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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年1月24日 木曜日

損害賠償金は相続税の課税対象になる

相続を行うことになったものの、亡くなった方が損害賠償金に関する問題を抱えていた場合は、損害賠償金も相続税の課税対象になるかどうか、分からずにお悩みではないでしょうか。

相続税は課税対象になる財産と課税対象にならない財産があり、判断が難しいですよね。

どれが相続税の課税対象になるのかを知っておかなければ、相続税の申告を誤ってしまう可能性が高くなります。

相続税の申告を誤ってしまうと、あとから追加の税金が発生するかもしれません。

そこで今回は、損害賠償金が相続税の課税対象になるかどうかを確認していきます。

損害賠償金と相続税についてしっかり理解して、安心して相続税を申告できるようになりましょう。

損害賠償とは

そもそも、損害賠償というのがどのようなものかわからないという人も多いと思います。

損害賠償とは、損害に対する賠償金のことを言います。

慰謝料と損害賠償が同じだと思っている人もよくいますが、厳密に言うと違うので注意が必要です。

イメージとしては、損害賠償のくくりの中に、慰謝料が入っています。

損害賠償というのは、たとえば何か加害を行ってしまった場合の治療費や何かを壊してしまったときの修理費、気持ちを傷つけてしまったときの慰謝料などです。

つまり、損害賠償と言ってもさまざまなものがあるのです。

損害賠償は大きく2つに分けられます。

それは、財産的損害の損害賠償精神的損害の損害賠償です。

どちらも初めて聞いたという人が多いと思います。

ここでそれぞれについて、順番に確認していきましょう。

まず、財産的損害の損害賠償について見ていきます。

財産的損害の損害賠償とは、事故で被害を受けてしまった財産への損害賠償のことです。

たとえば、交通事故であれば、事故にあった車両の修理代などが考えられます。

また、交通事故にあって療養のために働けなくなることもあるはずです。

そのときの働けない分の給与賃金についても財産的損害の損害賠償の対象となります。

したがって、交通事故にあって車両の修理が必要になったうえに、入院のために会社を休むことになった場合には、車両の修理代と入院期間の給与賃金が財産的損害の損害賠償にあたるのです。

ちなみに、きれいな車両を失ったというような財産への侵害を積極的損害と言い、入院していて本当は得られるはずの利益である給与賃金が得られなかったというような利益への侵害を消極損害と言います。

このように、交通事故などによって財産に被害が出たり、人間が怪我をしたりというときには、財産的損害の損害賠償を求めることが可能です。

そして、損害賠償には、財産的損害の損害賠償以外にも精神的損害の損害賠償があります。

精神的損害の損害賠償とは、事故などによって受けた精神的な損害に対しての損害賠償です。

一般的には、慰謝料と呼ばれるものが精神的損害の損害賠償にあたります。

このとき、注意が必要なのは、なんでもかんでも事故なら慰謝料が請求できるわけではないということです。

精神的な損害についての損害賠償なので、人体に被害があるものを中心として認められています。

また、精神的損害の損害賠償は、財産的侵害の損害賠償よりも金額を決めるのが難しいです。

精神は目に見えないものなので、金額にするのが容易ではありません。

たとえば交通事故での精神的損害の損害賠償であれば、算出基準が複数あってどの基準になるのかによって認められる金額が変わってきます。

たとえ同じだけ傷を負っていたとしても、算出基準によって金額が異なることに注意が必要です。

算出基準には、弁護士基準や自賠責基準、任意保険基準があります。

それぞれの算出基準によって、精神的損害の損害賠償で求められる金額が違うのです。

まず、弁護士基準とは、裁判所の今までの同じような事故の結果を参考にした基準で、他の2つの基準である自賠責基準や任意保険基準よりも高額になりやすいと言われています。

そして、自賠責基準とは、事故で怪我をしてしまった被害者に、最低限度の法律で定められているお金を渡すというものです。

最後に、任意保険基準とは、自動車保険の会社が個別で作っている基準で、だいたいの場合には自賠責基準よりも高額な保証が受けやすいとされています。

精神的損害の損害賠償は基準が多くややこしいので、専門家に相談したほうが安心です。

特に、相続と損害賠償が組み合わさると高度な知識が必要となるので、早めに専門家の力を借りましょう。

ここからは、損害賠償金と相続税の関係性について見ていきます。

 

