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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年2月12日 火曜日

相続税で損をしないために、知っておきたい相続対策

相続税は節税を行うことのできる税です。

相続税で損をしないためには、相続対策をしっかりと行っておく必要があります。

仮に相続対策を一切行わなかった場合と相続対策を行った場合では、支払うべき相続税の額に大きな差が出ます。

ここでは知っておきたい相続対策について詳しく説明していきます。

相続税とは

相続税とは基礎控除額以上の相続を受けた人が支払う必要のある税です。

平成27年に税制改正が行われたことにより、基礎控除額が減少し以前より相続税を支払う義務がある人が増えたといわれています。

相続税の基礎控除額は一律ではなく、法定相続人の数により決まります。

法定相続人とは民法で定められた相続人のことで、配偶者、子、両親に兄弟姉妹に加え、遺言書がある場合には遺言書で指定された方も相続人になることができます。

基礎控除額の計算式

3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の支払いの義務があるのかないのかを判断するためには、相続する財産の計算と基礎控除額の計算を行い、相続する財産が基礎控除額を上回るのかどうかを調べる必要があります。

相続税の基礎控除額は一律ではないため、相続する財産の額だけでは相続税の支払いの有無は判断できませんので注意しましょう。

しっかりと計算を行い、相続税の支払いの義務があることが分かったら、今度は相続税の税率を知る必要があります。

相続する財産から基礎控除額を差し引いた残りの金額のことを、法定相続分に応ずる取得金額といいます。

相続税では、この法定相続分に応ずる取得金額と言い、この法定相続分に応ずる取得金額がどれくらいあるのかによって相続税の税率が決定します。

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除

1,000万円以下 10% 無し
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

そして相続税の税率により相続税の控除を受けることができますので、法定相続分に応ずる取得金額から税率と控除額を確認するようにしましょう。

例えば相続する財産の合計が5,000万円で法定相続人が3人の場合を見てみましょう。

この場合は基礎控除額の計算は3,000万円+600万円×3人となりますので、基礎控除額は4800万円です。

相続する財産は5,000万円でしたから、4,800万円の基礎控除額を200万円上回り、相続税の支払いの義務が生じます。

200万円だと税率は10%で控除額が無しになるため、20万円の相続税を支払わなければならないことが分かります。

相続税は、法定相続分に応ずる取得金額が高ければ高いほど相続税の税率が高くなりますので、節税対策を行うことにより相続税を抑えることができるのです。

不動産を活用した相続対策

相続税を下げるためには相続財産を減らすこと、相続する財産の価値を下げること、特例を利用することが挙げられます。

不動産を活用した相続対策ではこの3つをそれぞれ実践することができます。

まず相続財産を減らすことですが、何も財産を手放すというわけではありません。

不動産の配偶者控除により生前贈与を行うことで相続財産を減らすということです。婚姻関係が20年以上ある方が対象ではありますが、住居用不動産を購入するための資金2,000万円または住居用不動産の持分を2,000万円分贈与したとしても、贈与税が掛からないというのが不動産の配偶者控除です。

生前贈与することにより相続財産を減らすことで、相続税を節税することができます。

続いて相続する財産の価値を下げる方法として、不動産の購入が挙げられます。

相続税を計算する際には相続する財産の合計を出す必要がありますが、不動産の場合には相続税評価を行い価値がどれくらいあるのかを計算することになります。

土地の場合は国税庁による路線価にて相続税評価を行います。

路線価にて相続税評価された土地の価格が購入した際の金額を下回れば、それだけ相続する財産を減らしたことになります。

例えば1億円で購入した土地の相続税評価額が9,000万円だとすれば、現金で相続するよりも1,000万円相続する財産の価値を下げることができたことになります。

相続税は相続する財産の額が多いと税率が高くなりますので、このように相続税評価額を下げることは相続対策として非常に有効的な方法です。

そして最後に特例を利用するということです。

住宅用不動産を所持している場合には、小規模宅地の特例を受けることができるかもしれません。

被相続人が住居として利用していた不動産は330㎡までに限り、最大80%減額して評価することができるというものです。

例えば1億円の住宅であり330㎡以内の敷地面積だった場合は、この特例を利用することで相続税評価額を2,000万円にすることができるのです。

小規模宅地の特例を受けられるかどうかには明確な基準が設けられていますし、併用することができない特例もあるのですが、相続対策に非常に有効的です。

生命保険を活用した相続対策

生命保険を活用すると相続対策になるといわれていますが、具体的にどのように行うべきなのかはあまり知られていません。

生命保険金は被相続人から受け取るものではないため相続税が掛からないのではないかと考えている方もいますが、生命保険の場合は被相続人から相続されたとみなされるという判断がされており、みなし相続財産ということで相続税は発生します。

