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お金や不動産以外を相続する場合について説明しています。墓地や仏壇、ゴルフ会員権、自動車、保険金、株式、会社、宝石、貴金属などを相続する場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年2月28日 木曜日

上場株式の相続税評価・計算方法を解説

上場株式は、預貯金や投資信託、公社債とともにポピュラーな金融資産のひとつです。

特に年配の人は、バブル期に購入した株式をそのまま保有し続けている人が多く、相続財産の中でも相応のウェイトを占めているケースもあります。

これを踏まえて、本コンテンツでは、上場株式の相続税評価および計算方法を中心にご説明します。

目次

相続税評価とは

相続手続きは、遺産分割協議で相続人を決めて、遺産分割により被相続人から名義人を変更し、相続税を申告・納付することで終わります。

相続税評価額の計算方法

相続税に関する一連の相続手続きで大きなポイントとなるのが、相続税評価額の算出です。

一部の資産を除き相続税は相続財産の時価や取得価額に、そのまま相続税率を乗じて計算するのではなく、決められたルールに基づいて相続財産を評価して得られた相続税評価額に対して相続税率を乗じて求められるのです。

相続税を計算するために相続財産の価額を評価するに際しては、国税庁による「財産評価基本通達」による方法で行います。

そして、その評価方法は相続財産の種類によって異なります

平成31年1月現在における、相続税を計算するための主な相続財産評価方法は以下のとおりです。

本コンテンツのメインテーマである上場株式の計算方法については、別項で詳述します。

宅地

  • 自用地(自分で使っている土地)…市街地およびその周辺の土地であれば路線価方式、それ以外は倍率方式で評価
  • 貸宅地(貸している土地)…自用地の評価額×(1-借地権割合)
  • 貸家建付地(貸家が建っている土地)…自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権

  • 借地権(借りている土地の使用権)…自用地の評価額×借地権割合
  • 貸家建付借地権(貸家が建っている借地)…自用地の評価額×借地権割合×(1-借家権割合×賃貸割合)

家屋

  • 自用…固定資産税評価額×1.0
  • 貸付用…固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

農地・山林

  • 純農地と中間農地、純山林と中間山林…倍率方式
  • 市街地農地、市街地山林…宅地比準方式または倍率方式
  • 市街地周辺農地…市街地用地としての価額の80%相当額

投資信託

  • ETFやリートなど、上場している投資信託は上場株式の評価に準じる
  • 上記以外の投資信託は、相続が発生した日に解約請求した場合に証券会社や銀行など指定金融機関から受け取ることができる金額

預貯金

  • 普通預貯金は、預け入れ残高
  • 定期預貯金は、預け入れ残高に既経過利子の額を加え、それから既経過利子の額から源泉徴収される所得税額を控除した金額

ゴルフ会員権・リゾート会員権

  • 取引相場があるものについては、取引相場の70%(預託金などがある場合はそれを加算)
  • 取引相場がないものについては、未上場株式の評価に準じ類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式を用いて算出(預託金がある場合はそれを加算)
  • 預託金については、それがすぐに返還を受けることができる預託金等である場合は当該金額、相続が発生しても一定の期間を経過しなければ返還を受けることができない預託金等については、その預託金に返還されるまでの期間(1年未満は1年に切り上げ)に応じた基準年利率による複利現価率を乗じて得られた金額
  • 不動産所有権がある場合は、その評価額を加算

書画・骨董品など

  • 売買実例価額、あるいは価値鑑定に精通する人の意見による価格などを考慮した価額

上場株式の種類について基本を知っておこう

上場後の株式は、上場株式を専門に扱う上場株式取引所で取引を行います。

上場株を取引する株式取引所にはいくつか種類がありますので、ご紹介します。

「東証一部上場」だけじゃない!上場先の種類

株の取引をしたことはないけれど、新聞記事やテレビのニュースなどで「東証一部」などの言葉をなんとなく見聞きしたことがある方も多いと思います。

「東証一部」は、日本で最も大きい株式取引所です。

そのほかにも「東証二部」や「マザーズ」「ジャスダック」などの市場があります。

それぞれの市場には名称だけではなく、さまざまな違いがあります。

東証第一部

厳格な審査基準を満たした大企業だけが上場できる、日本の中心的な株式市場が東証第一部です。

多くの有名な企業の上場先は東証第一部で、多くの海外投資家も参入する国際的な市場です。

新規上場の際には、まずは東証第二部に指定されますが、発行株式数・株主数・時価総額・純資産・利益・設立年数などの決められた審査基準を満たすことで、東証第一部に繰り上げられます。

審査基準を満たして認められた場合は、東証第一部に初上場する場合もあります。

東証第二部

東証第一部は大企業だけが上場できますが、東証第二部は中堅企業が上場する日本の株式市場です

東証第一部の審査基準に基づいて審査を行い、適合した場合は東証第一部に指定替えとなります。

一方で、東証第一部の審査基準に抵触した東証第一部銘柄が、東証第二部に指定替えとなることもあります。

東証マザーズ

東京証券取引所が運営している東証マザーズは、略称でマザーズとも呼ばれている株式市場です。

主にベンチャー企業が上場しています

東証第一部や二部市場よりも上場基準が緩く設定されているため、起業間もない企業や先行投資で赤字決算の企業も上場することがあります。

ベンチャー企業に資金調達の場を設けているという特性から、対象とする企業の業種や規模による制限は特に定められていません。

ここから、数多くの企業が東証第一部や二部へ昇格しています。

ジャスダック

東証マザーズと似たようなコンセプトを持つ株式取引所のJASDAQ(ジャスダック)。

ベンチャー企業や新興企業向けの市場で、2つの区分が設けられています。

1つ目の「スタンダード」は一定の事業規模と実績を持つ成長企業、2つ目の「グロース」は特色のある技術やビジネスモデルを持ち、赤字であっても将来の成長可能性が秘められている企業が対象です。