損害賠償金と相続税の関係性

ここからは、損害賠償金と相続税の関係性について深くまで見ていきましょう。

もし損害賠償金を得るはずだった人が亡くなってしまったら、相続税はどのようになるのでしょうか。

相続税の課税対象に損害賠償金が含まれるかどうかは、ケースによって異なります。

したがって、一概に損害賠償金が相続税の課税対象であるということはできません。

まずそもそも、損害賠償金は相続で引き継ぐものではなく、損害を受けた人の所得となるはずです。

したがって、相続税ではなく損害を受けた人へ所得税が課せられます

ちなみに、交通事故によって損害を受けた側の人が損害賠償金を受け取ったときについて、必ずしも相続税がかからないというわけではありません

どのような場合に相続税がかかるのかを確認しておきましょう。

まずそもそも、損害賠償金には、さまざまな金額が含まれています。

たとえば、損害が起きたことによる慰謝料や、交通事故にあって亡くなってしまった人が生きていたなら手に入れることができていたはずのお金などです。

そして、もしも交通事故で人が亡くなってしまったのであれば、その亡くなってしまった人の両親や配偶者、子どもは損害賠償以外にも遺族であることを理由にした慰謝料を求めることができます。

そして、生きているうちに損害賠償金を受け取るという事実があったのにもかかわらず、損害賠償金を受け取れずに亡くなってしまったのであれば、その損害賠償金を受け取る権利は相続をした人に引き継がれるのです。

したがって、この場合には相続が起こったことによって損害賠償金が相続人に引き継がれているので、相続税が発生します。

もしもこのケースに当てはまるのであれば、損害賠償金に相続税が発生するので気をつけておかなければなりません。

基本的には非課税扱いになる

まとめると、損害賠償金の相続税は基本的には非課税の扱いとなるということです。

ただし、亡くなった人が損害賠償金を受け取る権利を持っていて、損害賠償金を受け取る前に亡くなってしまったというときには、相続人にその損害賠償金を受取る権利が引き継がれます。

そうなった場合には、相続で権利という財産を引き継いでいるので、相続税の課税対象となるので注意しなければなりません。

このケース以外では基本的に損害賠償金には相続税がかからないと考えておきましょう。

しかし、相続税についてはややこしいことが多く、自分だけで判断すると誤った判断をしてしまう可能性もあります。

もしも相続税の申告金額を間違ってしまうと、あとから追加の税金を納めることにもなりえるのです。

したがって、少しでも不安があるのであれば、相続税については専門家に頼ったほうが安心できます。

特に、亡くなってしまった人が損害賠償金を受け取っていたか、受け取る予定だったという場合には、早めに専門家に相談に行ってみましょう。

死亡事故の慰謝料も非課税?

死亡事故についても考えてみましょう。

慰謝料は、損害賠償金の枠内に含まれるということがわかりました。

損害賠償金のうち、交通事故などで受けた精神的な損害賠償のことを慰謝料と言います。

さらにその中で、交通事故で被害者が死亡したことに対する慰謝を死亡慰謝料と呼びます。

損害賠償金の1つである死亡慰謝料は、後遺症などが残った場合の慰謝料と同じように、1)自賠責保険基準と2)裁判所基準の支払基準が定められています。

 

1)自賠責保険基準:政令で上限が定められているため、迅速に受給できるというメリットはありますが、公的で最低限の救済になります。

2)裁判所基準:裁判所が目安としている基準のことで、交通事故がどのような規模だったかによって金額が左右されます。

 

基本的に、被害者に支払われる損害賠償額は裁判所基準によって算出されるべきものなのですが、保険会社が裁判所基準より低い損害賠償基準で示談を提示する場合があり、そのまま鵜呑みにしてしまうと大きく損をしてしまう可能性があります。

特に相続に関係する死亡事故の慰謝料の場合には専門的な知識を必要とするため、専門家にも相談し、裁判所基準で示談の交渉をしましょう。

 

死亡事故の慰謝料も非課税である

このように、死亡事故が原因で亡くなった人の遺族は、その加害者から慰謝料を含めた損害賠償金を受けることができまが、この慰謝料は相続税の対象となるのでしょうか。

基本的には、交通事故で受領する損害賠償金は慰謝料を含め全額が相続税の課税対象外という扱いになっています。

ただし、交通事故にあった被害者が生存している間に加害者との示談が成立し、その旨の判決が確定した場合には被害者の生存中に損害賠償金を受領することが決まっているため、相続税の課税対象となります。