ただし、生命保険は一部非課税になっている財産ですので、非課税額の計算を行うことができます。

生命保険の非課税額の計算式

500万円×法定相続人の数

生命保険の非課税額の計算式により導き出された額は非課税となっていますので、相続税が発生しません。

そのためこの非課税額を差し引いた金額を相続する財産として計算することになります。

しかし、生命保険を活用した相続対策はこれだけではありません。

生命保険金の保険料の支払いは誰だったのかにより、相続税だけではなく住民税や所得税が加算される可能性があるのです。

被相続人が保険料の支払いをしていた場合は、相続人が支払う必要があるのは相続税だけです。

しかし保険料の支払いを、保険金を受け取る相続人が行っていた場合には、被相続人からのみなし相続ではなく保険料の支払いによる所得として計算されますので、相続税ではなく所得税と住民税が掛かることになります。

また被相続人以外に保険料を支払った人と保険金を受け取る人が異なる場合には贈与税が発生します。

例えば父が亡くなり、母が保険料を支払っていて、子が受け取るというようなケースです。

相続税になる場合や所得税や住民税、さらに贈与税になる場合ではどれがお得なのかは生命保険金の額やそのほかの相続する財産の額によって変わってきます。

相続税の場合と所得税や住民税、さらに贈与税の場合は受けられる控除が異なることを理解しておくべきでしょう。

生命保険の保険料の支払いを被相続人が行っていた場合受けられる控除額

500万円×法制相続人の数

この場合は相続税を支払うことになります。

相続税の場合は相続税の配偶者控除を受けることが出来るため、非課税額が増えると考えられます。

そのため相続する財産と基礎控除額の計算を行い、相続税を支払うことになりそうだという方は、この方法を選択する方が多いです。

生命保険の保険料の支払いを相続人が行い

支払いを行っていた相続人が受取人の場合に受けられる控除額

(生命保険の受取額-払い込み料総額-50万円)×1/2

この場合は所得税や住民税を支払うことになります。

生命保険の受取額と払い込み料総額から控除額である50万円を差し引いた金額の半額に課税されることになります。

そのため生命保険金が払い込み総額に50万円プラスした金額より少ない場合には課税されません。

生命保険金の受取額が50万円を超えない、または超えた場合でも少額である場合にはお得な方法となります。

生命保険の保険料の支払いを相続人が行う

別の相続人が受取人の場合に受けられる控除額

生命保険の受取額-贈与税の基礎控除額110万円

子の場合は贈与税を支払うことになります。

贈与税は年間110万円の基礎控除額がありますので、それを超えた生命保険の受取額に贈与税がかかります。

生命保険金が贈与税になってしまうと支払うべき税額が増えると考えられていますので、保険料の支払いを行う人または保険金の受取人を見直すと良いでしょう

生前贈与を活用した相続対策

生前贈与とは、生きている間に財産を贈与するとうものです。

これにより将来支払うべき相続税を節税することができる場合があります。

生前贈与には相続税はかかりませんが、贈与税がかかります。

贈与税は年間110万円を超える贈与を行った場合に、110万円を超えて贈与を受けた金額に課税されます。

そのため毎年最大で109万円の贈与を行えば、贈与税を支払う必要なく贈与を行うことができます。

仮に100万円を10年間贈与した場合では1,000万円を贈与税なしに贈与できることになります。

ただしこの方法で注意して欲しいのは、連年贈与と考えられないかどうかです。

連年贈与とは、長期間に渡り毎年贈与を受けることがあらかじめ約束されている場合には、最終的に贈与する金額分の贈与税を支払わなければならないというものです。ですから例えば父と子の間に年100万円ずつを10年間贈与するという約束があったのであれば、贈与額を1,000万円として贈与税を支払う必要があるということです。