初上場先は、ジャスダックかマザーズの場合が多く見受けられます。

TOKYO PRO Market

特定投資家(プロ投資家)向けの株式市場がTOKYO PRO Marketです

一般的な株式市場と比べると上場審査などの準備期間が短く、上場を決断してから1年以内に上場することができる市場です。

企業の時価総額や株主数などの条件が大幅に緩和されていることが特徴で、上場開始から上場後の維持コストまで低く抑えられるところもポイントです。

日本やアジアの成長力が高い企業に新たな資金調達の場を与えると同時に、国内外のプロ投資家には新しい投資機会を提供しています。

しかし、プロ投資家向けの市場であるため、一般投資家が参入できず、資金の流動性はあまりありません。

その他地方や海外にも

株式取引所は地方や海外にも存在しています。

地方では「札幌証券取引所」「名古屋証券取引所」「福岡証券取引所」の3つがあります

札幌証券取引所は、北海道札幌市にある株式取引所です。

札幌市周辺で実績がある企業が上場している傾向が強く、メインとなるマーケットのほか、東京証券取引所の東証マザーズのような新興市場「アンビシャス」が設けられています。

名古屋証券取引所は、愛知県名古屋市にある株式取引所で、名古屋市周辺で実績のある企業が上場している傾向にあります。

東京証券取引所と同様の市場構成で、名証一部、名証二部があり、新興市場「セントレックス」があります。

福岡証券取引所は、福岡県福岡市にある株式取引所で、メインマーケットのほかに新興市場である「Q-Board(キューボード)」で構成されています。

そして、当たり前のことですが、海外にも株式市場があり、世界中で株取引が行われています。

主要なところではアメリカの「ニューヨーク証券取引所」、中国の「上海証券取引所」、香港の「香港証券取引所」などが挙げられます。

世界一有名なのは、アメリカの「NASDAQ(ナスダック)」かもしれません。

ベンチャー企業向けの株式市場として1971年に立ち上がり、時価総額の上位には、時価総額が世界No.1のAppleや通信販売大手のAmazon、WINDOWSやOFFICEを世に送り出したIT巨大企業のマイクロソフトなど、世界最大級の企業がこの市場に上場しています。

株式にもいろいろ

株式の種類には大きく3種類「普通株」「優先株」「後配株」があります

通常の株式投資で売買を行うのは「普通株」ですが、ほかに「優先株」「後配株」などの株式があります。

その違いは、配当の支払いや議決権などの権利の内容が異なるところです。

普通株

普通株は最も一般的な株式で、通常の株式取引といえば、おおよそは普通株です。

株主の権利に制限はなく、後に挙げる株式と区別するためだけに普通株と呼んでいます。

優先株

優先株は、普通株よりも優先的に利益配当や会社清算時の残余財産分配を受け取る権利を持っています。

しかしその反面、議決権に制限が設けられています。

後配株

後配株は、普通株よりも配当の優先順位が後という、優先株とは反対の特徴を持っています。

先に普通株を保有する株主へ配当が行われた後、残りの利益を後配株保有者へ配当する仕組みのため、投資家にとっては不利な株式です。

通常、企業に利益が出ていない場合、株式を増資すると一株あたりの価値が減少してしまい、普通株主への配当金も減少してしまう傾向があります。

そのため、普通株主への利益配当金を損なわせずに資金を調達する手段として考えられた株式です。

このような株の特性上、発起人や経営者、政府などが株式を取得するために使われています。

上場株式を相続するメリット

株の取引をしたことがない人にとって、上場株式を相続するメリットを想像することは難しいでしょう。

これから、上場株式を持つことのメリットを簡単に紹介します。

配当金・株主優待を手に入れられる

株主優待で生活している方がテレビ番組などでも取り上げられている通り、上場株式の中には、保有するだけで定期的に株主優待を受け取れる銘柄があります。

スーパーの株であればお買い物券、飲食店の株であれば自店で使える商品券などを受け取ることができます。

一方で配当金とは、企業が利益の一部をその企業に投資してくれた株主へ、事業が上手くいったお礼として支払うものです。 

配当は年に1、2回実施する企業が多く、およそ約2%前後で推移しています。

例えば、1株2円の配当があるという株の場合は、1,000株保有していれば、2円×1,000株で、2,000円の配当金を受け取れる計算になります。

株主総会等で企業経営に関わることができる

株主は、株主総会に参加することができます。

事前に配布される資料には、企業の現在の経営状況を示すデータや今後の事業の展望などが記載され、経営について賛否が問われることもあります。

株主総会の中には飲食物が用意されていたり、お土産付きのものがあったりと、株主をもてなしてくれるところもあります。

売却益が期待できる

被相続人が保有していたときよりも、株の価格が上昇している場合もあります。

そのようなときに売却をすれば、売却益も期待できます。

例えば、相続人が200円の株を1,000株購入していた場合は、購入金額を計算すると200,000円です。

その後、株価が上昇し1株250円になった場合には、1,000株の時価評価額は250,000円となり、売却すれば単純計算で50,000円の売却益が出ることになります(所得税や住民税、取り引き手数料は計算に含んでいません)。

上場株式を相続するデメリット

株取引をしたことがない人にとっては、厄介なものを相続してしまったと思うかもしれません。

株式に関する知識がなければ運用できない

応援したい企業に投資したり、いいタイミングで売買したりすることが株取引の魅力ではありますが、未経験の人がいきなり運用をするのは厳しいかもしれません。

その企業が経営破たんしたり業績が悪化したりするリスクがある

株は企業の業績はもちろん、海外市場の動向などによっても株価が変化します。

個人の想像を超えた、計算外の状況に陥るというリスクもあります。

上場廃止になることもありますし、業績不振で株価が恐ろしく下がってしまうこともあります。

相続税評価額の計算時には2,000,000円だった時価総額が、相続税を支払った後に急落し、売却を検討しようと株価をチェックしたら半額になっていた、というようなこともあり得るのです。

