相続放棄は被相続人の財産を放棄するといった意思表示をすればよいというものではありません。
単純承認(被相続人の財産である資産も負債もどちらもすべて相続する方法)とは異なり、家庭裁判所に提出する書類も多く、手間も時間もかかるのが現実です。
しかしながら、被相続人の財産の状況や相続人の都合によっては、相続放棄をすることで得られるメリットは多く、相続放棄を選択した方がよい場合があります。
ここでは、相続放棄をすることで得られるメリット5つを中心にご紹介いたします。
相続放棄とは何か
相続放棄とは、被相続人の財産の相続をすべて放棄することをいいます。
相続放棄をするためには、まず、被相続人の財産の調査をすることが必要です。
被相続人の財産というのは、現金や不動産、農地などの資産だけでなく、借金などの負債も含みます。
これは、相続放棄をした方がよいかどうかの判断をするだけでなく、相続放棄の手続きをする際に資産や負債を記入しなければならないからです。
また、相続放棄の手続きは、相続放棄をする意思を表示し、必要な書類を提出したら簡単にできてしまうものではなく、実際は細かい手続きの連続であり、時間との戦いでもあります。
これは、相続放棄の手続きに必要となる書類が立場によって異なり、多くの書類を用意する必要があるためです。
それだけでなく、相続放棄の手続きを完了させるための期限は、被相続人の財産を相続することを知ってから3ヶ月以内と民法(相続の承認又は放棄をすべき期間)第915条によって定められています。
これらのことからもわかるように、相続放棄の手続きは決して簡単なものではありません。
また、一度相続放棄を却下されてしまうと、基本的に再度相続放棄の手続きを行うことはできません(ただし、相続放棄の却下をされ、不服がある場合は、即時抗告を2週間以内に行い、高等裁判所で審理してもらうことが可能です)。
それ以外にも、相続放棄が受理されると撤回することができないということが、民法(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)第919条において定められています。
相続放棄の撤回は、相続放棄の手続きを完了しなければならない期間である3ヶ月以内であったとしてもできないこととされています。
ですから、相続放棄を行う際は、慎重にならなければなりません。
そのため、相続放棄の手続きが自分の手に負えないと思ったときは、専門家である司法書士や弁護士に相談し、被相続人の財産の調査から相続放棄が本当に必要であるかを判断し、相続放棄をすると判断した場合には相続放棄の手続きを依頼することも1つの選択肢であるといえるでしょう。
相続放棄と限定承認の違い
相続放棄と限定承認には、いくつもの違いがあります。
まず、相続放棄は1章の「相続放棄とは何か」でも記載しているように、被相続人の財産をすべて放棄することです。
しかし、限定承認は被相続人の残した負債がどのくらいあるかわからないものの、財産が残る可能性がある場合や、被相続人の財産に負債が多いとわかっていてもどうしても相続したい財産がある場合などに、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人債務を相続することをいいます。
相続放棄がすべての財産を放棄したい相続人が行うのに対して、限定承認は一部の財産を相続したい相続人が行います。
このように、相続放棄と限定承認は、根本的な部分が異なっているのです。
また、申述の手続きを行う場合にも異なる点が多々あります。
たとえば、申述人ですが、相続放棄の場合は、相続人または法定代理人(場合によっては特別代理人)しか行うことができませんが、このとき、相続人は個人で手続きを行うことができます。
ですが、限定承認の場合は、相続人が各個人で手続きを行うのではなく、共同で行わなければなりません。
また、相続放棄も限定承認も必要な書類は、申述書と標準的な申立添付書類と名称は同じものの、その内容は相続放棄と限定承認では異なります(ただし、標準的な申立添付書類は一部共通しているものもあります)。
このように、相続放棄と限定承認にはさまざまな違いがあります。
相続放棄をすることのメリット5つ
相続放棄は被相続人の財産の相続をすべて放棄しなければならないため、マイナスなイメージがあるかもしれません。
ですが、相続放棄には被相続人の財産の状況や相続人の立場によって、多くのメリットが存在しています。
ここでは、相続放棄をすることのメリット5つをご紹介いたします。
被相続人のマイナス財産を相続しなくてすむというメリット
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