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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年2月28日 木曜日

相続税に延滞税がかかってしまわないためにするべきこと

相続税には申告期限納税期限の2つの期限があります。

さまざまな理由で相続税の申告や納付ができなかったり、故意に相続の申告や納付をしなかったりした場合、それぞれペナルティが課されることになっています。

その中でも、相続税の納税に遅れた場合にかかるのが、延滞税という税金です。

相続税に延滞税がかかってしまわないようにするには、どのような点に気を付けたらよいかをご紹介いたします。

相続税にも期限がある

相続税とは、被相続人の財産を相続人が相続したときにかかる税金のことです。

相続税については、相続税法(相続税の課税)第11条の1において、「相続または遺贈によって、財産を取得した場合、財産を取得したすべての人にかかる相続税の総額を計算した上で、相続税の総額を基礎として計算された金額を相続税として課されること(相続税法(相続税の課税)第11条の1より引用)」と定められています。

相続税の税額及び控除額については、相続した財産の金額によって異なります。

相続税の税額が明確になったら、申告及び納税をしなければならず、その期限も決められています。

相続税の延滞税が発生するケース

被相続人が有効な遺言書を残しておらず、相続財産を探したり、法定相続人を見つけたりするだけでも相当な時間がかかります。

さらに遺産分割協議が難航し、どのように決着を付けようかと頭を悩ませている間に、相続税の申告と納付の期限が音も立てず静かに迫ってきます。

目先の忙しさにとらわれてしまうのは仕方ないかもしれませんが、期限後にはすぐ延滞税が待ち受けています。

しかし、期限を意識して動いていくのは、何も相続に限ったことではなく、仕事や習いごとなど、何事にも共通することですね。

相続税に延滞税が付かないように、スケジュールを意識して相続税申告を進めていくために、まずはそれぞれの期限について学んでいきましょう。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知り、被相続人の財産を相続することを知った翌日から10ヶ月以内です。

そのため、相続人が複数いて、被相続人の死亡を知った日が異なる場合は、相続税の申告期限が違う日になることもあります。

申告期限が土曜日、日曜日、祝日などと重なった場合には、相続税の申告期限はその翌日になります。

相続税の申告は、相続人が複数おり、遺産分割が終わっていない場合でも申告する必要があるため、被相続人の財産を相続することを知った翌日から10ヶ月以内という期限に変わりはありません。

そのため、相続税の申告期限が近づいている場合は、一度、遺産分割をしたという仮定をし、相続税の申告を行う必要があります。

このとき、相続税を多く申告してしまったり、少なく申告してしまったりといった問題が発生することが考えられますが、そういった場合でも、遺産分割がすべて終了した段階で更生の請求または修正申告を行えば問題はありません。

相続税を多く申告してしまった場合は、相続税法(更正の請求の特則)第32条において、相続税を多く納税していることが発覚した翌日から4ヶ月以内に納税地の所轄税務署長に対して、課税価格及び相続税額または贈与税額について、更生の請求を行えることが定められています。

この更生の請求を行い認められることにより、多く申告してしまった相続税を還付してもらうことができます。

また、相続税を少なく申告してしまった場合は、修正申告を行う必要があります。

修正申告を行うことにより、本来納めるべきであった相続税を納めることとなります。

また、相続税には「時効」があります。

この時効とは、故意に相続税の申告や納税を行わなかったのではなく、相続税の申告や納税をする必要がないと思い込んでいた場合に適用されるものです。

この時効は、国税通則法(国税の徴収権の消滅時効)第72条において、「5年間行使しない場合は、時効によって消滅する」ということが定められています。

そのため、5年の間に相続税を納税することに気がついていなかったり、税務署から何も連絡がなかったりした場合は、国税通則法によって時効が成立すると考えられるでしょう。

