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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年5月31日 金曜日

ネットバンキング内の預金は相続税の対象?

ネットバンキング(ネット銀行)はご利用でしょうか?

ネットバンキングでは、インターネットを介して口座を開設し、銀行取引ができます。

店舗やATMが少ないことが難点ですが、その分、運営上のコストがかからず、普通預金の金利が高く、手数料は安く設定されていることが特徴です。

相続の際にもこのネットバンキング内に故人が預金を残すケースが増えてきました。

そのため、相続財産を整理する際には、通帳だけでなくネットバンキングのアカウントの有無も調べる必要があります。

ネットバンキングは通常の銀行と同様の税率で、相続税の対象になるのでしょうか。

今回はネットバンキングの相続について解説します。

ネットバンキングも通常の銀行と同様

基本的にはネットバンキングも通常の銀行預金と同様に相続税が適用されます。

相続税の納付義務がある場合、相続開始を確認した日の翌日から10か月以内に申告・納付をする必要があります。

ネットバンキングを運営する金融機関は預貯金者の死亡がわった時点で口座を凍結し、相続人であっても現金を引き出せないようにする必要があります。

そのため、被相続人が亡くなった後に故人のネットバンキングの口座が見つかれば、相続人は他の銀行と同じように、対象となるネットバンキングを運営する金融機関に口座凍結の依頼をしなくてはなりません。

対象の口座の凍結後に相続を行います。

預貯金の遺産分割も他の銀行と同様です。

金融機関は相続の方針が決まるまで故人の預貯金を保護します。

各相続人は、法定相続分に応じて、金融機関に対する払戻請求を行います。

その際は、相続人全員の同意を得る必要があります。

また故人の戸籍、相続人の戸籍、相続人の印鑑証明書などのいくつかの書類の提出が求められます。

ネットバンキングの預金を相続する方法

ネットバンキングの預金を相続する際には、どの様な手続きを踏めばいいのでしょうか。

実は、まだネットバンキング内の資産に関する法律の整備は脆弱です。

基本的に、ネットバンキングの預金を相続する際はネットバンキング各社の規約に沿って相続の手続きを行っていきます。

相続税と同様にネットバンキングの預金を相続する際も一般的な銀行の手続きと同じ手続きを踏みます。

ネットバンキングだからといってネットで簡単に済む訳ではないので注意が必要です。

まず、故人のネットバンキングの口座が凍結されます。

預金名義人が亡くなっても凍結されるまでは口座を使って、現金をおろすことはできてしまいますが、法律上、名義人が死亡した銀行口座は使ってはいけません。

凍結の際、銀行側が勝手に凍結を進めることはありません。

故人のネットバンキングの情報を元にご家族が銀行に問い合わせを行います。

ネットバンキングで店舗を構えている金融機関は多くありません。

基本的に手続きは、電話等でカスタマーセンターとやりとりすることになります。

その後、銀行に故人に関する様々な必要書類(死亡届、相続届請求依頼書など)を提出します。

提出を要求される書類は場合によって異なるため、詳細は銀行スタッフに確認し、その指示に従いましょう。

主に共通している提出書類としては以下があります。

・遺言書(原本)

・検認調書もしくは検認済証明書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)

・被相続人の戸籍謄本(もしくは法定相続情報一覧図の写し)

・相続人の印鑑登録証明書

・遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者が選任されている場合)