株の相続の流れ・手順

ここからは、株を相続するために具体的にどうしたらいいかをお伝えしていきます。

株の相続が発生する方は、ご自分の状況を想定しどのように進めて行くといいのか、相続金額がどうなるのかを計算しながら確認をしながら読んでみてください。

相続株式の調査

原則、被相続人が亡くなった日が「相続開始日」とされていて、この日から10カ月以内に相続税の申告・納付をしなくてはいけません。

悲しんでいる間にも、相続の期限は刻一刻と迫ってくるのです。

被相続人が亡くなったら、まずは相続財産を探します。

被相続人が遺書を残し、財産目録があればいいですが、そうでないとなると、財産探しから始めなくてはいけないのです。

被相続人が生前に住んでいた部屋や仕事場、所有する車など、ありとあらゆる場所を探し回ります。

株式はどのように調査をするかといえば…実は難しいのです。

株式の取引が安全でスピーディーに行えるよ2009年1月5日から紙の株券はなくなり、ペーパーレス化されているからです。

では、どのように株式を見つけていけばいいかといえば、電子化をしているということはパソコンやスマートフォンを使って取引をしているかもしれないということです。

パソコンを立ち上げ、ブラウザのブックマークを見れば、証券会社のホームページが登録されているかもしれません。

スマートフォンには、証券会社のアプリがインストールされているかもしれませんし、アドレス帳に証券会社の電話番号が載っているかもしれません。

さらに、株式を保有している企業の株主総会や決算のお知らせが各社から郵送されてくることが多いため、タイミングによっては意外に簡単に分かるかもしれません。

株式の遺産分割協議

被相続人が遺言書を遺していない場合には、誰にどの相続財産を分配するのか決める遺産分割協議を行います。

株式の遺産分割協議には、大まかに現物分割、換価分割、代償分割の3つの方法がありますので、ご紹介します。

1.現物分割
まずは株式の現物分割で、名称の通り、株式を分配することです。
例えば、ある企業の株式を1,800株持っていて、3人の相続人が分配する場合は、600株ずつ平等に計算して相続します。
メリットは、分かりやすいので誰もが納得しやすいことです。
デメリットは、株主優待を受けられる株式数に満たなくなる可能性があることです。
複数社の株式を保有している場合には、会社ごとに分配するという方法もあります。
メリットは、保有する株式のボリュームを失わなくて済むので、株主優待などを受けている場合は、従来通り受けられるということです。
デメリットは、会社ごとの株式の評価額は異なるので、相続人が納得するように計算して分けることができるかどうか不確実なことです。

2.換価分割
株式の換価分割は、株式を相続人の中の誰かが一度相続し、売却してから売却益を計算し分配する方法です。
メリットは、遺産分割協議であらかじめ分配の割合を決めておけば、現金を分けることになるので、計算が分かりやすいということです。
デメリットは、相続するまでに時間がかかるということと、売却時に株価が下がっているかもしれないというリスクがあることです。
「株式を換価分割して相続したらこのくらいの金額だろう」と計算していた価格とは異なってしまう可能性があります。

3.代償分割
株式の代償分割は、相続人の誰かが株式を相続して、ほかの相続人には株式価格を計算して代償金を支払うことです。
メリットは、株式数のボリュームを失うことなく相続ができるということです。
デメリットは、株価は上下するので、これまでの株価から計算して代償金の金額を決めておかないと、もめる可能性があることです。

相続財産全ての評価額が分かったら、相続税を計算することができます。

株式の遺産分割が不成立なら・・・・・・

株式の遺産分割が不成立になってしまったら、家庭裁判所へ遺産分割「調停」を申し立て、裁判官や調停員に間には入ってもらい話し合います。 

調停でも不成立となってしまった場合には、遺産分割「審判」の手続きを取ります。

「審判」は、家庭裁判所の審判官(裁判官)が、相続人の主張や証拠から計算し、適当な遺産分割方法を決めます。

それでも、審判官の決めた内容に不服があれば「即時抗告」という不服申立ができます。

「即時抗告」すると、審判官の決定は効力をなくすので、今度は高等裁判所で審議します。

相続税の申告・納付期限は相続開始から10ヶ月と定められていますので、こうした場合は、相続税の「未分割申告」といって、いったん法定相続分を相続したことにして相続税を計算し、申告と納付を行います。

相続税の申告は、相続人全員がまとめて行うことができますが、相続税の納付は計算された相続税の負担分をそれぞれが支払います。

決着が付いたら、正式な相続税の納付額が決まるので、支払った相続税額が少ない計算になった場合には税務署に相続税の修正申告を行います。

差額を計算してみて相続税額が減った場合は、相続税の更正の請求を提出して、多く支払った分の相続税を還付してもらいます。

未分割申告ができるなら、相続税の申告・納付は10ヶ月の期限を守らなくても大丈夫ではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、相続税の未分割申告を行うと、配偶者の相続税額軽減の特例などが適用できないことなどのデメリットもあります。

また、相続税の未分割申告を行った後に、遺産分割協議がダラダラと続く可能性があります。

その後、相続税の修正申告などをする必要があり、その都度、相続税を計算しなくてはならず、相続税に関する手続きのために税務署に出掛けなければなりません。

相続人の時間や手間が多くかかるので、やはり期限内に遺産分割協議を終え、相続税を計算し、申告・納税するのがおすすめといえます。

株式の名義変更

株式の名称変更は、上場株式と非上場株式とで異なります。

上場株式の場合は、被相続人が株式を取引していた口座を持つ証券会社に問い合わせし、必要な書類をそろえて名義変更を依頼します。

【必要な書類】

  • 相続による株券名義書換依頼書
  • 被相続人の出生から死亡までが記された戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

非上場株式の場合は、非上場株式を発行している会社と相続や名義変更手続きを進めます。

どのような手続きを取っていくかは、その会社に尋ねながら行っていくことになるでしょう。

株式の売却金額の計算ができない、手続き方式が定まっていないなどという可能性もありますので、先に進まない場合は、トラブル回避のため、専門家に相談してみたほうがいいかもしれません。

上場株式の相続税評価方法

株式とは、その所有者である株主の企業に対する出資者としての地位、あるいは持分を証明する、有価証券の一種です。

株主は、その企業の株主に対する利益の配分である配当金や株主優待物を得るだけでなく、株主総会での議決権、企業の解散時の残余財産分配請求権、企業への株主代表訴訟提起権などといった経営に関与する権利を持つことができます。

