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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年6月18日 火曜日

ペットの相続には相続税がかかる?ペットに相続させるには?

犬・猫あわせて2000万匹近くが、家庭でペットとして飼われていると言われています。

可愛いペットですが、もし飼い主が死んでしまったら、ペット達はどうなるのか気がかりでしょう。

大切な家族であるペットが最後まで幸せに暮らせるようにしたいとお考えの人は、なるべく早く専門家にご相談することを心からお勧めします。

実際に、飼い主の亡き後、ペットの相続には相続税がかかるのでしょうか。

また、ペットに自分の財産を相続させることは可能なのでしょうか。

この記事では、これらの問題で論点となるポイントを解説していきます。

 

ペットは被相続人になれません

ペットに関する相続問題の1つとして持ち上がるのが、ペットに自分の財産を継がせることができるかどうかということです。

長年かわいがってきたペットは家族同然で、遺産を相続させたいと思う方も少なからずいらっしゃいます。

しかし、結論から言うと、日本においてペットは被相続人にはなれません。

それでは、残されたペットにどのようなことをしてあげられるのでしょうか。

以下で解説していきます。

 

アメリカの大富豪の飼い犬の話

まず、アメリカにおけるペットの遺産相続の事例を見ていきましょう。

過去に、アメリカで大富豪の飼い犬が亡くなったことが大きなニュースになりました。

その驚きの内容が、この犬は、なんと大富豪からおよそ200万ドルもの大金を相続した犬だったのです。

アメリカでは、州によっては、ペットに一定の財産を相続させることが可能なのです。

そのため、遺言によって、自身のペットに遺産を相続させることができます。

一方、日本でも、このように自身のペットに遺産を相続させていと考える方はいらっしゃいます。

果たして、日本の場合はどうなのでしょうか。

 

日本の民法でペットは「物(ぶつ)」

日本の民法において、ペットは人ではなく、「物(ぶつ)」として扱われています。

法律の世界では、「人」以外はすべて「物」として扱われるのです。

そもそも、民法とは「人」が「物や権利」をやりとりする際のルールを定めた法律です。

そのため「物」であるペットが、「物」を所有することは認められないのです。

また、アメリカや日本以外の国を見てみると、国によってその方針は異なり、隣接するフランスとドイツであっても、フランスはペットが相続できず、ドイツはペットが相続できるようです。

 

ペットは「直接」遺産を相続できない

ペットと遺産相続の件も、上記の話と同じことです。

ペットである犬は、法律上、「物」であるので、その「物」が「物」や「権利」である遺産を受け継ぐことは認められていません。

よって、ペットは「直接」遺産を相続できないのです。

 

「間接的」にペットに遺産相続をさせる方法

上述したように、日本においては、ペットに「直接」遺産を相続させることはできません。

しかし、「間接的」にならペットに相続させることが可能なのです。

言い換えると、あたかもペットに遺産を相続させたかのような相続ができます。

その方法を、以下でご紹介します。

「間接的」にペットに遺産を相続させる方法として、負担付遺贈というものがあります。

負担付遺贈を行う上で、まず始めにすることは、親身になってペットのお世話をしてくれる信頼できる人を探すことです。

そして、その人に財産を相続させることを遺言します。

しかし、ただの遺言ではありません。

「ペットを最後までお世話する」という負担付の遺言書を作成するのです。

ちなみに、ここでいう負担とは、条件のようなものです。

これで「間接的」にペットが遺産を相続することができるのですが、実際に、ペットが大切にお世話され続けられるのかを、チェックする仕組みも作ります。

それが、「遺言執行者」という制度です。

遺言執行者は、遺産を受け継いだ受遺者が、ちゃんとペットをお世話しているかを定期的にチェックします。

もしも、受遺者がちゃんとペットの世話をしていない場合は、「遺言執行者」が裁判所に請求して、遺言の取り消しを行います。

このように、ペットに遺産を相続させるための方法がありますが、これはあくまで「間接的」に相続させる手段であって、ペット自身は被相続人になれないということは留意しておきましょう。

