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【遺言について 】
遺言、遺言書について説明しています。法的効力をもつ遺言を残すには、遺言書の書き方、注意点を知っておくべきです。遺言書の種類や遺言書の書き方などについてまとめています。

2019年6月12日 水曜日

遺言信託の費用はどのくらい?どのような費用がかかる?

近年「終活」という言葉が流行っていることからわかるように「自分が亡くなった後に、遺族たちに迷惑がかからないようにしたい。」や「自分の意思を遺族にしっかりと残したい。」と意識して過ごす方が増えたように思います。

自分の遺産を、遺族たちにどう相続するのかを考えたり、その為の準備をしておいたりということは、自分も含め遺族にとっても良い終活のひとつです。

その意思表示のひとつとして「遺言」がありますが、今回は「遺言」がしっかり遺言どおりに執行されるためのサービスである「遺言信託」についてご紹介します。

 

遺言信託とは

遺言信託とは、信託銀行等が遺言書作成の相談から、遺言書の保管、遺言書の執行まで相続に関する手続きをサポートしてくれるサービスのことです。

法律用語としても遺言信託という言葉があり「遺言において、遺言する人が信頼できる人に、特定の目的に従って財産の管理等する旨を定めることにより設定する信託のこと。」としています。この記事では、前者の信託銀行等がサポートしてくれるサービスとしての遺言信託についてご紹介していきます。

遺言信託は主に、下記に該当する人たちが利用しています。

  • 相続対策を考えている
  • 相続に関して不安がある(子供たちに相続でトラブルを起こして欲しくない。など)
  • 相続人以外の方に相談したい

 

また、遺言信託を利用するメリットは主に下記5つがあります。

  • 専門的な知識が必要な相続事務について、信託銀行からサポートを受けることができる
  • 遺言に記した資産内容から、その有効活用に関するアドバイスをもらうことができる(信託銀行は顧客から信託された資産を運用することが本業のため)
  • 弁護士や税理士は個人のため、遺言者より先に死亡してしまう可能性がある。金融機関(法人)である信託銀行で遺言信託サービスを行った方がその点で将来的な安心感がある
  • 相続人間のトラブルを防止することができる
  • 自分の面倒をよく看てくれた方、自分が亡くなった後に自分の財産を社会貢献に役立てたい人など、相続人以外の人に相続でき、遺言者の意思を確実に実現することができる

 

一方遺言信託には、デメリットやできないこともあります。

遺言信託のデメリットは主に下記4つです。

  • 財産以外の、子の認知や相続人の排除など身分に関する事項については遺言信託のサービス外である
  • 相続人同士で遺産分割に関する争いが既に起きている場合や、紛争になる可能性が高い場合は信託銀行は遺言執行者にはなれない(この場合は弁護士に依頼する必要があります。)
  • 相続税の申告など税務に関することは、遺言信託のサービス外であり、別途税理士に依頼する必要がある(税務申告については税理士資格が必要となる為です。別途税理士への費用がかかります)
  • 遺言執行時に支払いする費用(報酬)については遺産の額によるため、財産が少額の場合は弁護士に依頼した方が費用が安くなる時がある(遺言信託を扱っている銀行では最低報酬額が定められています。)

 

遺言信託は下記の流れで行われます。

【遺言作成・保管時】
遺言作成・保管時事前相談→遺言書の作成(公正証書)→遺言書の保管→定期照会・見直し

【遺言執行時】
遺言者死亡→信託銀行へ通知→遺言執行者の就職→財産目録の作成→遺言の執行(遺産分割・名義変更の手続き)→完了

ここで注意すべきことは「遺言信託を行っている銀行では遺言書は自分で書いたものは受け付けておらず、公正証書遺言のみ受け付けてもらえる」ということです。

公正証書遺言は公証人のもとで作成されるため、遺言書の法定要件を欠いたりすることがなく、内容が明確です。また、原本が公証人役場で保管されることで、偽造や紛失を防止することができるからです。

遺言信託は銀行にて遺言書の作成段階から相談を受け付けてくれるので、遺言書をまだ書いてない方は、内容についてもアドバイスを受けることができます。

 