こうした連年贈与になることを防ぐためには、毎年贈与の額を変動させたり、贈与する日を変えたりする必要があります。

また、贈与が計画的なものではないことを証明するため毎年贈与契約書を作成すると良いとされていますので、できるだけ毎年贈与契約書を作成するようにしましょう。

続いて生前贈与の制度として、相続時精算課税制度を利用するというものがあります。

相続時精算課税制度とは60歳以上の方が20歳以上の方に対し生前贈与を行う場合に、2,500万円までは非課税になり、それを超える贈与には一律20%の贈与税が課税されるという制度です。

例えば3,000万円の贈与を受けた場合、2,500万円までは非課税になりますので500万円の20%である100万円の贈与税を支払うというものです。

相続時にはこの際に贈与を受けた財産を相続する財産に合算し、支払った贈与税額の控除を受けることができます。

相続時精算課税制度を利用する場合は事前に届け出を提出しなければなりませんので注意しましょう

この制度を利用することにより、値上がりが予想される財産を贈与する場合や収益物件の贈与を行うと、より効果的に相続対策を行うことができます。

財産の値上がりが起こると相続税評価により支払うべき相続税が増えてしまいますし、収益物件の場合には贈与を受けた時からその物件の収益が贈与を受けた者のものになるためです。

生前贈与、特に相続時精算課税制度の利用は必ずしもお得になる制度というわけではなく、相続を行った場合と変化がない場合もありますので、制度を利用する場合としない場合でしっかりとメリットがあるのかどうか見極める必要があります。

例えば財産の値上がりが予想される財産でメリットを受けることができるということは、財産の値下がりが起こった場合にはデメリットを受ける可能性もあるということです。

生前贈与をいつ、どのくらい行うのかについては慎重に計画的に行うことをおすすめします。

養子縁組を活用した相続対策

養子縁組を利用して相続税を下げる相続対策もあります。

被相続人の財産を相続する権利を持つ人を法定相続人といいます。

相続する財産から差し引かれる基礎控除額は

3000万円+600万円×法定相続人の数

なので、法定相続人が増えるごとに、基礎控除額が600万円ずつ上がることになります。

養子縁組をして法定相続人の数を増やすことで、基礎控除額や生命保険金の非課税額が上がり、相続税を下げることができます。

ただ、相続対策としてむやみやたらに養子縁組を組むことのないよう、以下のような制限がありますので、注意しましょう。

・法定相続人に含むことのできる養子の数は、実子がいる場合は1人まで。実子がいない場 合は2人まで
・年上の人物を養子にすることはできない
・孫を養子にした場合、相続税が2割増しとなる
また、相続税法には『相続税の負担を不当に減少させる結果になる場合には、養子を法定相続人に参入することを認めない』旨の規定があります。

すなわち、相続が発生する直前に他人と養子縁組をするなど、相続対策のためだけに不当に養子縁組をしたとみなされると、その養子に関しては法定相続人への算入が認められないこともあるかもしれませんので、頭に入れておきましょう。

その他、養子縁組による相続対策のデメリットとして、実子がいた場合、相続分を養子に分けることになり、トラブルになる可能性もありますので家族で話し合い、理解を得た上で進める必要があります。

会社を立ち上げて相続対策

近年、会社を設立することで相続税を節約する対策も注目されています。

相続税は、被相続人の所有している財産に課せられるため、財産が多ければ当然相続税の額も大きくなります。

相続対策として会社を立ち上げることで、被相続人の財産を法人に移動、分散させることで、相続財産が減り合法的に相続税を減らすことができます。

具体的にどのような手法で、法人化による相続対策を行うことができるでしょうか。

会社を設立

個人で不動産を所有しているなどの場合、株式会社を設立し、被相続人の資産を法人に移 行します。

現在、資本金は1円から設定可能で、会社を設立すること自体、それほど難しい手続きは必要ありません。

相続対策として会社を立ち上げる場合は、以下のポイントを押さえておきましょう。

・相続人が株主になる
 設立した会社の株主になることで、株式が相続財産となります。
 被相続人は株主になってはいけません。(株式が相続財産として計算されてしまうため)