株式は大別して証券取引所に上場して客観的な時価が日々開示されている上場株式と、上場していない非上場株式があります。

以下では、上場株式の相続税評価方法についてご説明します。

4つの相続開始日の終値と平均値

上場株式の相続税評価額は、基本的に取得価額は全く考慮されず被相続人が亡くなった際の時価が重要な要素になります。

上場株式の相続税評価額は、基本的に取得価額は全く考慮されません。

被相続人が亡くなった際の時価から相続税評価額を計算していきます

具体的には、以下の4つのうち最も低い金額になります。

なお、課税時期とは被相続人が死亡し相続が発生した日のことです。

  • 課税時期の終値
  • 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

例を挙げて具体的に相続税評価額を計算してみることにしましょう。

【例】課税時期が9月30日の場合

  • 課税時期(9月30日)の終値:2,850円
  • 課税時期の属する月(9月)の毎日の終値の平均額:2,848円
  • 課税時期の属する月の前月(8月)の毎日の終値の平均額:2,787円
  • 課税時期の属する月の前々月(7月)の毎日の終値の平均額:2,758円

このとき(課税時期の属する月の前々月)が最も低い金額であるため、(課税時期の属する月の前々月)に保有株式数を掛けて相続税評価額を計算します。

仮に保有株式数が1,000株なら2,758円×1,000株=2,758,000円であるため、相続税評価額は2,758,000円となります。

上場株式の相続税評価額は、株式情報サイトなどを参照し計算すればいいので、不動産などのように資料を集めて相続税評価額を計算したり、相続税評価額を専門家に尋ねたりしなくてもよく、労力は意外と掛かりません。

例のように上場株式を1銘柄のみ保有していれば1銘柄の相続税評価額を計算するだけで済みます。

しかし、複数社の株を保有している場合は、それぞれの相続税評価額を計算しなくてはなりません。

これらの相続税評価額は、金融機関に被相続人が亡くなった時点における「残高証明書」を請求・取得することで確認することも可能です。

また、上場株式には土地や建物、生命保険の死亡保険金などとは異なり、評価額に関する減額評価の特例はありません

配当がある場合は?

被相続人の相続開始前に支払われた配当金は、被相続人の配当所得となります。

したがって、こちらは相続財産とされず、相続人は4ヶ月以内に当該所得に関する準確定申告(被相続人の確定申告)を行わなければなりません。また、配当の権利確定日後に相続が開始した場合も同様です。

権利確定日から実際の配当金額が株主総会で決議される日までの期間中に相続が発生した場合は、「配当期待権」として相続財産に計上します。

配当期待権は、予想される配当額から、源泉徴収税率20.315%(内訳:所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)相当額を差し引いた金額で評価します。

また、株主総会の日から配当が支払われる日までの間で相続が発生した場合は、未収配当金として相続財産に計上します。

非上場株式の相続税評価は??

上場株式と異なり、非上場株式には取引所で決定されているような明確な時価がありません。

そこで、非上場株式の相続税評価方法は、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式を用いて行います。

いずれも、計算過程が非常に複雑なため、評価に際しては税理士に依頼することを強くお勧めします。

非上場株式を評価するに際しては、この3種類から任意に選択できるわけではありません。

保有する目的や会社の規模に応じて、適用する評価方法が変わります。

また、中小企業の株価を評価する場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合でミックスする併用方式も認められています。

また、非上場株式についても評価額に関する減額評価の特例はありません。

類似業種比準方式

すでに上場しており、かつ業種が似ている企業の株価を参照する形で評価する方法です。

主に大会社かつオーナー経営者や後継者の保有する株式の評価に適用します。

純資産価額方式

会社の清算価値、すなわちバランスシートの純資産の部に着目する評価方法です。

主に小会社かつオーナー経営者や後継者の保有する株式の評価に適用します。

配当還元方式

会社の従業員や取引先など、少数株主が保有する株式を評価する場合に適用します。

非上場株式なら生前のうちのM&Aも検討した方がよい

非上場株式は、上場株式のように市場で売買することはできません。

しかし、事業譲渡の形で受け継いでもらうことができます。

買い手は、新規事業を立ち上げるよりも事業を受け継いだほうが効率がいい、と計算の上で譲渡を申し出ます。

年配の経営者が営んでいた事業の場合、事業を現代の仕様に合わせられれば売上を上げられる、などと計算もしているはずです。

経営者は、引退できることに加え、取引先への影響も少なく、従業員の雇用を存続させてもらえる可能性もあります。

自分が亡くなった後の相続税などをあらかじめ計算し、相続税の節税対策をしておくということが必要なく、株と引き換えに現金を手にできるメリットもあります。

お互いがWin-Winの関係になれるM&Aの手法として、株式譲渡は多くの中小企業で取り入れられています。

経営者は亡き後に企業をどうしていくか考えておくことも1つの使命かもしれません。

上場株式終値の調べ方

相続税評価を行うために上場株式の終値を調べる方法は色々とありますが、やはりインターネットで調べることが一番良いでしょう

特にヤフーファイナンスでは株価の終値を時系列で調べることが可能ですので、複数以上の日の終値を調べる場合に大変便利です。

日本取引所グループのホームページも相続税評価額を計算する際の参照用として便利に利用できます。

「銘柄検索」欄に銘柄名を入力し、株価表示ボタンを押すと、終値(15:00時点)が確認できます。

上場株式を相続する際の注意点

相続手続きについて

まずは相続する上場株式の保護預かり機関である証券会社に連絡して、口座名義人の相続が発生したことを申し出てください。証券会社は今後の手続きの流れや必要書類について、しっかりと説明してくれるでしょう。

証券会社が口座名義人の死亡の事実を知ると、特定口座など一切の口座はいったんロックされ、売却などの手続きは証券会社所定の手続きが完了するまで基本的に不可能となります。

相続手続きに必要な書類は、一般的に以下のとおりです。

この他、証券会社によっては特有の提出書類がある場合もあります。

  • 金融機関への相続手続きに関する申込書
  • 相続人の戸籍謄本一式
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人の本人確認書類
  • 被相続人の公正証書遺言または裁判所検認済みの自筆証書遺言の写し(ある場合)
  • 被相続人の戸籍謄本一式(出生時から死亡時までのものであることが前提)
  • 遺産分割協議書の写し(作成している場合)

上記のうち、もっとも取得に時間と手間を要するのが戸籍謄本一式でしょう。

前項でも触れたように、相続手続きには被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。

しかも、その連続性を確認するために戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍と何種類もの戸籍謄本が必要になります。