といっても、このようなケースは殆どありませんので、基本的には損害賠償の1つである死亡事故の慰謝料は相続税の対象とならないと考えてよいでしょう。

 

保険金の課税・非課税対象のもの

損害賠償の枠内である慰謝料を受け取る際に死亡保険金も受け取りますが、この保険金が相続税の対象となるのか、課税か非課税なのかについて気になると思います。

損害賠償の枠内である死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人が誰なのかによって、1)相続税や2)所得税・住民税の対象、3)贈与税なったりします。

この場合の契約者とは、保険会社と契約し、毎月保険料を支払っている人、被保険者とは、保険の対象となる人、受取人とは死亡保健金を受け取ることになる配偶者や親族などを指します。

1)まず、相続税の場合を見てみましょう。

たとえば、契約者と被保険者が夫で同一人であり、受取人が妻または子である場合、損害賠償として死亡保険金を受け取る妻や子が法定相続人であれば、相続税が課税されます。

この場合は、相続税制上の特典として、500万円×法定相続人の数は非課税す。

2)次に、所得税や住民税の対象となるケースです。

たとえば、契約者が夫で被保険者が妻、受取人が夫というような契約内容だった場合には、損害賠償として支払われた死亡保険金から振込保険料を差し引いた額は「一時所得」となります。

このようなケースでは、一時所得の合計から特別控除額の500万円を差し引いた額の半分が他の所得と合算され、所得税や住民税に加算されます。

3)最後に、贈与税の場合です。

契約者が夫で被保険者が妻、受取人が子のような場合には、損害賠償として保険金の受取人となる子に贈与税がかかります。

しかし、贈与税は1年間で110万円まで基礎控除を受けられ、非課税となります。

したがって、死亡保険金の金額から控除分の110万円を差し引いた額に贈与税がかかるという仕組みです。

こうして見ると、法定相続人の数が複数で、損害賠償として死亡保険金が給付される場合に一番控除額が大きいものは相続税であるといえます。

このように、損害賠償の枠内である保険金などの慰謝料は、契約者、被保険者、死亡保険金の受取人が誰かによって、対象となる税金が変わることを覚えておくとよいでしょう。

債務控除をすることができる

ここまでは損害賠償を受ける側の人が亡くなったケースについて説明してきました。

それでは加害者側、損害賠償を支払う側が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。

相続税には、債務控除という制度が存在しています。

債務控除というのは、相続した財産の中に、もともとは亡くなった人が支払わなければならなかった債務があるときに問題となるものです。

債務も相続の対象となるので、相続する人は亡くなった人が支払わなければならなかった債務も引き継ぐことになります。

しかし、その場合、債務控除の制度を使えば相続税の対象となる財産の金額から、その亡くなった人が支払わなければならない債務を差し引くことができるのです。

亡くなった人が支払わなければならなかった債務の金額が大きければ大きいほど、相続税を減額することに繋がります。

もしも亡くなった人が支払わなければならなかった債務がそこまで大きな金額ではなかったとしても、債務控除を行ったほうが得に相続ができるはずです。

亡くなった人が交通事故などの加害者だったのであれば、相続する人は亡くなった人が負っていた損害賠償についての責任も引き継がなければなりません

したがって、相続する人が損害賠償の支払いを行うということになります。

しかし、この損害賠償を支払うためのお金も債務控除を行ってプラスの財産の金額から差し引くことができるので覚えておいてください。

さらに、亡くなった人が昔交通事故などを起こしたことがあったときでも同様に債務控除ができます。

つまり、亡くなった人が昔交通事故を起こして損害賠償を支払い途中で亡くなってしまったときも、これから支払う予定で亡くなってしまったとしても、損害賠償金を引き継いだ相続人は債務控除を行うことが可能です。

債務控除をするときには、被害者に支払うことになる見舞金も損害賠償金に加えて債務控除の対象となるので知っておくと得だと言えます。

注意が必要なのは、相続放棄についてです。

相続放棄とは、本来は相続人の立場である人が、すべてのものの相続を放棄する手続きのことを言います。

相続放棄を行うことによって、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も引き継がなくて良くなるのです。

