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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年5月20日 月曜日

相続税の申告ミスは高確率で追徴課税に!必要な備えとは

大切な人を亡くされた後に、実際に相続を初めから最後まで100%完璧にスケジュールを組んで完了させる事は難しいでしょう。

相続から発生する相続税は、人が亡くなって初めて生じる税金です。

相続の手続きは生涯の中で何度も経験するものではありません

ですが、私は、みなさんの多くがミスをしてしまうポイントを何度も経験しています

皆さんが相続の中で、トラブルに直面し困ることのないよう、対応策をお伝えしていきたいと思います。

 

相続の約81.8%はミスがある

相続の知識が無いままに申告を進めていく過程で、自分では気付かないところで、いつの間にか税務調査の対象になってしまう場合があります。

その結果、1年間で相続税の申告者数の約8割以上で非違が発生しているのです

この高い非違割合を排出してしまうことの実態を、国税庁のデータや税務調査から解き明かしていきましょう。

 

平成27年国税庁のデータ

国税庁が公開した平成27年(平成25年度の相続案件)の資料によると、被相続人は54,421人、税務調査件数が11,935件、不正申告や申告漏れが9,761件確認されており、非違割合が81.8%となっています。

また、申告漏れ課税価格が3,004億円で、税務調査1件当たりでは2517万円となっています。

税務調査により、新たに徴収された追徴税額は、583億円で、実地調査1件当たりで489万円となっています。

そもそも他の税に比べて控除の割合が高い相続税は、一般家庭が相続税の申告・納付する事はありませんでした。

しかし、平成27年4月1日に基礎控除額の減額や税率の変更により、これまでに比べ申告が必要な被相続者が増加していることが国税庁のデータから明らかになっています

 

税務調査が入ると80%以上は追徴課税に

税務調査は、税務署の調査員が被相続人の生前に生活拠点としていた場所を訪れ、申告書の誤りや漏れなどが無いか実地調査を行います。

税務調査が入るタイミングは、相続税の申告期限から3年以内に調査が入り、多くの場合、税務調査が入ると80%という高い確率で、申告漏れなどにより追徴課税が発生する事があります

税務調査は、事前に調査日を封書で通知され、任意調査となりますが、これに応じなかったり妨害行為を行ったりすると、ペナルティが課せられる場合があります。

追徴課税には、相続税の納付期限の遅延や正当な理由無く申告を行わなかった場合、申告書記載金額の不足、課税対象の財産を隠し持つなどの不正申告があった場合に発生してしまいますので、税務調査が入りご自身が後々苦しまないよう、きちんとルールを守って相続税の申告を行いましょう。

 

追徴課税を受けるケース

税務調査が入ると、多くの確率で追徴課税が課せられます。

相続税の申告の中で、どのような申告ミスがあった場合に追徴課税の対象になるのか、いくつかの具体例を挙げていきます。

 

申告漏れ

まず、申告書の提出後に税額計算などの記述ミスや後から財産が見つかり、申告をやり直したい場合には「修正申告」が必要です

また、税額を過大に記載申告し税金を払い戻してもらいたい際、「更正の請求」を行う事も可能です

税金を多く支払っていた場合の更正の請求には、修正申告とは違い5年10ヵ月の申告期限が決まっています。

ですが、以下の理由に該当する場合には、申告期限から5年を過ぎていても更正の請求が可能です。

  1. 未分割だった遺産の分割し、軽減措置や特例の適用
  2. 認知や排除による相続人の変化
  3. 遺留分の滅殺請求があり相続した遺産を譲渡した
  4. 遺贈を定めた遺言書が発見されるか遺贈の放棄があった

このような特例が無い場合には、期限内での請求を行いましょう。

また、修正申告をする場合には、「修正申告書」を記入し税務署への提出が必要です。

修正申告書は、税務調査で更正を受けるまではいつでも提出する事が出来ます。

ただし、相続税が不足していた場合、納付期限の翌日から起算して延滞税が課税されるので、税額誤りに気付いた場合、なるべく早めの修正申告をしましょう。

このような申告漏れに気付かず、いつの間にか税務調査が入り追徴課税の対象になってしまうケースが起きています。

 

