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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年8月15日 木曜日

相続と遺贈はどう違う?遺贈するための注意点も解説

終活という言葉が定着してきており、自分の身の回りを整理整頓するといった意識が高まってきました。

終活ノートと呼ばれるノートも一般的になっており、自分の死後について考える機会が増えてきたように思います。

自宅の整理整頓や近辺整理など、親族に迷惑がかからないように行動する方が多くなったのではないでしょうか。

そのようなことから、いざ整理整頓を始めると、

「家は誰に守ってもらおうか」

「貯金は誰にどれくらい残そうか」

「自分の財産だから、自分がお世話になった人や渡したい人に譲りたい」

と、決めなくてはならないことが多いことに気が付くと思います。

被相続人は法定相続人以外の第三者に自分の財産を承継したい場合、「遺贈」という方法を使って承継することができます。

一般的に財産を引き継ぐ場合は「相続」という言葉が使われますが、「遺贈」と「相続」はどう違うのでしょうか。

遺贈をしたい場合、どんな点に注意をすべきでしょうか。

詳しく紹介したいと思います。

 

相続とは?

相続とは被相続人が亡くなると、相続人に被相続人の財産が引き継がれることを言います。

預金や土地などプラスの財産だけでなく、ローンや借金などのマイナスになってしまう財産も相続されることとなります。

被相続人から財産を相続される相続人は「法定相続人」とよばれ、その立場によって相続順位が決まっています。

配偶者は常に相続人です。

配偶者以外の法定相続人の順位は、子及びその代襲者が1番目となります。

代襲者とは法定相続人が亡くなっている場合に権利が移る人のことをいい、被相続人の子がなくなっている場合は、その相続の権利が子供の子供、つまり孫に移っていきます。

孫も亡くなっている場合は、その子供である曽孫へと権利が移っていきます。

被相続人は遺言書で、誰に何を相続させたいか希望を残すことができます。

再婚前の妻との間に子供がいるなど家族関係が複雑で、遺産相続の分配でトラブルになりそうな時は、遺言書で希望を残すという手段が有効な場合もあります。

 

遺贈とは?相続とはどう違う?

法定相続人へ財産を譲る際、遺言書が用意されていない場合でも、法律で相続人や相続割合が決められているため、何もしなくても遺産が相続されます。

もし、あなたが法定相続人以外の第三者に財産を譲与したいとなった場合は、遺言書に「誰に何を遺贈したいのか」を明記することで、贈与をすることができます。

このように、法定相続人以外の第三者に、遺言書に記載することで遺産を承継することを「遺贈」と言います。

遺贈を法定相続人にすることも出来ますが、譲与するものによっては、手続き等が複雑になる場合があるので要注意です。

遺言書では法定相続人へは「相続」、法定相続人以外の第三者へは「遺贈」と使い分けをして、記載すると良いでしょう。

それでは、遺贈についてもう少し詳しく説明していきます。

 

遺贈の基礎知識

「遺贈」いう形で法定相続人以外の第三者に財産を残す場合、必ず遺言書を用意する必要があります。

遺言書を用意すること以外の方法で、法定相続人以外の第三者に遺贈することはできません。

遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があり、それぞれ意味合いが異なります。

この2種類の遺贈について詳しく紹介します。

 

遺贈の種類

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。

「包括遺贈」とは「全財産の4分の1を○○に遺贈する」というように、特定の財産を譲与するのではなく、割合で財産を引き継ぐことです。

財産には、現金や不動産・株式・骨とう品など、さまざまなものがあり、借金やローンなどのマイナスになってしまう財産も指定された割合で承継することになります。

もし包括遺贈を受けた場合は、法定相続人と同じ立場になるため、遺産分割協議にも必ず出席しなければなりません。

財産の配分を話し合い、マイナスとなる財産も割合分だけ譲与します。

「特定遺贈」とは文字通り、特定のものを遺贈することです。

例えば不動産や現金など、譲与するものを特定するため、遺言でわざわざ指定をしない限り、マイナスの財産を譲与することはありません。

当然、遺産分割協議にも出席しないので、遺産相続トラブルに巻き込まれにくいです。

ただし、法定相続人と全く連絡を取らなくても大丈夫か、というとそうとも限りません。

財産を一部譲与されるので、さまざまな手続きなど必要になりますし、相続税や贈与税などの支払い義務が生じるため、関係者と連絡を取りながら手続きを進めていきます。

 