このとき、損害賠償金を支払うという債務も相続放棄することができます。

しかし、相続放棄は所定の期限内に手続きを行わなければなりません。

手続きに失敗してしまうと相続放棄ができなくなってしまうので、気をつけておきましょう。

専門家の選び方

家族が突然亡くなってしまった時は、ただでさえ気が動転してしまうと思います。

しかし、前述の損害賠償となる死亡慰謝料のことや、相続税の課税対象など、残された遺族には確認しなければならないことが数多くあります。

特に、損害賠償金については相続税の対象になるか否かによって控除額が大きく異なるケースがあり、相続税の対象となった場合は相続が始まった時から10ヶ月以内に納付する必要がありますので、専門家に相談した方がよいでしょう。

それでは、どのような専門家を選ぶとよいのでしょうか。

遺産相続について相談できる専門家は大きく分けて4つあり、司法書士、弁護士、行政書士、税理士です。

いずれも国家試験を受けて合格・登録された専門家ですが、どのような違いがあるのか、ご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。

その特徴を具体的に見てみましょう。

司法書士

司法書士は、主に土地や建物の不動産などの登記に関する専門家です。

土地や建物などの不動産を買ったときや、離婚によって不動産などの財産を分けたとき、相続によって不動産の所有権が他の人に移る場合には登記をする必要があります。

また、会社の経営者が土地や建物に担保を設定する時なども、抵当権の設定登記をしなければなりません。

司法書士は、これらの登記手続きについて登録申請の代理権を持っている専門家です。

最近では、司法書士の業務範囲が拡大され、簡易裁判所での代理権や遺言書の検認、遺産相続の放棄手続などの代理ができ、遺言書の作成や遺言の執行ができます。

ただし、損害賠償や相続税の問題では司法書士には代理権はなく、主な業務は書類の作成代行であることを覚えておきましょう。

弁護士

弁護士は、様々な法律に関することを扱うことができます。

法律のエキスパートであり、その人の代理人となる代理権もあります。

遺産相続や交通事故、医療過誤や税務に関する訴訟など、どのような場合でも相談に応じることができ、もちろん損害賠償や相続税などの問題についても相談できます。

損害賠償がどの程度になるのか、それが相続税に該当するのかということは相談できますが、弁護士は、法律的な観点から問題を取り扱うことが特徴といえます。

行政書士

行政書士は、遺言書の作成や遺産分割協議書の作成など、司法書士や弁護士にも依頼できる書類の作成ができ、司法書士と同様に代理権はありません。

4つの中では一番、業務範囲の幅が狭い専門家といえます。

従って、損害賠償や相続税のこと、保険金のことなど相続問題について広く相談する場合には、行政書士に頼んでから何かトラブルが起きた際に弁護士に依頼し直す必要が出てくることもあるので注意しましょう。

税理士

税理士は、生前贈与の方法や相続財産の評価、相続税の申告、相続税の更正請求などを扱います。

損害賠償や相続税の問題に関して弁護士は法的な観点からしかアドバイスできませんが、税理士は税務手続を行う上でどのような節税対策ができるかという観点からアドバイスをすることができ、相続税の申告も対応可能です。

 

このように4つの専門家は、少しずつ専門・得意分野が異なるため、業務範囲を把握した上で適切な専門家を選ぶことをおすすめします。

司法書士は煩雑な不動産手続を速やかに進めることができ、弁護士はトラブルを予防してくれたり、揉め事の仲介に入って解決してくれることもあります。

行政書士は最も業務範囲が狭い一方、比較的費用が安いのが特徴です。

税理士は、遺産問題に関して節税対策も含めて相続税の計算や申告手続を依頼できます。

特に、損害賠償に関わる遺産問題は、ある日突然起こるにもかかわらず、相続が開始してから10ヶ月以内に相続税を申告しなければなりません。

損害賠償金が相続税の課税対象になるのか否か、手続きを進める上でどのような点に注意すべきかなどを確認する場合には、税理士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

今回は、損害賠償金は相続税の課税対象となるかどうかを確認しました。

基本的には非課税扱いとなりますが、ケースによってはそうではないので専門家に相談したほうが安心です。

また、損害賠償金を支払う側の方がなくなった場合は、債務控除という手段もとれる可能性があるので、あわせて覚えておきましょう。

損害賠償金が関わる相続税は難しいので、安易な判断は避けるようにしてください。

不安な点がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。

2019年1月24日
相続税の連帯納付義務とは
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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