さらに被相続人や相続人の本籍地がある役所まで赴かなくては取得できないため、被相続人が生前に本籍地を何度か変えていた場合は、本籍地を置いたことのある全ての土地の役所まで赴かなくてはならないのです。

また、昔の戸籍謄本は書体や記載方法の面で読み解くことが非常に難しいものです。

このように、手間や正確性などを考慮した場合は多少費用が発生したとしても司法書士に手配を依頼する事が一案です。

被相続人が上場株式を所有していたか確認する

被相続人の上場株式の保有有無は、証券会社からの残高証明書、取引残高報告書、配当金の支払い通知書、株主総会の案内などで確認できます。

ただし、最近は高齢者でもインターネット金融機関を使用する人が増えているため、どの金融機関を利用していたのか確認すること自体が難しくなりつつあります

相続開始日が土日祝日の場合の終値の扱いについて

相続開始日が市場が休場している土日祝日だった場合は、相続開始日に近い日の終値を採用し相続税評価額を計算します。

土曜日が相続開始日の場合は前日の金曜日、日曜日の場合は翌日の月曜日の終値で相続税評価額を計算します。

3連休の中日の場合は、前後の取引日の終値の平均の値を計算し、その値から相続税評価額を計算します。

被相続人が親族名義で購入していた上場株式は無いか確認する

被相続人が贈与の手続きを経ずに、親族の名義で作っていた口座で上場株式を購入していた場合、名義預金と同じく後々の問題になりやすいものです。

これは名義の如何によらず相続財産に該当するため、相続税の申告時の相続財産として算入していなかった場合は後に税務調査や追徴課税の対象となる可能性があります。

保有し続けるか、または売却するかしっかりと考える

相続した株式を売却し換価するか、あるいは売却せずそのまま引き継ぐかについて悩まれる方は多いものです。

資産運用やマーケットについて特段の関心や知識が無く、売却タイミングを見通せない場合は、売却することも選択肢のひとつです。

保有し続ける場合でも、いつリーマンショックのような急落が起きるか予想がつきませんので、売却のタイミングについては専門家の意見など情報収集をしつつ、日常からしっかりと見定めておくようにしましょう。

 

また、株式を売却するとどのような税金がかかるのかをご説明します。

相続した株に売却益があった場合には、譲渡所得税が課税されます。

株を含めた全遺産額の相続税と、株の売却益に対して譲渡所得税がかかるのです。

譲渡所得税の計算方法については、国税庁のホームページ 「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」を参照してみると良いでしょう。

株式を相続された方にとっては相続税、譲渡所得税の二重の税負担がのし掛かります。

ここで覚えていただきたいポイントとして、相続税の取得費の特例」制度があります。

「相続税の取得費の特例」とは、株式の売却時に得た売却益を相続税の取得費に加算する事が出来るのです。

その適用を受ける事により、売却益の税額が軽減されるという特例です。

「相続税の取得費の特例」の制度を利用するには計算も難しく複雑となっています。

期日の制限や他にも条件がありますので必ずしも適用される訳ではありません。

遺産の中に株式がある場合には、売却を検討する前に株の相続税の計算に詳しい税理士へ事前に相談される事が最適な方法かと思います。

タンス株に注意

2009年1月に上場株式の株券は電子化され、紙による株券は廃止されました。

しかしながら、被相続人が生前に株券電子化対応の手続きを取っていなかっため、紙の株券のままで保有していたということもあり得ます。

これがいわゆるタンス株です。

もしタンス株を相続した場合、そのまま証券会社に持ち込んでも売却はできません。

当該上場株式の株主名簿管理人である信託銀行で手続きを始めることになります。

まず、信託銀行に株券と口座振替申請書などの必要書類を提出して、相続人が持つ証券会社の口座に振替依頼を行います。この振替手続きによりタンス株が自分の口座に移管され、売却ができるようになります。

なお、株券を相続する場合は同時に被相続人が取得に要した費用も引き継ぐことになりますが、タンス株については取得費が不明である場合が往々にしてあります。

その場合の取得費は売却した価額の5パーセントが概算取得費として扱われます。

つまり、売却価額の95%から、証券会社への手数料を差し引いた金額に対して所得税・住民税20.315%が課税されてしまうのです。

上場株式なのに非上場だと誤解してしまわないように注意

上場企業のなかには、上場企業なのにも関わらず、非上場企業と勘違いされている企業があります。

企業や法人相手のBtoB(Business to Business)取引が主な企業の場合や、ニッチ産業のため会社名が広く一般に知られていない場合など、上場企業ではないと思われていることがあります。

そのような企業の株式が遺産のなかにあった場合に、これは価値のない株だと勝手に判断して相続を放棄したり、相続税を計算するのは早合点です。

普段から株式を扱っていない人にとって、電子化されている株式の価値は理解しづらく、遠い存在の難しいものでしょう。

上場しているかしていないかで株式の価値は大きく変わります。

会社名を知らなかったとしても早合点で判断するのはやめましょう。まずは、上場しているかどうかをチェックし、その上で相続税を計算しましょう。

上場株式を相続後売却する流れ・手順

上場株式を相続し売却する流れや手順についてお伝えします。

上場株式の売却は、株式口座で売り注文を出し、買い付け注文を出した人に買ってもらえれば売買成立という大変シンプルな手順です。

例えば、ある会社の株を1,000株持っていて、1株100円で売却できた場合は、売却金額を計算すると、100,000円となります。

インターネット株式口座は、買い付け金額と売却金額の差額で売却利益を自動的に計算して表示してくれるので、自分で利益を計算しなくてもいいので便利です。

先にお伝えしたように、株式の売却時に得た売却益を相続税の取得費に加算する「相続税の取得費の特例」を計算するのも楽ですね。

株式の売却が成立した日(約定日といいます)から起算して3営業日目に出金できます。

1つ、忘れてはいけないのは、株式口座で売買するには手数料がかかります。

売却益からは売買手数料を差し引いてから相続税を計算することもお忘れなく。

非上場株式の場合の相続は?