遺贈の方法

遺贈する場合は、必ず遺言書を作成する必要があります。

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

「自筆証書遺言」は自分で作成すること、「公正証書遺言」は公証人役場の公証人に記載してもらうこと、「秘密証書遺言」は自分で作成し、公証人役場で保管してもらうこと、という違いがあります。

また、遺言書にはさまざまなルールがあります。

自筆証書遺言の場合は、「全て直筆で記載しなければならない」という決まりがあり、パソコンや代筆で書いてもらって最後の署名だけを直筆すると無効になってしまいます。

他にも「日付、捺印は必ず押す」などの決まりがあり、不備が一つでもあると無効になってしまいます。

記載方法の注意点など、よく確認して作成をしなければなりません。

良くわからない場合や不安な場合は、専門家に相談しましょう。

 

相続と遺贈の違い

ここまでで相続と遺贈について、理解いただけたでしょうか。

「相続」は法定相続人に対して使われる言葉なので、法定相続人以外の第三者が相続をすることはできません。

仮に遺言書が用意されていなくても、法定相続人は財産を相続することが法律で保証されています。

一方「遺贈」とは、先程もご説明したように、法定相続人以外の第三者に遺言書に記載することで遺産を承継することです。

これは被相続人の意思を尊重するための制度で、個人だけでなく法人でも可能です。

お世話になった方や会社、寄付など、被相続人の意思で遺産を譲ることができます。

 

対象者が違う

相続は法定相続人に対して、遺贈は法定相続人以外の第三者に対して行われます。

具体的に法定相続人以外の第三者とは、第一位、第二位、第三位の法定相続人以外の人を指します。

配偶者は常に相続人なので、この順位には含まれません。

・第一位は、子及びその代襲者。
・第二位は、父母及びその代襲者
・第三位は、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者
となり、この第三位までに含まれない人は、「法定相続人以外の第三者」に当たります。

もし法定相続人に当てはまらない人へ財産を承継したい場合は、遺贈となるため、遺言書を作成しましょう。

法定相続人の第三位までの人に遺産相続する場合は、法律で定められる通りに承継することになります。

 

かかる税金が違う

遺言書による遺贈を受けた際には、法定相続人以外の第三者にも相続税を支払う義務が生じます。

この税金が法定相続人と、法定相続人以外の第三者では変わってきます。

相続税は遺産の総額から基礎控除額を差し引いた金額にかけて計算します。

基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で数式で計算され、「法定相続人の数」には遺言書で遺贈を受けた人も含まれます。

例えば、法定相続人が配偶者と子供二人、遺贈を受けた人が一人の場合、法定相続人の数は四人とカウントされ、基礎控除額は5,400万円となります。

引き継いだ遺産から基礎控除額を引いた額が、支払わなければならない相続税の対象となり、相続した割合に応じて負担額が決まります。

この際に法定相続人以外の第三者が譲与を受けた場合、割り当てられた相続税額に二割加算されます。

ただし、「被相続人の兄弟」に遺贈をする場合、法定相続人の第三位にあたりますので、遺贈であっても相続税額に加算はされません。

 

ただし非課税になる場合もある

国税庁のホームページによると、

「国や地方公共団体または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄付した場合は、寄付した財産は相続税の対象にしないという特例」

があります。

ポイントは公益を目的とする法人です。

公益法人であれば、相続税は発生しませんが、贈与税や所得税などが条件によっては発生することがあるので、完全な非課税とはならない場合もあります。

※出典元:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4141.htm

 

遺贈の注意点

遺贈は法定相続人以外の第三者に行うものなので十分な配慮が必要です。

法定相続人が不満に思うような承継は後々大きなトラブルになりやすいですし、最悪の場合、遺言書を無効にしてしまう可能性もあります。

遺言書は、受遺者を含めた全員が合意すると無効にすることができるため、そうならないように遺贈をする場合は、受遺者以外の相続人にも配慮しましょう。

 