申告遅れ・申告なし

相続税の申告を遅延、または期限内での申告を行わなかった場合、追徴課税を受けてしまいます

人が亡くなると死亡届を役所に提出します。

死亡届の情報は、そのまま税務署に通知されるようになっています。

税務署には、亡くなった被相続人の財産内容や相続人個人の預金口座などの個人情報を、当人の許可なく調査する事が出来る権限を持っています。

その為、被相続人の死亡翌日から10ヵ月以内に、相続税の申告を行わなかった場合、「無申告加算税」が課せられます。

また申告が1日でも遅れた場合、追徴課税の対象となりますが、基本的に申告期限の延長は出来ません。

相続人の異動や遺留分の滅殺請求があった場合など特例として、2ヵ月間の期間延長が認められますが、税務署への申請と審査基準が高いため、期間内での申告をして追徴課税を回避しましょう。

 

相続税の納付遅れ

相続税の納付期限は、相続税の申告期限と同様に被相続人の死亡日から10ヵ月となっています。

納付期限を過ぎてから相続税を納付した場合、延滞税がかかります。

納付期限から2ヵ月以内は、年利2.8%ですが、2ヵ月を過ぎてしまうと年利9.1%となってしまいます

自分や家族に負担が掛からない為にも、期限内に納付することを心がけましょう。

 

意図的な財産の隠蔽

財産の隠蔽とは、被相続人の財産であるのにも関わらず、何らかの方法で自分以外の相続人に見つからないようにし、自分のものにしてしまう事です

遺産隠しも税務署の調査官に素早く突き止められてしまいます。

そうなれば、納税修正申告のやり直し、重加算税の支払い義務が発生します。

最悪の場合、相続税の脱税で懲役刑になってしまう可能性もあります。

遺産相続でトラブルの要因となるのが、兄弟間での遺産分割です。

把握している財産は、兄弟間でのきちんとした対話で分割しておきましょう。

 

追徴課税の税率

追徴課税は、納める必要がある税金にプラスして課せられる罰金です。

相続税の間違った申告状況により、いくつかの追徴課税が該当してきます

ここからは追徴課税の種類や税率を解説していきたいと思います。

 

過少申告加算税

過少申告加算税とは、相続税を本来よりも少ない額を申告した際に発生する追徴課税です。

過少申告加算税の税率は、税務調査からの通知が来る前、通知後から更正の予知、更正の予知以降によって、それぞれ税率が変化していきます。

 

・過少申告加算税の税率

①税務調査通知前⇒なし

②税務調査通知後から更正の予知まで(本税の50万円まで)⇒5%

③税務調査通知後から更正の予知まで(本税の50万円以上)⇒10%

④更正の予知以降(本税の50万円まで)⇒10%

⑤更正の予知以降(本税の50万円以上)⇒15%

 

過少申告加算税の税金額は、申告の際に不足していた額によって変動するものとなります。

追徴課税を課せられないようにする為にも、税務調査通知が来るまでに修正申告を行いましょう。  

 

無申告加算税

無申告加算税はその名の通り、確定申告期間内に所得の申告を怠る事で発生する追徴課税です

確定申告をされない方の多くには、「やり方が分からない」「手続きが面倒だ」という理由で、なんとなく申告期限が過ぎてしまった、というケースが見受けられます。

また、無申告加算税の税率対象となるのは、納付すべき税金に対して税率がかけられます。

 

・無申告加算税の税率

①50万円まで⇒15%

②50万円超⇒20%

 

これまでご説明した無申告加算税の税率は、税務調査後の税率です。

税務調査通知前に自主的に期限後申告をした場合、税率が5%まで下がります。

さらに、災害や交通・通信の途絶による、申告者のやむをえない理由で期限内での申告が出来なかった場合、無申告加算税の追徴課税対象にはなりません。

 

3.3延滞税

延滞税は、納付期限を過ぎてから相続税を納めた時に発生する追徴課税です。

相続税の延滞税利率は、日本銀行の定める「銀行の新規の短期貸出約定平均金利」という指標と連動して毎年推移していきます

 

・延滞税の税率

①納付期限から2ヵ月以内は、年利2.8%の延滞税税率

②納付期限から2ヵ月経過すると年利9.1%の延滞税税率

延滞税の納付には、「法定納期限」か「納期限」の2つのキーワードを理解しなければなりません

「法定納期限」は、相続の開始(死亡日)より10ヵ月後です。

この法定納期限を過ぎた後に、相続税を納めた場合、法定納期限から納付した日数までの延滞税がかかります。

この納期限は、3つのケースが当てはまります。

 

1つ目に、申告期限内に修正申告をした時点で、法定納期限と同日扱いとされます。

2つ目に、期限後申告もしくは修正申告の場合には、申告書を提出した日となります。

3つ目は、更正・決定の場合には、更正通知書を記述し提出した日から1ヵ月後です。

 

