> 相続対策 > 相続対策一覧 > その他の相続 > 相続におけるクレジットカードの取り扱い解説|解約・支払いなど
【その他の相続 】
お金や不動産以外を相続する場合について説明しています。墓地や仏壇、ゴルフ会員権、自動車、保険金、株式、会社、宝石、貴金属などを相続する場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年7月8日 月曜日

相続におけるクレジットカードの取り扱い解説|解約・支払いなど

多くの人がどこかのタイミングで直面するであろう遺産相続。

相続とは、ある人が亡くなった際にその人の遺産を特定の人が引き継ぐというものです。

相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と言いますが、被相続人と相続人は近い親族にある場合が多数を占めています。

相続の手続きはとても煩雑で労力がいるものですし、大切な家族が亡くなって、落ち着く間もなく発生する相続という細かく膨大な作業は、尚更負担が大きいことでしょう。

また、相続は人生に何度も行う作業ではないため、細かい手続きを見落としやすいものですが、とても重要なことなので一つ一つの手続きをしっかり行う必要があります。

相続において忘れがちな手続きの一つに、クレジットカードの存在があります。

今回は、相続におけるクレジットカードの取扱い方法について、見ていきたいと思います。

 

クレジットカードも遺産に含まれる

被相続人が持っていた財産や権利義務は、基本的に全てが相続の対象になります。

被相続人の遺産には、クレジットカードも含まれることを忘れてはいけません。

クレジットカードはとても身近なものになっており、今は多くの人が当たり前のように持っています。

株式会社ジェイシービーの2016年度「クレジットカードに関する総合調査」によると、日本におけるクレジットカードの保有率は84.2%、保有者一人あたりの平均保有枚数は3.2枚との結果が出ています。

特典が付いたりポイントが貯まったりするので、保有枚数は増え利用頻度も増えてきています。

そのような中、相続が発生した際に、クレジットカードは何もせず放っておいていいのかどうか、悩みますよね。

では、相続手続きの際、相続の対象であるクレジットカードについてはどのような手続きが必要になってくるのでしょうか。

 

解約が必要

相続手続きの際、クレジットカードをそのまま放置していてはいけません。

被相続人が死亡しても、クレジットカードが何もせずに解約されることは無く、必ず解約の手続きが必要になってきます。

解約せずにいると、年会費などの請求が永遠に発生することになってしまいます。

既に引き落とし口座になっている銀行口座が凍結している場合など、ついついクレジットカードはそのまま放っておいても大丈夫な気がしてしまいますね。

しかし銀行口座の凍結とクレジットカードの解約は別物なので、相続には注意が必要です。

 

解約方法について

まず、被相続人がどのようなクレジットカードを持っていたかの確認が必要です。

クレジットカードは複数枚持っている場合もあるでしょう。

今の時代、クレジットカードは単体とは限らず、クレジット機能付きのカードが主流になっています。

(例)銀行のキャッシュカード、お店のポイントカード、航空会社のマイルが貯まるカード、電車などの交通系ICカード、ETCカード、ガソリンカード

上に挙げたのはほんの一部で、その種類は多岐に渡ります。

財布やカードケース、銀行口座の引き落とし履歴などから、細かくチェックする必要があるため手間のかかる作業ですが、おすすめは、金融機関の相続手続きの際に、クレジットカードの有無についても併せて確認することです。

同時に手続きを進めることができ、ぬけもれもなく安心です。

 

次に、各クレジットカード会社へ電話を入れ、被相続人である会員が死亡した旨を伝えます

電話番号はカードの裏面に記載されています。お金に関わる手続きなので、原則として相続人である家族が行います

その際、カード会社から確認される会員の個人情報などについて、あらかじめ書き出しておくとスムーズです。

・会員のフルネーム
・会員の生年月日
・会員の住所
・銀行口座
・カード(暗唱)番号
・連絡者と会員の続柄

カードの利用が無いことが確認できれば、この場で解約手続きが完了することがほとんどです。

ただし、クレジットカード会社によっては、後日解約書類の郵送手続きが必要になる場合があります。

手続きの流れをきちんと確認し、速やかに手続きを進めましょう。

 

家族カードに注意

クレジットカードを解約する際に忘れがちなのが「家族カード」の存在です。

家族カードは、本会員である被相続人の契約を前提として発行されるものです。

被相続人が亡くなり本会員カードが解約されれば、それに伴って家族カードも解約になるので注意が必要です。

また、クレジットカードの名義相続もできません。そのため、現在持っているカードが被相続人のカードに紐づく家族カードのみという場合などは、特に注意が必要です。

 

クレジットカードの支払いが残っている場合は?