 

ペットは相続の対象になります

民法上、ペットは「物(ぶつ)」として扱われることは既に述べました。

そのため、ペットは「直接」遺産を相続することはできず、むしろ相続の対象になります。

また、ペットは相続の対象になることから、その相続には相続税がかかることもあります。

ペットの相続税評価額については、次でご説明します。

 

ペットの相続税評価額の計算について

ペットの相続税評価額は、「牛馬等の評価」という、国税庁の定めに基づいて行います。

ここでいう「牛馬等」とは、牛や馬に加え、犬、鳥、魚等の動物類のことで、それらの動物を、販売目的か販売目的以外で所有しているかどうかで、相続税評価をする方法は変わってきます。

 

・販売目的以外の場合

ここでいう販売目的以外とは、牛馬等を販売目的以外で所有する場合、つまりペットとしての愛玩動物や、動物に馬車を引かせるなどの労働目的、その他、搾乳目的や種付け目的など、牛馬等の動物を販売目的で所有している場合を指します。

このような場合、売買実例価格という実際の取引価格か、専門家の意見である精通者意見価額を参考にして、相続税評価をします。

ちなみに、かつての牛馬等の動物の評価額は、動物の年齢や種類などの違いに応じて、国税局長の定めた標準価額批准方式によって評価を定めていました。

しかし、法改正によって、その評価方法は廃止され、動物それぞれごとに、財産を評価する方式に変わりました。

 

・販売目的の場合

参考までに、販売目的の場合の相続税評価額もご紹介します。

ここでいう販売目的とは、ペットショップなど動物を扱う販売店や、魚などの海産品を扱う鮮魚店や、精肉業者に自身が畜産で育てた動物を売る畜産業者などが、それらの動物を販売目的で所有している場合を指します。

このような場合は、「牛馬等の評価」ではなく、「たな卸商品等の評価」が適用されます。

財産評価の方法としては、商品の販売価額から利潤、経費、消費税を控除し、それが最終的な牛馬等の評価額になります。

 

負担付遺贈や負担付死因贈与で人に任せることができる

相続の対象であるペットは、負担付遺贈や負担付死因贈与で人に任せることができます。

負担付遺贈に関しては既に述べたので、ここでは負担付死因贈与についての説明をします。

負担付死因贈与とは、もし自分が死んだら、親族か第三者にペットの世話をしてもらう代わりに、財産を贈与するという契約をする方法です。

死因贈与は、ペットの飼い主の死亡により、効力が生じます。

負担付死因贈与は、ペットを任せる相手と双方でよく話し合い、ペットの世話の仕方などを、納得がいく内容を取り決めることが可能です。

双方が合意して初めて成立するので、相手から承諾が得られた場合、遺言よりも確実なものになります。

この契約を結ぶうえで大切なことは、合意内容を書面にして残しておくことです。

また、負担付死因贈与は、双方が合意して成立する契約なので、原則として、後から取り消すことや、一方的に破棄することはできません。

負担付死因贈与の場合も、負担付遺贈の際と同様に、本人の死後、贈与を受けた人が、約束を守らずに、ペットの世話をしない危険性もあるので、執行者を負担付死因贈与の契約に記載して、ペットの面倒をしっかり見ているかを、信頼のおける執行者にチェックしてもらうことも大切です。

 

生前に引取相手を探しておきましょう

上述したように、負担付遺贈や負担付死因贈与で、ペットを人に任せることが飼い主としても最も安心でしょう。

負担付遺贈や負担付死因贈与は、まず人探しから始まります。

そのため、ペットを任せるにあたって、生前、信頼できる引き取り相手を探しておきましょう。

仮に、身近な人に頼むのが難しい方には、動物病院やブリーダーなどのネットワークを頼ることも1つの手です。

 

