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【遺言について 】
遺言、遺言書について説明しています。法的効力をもつ遺言を残すには、遺言書の書き方、注意点を知っておくべきです。遺言書の種類や遺言書の書き方などについてまとめています。

2019年8月20日 火曜日

遺言書を見つけたら家庭裁判所で「検認」が必要!

相続の開始後に遺言書を発見したら、あなたはどのような行動をしますか?

テレビドラマなどの遺言書の発見シーンでは、その場で相続人が中身を確認する場面が描かれていることがあります。

実は、その行動は正しい行動ではない可能性があります。

遺言書を発見した場合は、その場で開封せずに、家庭裁判所に提出する「検認」の手続きが必要なケースがあるのです。

遺言について調べていると目にすることがある「検認」手続き。

こちらでは、遺言書の種類や、検認が必要となるのはどんな時か、また、手続きの概要や流れについて解説していきます。

 

遺言とは?

まず、「遺言」にはどのような役割があるのかご存知でしょうか?

2つの立場で、遺言の役割について見ていきましょう。

被相続人からみた「遺言の役割」
・自分が築き上げてきた資産を、どのように相続人の間で使ってもらいたいか、自らの想いを記すことができる
・資産の分配を相続人間でもめないように、分配方法を記載することができる

相続人からみた「遺言の役割」
・被相続人の生前の想いや考えを知ることができる
・相続する資産の分配を、相続人間で争うことなく引き継ぐための道しるべとなる

このように、生前に資産の意向について被相続人に確認することができない場合でも、遺言があれば、生前の想いや考えを周りの人たちが知ることができるのです。

 

遺言の種類

被相続人と相続人、双方にとってとても大切な役割を持っている遺言書。

遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があります。

それぞれの遺言書の概要をご紹介します。

・自筆証書遺言
作成者:被相続人
作成場所:自宅など、どこでも可能
特徴:書き記すための紙とペン、印鑑があれば、簡単に作成できる

・公正証書遺言
作成者:公証役場の公証人
作成場所:公証役場
特徴:法律に基づいて作成するため、有効な遺言を確実に作成できる

・秘密証書遺言
作成者:被相続人
作成場所:公証役場
特徴:公証人含めて、誰にも内容を知られずに作成できる

 

自筆証書遺言は、一番手軽で手数料などもかからず作成できるため、広く利用されているものになります。

簡単に作成できる半面、記載内容の中に間違いがあったり、内容がはっきりせずに遺言が無効になってしまうケースもあるので、注意しましょう。

また、自分自身で保管する必要があるので、紛失のリスクには注意が必要です。

 

公正証書遺言は、相続人に残す資産が大きいケースなどで、遺言を確実に有効なものとしたい場合に使われます。

必要書類や証人の準備など、手間や時間がかかりますが、遺言の原本が公証人役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクがなく安心です。

 

秘密証書遺言は、内容を秘密にしますが、公証役場で被相続人自身が作成した遺言であることを証人に確認してもらいます。

中身はその場で確認をしませんが、被相続人が封をした遺言に公証人が署名をするため、偽造されたり、後から改ざんされることを防ぐことができます。

ただし、秘密証書遺言は被相続人が自分自身で保管することとなるため、自筆証書遺言と同様に、紛失のリスクには要注意です。

 

遺言書の検認とは?

遺言書の検認手続きとは、どのようなものでしょうか?

裁判所のWebサイトによると、以下の目的のために行う手続きとされています。

・相続人に対し遺言の存在と内容を知らせるため
・遺言の形や加除修正の状況を明確にするため
・日付や署名を明確にするため
・遺言の偽造、変造などを防ぐため

つまり、遺言の内容を正確に相続人に伝えるとともに、遺言の内容を守るために必要な手続きといえます。

被相続人は遺言の内容を説明することや、改ざんを直接防ぐことは物理的にできないので、「検認」は大切な手続きであることが分かりますね。

 

【参考】裁判所Webサイト 遺言書の検認 http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

 

どんなことが行われる?