解約の前に忘れてはならないのが、支払いが残っているかどうかの確認です。

特に、公共料金や携帯電話料金など、自動引き落としの有無を確認する必要があります。

クレジットカードを解約しても、引き落とし口座を変更するか、大元の契約を解約しない限り、自動引き落としを停止することはできません。

クレジットカード利用の支払いは、ほとんどの人が口座振替にしています。

支払いが残っており、銀行口座が凍結されておらず口座に残高があるなら、必要な支払いの引き落としが終わるのを待ってから手続きを進めてもいいかもしれません。

その際忘れてはならないのは、解約手続きまでの間カードを利用できない状態にすることです。

紛失や盗難、不正使用などが無いように、ハサミを入れるなどしておきましょう。

このような手続きは、クレジットカードの会員である被相続人が亡くなってから、「すみやかに」手続きを進めることが原則です。

その場合の対応について、見ていきましょう。

 

解約時は一括返済となる場合が多い

被相続人のクレジットカードを解約する際に支払いが残っている場合、まずは口座凍結の確認がなされます。

口座が凍結されておらず残高があれば、そのまま引き落としが行われます。

しかし口座凍結や残高不足の場合、担当部署と相続人である家族との相談になり、基本的に相続人による一括返済となります。

高額な支払いで利用することのある分割払いやキャッシング、リボ払いなどについても、一括返済になる場合が多いのです。

万が一、一括返済が厳しい場合は担当部署との話し合いで分割に応じるケースもあるようです。

 

相続を放棄をすれば残債の支払い義務はなくなる

クレジットカードの会員である被相続人が亡くなり、上に述べてきたように支払残高がある場合、それは法定相続人が遺産として相続することになります。

相続を放棄しない限り、返済義務が発生します。

逆に言えば、相続を放棄すればその残債の支払い義務はなくなるのです。

相続を放棄する場合には、大原則として、相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請しなければいけません。

ここで注意してほしいのは、相続を放棄すると残債の返済義務は他の親族に移動するという点です。

これは大きなトラブルにもなりかねません。

相続を放棄することで様々な事柄が発生し、更に大変な思いをする可能性があるということも鑑みた上で、決断し行動に移す必要があります。

 

相続人が知らないクレジットカードがあった場合は?

先程、解約する際にまず初めに取り組むこととして、被相続人の保有していたクレジットカードを把握すること、とお伝えしました。

複数枚持っていることも多い中で、全てのクレジットカードを確認できればベストですが、相続人が知らないクレジットカードが存在することも十分考えられます。

あるいは、あるはずのクレジットカードが見当たらないこともあるでしょう。

このような場合は、どのような対処を行えばいいのでしょうか。

 

・支払いが残っている場合

被相続人が利用していたクレジットカードにもかかわらず、存在を知らない場合が該当します。

存在を知らないので、クレジットカード会社には被相続人である会員の死亡報告をしていない状況です。

その場合、クレジットカードの支払いが口座引き落としになっていれば、通常通り銀行口座から毎月の支払い日に引き落としが行われます

被相続人が持っている銀行口座の取引内容を確認することで、クレジットカードの有無の確認をすることが可能です。

また、既に銀行口座が凍結されている場合は、支払い分の口座引き落としが行えないことになります。

そうなると、法定相続人の元に支払い残高の相続手続きの連絡が来ます。

先程述べたように、相続人は基本的に一括返済をすることになります。

 

・支払いが残っていない場合

被相続人に利用されていないクレジットカードがあり、その存在を知らない場合が該当します。

そうなると、残念ながら調べる方法はありません。

結果として、クレジットカードの更新時期になって初めて、通知が届き知ることになります。

 

クレジットカードのポイントはどうなる?

