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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年5月23日 木曜日

アメリカに相続財産がある場合の相続税は?

家族や親戚がアメリカ出身であったり、アメリカでの生活が長かったりする方で、アメリカに相続財産がある方がいらっしゃるでしょう。日本では相続税という税金があり、もし故人から財産を相続した場合、その財産の規模に応じて、納税することが義務付けられています。

では、アメリカに相続財産がある方は、日本で納税するのでしょうか。それともアメリカで納税するのでしょうか。

この記事では、そんな疑問にお答えすべく、アメリカに相続財産がある場合の相続税はどう支払うべきなのか、アメリカと日本の相続税の違い、そして他の国の相続税についてもご紹介します。

アメリカの相続税は掛かるのか?

アメリカの相続税が掛かるかどうかを解説する前に、アメリカの相続税について説明します。

アメリカの相続税

アメリカには、日本のような相続税はありませんが、相続税の代わりに、州によって法律で税金が定められている場合もあります。また、アメリカには米国遺産税という税金があります。

米国遺産税は国が定める連邦税と呼ばれるもので、なんと基礎控除額が日本円にしておよそ12億円あります。つまり、ほとんどの家庭では米国遺産税はかからないということになります。

州の法律によって定められているのは、州税と呼ばれる税金で、住んでいる州ごとに違った決まりがあります。例えば、ニュージャージー州は16%、ワシントン州が20%という具合になっています。
しかし、こちらも基礎控除額が数億円規模なので、実際に支払うのは富裕層のみと言えます。

アメリカの遺産税が相続税と大きく異なるのは、日本が相続する者に対して税金を課せられるのに対し、アメリカでは、故人に税金が課せられる点です。
亡くなった方は納税できないため、遺産管理人と呼ばれる方が納税を代わりに行います。

アメリカの遺産税を納めるべきか

アメリカに財産があり、その財産の規模が前述の通り、基礎控除額を超えている場合、遺産税を支払わなくてはなりません。一方で、超えていない場合は支払う必要がありません。

日本の相続税は掛かるのか?

12億円よりも財産の規模が小さければ、アメリカで遺産税を納める必要がないということが分かりましたが、日本の相続税も払わなくて良いのでしょうか。

日本の相続税

日本の相続税は、アメリカの相続税よりも対象が広く、基礎控除額が

3000万円+(法定相続人の数×600万円)

となっています。

また、アメリカの遺産が故人に課せられるのに対し、日本では相続した方が税金を納める義務を課せられます。

日本の相続税の計算方法

ここで、日本の相続税を計算する方法を少し詳しく解説しておきます。日本における相続税の計算は大変複雑です。暗記する必要はありませんが、この機会に概要を覚えておきましょう。

課税対象の財産を計算する

このステップでは、相続財産や相続財産とみなされる財産を全て洗い出さなくてはなりません。

例えばイメージしやすい金銭や、土地、建物、株式、預貯金はもちろんのこと、絵画や著作権など、金銭に変換できるありとあらゆるものが財産とみなされます。

また、直接的に相続していなくても、生命保険金や、死亡退職金といったものも財産に入ります。この他にも、相続の前3年以内に贈与されたものも課税対象の財産としてカウントされます。

非課税財産を計算する

財産の中には、債務のようにマイナスとしてカウントするものもあります。また、葬式の費用もマイナスのカウントができ、課税対象額から減らすことができます。

故人を弔うための墓地や仏壇、墓石なども非課税財産です。非課税財産を課税対象から引くと、課税価格が求められます。

基礎控除額を計算する

先程記述したとおり、3000万円+(法定相続人の数×600万円)で計算することができます。

課税対象がこの金額よりも低い場合、そもそも相続税を支払う必要はありません。

基礎控除額を、課税価格から引いたものが課税遺産総額です。

相続税額を計算する

課税資産総額から、相続人それぞれの仮の相続税額を計算し、そこから相続税の総額を算出します。この相続税の総額を、相続人それぞれが遺産を得る割合で按分したものが、相続税額となります。

ただし、ここで相続人が配偶者であったり、未成年者、障害者であったりする場合には、特別控除や税額の軽減があります。例えば配偶者は、得た遺産が法定相続分、もしくは1億6000万円以下であれば、相続税を払う必要がありません。
また、未成年者であれば、20歳までの1年あたりに10万円の控除が受けられます。

日本の相続税は払わなくてはいけないのか?

もしも、アメリカの遺産税を払っていないのであれば、日本では相続税を支払う必要が生じます。しかし、もしアメリカで遺産税を支払っている場合だと、日本でも相続税を支払うと、二重に相続税を課せられることになってしまいます。

そこで、日本には外国税額控除という制度があります。次の項で詳細に解説します。

必ず知っておきたい外国税額控除とは?

外国税額控除制度とは、海外と日本での二重課税を防ぐために、海外で支払った相続税の分を日本で支払うべき相続税から差し引くことができるという制度です。この外国税額控除制度においての控除額はどのように決まるのでしょうか。

外国税額控除を計算する方法

この額はシンプルで、

① 外国で支払った額

② 日本で支払うべき相続税の額×外国にある財産の額÷相続財産の額

のうち、少ない方の額になります。

この外国税額控除制度は、日本国籍を持っているような無期限納税義務者だけですから、もし当人が外国籍を持っているような制限納税義務者であれば、この控除制度は受けられません。

この外国税額控除制度を、例を使って説明しましょう。

太郎さんがアメリカの財産7.5億円と、日本の財産5億円を相続したとします。太郎さんはアメリカで2億円、日本で3億円の相続税(遺産税)を払ったとした場合、

外国で支払った税金(2億円)と、日本で支払うべき税金(3億円)×アメリカにある財産の額(7.5億円)÷相続財産の額(15億円)を比較し、少ない方が控除されるため、