重加算税

重加算税は、納税者が相続財産を隠蔽し、相続税の申告を怠った場合に課せられる追徴課税です

これは脱税行為とみなされ、追徴課税の中でも最も高い税率がかけられます。

ただし、重加算税は”意図的に”財産を隠蔽していたかどうかで、追徴課税対象になるか否か決まるので、財産がある事を知らずに税務調査などが入ってきた場合、不服申し立てなど自分が不利にならないような手段もあるので慌てず対応しましょう

 

・重加算税の税率

①財産の隠蔽で少なく相続税の申告を行った場合には、納税額の35%が課税。

②財産の隠蔽をし、相続税の申告を行わなかった場合には、納税額の40%が課税。

毎年、10000件を超える相続税の実地調査が行われている中で、申告漏れなどによる非違割合が8割を占めています

平成26年の実地調査データによると、12,408件の実地調査が入った中、重加算税のペナルティ対象が1,258件となっており、申告漏れなどの非違割合81.8%のうち12.4%と高い重加算税割合を占めています。

 

相続に向けて必要な備え

相続税は、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続・遺言書を通じて相続人に渡り、遺産総額が高額だった場合に課せられた税金を納付する義務が発生するものです。

相続していく中で、相続税が課せられる事となった場合、どのような準備をすればいいのでしょうか?

スムーズに一点のミスもない相続を行うためのアドバイスをしていきたいと思います。

 

早めの把握

まず初めに、法定上で何名が相続人に該当するのか調査をし、控除額を認識する必要があります

相続税は法定相続人の人数に応じて基礎控除額が変動します

控除額を超える相続税額が発生する場合には、必ず相続税の申告をしなければなりません。

その相続財産の中にも、課税対象になる財産とそうではないものがあるので、同時に調べる必要があります

例えば、不動産の評価額が高額であるのにも関わらず、現金が多くない相続の場合、状況に応じて不動産の売却を行い、納税資金の工面などで時間を要します。

納付方法も現金の一括払いなので、基礎控除額を超える相続税が発生した際には、素早い対応をしなければなりません。

相続税の申告・納付には期限があるので、相続税率・税額、必要書類など早めに把握する必要があります。

 

早めの修正

相続税の申告・納税を行った場合でも、思わぬところに落とし穴はあります。

実際のところ、相続税の課税対象になる財産の評価額の決定は複雑なことから、申告後に税額計算に誤りが見つかるケースがあります

また、相続人が知らないところから課税対象となる財産が出てきたり、未分割だった遺産を改めて分割したりした場合、修正申告・更正の請求を行う必要があります。

修正申告には、延滞税や過少申告加算税など、新たに相続税を追納しなければならなくなる場合があります。

申告した内容と実際の相続財産の違い気付いた時点で、早めに修正申告を行う事で、延滞税などの税率が下がるので迅速に対応しましょう。

 

生前贈与も早めに

生前贈与は、亡くなる3年以上前から行うことをおすすめします。

なぜなら、早めの生前贈与には相続税に対して大きなメリットが存在するのです。

それは節税対策です。

暦年贈与(1年ごとの贈与)には、相続税の課税対象の財産の贈与があった場合、年間で110万円まで基礎控除を受けることが可能となります

ですが、亡くなるまでの3年間に生前贈与された財産は、相続税扱いになってしまうので、被相続人が安心して贈与したい相手に渡せるメリットもあるので、早めの生前贈与を行いましょう。

 

相続は専門家に相談するのが確実

相続問題は、一生のうちに一度は経験する事になるでしょう。

家族内で、相続手続きをしていくのには限界があります。

確かな知識が欠けている状況での財産分与の話し合いは、その後の家族・兄弟関係に軋轢を生むリスクが高まります

相続の専門家には、司法書士・弁護士・行政書士・税理士など、相続のプロフェッショナルがいます。

相続に関して徹頭徹尾、専門家と協力して被相続人が安らかに眠れるように、ケースごとに適切な専門家選びをしましょう。

 

まとめ

このページをご覧になられている方の中には、今、まさに相続の手続きの最中に居るかと思われます。

かなりデリケートな問題なので、周りの方に悩み・不安を相談するのも億劫に感じているかと思われます。

相続を進めていく中で、発生するかもしれない相続税。

相続税の申告漏れなどで生じる追徴課税に関して、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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