信託制度を利用する

信託とは、委託者が遺言などにより、その信頼できる人に対して、財産を譲り、その財産を受け取った人は、委託者の決めた遺言などに従って、受益者のために、その財産を管理・処分する制度のことです。

ペットに対して自分の遺産を活用する手段として、この信託制度を利用することができます。

ペット自身を、またはペットに遺産の相続を考えている相談者が委託者となり、信託銀行などの受託者に自分の財産を預け、ペットのためにその遺産を管理・運用・処分してもらうことができます。

実際には、受託者となった信託銀行がペットの世話をするのではなく、遺言書の中でペットの飼育をしてくれる人を指定します。

指定を受けた世話人は、信託銀行からペットのエサ代といった世話に関する費用や報酬を、定期的に受け取ることによって、確実にペットの世話をしてもらう方法です。

世話人がしっかり飼育をしているか監督を行い、信託を確実に行うために、信頼のおける第三者を信託監督人に指名することもでき、動物愛護団体などを信託監督人に指定する例もあります。

その他にも、目的信託といって、受益者を特に定めないで、ペットの世話と残った遺産の使用目的を定める信託を設定することもできます。

この場合は、委託者が、ペットの世話人を直接指定するのではなく、信託管理人を指定して、その信託管理人に誰にペットの世話を依頼するのかを任せることになります。

その点、信託の場合は、ペットの世話がしっかり行われているかどうかというチェックもあるうえに、信託したお金は相続財産ではないので、トラブルが起きにくいこともあり、遺産がペットのためにちゃんと使われるという点がメリットと考えられます。

 

専門の機関やペットのネットワークをあたる

親族や友人などに頼むことが難しい方は、動物病院や犬舎やブリーダーなどをあたってみるのもいいでしょう。

それらの施設では、迷子や捨て犬猫だけでなく、飼い主を亡くしたペットの情報を善意で集めて、新しい飼い主探しを行っているところもあるので相談してみましょう。

その他にも、同じペットを飼っている方のネットワークを利用するのも手です。

そのネットワークから飼い主を亡くしたペットについて信頼して預けることの可能な法人や個人の情報を得ることも重要です。

いずれの対策をとるにしても、ペットの詳しい情報をまとめて残しておきましょう。

例として、鑑札(番号・登録など)、病歴、通院歴、予防接種歴、食事の好き嫌いやアレルギー、血統書、トリミング、散歩の回数、かかりつけの病院の情報、保険等が挙げられます。

特に、飼育条件が特殊なペットほど、このように詳細な情報を事前に集め、しっかり残しておくことが必要です。

 

迷ったら専門家に相談しよう

ペットにかかる相続税やペットに間接的に遺産を相続させたい、と考える場合は、確実に手続きを行いたいものです。

従って、もし自分で手続きするのに不安があったり、なかなか手続きを進める時間がなかったりする場合は専門家に迷わず相談しましょう。

ペットの相続税やペットへの相続については、税務の専門家である税理士や生活の困りごとを解決する司法書士などに相談するのが良いでしょう。

最初の相談であれば無料で行ってくれる事務所も多数あるため、気になる事務所があれば問い合わせてみることをおすすめします。

 

まとめ

いかがでしたか。

今回はペットの相続について解説しました。

日本では、ペットに「直接」遺産を相続させることができないことは上述した通りです。

そのため、自分の死後、残された大切なペットが安心して生きられるようにするためにも、生前にしっかりとした対策を立てることが大切です。

その対策の1つとして、「間接的」に、ペットに財産を相続させる方法をご紹介しました。

それは、負担付遺贈や負担付死因贈与を行うことで可能です。

ただし、負担付遺贈や負担付死因贈与は、きちんとした書面や遺言の作成が必要です。

そのため、決して1人で解決しようとせずに、専門家に相談をして、相続の手続きを行うことが大切です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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