遺言信託に掛かる費用とは

one’s last will and testament with gold and money, close-up

基本料金

遺言信託には基本手数料がかかります。

各銀行、プランを設けており、大きく分けて下記2つのパターンが多いです。

①最初の初期費用を抑えるプラン
②支払総額を抑えるプラン

②の支払総額を抑えるプランの方が、自分が亡くなった時に発生する執行報酬額が抑えられる為、相続人に費用負担がかからないメリットがあります。

財産額が大きい場合は特にこちらの方が費用が少なくて済むケースが多いです。

記事の後半にて、各銀行のプラン例を紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。

また、プラン以外の費用として、公正証書作成・書き換え時には、

  • 公正証書作成費用
  • 戸籍謄本、固定資産評価証明書、登記事項証明書等の取り寄せ費用
  • 印鑑証明書発行手数料

遺言執行手続時には、

  • 相続税申告および準確定申告などにかかる税理士に支払う費用(報酬)
  • 不動産登録登記にかかる登録免許税および司法書士への費用
  • 戸籍・除籍謄本、固定資産評価証明書、登記事項証明書等の取り寄せ費用
  • 預貯金等残高証明書発行手数料

などの費用も必要になります。

 

遺言書の保管料

遺言信託では、遺言書を作成した後、執行されるまでは各銀行で保管されることになりますが、その保管しておく期間の間、遺言書の保管料が発生します。

年間費用で設定している銀行が多く、上記の基本料金選択時のプランや銀行によっては、保管料が発生しないものもあります。

 

遺言書修正の際の手数料

遺言書を修正したい場合に必要となります。

また、遺言信託を執行前に解約したい場合も手数料が必要です。(選択した銀行やプランによっては解約手数料がかからないこともあります。)

 

遺言執行時の費用

遺言執行時には、

  • 遺言信託の申し込みをした信託銀行と契約中の金融資産
  • それ以外の金融資産
  • 不動産など上記以外の資産種類

など相続を執行した資産総額の評価額に各銀行が手数料割合を決めており、それに準じた費用が必要になります。

銀行によっては執行を行わない低額なプランを用意しているところもあります。

その場合は弁護士などに執行業務をお願いする等の手段があります。

 

遺言信託の費用例

各銀行の費用例は以下のようになっています。(※2019年6月時点)

▼三菱UFJ信託銀行

【最初の初期費用を抑えるプランの場合】

基本手数料       324,000円

遺言書の保管料     年間5,400円

遺言書修正の際の手数料 54,000円 (中途解約時は216,000円)

遺言執行時の費用    相続税評価額に下記A、Bの計算を行った合計額に1.08を乗じた額(最低執行報酬額は1,620,000円)

A:MUFJグループと契約中の預金・信託商品・窓口販売による投資信託・国債・保険商品などに対しての0.3%

B:1億円以下の部分       1.8% 

 1億円超3億円以下の部分     0.9%

    3億円超10億円以下の部分   0.5%

   10億円超の部分       0.3%

【支払総額を抑えるプランの場合】

基本手数料       1,080,000円

遺言書の保管料     年間5,400円

遺言書修正の際の手数料 54,000円(中途解約金はなし)

遺言執行時の費用  初期費用を抑えるプランと同じ割合で計算した合計額ー1,000,000円に1.08を乗じた金額(最低執行報酬は756,000円)

▼三井住友信託銀行

【最初の初期費用を抑えるプランの場合】

基本手数料       324,000円

           (+契約から次の4月末日までの保管料(年間6,480円の月割))

遺言書の保管料     年間6,480円

遺言書修正の際の手数料 54,000円

遺言執行時の費用  下記A、Bの計算を行った合計額(最低執行報酬額は1,080,000円)