ただし、この5年間というのは、相続税の申告が終わってから計算されるため、正確には相続税の申告が開始されてから、5年10ヶ月の時間を経て、消滅すると考えられます。

また、故意に相続税の申告を行わなかった場合の時効は7年間となります。

相続税の納税期限

相続税の納税期限も相続税の申告と同じく、被相続人の死亡を知り、財産を相続することを知った翌日から10ヶ月以内と決められています。

相続税に限らず、税金は現金で一括で納税するのが原則となっていますが、相続税の納税には2つの特例があります。

まず、1つめは納税するタイミングを遅らせる「延納」という方法です。

本来ならば、一括で納税するべき相続税ですが、一括で納税するのではなく、数年に分割して納税することができます。

ただし、相続税額が10万を超えている場合に限ります

2つ目は現金ではなく、取得した財産で納税する「物納」という方法です。

延納と物納はどちらも利子がつくので、その点には注意が必要です。

また、これらの特例を受ける場合には、相続税の申告期限内に税務署にて、申請書を提出し、税務署から許可を受けなければなりません。

また、条件はありますが、延納から物納に、物納から延納に変更することも可能です。

延滞税の割合・納税期限

相続税を期限内に納税しなかったり、実際の財産よりも少ない金額で申告したりした場合は、延滞税や加算税が課せられる可能性があります。

延滞税は本来支払うべき相続税以外に支払わなければいけない税金を支払わなければならないため、結果的に多くの税金を納めることにつながります

ですから、相続税の申告及び納税はしっかり行う必要があります。

相続税の申告をするときは、被相続人の住所地にある税務署で行うことができますが、相続税の納税は必ずしも税務署で行わなければならないわけではなく、金融機関や郵便局の窓口でも可能です。

そのため、納税は比較的しやすいといえるでしょう。

しかし、この納税を怠ってしまうと、延滞税という税金がかかることがあります

また、延滞税の割合は、「相続税の納税期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで」と「相続税の納税期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降」によって異なります。

延滞税の税率

延滞税の税率は、「相続税の納税期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで」の場合は「7.3%」または「特例基準割合+1%」のどちらか低い割合が適用されます。

さらに、「相続税の納税期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降」の場合は「14.6%」が適用されます。

ですが、平成26年1月1日以降の場合、14.6%または特例基準割合+7.3%のどちらか低い割合が適用されることになっています。

延滞税の納税期限

延滞税の納税期限は、特にありません。

延滞税は延滞した期間分かかるためです。

ですから、延滞すればするほど、延滞税は課せられるということでもあります。

そのため、延滞税が発生したら、速やかに支払うことが最善策であるといえるでしょう。

延滞税の特例

延滞税には特例が存在しています。

延滞税の特例は、故意に相続税の申告や納税を怠った場合などの不正行為がなかった場合に限り、適用されるものです。

延滞税の特例では、延滞税の計算期間に一定の期間を含めずに計算するといった方法が用いられます。

延滞税の特例に該当するのは、下記の3つのケースです。

≪ケース1≫相続税の申告期限内に申告書が提出され、法定申告期限から1年が経過している場合の修正申告、または更正の請求があったケース。

≪ケース2≫相続税の申告期限内に申告書が提出され、相続税の申告書の提出から1年が経過している場合の修正申告、または更正の請求があったケース。

≪ケース3≫相続税の申告書の提出後、減額更正がされた上、修正申告、または更正の請求があったケース。

相続税の計算などに間違いがないようにすることが何よりも重要ではありますが、万が一、計算に間違いがあった場合は、上記のような特例が適用されるので、きちんと正しい申告をすることが大切です。

相続税の延滞税がかかる計算例

相続税を申告期限内に納めなかった場合、延滞税がかかります。

延滞税は下記の計算式によって求められます。

延滞税を求める計算式は下記の3つからなります。

≪1≫

納付すべき本税の額(10,000円未満の端数切捨て)×延滞税の割合(※1)×期間(日数、法定納期限の翌日から完納の日または2ヶ月を経過する日)/365(日)=金額(1円未満の端数切捨て)

≪2≫

納付すべき本税の額(10,000円未満の端数切捨て)×延滞税の割合(※2)×期間(日数、2ヶ月を経過する日の翌日から完納の日)/365(日)=金額(1円未満の端数切捨て)

≪1≫+≪2≫=延滞税の額(100円未満の端数切捨て)

※1

平成26年1月1日以降の期間に対応する延滞税の割合を示します。

納期限の期間の翌日から2ヶ月を経過する日までの期間ついては、原則として年「7.3%」または「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合で計算します。

