申述の照会時に必要な添付書類の一覧です。

 

≪限定承認の申述の照会時に必要な添付書類の一覧≫

相続人が申請する場合

債権者などの被相続人に対する利害関係人

被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)

照会者と被相続人の発行から3ヶ月以内の戸籍謄本(照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本)

照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)

委任状

照会者の資格を証する書類

[個人の場合]照会者(個人)の住民票

[法人の場合]商業登記簿謄本または資格証明書

利害関係の存在を証明する書面(コピー)

※○は共通の該当書類を示します。

※このほかにも、相続関係図の提出の協力が求められています。

(参考:http://www.courts.go.jp/shizuoka/saiban/tetuzuki/souzoku_houki/index.html

上記の表からもわかるように、限定承認の申述の照会時に必要な添付書類は、申述人の立場によって異なります。

まとめ

このように、相続財産を受け取らない方法として相続放棄は存在しています。

相続放棄をする場合は、相続放棄のメリットとデメリットをよく理解した上で、さまざまな手続きを行い、相続放棄の受理をしてもらわなければなりません。

相続財産を受け取らない方法として、相続放棄を有効に利用することが相続人には重要であるといえるでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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