非上場株式を相続の場合、証券会社が管理する上場株式と違って基本的には非上場株式企業との間で相続税の手続きや計算処理などを進めていきます。

株を保有している大半には創立者や経営を共にする一族関係者などが筆頭株主になりますが、最近では企業を応援する名目で株を持つパートナーも増えてきています。

相続した場合の株の相続税評価の計算方法や選び方などを詳しく紹介していきます。

非上場株式の相続税評価の方法

株の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日の最終価格を評価額としますが上場株式のように株の売買を行う取引所がないので取引価格が定められていません。

相続に関する評価の方法は、相続人が会社の経営力がある株主かどうかや会社の規模の大きさなどにより選択が異なります。

では相続した相続税評価額を計算するにはどうのような方法があるのでしょうか。

非上場株式には、『原則的評価』と『配当還元』の2つの評価方式がありますので次の項で徹底解説していきます。

原則的評価方式<純資産価額方式と類似業種比準方式>

原則的評価方式とは総資産価額や売上高などによって会社の規模を大、中、小と分類し、区分によって評価額を計算していく方法の事です。

さらに原則的の評価式には『純資産価額』方式と『類似業種比準方式に分類されますが、まずは会社区分の定義が細かく分類されている為少々見づらいのですが表にまとめてみましたので確認していきましょう。

平成29年に大きく改正されています。

会社区分の定義

・従業員の数が70人以上は大会社と区分され以降の判定は不要となります。

会社区分 従業員数

(人超)

総資産価額  (億円以上)

 (業種別) 

年間取引金額 (億円以上)

  (業種別)

卸売業 小売・サービス 上記以外 卸売業 小売・サービス 上記以外
大会社 70
大会社 35 20 15 15 30 20 15
中会社(大) 35 4 5 5 7 5 4
中会社(中) 20 2 2.5 2.5 3.5 2.5 2
中会社(小) 5 7,000万円以上 4,000万円以上 5,000万円以上 2 6,000万円以上 8,000万円以上
小会社 5人以下 7,000万円未満 4,000万円未満 5,000万円未満 2億円

未満

6,000万円未満 8,000万円未満

会社区分の定義をふまえながら次は、純資産価額方式について説明します。

『純資産価額』は小会社にとりいられることが多く、資産や負債から1株当たりの価格を算出し純資産の価額を計算します。

価額が高いほど評価額も高くなりますが、債務超過になるとマイナス計算になり評価額は0円となり、これにより相続税が発生する割合も低くなります。

次に『類似業種比準』は大会社にとりいられることが多く評価の対象と同等とする上場会社の株の価格を基準に利益、資産、配当額水準を比較し算定する方法です。

中会社(大、中、小)は、上記の2つを合わせ用いて評価の方法を選ぶことができます。

原則的評価方式は会社の規模にもよりますが、類似業種比準の方式を選択して計算をした方が低い株価で算出されることが多いのですが、全ての方が利用できるとは限りません。

低くなる方をとりいれ計算し相続税などに関する税金面で得する可能性は高い為に取り入れがちですが、3年未満の会社では『類似業種比準』方式での相続税の計算処理は認められていません

なぜなら、相続税の節税対策として会社を設立したり実績が少ない会社とそもそも上場企業の比較するには合理性が伴わないためで、3年未満に設立した会社には純資産価額方式で計算する事と決められているためです。

次は『配当還元方式』について確認しましょう。

配当還元方式

『配当還元方式』とは特例的評価方式』とも呼ばれ経営者の家族や働いている人が一族に当てはまらない少数株主が持っている株の配当金を計算します。

非上場の為総会などに参加出来ず株の持ち数が少ない「少数の株主」に配当金を還元しましょうと株の恩恵を受けられるのです。

これは相続税の評価を行うもので株の評価額を低く算出するメリットと言えます。

1株あたりの年の配当金は、相続税が発生した年の前年度と前々年度の2期に決算を行った配当の平均金額を計算し還元される仕組みになります。

ただ無配当の企業も存在しますのでその際の配当金は2円50銭と定め計算するよう決められているのです。

また、配当還元での計算の方が高い時は原則的の評価方式を取り入れることも可能されています。

株の発行枚数に左右されず、一律の計算が決められているので適正な評価の額が算定出来ることから特例的と言われているのです。

非上場株式の相続税評価法の選び方

相続税の評価法の選び方については、『原則的評価方式』と特例的評価方式 (配当還元方式) 』の2通りから選びます。

しかし相続した株を誰が持っているか、会社の規模の大きさなどから判定によって選択肢が異なってくるのです。

まずは一族の株主が在籍しているか、いないかを判定します。

『親族または一族株主』とは、株主とその一族が経営を支配し親族関係者を筆頭株主グループとする会社のことを指します。

以下のように筆頭株主グループの議決権の割合によって判定されます。

  • 〈議決権の割合〉が30%以上の場合は、親族の株主がいる会社
  • 〈議決権の割合〉が30%未満の場合は、親族の株主がいない会社 

但し〈議決権の割合〉が50%以上占めるグループがあった場合には、前述した30%以上の親族株主がいる会社とはなりません。

親族株主がいる会社の場合

原則的評価方式で計算することを認められているのは親族の株主がいる会社です。

上記で説明した会社区分を参照して評価方式を確認してみましょう。

親族の株主がいる会社であり且つ役員である場合

・【 原則的の評価方式に適応 】
・大会社・・・類似業種比準
・中会社・・・2つを合わせ用いる
・小会社・・・純資産価額 

それぞれの取り入れる方式は異なります。

大会社は株を多く持っている為に株の評価額を低くする配当還元を用いることが出来ないので、相続税の税率も上がってしまう可能性もあるのです。

節税対策を行うには自身の持っている株をグループ企業などに譲渡し、株の数を減らすことで相続税を少なくすることも出来ます。

相続税の節税について詳しく知るには専門家である税理士へ相談し計算してもらうことが一番早い解決方法になるのではないでしょうか。

親族株主がいない会社の場合

前述した30%未満の「親族の株主がいない少数の株主グループ」の場合は通常、配当還元方式を選択して計算する事になりますが〈議決権の割合〉の条件によってさらに分類されます。

  • 〈議決権の割合〉が15%未満の際は、配当還元
  • 〈議決権の割合〉が15%以上の際は、原則的の評価

但し取得した株が5%未満で且つ役員ではない時には、配当還元の方式を取り入れると決められています。

ここまで株の評価の選び方などを説明してきましたが、まずは一族株主であるのかや役員が在籍しているかを確認し次に持ち株の割合により採用法が変わることで相続税の計算にも影響されることがわかりました。