具体的な割合は、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間は、年「2.6%」になります。

※2

平成26年1月1日以降の期間に対応する延滞税の割合を示します。

納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、原則として年「14.6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合で計算します。

具体的な割合は、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間は、年「8.9%」になります。

※1と2の「特例基準割合」とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として、各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合のことをいいます。

※1と2の「納期限」とは、下記の3つの種類に分けられます。

●期限内に申告された場合には「法定納期限」

●期限後申告または修正申告の場合には「申告書を提出した日」

●更生・決定の場合には「更生通知書を発した日から1ヶ月後の日」

※国税庁ホームページの「延滞税の計算方法」から引用しています。

たとえば、納税額が2,000,000円であり、相続開始を知った日が平成29年2月22日(水)だった場合、納付期限は平成30年4月23日(月)となります。

そして、申告日が平成30年9月28日(金)である場合、≪1≫に該当する期間は平成30年4月24日(火)~平成30年5月23日(水)となり、≪2≫に該当する期間は平成30年5月24日(木)~平成30年9月28日(金)となります。

その結果、≪1≫の日数は61日、≪2≫の日数は98日となります。

これらを踏まえた上で、上記の計算式にあてはめて考えると……

 

≪1≫2,000,000円×2.6%×61日÷365日 = 8,690円(1円未満切捨て)……①

≪2≫2,000,000円×8.9%×98日÷365日 = 47,791円(1円未満切捨て)……②

 

①+②=延滞税額となるため、

8,690円+47,791円=56,481円

となります。

100円未満の端数切捨てるので、このときの延滞税額は56,400円となります。

このように、延滞税額は計算式を元に、納付すべき本税の額(10,000円未満の端数切捨て)及び延滞税の割合×期間(日数)がわかれば、求めることができます。

もし納税が遅れてしまったら?延滞税を最小限にする方法

遺産分割協議に集中しすぎて相続税の納税期限が過ぎているのに気が付いた、あるいは悲しみに暮れているうちに、延滞税は気になったけれど相続関係の手続きが遅れに遅れてしまい、期限内に相続税の納税までたどり着かなかったなど、相続税の納税期限が過ぎてしまった場合でも諦めてはいけません。

一人で街に遊びに出掛けようと思っていたけれど、寝坊してしまったから今日は外出をやめよう、などという自分ごとではなく、相続税は国が徴税に関わる大ごとです。

諦めてしまおうと思っている間にも、実は相続税の延滞税は着実に増え続けていきます

期限が過ぎてしまっても、諦めずに、できるだけ軽いうちに延滞税を納めて、前を向いていきましょう。

延滞は2カ月以内か?

延滞税がかかるということは、そもそも期限内に相続税の納税がまだできていないという状態です。

申告すらできておらず、期限が過ぎてから行った場合は、無申告加算税が課されます。

無申告加算税は期限から2週間以内の猶予期間が設けられているので、2週間以内に相続税の申告・納付を行った場合はセーフです。

無申告加算税は、期限から2週間が過ぎて税務調査後に申告した場合には税金総額の15%の額が加算され、さらに納付税額が50万円を超える部分には20%が加算されます。

税務署から連絡が入る前に自主的に申告した場合は、納付税額の5%が課せられます。

無申告加算税とは異なり、延滞税には猶予期間は設けられていません。

延滞税算出のための計算式は先に示した通りで、延滞税の税率は「銀行の新規の短期貸出約定平均金利」という指標に連動し毎年変化しています。

延滞税を意識して相続税の申告・納税まで進めていきたいですね。

ところで、実は自分の相続税を払ったから延滞税など課されないから大丈夫、と安心していませんか。

実は、相続税にはほかの誰かの納税の義務を負う、連帯納付義務があります。

共同相続人のうちの誰かが税金を滞納すると、相続した財産の範囲内を限度に、ほかの相続人に相続税納付の請求がいくシステムになっています。

連帯納付義務を負わないように遺産分割を進める場合は、相続税の支払い能力の有無もよく見ておきましょう。

かつては、罰則として延滞税14.6%が課されていましたが、平成24年度の制度改革で、延滞税から利子税に切り替えられ、ペナルティの税率は下がりました。

また、この後にご紹介する延納は、連帯納付では認められていません。

自主的に修正申告をする

相続税の申告・納付期限が迫っているから、期限は過ぎてしまったけれど延滞税の少ないうちになるべく早く対応しようと、誤った内容で申告、のちに納税を行ってしまった場合にも加算される税金の仕組みがあります。