・相続人全員を役員にする
 役員にすると、会社から役員報酬を支払うことができます。
 社員ではないので、時間的拘束もありません。

給与もしくは会社の株式という形で、相続人に財産を移転

相続人に、給与や役員報酬、または株式という形で、相続財産を渡すことができます。

要は生前贈与なのですが、給与という形であれば贈与には該当しないため、贈与税も発生しません。

相続税と贈与税、共に節約できる効果的な相続対策と言えます。

ただし、相続対策として会社を設立する際には、当然手間やデメリットもありますので、以下のようなことも頭に入れておきましょう。

・法人税が発生
 法人を設立すると、毎年最低7万円は法人税が発生します。

・事務作業が発生
 経理関連などの事務処理、雑務が発生しますので、誰がどのように処理するのかを考えて おく必要があります。

・トラブルの可能性
 相続人同士で株主構成や経営方針を巡り、意見が対立し、トラブルになってしまうケース もあります。

 

相続発生後にできる相続対策

相続税を抑えるための相続対策は、基本的に相続発生前に準備する必要があるものが多いですが、相続発生後には何もできないというわけではありません。

ここでは、知っているのと知らないのとでは大きく差の出る、相続発生後にできる相続対策について解説します。

土地の評価を正しくする

不動産を相続するに当たっては、土地の評価額を計算することになりますが、土地の評価方法には細かいルールや特例があり、正しく評価しないと、評価額が高くなり、相続税も高く支払うことになってしまいます。

土地の評価には、補正率と言って、土地のマイナス要因(形状、奥行など)がある場合は減額されるような計算方式になっていて、相続税評価に反映されます。

正しく土地の評価をすることで、大きく相続税評価額を下げることができ、効果的な相続対策と言えます。

とは言え、相続した土地にどのような規定を適用できるのかは、専門知識が無いと分かりづらいため、相続対策に詳しい税理士など専門家に相談することをお勧めします。

税額控除制度を探す

相続発生後、相続税を抑える方法として、様々な税額控除制度が利用できる可能性もあるので、自身のケースに適用できる制度が無いか確認してみましょう。

相続対策になる税制控除の特例には、以下のようなものがあります。

<配偶者の税額軽減の特例>
被相続人の配偶者の相続する遺産額が1億6,000万円まで、もしくは法定相続分以下は相続税が免除されるという特例です。

この制度を利用して、配偶者に多くの遺産を相続することで、相続税を軽減することができます。

<小規模宅地等の特例>
不動産の相続がある場合、まず検討すべき相続対策です。
小規模宅地等の特例の対象は、自宅用の土地や事業に使っていた土地で、それぞれ限度面積が定められています。
この制度を利用すると、土地の評価を最大80%下げることができ、大幅な相続税軽減に繋がります。

<贈与税額控除>
被相続人が亡くなる3年前以内に、相続人に財産を贈与していた場合、既に納めた贈与税の金額が相続税の金額より差し引かれます。
生前贈与を利用して相続税を節約できる方法としては「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度」「教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」などもあります。

<未成年控除・障害者控除>
相続人が未成年の場合や85歳未満の障害者の場合、相続税の額から一定額が差し引かれます。

<相次相続控除>
10年以内に2度目の相続が発生した場合に、相続税の額から一定額が差し引かれる制度です。
両親が10年以内に相次いで亡くなり、子に2度の相続が発生した場合などに利用できます。

各種税制控除の適用にあたっては、細かい条件が設定されていたり、法律が改定されることもありますので専門家に相談の上、相続対策を進めるようにしましょう。

まとめ

相続税で損をしないためにするためには事前に相続対策について考え、取り組んでいく必要があります。

相続税は相続する財産から控除額を差し引いた額により税率も変わってきますので、相続対策を行った場合とそうではない場合とでは支払う必要のある相続税額には大きな差が出ると考えられています。

相続対策を知らないとどうしても損をしてしまいます。

相続する財産が多い場合でも相続税が大きな負担となり、不動産を手放すことになってしまうような相続破産が起こることも考えられます。

相続税は節税することのできる税ですので、相続対策をしっかりと行うことで損をしないようにしましょう。

個人で分からない範囲は専門家の方へ相談すると良いでしょう。

やはり、相続税に関する対策は税の問題となりますので、複雑で難解なことも多いです。

相続税に対する相談は相続を受ける人が行うイメージがあるかもしれませんが、相続を行う人も相続対策に関する相談をする方が増えていますし、相続を行う人の相続対策は非常に大切なことです。

2019年2月12日
相続時に見たい、すぐに分かる相続税早見表
2019年2月12日
相続前に知っておきたい相続税の基礎知識
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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