3億円×7.5億円÷15億円=1.5億円が控除されることになります。

国によって異なる相続税と相続税の有無

ここまではアメリカの遺産税に限って話を進めてきましたが、ここでは日本以外の国にどのような相続税に相当する税があるのかをご紹介していきます。

・イギリス

イギリスも、アメリカと同様に相続税ではなく、遺産税がかかります。
つまり、相続人が何人いるのか、誰がどのくらいの割合を相続するのかということとは関係なく、被相続人がどれくらいの財産を持っていたかが見られるということです。

被相続人の財産から納税するのは、遺言執行人と呼ばれる人です。この税金が引かれたあとに、財産が相続人に分けられるというわけです。

イギリスの相続税は、一律で40%と決められており、大変シンプルなものです。しかし、日本と同様に285,000ポンドの基礎控除額が定められています

 

・フランス

フランスの相続税は日本と同じく、相続人に当たる人が税金を納める方式ですが、その計算方法が大きく異なります。フランスでは、どの相続人がどれくらいの財産を相続したのかによって、税額が決まります。

これによって、ある相続人が、多くの富を分配された場合に、より公平に課税することができます。一方で、同じ相続人でも、その額に差が出る方式でもあります。

フランスの相続税は累進課税の制度がとられており、5%~45%の幅で税率が決まっています。基礎控除額は100,000ユーロと、他の国に比べると低く設定されています。

 

・ドイツ

フランスと同じく遺産をいくら相続したかによって税額が決まる制度を取っています。

ドイツの場合は7%~30%の間で税率が決まります。しかし、家族や兄弟が相続をする場合には、この税率が高めに設定されます。また、基礎控除額はフランスの4倍の400,000ユーロです。

 

・スウェーデン

相続税がありません。スウェーデンだけでなく、シンガポール、香港、マレーシア、スイス、タイ、オーストラリア、カナダ、なども相続税がありません。

処理に時間が掛かる場合は納税猶予の申告を

簡単にご説明はしたものの、実際に海外にある財産を相続する手続きには、1年以上の時間がかかることが多いです。アメリカの遺産税を支払う手続きを行ったり、債務を整理したりと、複雑な手続きに時間とお金がかかるのです。
わざわざ手続きをするためにアメリカに行くのは大変ですから、アメリカでの相続財産の管理者に連絡をとり、迅速に対応を進める必要があります。

日本の相続税の申告期限というのは、この膨大な手続きに対して10ヶ月しかありません。つまり、すぐに手続きを開始したとしても、実際には間に合わないケースもあります。そんなときには、納税猶予を申告しましょう。

納税猶予とは、税務署に申請を出すことで、1年間納税するタイミングをずらしてもらうということです。しかし、この手続を取るためには、相続人が持っている財産を全て納税したうえで行わなくてはならないため、取りたくない手段ではあります。本当にやむを得ない場合に申告することを検討しましょう。

納税猶予の申告を相談するには

今回は、特に分かりやすく財産をお金と仮定して解説しましたが、実際にアメリカの不動産を相続した場合は、専門家に依頼をし、アメリカにある不動産の価値を評価してもらう必要があります。

お近くの税理士事務所や専門家に相談をすると良いでしょう。また、最終手段である納税猶予の申告についても、ミスが許されない手続きになりますので、専門家に相談することをおすすめします。

忘れてはならない国外財産調書

海外の財産を相続するとなると、国外にある財産を報告する必要がある国外財産調書制度という制度があります。これは国が、国外にある財産を把握し、正確に課税するために施行した制度です。この調書を提出しなかったり、漏れが合ったりした場合は1年以下の懲役、又は50万円以下の罰金が課せられますから、必ず提出するようにしましょう。

相続に関しての相談をしたい場合は

今回のような特殊なケースであれば、専門家に直接問い合わせてみることをおすすめしますが、一般的な相続の相談には、全国各地の無料で相談できる機関を利用しましょう。

税務署

税金についての幅広い相談をすることができるのが税務署です。運営主体が国であることから、安心して相談することができます。全国に窓口があるうえ、もし近くにない場合でも、電話にて匿名の相談できるため、誰でも気軽に活用できます。

また、直接相談したい場合には、事前に予約をすることができ、ゆっくり時間を取って、担当者に相談をすることができます。

法テラス

法テラスは、誰に相談してよいか分からないことが起きた場合に、法律の観点で相談先を教えてくれたり、専門家を繋いでくれたりする機関です。こちらも運営主体に国が関わっているため、信頼して相談ができます。

法テラスは無料で3回まで同じ相談を対面で受けてくれる他、金銭的に弁護士や司法書士が雇えない方に、その費用を立て替えるというサービスを行っており、何かあった場合に頼りになる存在です。もちろん電話での相談も受け付けています。

まとめ

今回は、アメリカにある財産を相続した場合、どのように相続税を払うのかを解説しました。

アメリカの遺産税の控除額が12億円程度だということを考えると、仮にアメリカに遺産があったとしても、ほとんどの方には税金がかからないということが分かりましたね。しかし、万が一税金がかかった場合にも、日本で二重に納税しないための外国税額控除制度があるため、多く払いすぎるということはありません。

また、最終手段としては、納税のタイミングを遅らせる納税猶予の申告が可能です。納税猶予の申告は一見便利な制度に思えますが、今自分が持っている全ての財産を納税する必要があるため、できれば避けたい手段であることも覚えておきましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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