株の相続税の計算は上記で紹介したように複雑な条件によって評価の仕方が異なる為、自分で正確に計算するには非常に困難であると言えます。

さらには評価の判断を誤った計算により多額の相続税が生じて納めることになる上に、ペナルティが課せられたりする可能性も否定できません。

株を相続した際には相続税の計算に強い税理士へ早めに相談されたほうが良いかもしれません。

相続した上場株式を手放す際に注意すべきこと

相続した上場株式を手放したい場合は、どうやって相続税を計算すればよいのでしょうか。

知っておきたいこと、注意すべきことについて見てみましょう。

市場で売りに出さず個人に譲渡する場合

上場株式を第三者に譲渡する場合は、公開取引市場で売るのが一般的です。

家族間で譲渡する場合は「贈与」という形になります。

家族間で贈与する場合、生前贈与という形をとると、相続税の節税効果が期待できます。

相続税の課税対象になる金額を抑えることができ、さらに税率の負担も抑制できるため、将来のためにとても有効な相続税の節税対策となります。

しかし、生前贈与をして3年以内に亡くなった場合は相続という扱いになり、相続税の課税の対象となるため、いずれ贈与するということであれば、なるべく早くにすることをおすすめします。

また、企業オーナーが買い手に株式を譲渡することで経営権を譲り渡すケースもあります。これは、中小企業のM&Aでよく行われる手法です。

双方合意の内容が記された「株式譲渡契約書」を結び、株式の支払いを終え、株式の名簿の氏名を書き換えることで完了します。

しかし、ある一定条件に当てはまる株式の場合、公開買付(TOB)である必要があり、相対取引が不可能なケースもあります。

株式を相続することで支払う税金を得るために株式を譲渡したいと考える場合もありますが、株式に不慣れな人は専門家に尋ねてみるといいでしょう。

被相続人が主要株主だった場合

議決権を持つ発行済みの株式を10分の1以上保有している株主のことを「主要株主」といいます。

被相続人が主要株主であった場合、相続された株式を手放したい時は、その株式を扱っていた証券会社へ連絡し、手順に従いましょう。

主要株主であった被相続人の株式を売却すると、企業買収を目的とした株式の買い占めが起きないとも限りません。

それによって株価が大幅に変動してしまう可能性も生まれます。

そのため、発行されている株式総数の5%以上を保有する株主(このケースでは相続人)は、5%以上の保有が始まった日から「5営業日以内」に「大量保有報告書」というものを内閣総理大臣に対し、提出する義務があります。

これを「5%ルール」といいます。

相続した株式が全体の株式の何パーセントを占めるのかは、その株を発行している企業のホームページや、証券会社で確認ができます。

内閣総理大臣に大量保有報告書を提出するといわれても、具体的にどうすればいいか分かりづらいですよね。

まず、自分が保有する株式を発行している企業に、EDINETに登録して大量保有報告書の写しを取ってもいいかを確認し、書面などで了承を得る必要があります。

EDINETとは有価証券の報告書など、開示書類をオンラインを経由して財務局に提出(受理)するシステムのことで、一般に公開もされています。

次にEDINET(エディネット)のサーバーに大量保有報告書をHTMLで登録します。

HTMLが分からない場合でも、必要事項をEDINETに入力すると、HTMLの形式に変換するExcelのファイルが自動的に作成されます。

法令の上では大量保有報告書を内閣総理大臣に提出した後に株式発行企業と証券取引所に対してその写しを送る必要がありますが、EDINETに公開することで写しを送ったと見なされます。

5%ルールは、「相続の分与が決定した日から5営業日以内」に行いましょう。

EDINETへの情報公開は一度行うと、内容を変更することができないため、うっかりミスには気をつける必要があります。

たとえ遺産で相続しても、この5%ルールを行わなかった場合や虚偽の申告をした場合は罰則の対象となります。

また、うっかりミスの場合は訂正報告書を提出する必要があり、これを提出しなかった場合も罰則の対象となります。

大量保有報告書を公開した後は、氏名・住所の変更があった場合や、所有株の数に1%以上増減があった場合に「変更報告書」を提出する必要があります。

株式の遺産相続が確定した日から5営業日以内に株式発行企業・EDINETへ大量保有報告書の登録を行い、そのまま株式を保有する場合は持ち株量の増減などケースに応じて変更報告書などを登録します。

大量保有株を売却すると、それによりその企業の株価の下落が起きる可能性が高く、企業にとっては大きなリスクとなります。

売却したいと考えるのであれば、短期的に行うのか長期的に行うのかなどしっかり検討してから行いましょう。

相続発生時は株価が低かったが、その後急騰する可能性はある

株式の相続にはさまざまな手続きが必要となり、上場株式であれば1ヶ月~2ヶ月程度かかります。

株式にかかる相続税は相続発生時の時価をもとに計算されます。

たとえば手続きの間に株価がどんどん下がっていった場合、遺産を金銭に変換した場合の総額は減ってしまうのに、相続税はまだ株価が高かった時点で計算されることになります。貰える株式を金銭として考えると、「遺産として相続する額は下がるのに、相続税は高くなる」という現象が起きてしまうのです。

これは、株式が日々変動するという性質のためです。

反対に、相続発生時は低かった株価が急騰する可能性も無いとはいえません。

この場合、相続した株式を金銭に変換して考えた場合の総額は大幅に増え、それにかかる相続税は相続発生時の価値で計算されるため低くおさえることができ、とてもラッキーな遺産となるでしょう。

しかしそれらはすべて結果の話で、相続税に関わらず相続したものを手放したいと考える人もいるでしょう。

株式を相続すると、管理証券会社などに口座を作って管理します。

相続人が複数いた場合は、それぞれの管理証券会社の口座に分配されています。

一括で売却したい場合は、そのうちの一人が代表で売却手続きを行います。

順序としては、代表の相続人に「株式売却処理の委任」をし、代表の相続人の口座にすべての株式を移管し、証券会社の担当者に売却したい旨を伝えるか、オンライン取引をして売却します。