では、検認とはどのようなことが行われるのでしょうか。

まず、被相続人が亡くなった後、遺書を発見した相続人、もしくは保管していた相続人は、その事実を知った際に、滞りなく家庭裁判所に遺書を提出する必要があります。

ここで注意すべきなのは、その場で遺言を開封してはならないという点です。検認前の開封は、罰金の対象になったり、相続人間でのトラブルのもとになったりする場合があります。

遺書を発見して気になる気持ちもわかりますが、まずは落ち着いて、家庭裁判所へ提出しましょう。

そして、家庭裁判所で検認の請求を行います。

検認手続きが必要な遺言は、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」になります。

 

なお、「公正証書遺言」は、既に内容の確認がされており改ざんのリスクが無いことから、検認手続きが不要となっています。

公正証書遺言以外の遺書が発見された場合は、検認手続きが必要と覚えておくと良いでしょう。

 

検認されても遺言の効力が認められるわけではない

遺書の内容を明確にし、改ざん等を防ぐための検認手続きですが、検認を行ったからといって、遺言の効力が保証されたわけではありません。

あくまで、内容の明確化と、遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きという位置づけです。

きちんと検認手続きを経ていても、以下のような場合には、遺言が無効となってしまう可能性があります。

・遺言が捏造されていた
・被相続人の自署捺印がなかった
・認知症など、被相続人がいわゆる「意思無能力」だった

家庭裁判所での手続きとなるため、遺言書が有効だと認められたような気がしますが、「検認」と「遺言書の有効性」の確認は別物となっています。

遺言書が有効なのかを確認したい時には、弁護士などの専門家に相談しましょう。

 

遺言書の検認の手順

では、ここからは遺言書の検認の手順をご説明します。

遺言書の発見から、家庭裁判所への申請手続きや必要期間、注意点などを解説していきます。

 

遺言書の発見

まず、遺言書を発見した場合、封印のある遺言書は、家庭裁判所で検認手続きを行う必要があります。

ここで言う封印のある遺言とは、封筒に入った自筆証書遺言で封緘し綴じ目に押印をされているものと、秘密証書遺言のことを言います。

被相続人の遺産の名義変更や解約には、遺言書が検認をされた証明書が必要になりますので、これらの遺言書を発見した場合は家庭裁判所へ検認の申請を行います。

検認を行わずに、遺書にしたがって遺産分割などの遺言執行手続きを行うと、5万円以下の罰金が科せられる場合があるので気をつけてください。

 

勝手に開封してはならない

遺言書は勝手に開けてはいけません。

勝手に開封してしまった場合は、検認手続きを行わなかった場合と同様、5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

遺言書を発見したら内容を確認したい気持ちが先走ってしまいがちですが、誤って処罰の対象にならないよう、気をつけましょう。

 

家庭裁判所への申立手続き

では、遺言の検認の申立手続きについて、詳しくご説明します。

①申立人
・遺言の保管者
・遺言を発見した相続人

被相続人から遺言を依頼され、保管していた人、もしくは遺言を見つけた相続人が申立をする人です。

 

②申立先
・被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

普段の生活では意識することのない家庭裁判所ですが、住所地の管轄をしている裁判所を調べる場合は、裁判所のWebサイトで確認をすることができます。

【参考】裁判所のWebサイト 裁判所の管轄区域 http://www.courts.go.jp/saiban/kankatu/index.html

 

③必要費用
・収入印紙800円(遺言1通毎に必要)
・郵便切手

郵便切手は、裁判所からの連絡用で必要になります。

必要な郵便切手の値段については、事前に各裁判所に問い合わせを行うか、各裁判所のWebサイトで確認をすることができます。

 

④必要書類
・家事審判申立書
・当事者目録
・戸籍謄本

申立書と当事者目録は、裁判所のWebサイトでダウンロードでき、記入例も確認ができます。

また、各家庭裁判所でも手に入れることができます。

準備すべき戸籍謄本は相続人の状況等にもよりますが、どのケースでも共通で必要な謄本は以下の3種類になります。

・被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の子(その代襲者)で亡くなっている人がいる場合は、その子供(その代襲者)の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)

また、相続人が被相続人の(配偶者と)父母、祖父母等の場合は、次の謄本が必要になります。

・父母や祖父母で亡くなっている方の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)その他、相続人不在の場合や、相続人が配偶者のみの場合、もしくは(配偶者と)兄弟姉妹と甥姪の場合は、次の謄本が必要になります。
・被相続人の父母の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
・父母や祖父母の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
・兄弟姉妹に亡くなっている人がいる場合は、その兄弟姉妹の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
・代襲者としての甥や姪に亡くなっている人がいる場合は、その甥や姪の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)