遺贈は遺留分を侵害しないように

遺産相続において、配偶者や子供などの法定相続人は、法律により遺産が一定の割合で相続されるよう定められています。

被相続人が「全財産を法定相続人以外の第三者に遺贈したい」と遺言書に書き記したとしても、法定相続人が存在する場合は全財産の遺贈をすることはできません。

法定相続人が法律で保障されている遺産の取り分を「遺留分」と言います。

全財産の遺留分となる割合は2分の1です。

例えば5,000万円の財産がある場合は、半分の2,500万円は法定相続人に相続されるということが法律で決まっています。

残りの2,500万円は法定相続人以外の第三者に遺贈をすることができます。

法定相続人が配偶者のみの場合、「全財産の5,000万円を相続されるつもりだったが、法定相続人以外の第三者に半分の2,500万円を渡さなければならない」ということになります。

折角きちんと遺言書を用意したにも関わらず遺産相続の争いが起きることがないよう、第三者に贈与する場合は事前に家族へ説明しておくことをオススメします。

 

第三者への遺贈は「特定遺贈」で

特定遺贈による受遺者は遺産分割協議に出席等せずに、指定された遺産だけ承継されます。

包括遺贈と違い、トラブルになりやすいとされる遺産相続の話し合いに参加しなくても良いということは、かなりのメリットと言えます。

また、指定分のみなので、マイナスの財産も遺言書に記載がなければ遺贈をされることはありません。

被相続人の意思通りに承継することができ、受遺者の手間も少なくなります。

 

遺言執行者を決めておく

遺言執行者とは名前の通り、遺言を執行する人のことです。

被相続人の意思を尊重するため、遺言書の内容を実現するための手続きを行います。

未成年や破産者以外なら誰でも遺言執行者になることができ、遺言書によって被相続人が遺言執行者を指定することもできます。

遺言執行者は遺言書の内容を確実に執行しなければならないので、遺産分割協議によって決まったことが遺言書の意図とずれているかどうかの判断が必要なときは、遺言執行者にゆだねられます。

遺言執行者は遺言書の通りに遺産分割を円滑に行うために必要な人なので、遺言書で指定しておき、事前に本人に意思を伝えておくと、死後もスムーズに遺産相続を行えるようになるでしょう。

 

遺贈は断ることも可能(遺贈の放棄)

遺産を受け取ることになっている人は、遺贈を放棄することができます。

包括遺贈の場合は立場は法定相続人と同等となることにより、法定相続人と同様に、包括遺贈があったことを知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所に放棄の手続きをする必要があります。

特定遺贈の場合には、遺産放棄に期間の制限はなく、相続人もしくは遺言執行者へ意思表示をすることによって行うことができます。

断る場合は、なるべく早めに意思表示をしましょう。

遺贈をするかどうかが明確にならないと、他の相続人が遺贈分の遺産についての相続をどうするのか決めることができません。

法定相続人などの遺産分割協議の出席者が、遺産を承認するのか放棄するのかを意思表示可能な期間を決め、催告を受けるケースがあります。

期間内に意思表示をしない場合は遺贈を承認したとみなされる為、要注意です。

遺贈をされるものによって、贈与税や所得税、相続税などが発生するので、判断は早めに行い、譲与を承認しない場合は早めに意思表示をしましょう。

 

まとめ

遺贈する側もされる側にも、注意点がたくさんあります。

遺贈を検討する場合は、法定相続人に検討している旨を伝えておき、遺贈自体でトラブルが起きることを防ぎましょう

また、遺贈によってさまざまな課税がされる可能性があります。

遺産をもらう予定がなかった人に遺産を譲るということは、そのような税金の支払い義務が発生する可能性があるということです。

本当に受遺者に迷惑がかからないのか、よく検討した方が良いでしょう。

譲与を受ける側も、安易に財産を譲ってもらえると喜ばず、その後に何が起こるのか知っておく必要があります。

課税対象となったり、法定相続人とのトラブルが起こったりする可能性は十分にあります。

こういったことを回避するためにも、事前に知識を身につけることはとても大切です。

何か相続・遺贈でわからないことがあれば、専門家への相談がおすすめです。

今回ご紹介した内容が、相続トラブルの回避に少しでも役立ていただけたらと思います。

2019年8月15日
生活保護を利用している人は財産を相続することはできるのか?
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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