相続した株式が急騰するか、下がるかは分かりませんが、保有していれば株式優待や配当が受けられ、それも利益と考えられます。

株価の流れを見てちょうどいいタイミングで現金化したいと考えるのであれば、普段から株価の動きや保有している株式企業の信頼性をチェックしておきましょう。

株の相続税の計算をするなら

相続財産の中に株式があった場合、株の相続税の計算はどのようにするのでしょうか。

相続税の計算は、決まり事も多くとても複雑です。

計算が不慣れな方にとっては気が重くなってしまう上、さらに株は常に変動しています。

ここでは、複雑な株の相続税の計算をスムーズに完結する手段をいくつか紹介していきます。

被相続人は生前に対策を考える

被相続人が保有している株式は、生前に対策を考えておく事で遺された人への負担を減らせる可能性があります。

生前対策を考えるという事はデリケートな問題でもあるので、被相続人が後ろ向きにならないように丁寧な話し合いを持つ事が大切です。

では、生前に行なっておきたい対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

以下の3点に絞って詳しく説明していきます。

生前贈与

現金化

節税

生前贈与

株を生前贈与する場合は、この記事の4章で記載した「上場株式の相続税評価方法」と内容は似ています。

贈与税評価額は、以下の4つの評価方法のうち一番低い金額が適用されます。

贈与日の終値

贈与日の属する月の毎日の終値の平均額

贈与日の属する月の前月の毎日の終値の平均額

贈与日の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

低い金額が適用されるので躊躇されるかと思いますが、簡単に説明しますと最初に購入した取得価額より贈与税評価額が低い場合、取得価額を現金で受け取った時と比べて、贈与税の負担が少ないのでメリットとなります。

また、生前対策として株を贈与する場合に気をつける点は、遺産金額が基礎控除金額を下回る場合には、税金はかからないので生前贈与をするメリットはありません。

さらに注意する点は、110万円の非課税枠がある暦年贈与で行なったのち、相続が開始された3年以内の贈与については、相続税として計算されるため無効とされます。

前述で説明した「相続税の取得費の特例」は、贈与には適用されませんのでご注意ください。

節税対策で行なったはずの生前贈与にはメリット、デメリットも考慮の上で慎重に吟味する事が大切だと言えます。

現金化

株を贈与されても運用の仕方が詳しくないので現金化したいという方も多くいらっしゃいます。

現金化はどのようにした方がベストなのでしょうか。

生前のうちに株を現金化にして贈与した場合に課せられる贈与税と、株の相続税の計算を簡易的にでも試算し比較する事もポイントの一つです。

しかし株は常に変動していますので、取得価額より高値になった場合現金は多く受け取る事が出来ますが、その分贈与税、もしくは相続税も高くなる可能性もあります。

110万円までは非課税になるので、数年に分けて現金贈与する方法もあります。

生前対策には色々な方法がありますが、税金に詳しくなければのちに負担が大きくなり、失敗したと後悔してしまう事例も聞かれます。

まずは正確に計算してくれる専門家に相談してみると良いかと思います。

節税したいなら生前贈与や現金化のタイミングが重要

生前贈与や現金を節税する時のタイミングは重要です。

平成27年1月より税制が改正され、相続より生前贈与の方が税金を抑えられる事や、祖父母から孫への生前贈与も出来るようになりました。

相続を考えている方の中には、節税対策のために生前贈与について関心が高まっています。

しかし、上記でも挙げた通り生前贈与したあと3年以内に相続人になった時には、贈与の戻しが行われ相続税が課せられます。

税の負担を軽減させるには、元気なうちに早めの対策を考えることが重要だと言えるでしょう。

株の相続税計算に慣れた税理士に相談する

株の相続税に関する手続きや計算方法には、いろいろなケースによって異なるため、一般的には税理士へ相談を持ちかける事が多いようです。

税金の計算に詳しい税理士なら、節税対策や株の保有するタイミングのアドバイスを受けられる可能性があります。

しかし多くの税理士は、主に所得税や法人税等の業務を行なっていますので、現状は特殊と言える相続税の計算に特化した税理士は少ないのです。

相続における申告は、遺産価値がどのくらいなのかを評価する必要があり、税理士によっては株などの評価額の解釈に違いが生じる事もあります。

以上を踏まえて考えてみますと、重要なのは相続関連を専門としている実績のある税理士を選ぶ事です。

では、どういう風に調べたらいいのでしょうか。

「すてきな相続」なら株の相続税計算ができる税理士を探せる

「すてきな相続」では、株の相続税の計算に慣れた実績豊富な税理士が多数登録されています。

税理士へ計算などの依頼をすると費用の面はどうなのだろうと心配されると思いますが、自己で計算した申告に間違いがあった時には、再度申告をやり直しが必要です。

さらに追徴課税や延滞金などが発生する可能性も出てきます。

初めから税理士に相談すると結果的に、金銭や時間の節税対策に繋がるのではないでしょうか。

相続関連の計算は、シチュエーションによって様々な方面から考慮しなければいけないので、簡単ではない事をご承知おきください。

生前の間に総資産が幾らぐらいになるのかを知っておくと、遺された方への負担だけではなく、相続間の揉め事などの解決にもなるのです。

節税対策を検討されている方は、実績豊富な税理士が多数登録されている「すてきな相続」から一度検索してみてはいかがでしょうか。

直面している問題の解決に繋がるかもしれません。

まとめ

以上、上場株式の相続に関する基本についてご説明しました。

上場株式であり、かつ株券電子化対応済みの銘柄であれば、相続税評価をはじめとするを相続の諸手続きにおいて特段の難しい論点はありません。

しかし、非上場株式を相続する場合であれば評価と計算は非常に専門的な知識を要するため、最初から税理士に依頼するほうが良いでしょう。

相続する上場株式を売却するか否かについては、マーケット環境を考慮しながら判断する必要があり、迷うことも多いかと思われます。

これについて証券会社に相談しても、金融機関は売却・出金による預かり資産の減少忌避と手数料稼ぎのために、保有の継続あるいは別の上場株式への買い換えしか勧めてこないことも予想されます。

したがって、相続人と証券会社の双方の立場に中立な助言を与えてくれるファイナンシャル・プランナーなどに相談してみることも一案でしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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