戸籍謄本は、裁判所に原本の還付を請求することもできます。

戸籍謄本提出時には、コピーを合わせて提出し還付が必要な旨を伝える、もしくは必要な手続きを行えば、その後の遺産分割手続きで活用することが可能です。

ただし、提出機関毎に発効後の有効期限が決まっているため、確認が必要になります。

 

遺言書の検認に期限はある?

遺言の検認は、相続開始後「遅滞なく」進めなければなりませんが、明確な期限はありません。

しかし、相続には相続税の申告期限などがあるため、検認の手続きがある場合、その期限に縛られることになります。

・相続税の申告期限:相続開始後10か月
・相続放棄手続きの期限:相続開始後3か月

これらの期限は、検認手続きに左右されないため、検認手続きは滞りなく行うことが大切です。

相続人が多い場合や、被相続人本人の本籍地が度々変わっている場合などは、必要書類を揃えるのに時間がかかってしまいます。

遺言書を見つけた時は、すみやかに検認の申立準備を行いましょう。

 

検認が完了するまでにかかる期間は?

家庭裁判所に遺言書の検認の申し立てをしてから、検認が完了するまでの期間は、約1~2か月程度かかります。

検認を申し立てた後、おおむね1~2週間後、裁判所から郵送にて相続人宛てに検認期日の連絡が届きます。

申立人は、その期日までに、家庭裁判所に出向かなければなりません。

その他の相続人の出席は任意なので、出席しなくてもかまいません。

申立人は、遺言の原本など、裁判所から指示のあった物を持参します。

家庭裁判所では、申立人やその他の相続人の立ち合いのもと、提出された遺言書の封筒を開封し、検認します。

検認後、立会人の住所氏名や遺言の内容などは、検認調書に記録されます。

当日立会いができなかった相続人や遺産を受け取る予定の人へは、検認済通知書が郵送されます。

 

検認は代理人を通して申し立てをすることも可能

遺言の検認の手続きは、代理人を通じて行うこともできます。

手続きを自分で行うことが大変な場合は、費用がかかりますが、専門家に任せることができます。

検認の申し立てを代理で行う専門家は、司法書士や弁護士、行政書士などです。

 

各専門家の特徴は以下のようになります。

弁護士
・必要書類の収集から申立の手続きを行ってくれる
・検認期日に同席をしてもらえる
・費用が10万円前後と高額

司法書士や行政書士
・必要書類の収集から申立の手続きを行ってくれる
・検認期日に同席はできない
・費用が3万円前後と弁護士に比べ安価

 

遺言に疑義がある時などは、検認期日に同席のできる弁護士にお願いするのが良いかもしれません。

遺言の検認の手続きは、相続人が増えれば増える程必要書類の準備に時間がかかってしまいます。

相続開始後、心身共に疲れている状態では、なかなか申立準備が手につかないこともあるかもしれません。

遺言の検認は完了までに時間がかかるので、申立手続きをスピーディーに行いたい場合は、専門家への依頼も検討したいところです。

 

遺言は検認後どうなる?

検認が完了すると、家庭裁判所の指示に従って検認済証明書の申請を行い、遺言を受け取ります。

手続きに必要なものは、150円分の収入印紙と申立人の印鑑です。

遺言が付いている検認済証明書を受け取ると、遺言が執行できるようになります。

被相続人の銀行口座の解約など、遺産分割手続きの際には、この遺言と検認済証明書が必要なケースが多いです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

遺言書を見つけてから、検認手続き、遺言の執行までを考えると、想像していた以上に時間と労力がかかると思った方も多いのではないでしょうか。

遺言の検認は、被相続人が残した最後のメッセージを明確にし、改ざん等を防止するためにとても大切です。

自分自身で手続きをすることが難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼をするという手もあります。

もし遺言を発見した時は安易に開封せず、適切な手続きをすることがスムーズな遺言執行につながります。

スムーズな相続手続きのため、遺言の検認手続きはぜひ覚えておきましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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