戸籍謄本、印鑑証明書はお住まいの市区町村の役所で取得できます。

相続人全員の書類に関しては、全て発行から3か月以内のものを提出する必要があります。

書類は金融機関側がコピーを取り、原本は返却を受けます。

相続後はネットバンキングの口座を解約して現金化することもできます。

名義だけを変更して、継続することもできます。

預金の名義変更や解約手続きをしなければ、口座は凍結されたままになります。

一方、国や金融機関に勝手にお金をとられることはありません。

日本の法律では預金を放置したとしても、その資金が自動的に取られてしまう決まりはないのです。

しかし、早めに手続きを行うのに越したことはないでしょう。

名義変更をするためにも預金名義変更依頼書など、必要書類を用意する必要があります。

詳細は各金融機関に問い合わせるようにしましょう。

オンラインで依頼書をダウンロードできる場合もあります。

変更までは、書類による申し込みを行ってから一週間程度を要します。

煩雑な業務な手続きが面倒な方は、この手続きを専門家に代行してもらうこともできます。

司法書士等に依頼すれば、各種書類の取得、提出、名義の変更などを手配してもらうことが可能です。

まずは、知り合いの弁護士や司法書士に相談してみるとよいでしょう。

また、相続人の一人が自分の分だけの預金の解約を金融機関に申し込むことがありますが、基本的にこの希望は却下されます。

相続人全員が合意した遺産分割協議がまとまらなければ、ネットバンクの預貯金を使用・相続することはできません。

相続税の計算方法と控除について

銀行預金の相続と相続税の支払いは、別々に考えなくてはなりません。

故人のネットバンキングの預金があるからといって、必ず相続税を支払う必要があるわけではありません。

ネットバンキングの預金から、自動的に相続税が引き落とされるということもないので安心してください。

相続税は、故人の遺産の合計額が、3000万円+(相続人の数×600万円)を上回る場合に発生します。

遺産の合計額が3600万円以下の場合は相続税を支払う必要はありません。

この金額を上回る場合は、故人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に、申告をする必要があります。

では、どの様に相続税は計算されるのでしょうか。

詳しい計算方法と控除の仕組みについて解説いたします。

 

●財産と債務の確認

具体的な相続税の計算方法に入る前に、まずは、遺産と債務の確認について重要なポイントを見ていきましょう。

相続税の計算といっても、遺産と債務が確認できていなければ計算をすることは不可能です。

財産をしっかりと把握するために、財産目録の記帳を行うようにしましょう。

あらゆる資産が相続税の対象になりえるため、遺産は必ず全てを挙げておく必要があります。

見逃しがちな以下の様なものも遺産の対象になるので、注意しましょう。

・生命保険

・死亡退職金

・不動産

・有価証券

・ゴルフ会員権

・骨董品

・著作権

・特許権

 

●相続財産の課税価格の計算

遺産と負債を確認したら、相続する遺産の課税価格(=相続税の対象になる金額)の計算を行います。

まずは、遺産の内、非課税財産や負債があればそれを相続財産から除外します。

葬儀費用、墓石、仏具、公共の為に使われる資金、心身障害者共済制度に基づき支給される給付金などは非課税財産となります。

続いて、お金以外の遺産を金銭的な価値に換算します。

不動産、骨董品などはモノを見ただけでは実際にいくらの価値があるのか、わかりません。

必要に応じて専門家の意見も聞きつつ、それぞれの資産が現在の価値でどれくらいになるのか、試算をしましょう。

 

●生前贈与の持ち戻し計算

故人が亡くなるまでの過去3年間に行われた財産は相続財産の対象となります。

持ち戻し計算といい、生前贈与の額を相続税の対象に戻す計算を行います。

 

●みなし相続財産の控除

生命保険の保険金、死亡退職金には控除が発生します。

「法定相続人の数×500万円」の額を控除した額を課税価格とします。

 

●相続税の総額の算出

相続税の総額を算出する目に今一度、基礎控除について確認しておきましょう。

3000万円+(相続人の数×600万円)