まさに泣きっ面に蜂の状態といえますが、この税金は過少申告加算税といいます。

誤って過少申告・納税をしてしまった場合、税務調査が入った際に指摘されて修正申告した場合は、追加で納付した税金の10%、追加で納付した税額が期限内に申告した税金、または50万円のどちらか大きい金額を超える部分に対しては15%が課せられます。

ただし、税務調査の指摘ではなく、自ら修正申告を行った場合には過少申告加算税はかかりません。

期限に迫られ内容をおろそかにすると加算される税金ともいえますので、落ち着いて、また、少し時間を置いて申告・納税内容を見直してみると、加算されてしまうことは少なくなるかもしれません。

加算税を確認する

相続税には延滞税のほかに、期限内に申告しなければかかる無申告加算税と、誤って少なく申告してかかる過少申告加算税があるとお伝えしました。

ほかにも加算税の一種、重加算税があります。読んで字のごとく、とても重い税金です。

なぜならば、重加算税は、相続財産を少なくするために隠したり、証拠となる書類を偽ったりした場合に課税される税金であるため、ペナルティーも大きいのです。

相続税申告をしてはいても、重加算税の対象となるような行為をしていた場合には、納付した税金の35%が課されます。

さらに、重加算税の対象となるような行いをしていて、相続税の申告すらしていなかった状態の場合は、相続税総額の40%が課されます。

国税庁は、銀行口座の残高や死亡保険金、不動産評価額などの相続財産の額をある程度把握していますし、マイナンバー制度がスタートし、より個人の所得などを把握しやすくなってきていますので、税金逃れをするような悪いことはできないと思っていたほうがいいでしょう。

しかも、その間、延滞税も課されています。

相続税申告をしたものの、どうしても相続税を期限内に納付できない場合には、延納制度もも用意されています。

相続税の納付は基本は現金一括払いですが、そうできない場合に4つの要件を満たせば延納を申し出る事ができます。

  1. 1.相続税額が10万円を超えている
  2. 2.相続税を金銭で納付することが困難な金額
  3. 3.延納申請書と担保提供関係書類を提出する
  4. 4.延納税額相当の担保が提供できる

延納しても相続税が納められない場合には、代わりにもので支払う「物納」の制度も用意されています。

相続税の延滞税を課せられる前にやるべきこと

相続税の延滞税を課せられる前にやるべきこととして、主に3つのことが挙げられます。

●相続税の申告をする際に相続税の金額を間違えないこと(期限後申告書、または修正申告書を提出すると延滞税が課せられるため)

●相続税の申告などで確定した税額を法定納期限までに納めること(納税が遅れると延滞税が課されるため)

●更正、または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額を期限までに収めること(納税が遅れると延滞税が課されるため)

財産を相続し、一定の金額を超えた場合、相続税が課せられます。

相続税は財産を相続するにあたり、必ず支払わなければならないものです。

ですから、納税期限に遅れることなく、支払いをするようにしましょう。

期限内に支払うだけで、延滞税といった本来なら不要な税額を支払う必要はなくなります。

まとめ

相続税は相続人が被相続人の財産を相続することを知った翌日から10ヶ月以内に申告をしなければならないという決まりがあります。

被相続人を亡くし、精神的にも疲弊し、相続税の計算以外にも行わなければならない手続きが多くある中で、正確性が必要となる相続税の計算を間違えてしまったり、遅れてしまったりすると、本来支払う必要がなかった税金を支払わなければならなくなってしまいます。

また、気が付いたときには、相続税の申告期限がすぐそこまで迫っていたなどといった場合もあるでしょう。

そんなときでも、税理士などの専門家に相談することで、相続税の申告に間に合う可能性があります。

できるかぎり、早い段階で相談することがよいでしょうが、期限が迫っていてもあきらめずに専門家に相談することで延滞税などの問題を回避することができるでしょう。

2019年2月28日
既経過利息の相続税評価・計算方法
2019年2月28日
相続税を節税できる!相次相続控除とは
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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