A:三井住友信託銀行と契約中の預金・信託商品・窓口販売による投資信託・国債・保険商品などに対しての0.324%

B:上記以外の財産に対しては以下の割合

5000万円以下         2.160%

5000万円越え1億円以下の部分  1.620%

1億円越 2億円以下の部分   1.080%

2億円越 3億円以下の部分   0.864%

3億円越 5億円以下の部分   0.648%

5億円越  10億円以下の部分   0.432%

10億円越の部分         0.324%

【支払総額を抑えるプランの場合】

基本手数料       864,000円

遺言書の保管料     無料

遺言書修正の際の手数料 54,000円

遺言執行時の費用   初期費用を抑えるプランと同じ割合で計算した合計額ー756,000円

           (最低執行報酬は324,000円)

▼りそな銀行

りそな銀行は、上記の2つの銀行と違って、通常の遺言信託の「一般型」と、相続人が1人しかいない場合にお得になる「パッケージ型遺言信託」が存在します。

【最初の初期費用を抑えるプランの場合】

(一般型遺言信託)

基本手数料       324,000円

遺言書の保管料     年間6,480円

遺言書修正の際の手数料 108,000円(中途解約時は162,000円)

遺言執行時の費用  下記A、Bの計算を行った合計額(最低執行報酬額は1,080,000円)

A:りそなグループ各銀行と契約中の預金・信託商品・窓口販売による投資信託・国債・保険商品などに対しての0.324%

B:上記以外の財産に対しては以下の割合

5000万円以下         2.160%

5000万円越え1億円以下の部分  1.620%

1億円越 3億円以下の部分   1.080%

3億円越の部分          0.540%

(パッケージ型遺言信託)

基本手数料       216,000円

遺言書の保管料     無料

遺言書修正の際の手数料 54,000円(中途解約時は162,000円)

遺言執行時の費用  上記の一般型プランの割合で計算を行った合計額(最低執行報酬額は1,080,000円)

【支払総額を抑えるプランの場合】

(一般型遺言信託)

基本手数料       864,000円

遺言書の保管料     無料

遺言書修正の際の手数料 108,000円(中途解約時は手数料無料)

遺言執行時の費用   下記A、Bの計算を行った合計額(最低執行報酬額は540,000円)

A.りそなグループ各銀行と契約中の預金・信託商品・窓口販売による投資信託・国債・保険商品などに対しての0.324%

B.上記以外の財産に対しては以下の割合

5000万円以下         1.080%

5000万円越え1億円以下の部分  1.080%

1億円越 3億円以下の部分   1.080%

3億円越の部分          0.540%

(パッケージ型遺言信託)

基本手数料       756,000円

遺言書の保管料     無料

遺言書修正の際の手数料 54,000円(中途解約時は手数料無料)

遺言執行時の費用  上記の一般型プランの割合で計算を行った合計額(最低執行報酬額は540,000円)

 

遺言信託の費用は高いのか?安いのか?

上記で説明してきた通り遺言信託は相続人の手続負担を減らすことができたり、自分の意思を死んだ後もしっかりと実現させたりしてくれる心強いサービスです。

しかし、それなりの費用もかかります。

ただ、意思を明確にしていなかったばかりに、相続人間でトラブルが発生し、弁護士費用などが発生するなどという場合には、初めから遺言信託サービスを利用しておいたほうが安上がりだったという事もあり得ます。

また、遺言信託にて銀行は相続税の申告はできませんが、税理士を紹介してくれることもあるため、相続人が自ら税理士を探す手間を省くことも可能です。

「遺言書を確実に有効性のあるものにしたい」「自分が死んだときに、相続人に迷惑や負担を掛けたくない」という気持ちが強いのであれば、遺言信託にかかる費用はそう高くはない費用だと思っても良いでしょう。

 

まとめ

遺言信託は費用もかかりますが、相続財産についてプロのアドバイスをもらいながら、自分の意思を託し、実行してもらえる頼もしいサービスです。

ご家庭の状況や、財産内容によって遺言信託サービスを利用した方が良さそうだという場合や、遺族のことを考えて、財産を納得感のある使い途にしたいという場合は、遺言信託というサービスを使ってみるのも良いのではないでしょうか。

2019年6月12日
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遺言信託のメリット3つ。遺言信託を選ぶ理由とは
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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