課税価格から上記の基礎控除の総額を差し引いたものが課税遺産総額です。

課税遺産総額が算出できたら、続いて相続税総額を算出しましょう。

相続税は相続人のそれぞれが支払うものです。

まずは相続人のそれぞれにいくらの相続が支払われるのか、計算をしなくてはなりません。

法定相続分は以下の様になります。

・相続人が配偶者と子供:配偶者に2分の1、子供に2分の1

・相続人が配偶者と直系尊属:配偶者に3分の2、直系尊属に2分の1

・相続人が配偶者と兄弟姉妹:配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1

そして相続税総額は相続額によって異なります。

詳細は以下をご確認ください。

・1000万円以下:税率10%、控除額0円

・3000万円以下:税率15%、控除額50万円

・5000万円以下:税率20%、控除額200万円

・1億円以下:税率30%、控除額700万円

・2億円以下:税率40%、控除額1700万円

・3億円以下:税率45%、控除額2700万円

・6億円以下:税率50%、控除額4200万円

・6億円超 :税率55%、控除額7200万円

例えば、2,000万円が、法定相続分だった場合、3000万円以下の税率(15%)と控除額(50万円)が適用されます。

2,000万円×税率15%-50万円=250万円

が相続税になります。

故人の財産の課税遺産総額が6,000万円だったとしましょう。

個人には、配偶者と2人の子供がいます。

相続人が配偶者と子供の場合の法定相続分は配偶者に2分の1、子供に2分の1です。

子供は2人いるので、2分の1を更に2人で分け合うことになります。

そうすると、配偶者の法定相続分は3,000万円となり、子供の法定相続分は1,500万円ずつとなります。

すると、相続税は

配偶者:3,000万円×税率15%-50万円=400万円

子供①:1,500万円×税率15%-50万円=175万円

子供②:1,500万円×税率15%-50万円=175万円

となります。

総額は

400万円+175万円+175万円=750万円

です。

 

●相続人に応じた控除や加算の算定

詳細な相続税額の算定には相続人の状況に応じた控除や加算を行う必要があります。

ここでは主要な控除をご紹介します。

詳細は専門家に尋ねるようにしましょう。

 

・配偶者控除

配偶者控除は配偶者に適用される控除です。

以下の計算によって算出されます。

配偶者控除の額=相続税総額×(配偶者の課税価格か1億6000万円内、少ない額)÷課税価格の合計

 

・未成年控除

未成年控除は未成年に適用される控除です。

以下の計算によって算出されます。

20―相続人の現在の年齢×10万円

年齢の内、1年に満たない期間は切り捨てします。

10歳6か月の場合は10歳からの10年で計算します。

 

・障碍者控除

配偶者控除は障碍者に適用される控除です。

以下の計算によって算出されます。

満85歳になるまでの年数×10万円

この際、対象者が特別障害者である場合は20万円をかけて算出します。

また、計算の際に1年未満の期間がある場合は1年として算定します。

 

・相続税額の2割加算

故人の配偶者、父母、子供以外が相続した場合(兄弟、孫養子など)は、相続税が2割加算されます。

控除の額がある場合も相続税が2割加算された後に控除額の算定をします。

ネットバンキングの口座情報を生前に被相続人と相続人や弁護士で共有しておくことが望ましい

故人がどの金融機関にいくら預金をしているか、残された家族が把握してれば、各金融機関の規則にしたがってスムーズに相続取引を進められるでしょう。

故人が遺言書によって遺産分割の方針や財産状況を記録している場合は、ネットバンキングの存在を確認するのも容易です。

一方、ネットバンキングには預金通帳がありません。

そのため、故人が遺言書を残していない場合に、家族が故人のネットバンキングの口座を見つけられないことも起こり得ます。

ただし、キャッシュカード、銀行からの郵便物などがみつからなくても、故人がネットバンキングを利用していた可能性はあります。

ネットバンキングの場合、店舗型の金融機関から口座にお金を入金されることがあります。

ネットバンキングの口座が見つからない場合は、故人の他の銀行口座から別のネットバンキングへの取引がないか、確認してみるのもいいかもしれません。

いずれにせよ、生前にネットバンキングの口座情報を家族や弁護士で共有する様にしましょう。

口座情報がわからないのでは、貯めた資産が家族に相続されないままになってしまいます。

IDやパスワードなど、悪用されやすい情報までを知らせる必要はないですが、銀行名、口座番号くらいは事前に伝えておくことが大切です。

まとめ

相続はなるべく円滑に進めたいものです。

ネットバンキングは普通預金の金利が高く、手数料は安く設定されていることもあり、大変便利なものです。

利用者も徐々に多くなっています。

故人が生前、ネットバンキングの利用を相続人に伝えていない場合、最悪のケースでは相続申告から漏れてしまい、相続自体もできなくなってしまいます。

相続についてお考えの方は必ず、ネットバンキングの口座の存在と情報を家族や弁護士で必ず共有する様にしましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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