支払いにクレジットカードを利用しポイントを貯めるのは当たり前の世の中です。

ポイントが効率良く貯まっていくカードも多く、有効期限が無期限のポイントプログラムを持つカードもあります。

被相続人の使用していたクレジットカードを解約する際、貯まっているポイントは一体どうなってしまうのでしょうか。

貯まっているポイントが多い場合は特に気になるところです。

被相続人であるクレジットカードの会員が亡くなった際のポイントの取り扱いについては、クレジットカード会社のポイントと航空会社のマイルなどでは違いがあるようです。

 

まず、クレジットカード会社の規約を見てみましょう。

・セゾンカード(永久不滅ポイント)
本会員が次の各号いずれかに該当した場合、本会員は保有するポイント並びに商品との交換及び合算に関する一切の資格を喪失するものとします。
(1)退会、カードの有効期間満了、会員資格の取り消し等本カードの会員資格を喪失した場合
(2)死亡した場合
(引用:永久不滅ポイント規約の第14条)

・アメリカン・エキスプレス・カード(メンバーシップ・リワード)
各対象カードの基本カード会員の会員資格が事由の如何に拘らず終了した場合、又はこの規約の末尾の別表において別途参加登録が必要とされているカードの会員が参加登録を取消した場合、その時点までに当該カードについて累積したポイントはその時点において失効するものとします。
(引用:「メンバーシップ・リワード」プログラム会員規約の第10条)

この他にも、クレジットカード会社の規約を複数確認したところ、各社ともポイントの相続はできないことが分かりました。

 

では、カードにクレジット機能を付けて貯めている人も多い、航空会社のマイルについてはどうでしょう。

・JAL
積算されたマイルを会員間で共有、合算および譲渡することはできません。ただしJALFCおよびJALカード家族プログラム登録会員は、そのプログラム特典として、特典の引き換え時に限り、登録している家族会員間で積算マイルを合算することができます。また会員が死亡した際、法定相続人は所定の手続きにより会員のマイル口座に残る有効なマイルを相続することが可能です

(引用:JALマイレージバンクの一般規約)

・ANA
会員が死亡した場合、法定相続人は会員が取得していたマイルの譲渡を受け取ることができます。その際、要求者は、会員本人の死亡証明書と裁判所命令等、故人である会員の口座に残っているマイルの相続権を有することを確かに証明する書類を死亡後6ヶ月以内に提示する必要があります。相続の申し出が期間内にされない場合は、当該会員の積算マイルはすべて取り消されます。
(引用:ANAマイレージ会員規約の30条)

両社とも、法定相続人である家族にはマイルが相続できることが分かりました。

クレジット機能付きマイレージカードを解約する際、マイルの相続を希望する際は、対象の航空会社へ連絡を入れることを忘れないようにしましょう。

 

まとめ

ここまで、相続が発生した際のクレジットカードの取り扱いについて見てきました。

支払いが残っていなければ、クレジットカード会社への連絡で済むかもしれませんが、支払いが残っていた場合、被相続人である家族の状況に応じて対応していく必要があります。

また、被相続人の所有していたクレジットカードを全て把握する必要があること、マイルなどの引き継げるポイントがあることも覚えておいてください。

このようなことからも、残された相続人のためには、被相続人は生前整理としてクレジットカードを最小限に減らしたり、クレジットカード情報をまとめておいたりするといいでしょう。

相続には、様々な問題が付きものです。

懸念がある場合は、プロの手を借りるのも一つでしょう。

大切な人が亡くなった矢先に発生する、相続というとても複雑で時間と労力のいる作業。

出来る限りスムーズに、滞りなく進め終わらせたいものです。

2019年7月8日
美術品を相続するときの注意点とは?美術品の価値はどう評価する?
2019年7月8日
個人事業を相続する場合のポイント・相続税・注意点
監修者太田諭哉
詳細≫
公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
詳細≫
税理士を探す

都道府県(事務所所在地)

北海道・東北
関東
北陸・甲信越
東海
関西
中国
四国
九州・沖縄

その他の条件

税理士事務所名
税理士名
対応エリア
相談内容
対応体制
税理士の紹介を依頼する
0120-962-680
受付時間 / 10:00〜19:00