2019年5月31日 金曜日
相続税は電子申告できる?申告の方法は?
相続税は被相続人が亡くなったその日から10ヶ月以内に申告することが定められています。いきなりやってくる相続税申告に、戸惑いを覚える人も少なくはないでしょう。
相続開始後、相続人には期限までに必要な書類を揃えたり、大量の申告書類を作成して税務署に提出したりする義務が課されます。これらの準備にはかなり時間と手間がかかり、相続人のみで全て対処するのは至難の業です。
これらの手続きを全てオンラインで済ますことができればかなり楽になると思いませんか?
法人税や所得税においては電子申告(e-tax)が主流になってきた中、相続税の電子申告は可能なのでしょうか?
目次
相続税の電子申告は現在不可
結論から言うと、現在(2019年6月)の時点では相続税の電子申告が完全には導入されていません。現状では、相続税の申告については書面による手続きしかできず、e-Tax(電子申告システム)という税の申告や納税となどの手続きをインターネット等を利用して電子的に手続きするシステムを使うことはできません。
現在のところ、電子申告が可能なのは、所得税・法人税・消費税・贈与税・酒税・印紙税・復興特別法人税の申告のみで、相続税の申告も電子申告に対応していません。
しかし、相続税についても、2019(平成31)年相続開始分の相続税申告書から e-Tax による提出が可能になる予定で、2019年10月の運用開始に向け、政府は現在システム開発を行っている段階です。
10月というのは、相続税の申告期限10か月を考慮してのことだと考えられます。これらの対応については、第3章で詳しくご紹介していきたいと思います。
相続税を書面で申告する方法・流れ
相続税申告の電子手続きの導入が検討されてはいるものの、完全に電子化するまではまだ時間がかかると考えられます。やはり、しばらくは続く書面ベースの手続き方法は押さえておくことが賢明です。
この章では、相続税を書面で申告する方法や流れを説明していきたいと思います。
まずは申告の有無を確認する
申告方法について考える前に、まずは申告の必要があるのかを判断する必要があります。相続税は、納税の義務がある場合のみ申告の義務が生じますが、例外もあります。相続税を納める必要があるのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合のみです。
基礎控除額は以下の計算式で計算されます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
また、配偶者に対する税額軽減の特例を受ける場合は、たとえ申告する税額が特例により0円になっても相続税の申告は必要となるので注意しましょう。
申請と納付期限の確認
相続税の申請期限と納付期限はともに、被相続人の死亡翌日から10ヶ月となっています。 「申告を期限直前に行った結果、申告は終わったけど、納付が期限内に間に合わなかった」ということも起こりうるので、なるべく早めの準備を心がけましょう。
ただ、相続税は不動産などの現物を相続することも多く、多額な納税額になってしまい現金一括納付が困難である場合も少なくありません。その場合には、続税の納付における「延納」と「物納」が認められています。
延納とは、金銭的に納付が困難な場合、期限内に延納申請書を提出することで担保を提供することで、5年以内の年賦延納が認められます。また、不動産などが相続財産に含まれる場合は最長20年まで延長できる場合もあります。
一方、延納すらも厳しい場合や、延納による納付が困難となった場合に、物納申請書を提出することで、相続財産からの物納を行うこともできます。ただし、延納も物納も基本的には止むを得ない場合のみ利用すべき制度で、あまり得することはありません。また、状況次第では申請が認められないケースもあります。
まずは納付期限内に納付できるよう最善を尽くしましょう。
必要書類の確認
それでは、次に相続税申告の際に必要な書類について確認していきましょう。
こちらで紹介するのは従来通りの書類申請方法ですが、2019年10月以降には一部の書類手続きをオンラインで済ますことができるかもしれません。その場合、どの申請が電子化され、どの書類は紙が必要なのかなど、こちらを参考にしながら判断してみてください。
必ず必要な書類
以下はどのケースにおいても必要となってくる書類です。必ず早めに用意するようにしましょう。
① 相続人のマイナンバーを確認できる書類(いずれか用意できるもの)
・マイナンバーカードの写し(裏面)
・通知書の複写
・マイナンバー記載のある住民票の写し
②相続人の身元を確認できる書類(いずれか用意できるもの)
・マイナンバーカードの複写(表面)
・運転免許証の複写
・身体障害者手帳の複写
・パスポートの複写
③相続税申告書
④死亡診断書
⑤遺言書か、遺産分割協議書の複写
⑥相続人全員の印鑑証明
⑦被相続人の「出生から死亡までの」戸籍謄本
⑧相続人の戸籍謄本
⑨相続人の住民票
場合によって必要な書類
こちらの書類は相続税申告書に添付する際に必要になってくる書類です。しかし、これらもあくまで一例であり、控除や延納の手続きをする際には、またそれぞれの申請書が必要です。
先ずは、被相続人の資産の種類に応じて必要となる書類をご紹介します。
■預貯金
・預金残高証明書
・被相続人と家族全員の通帳の複写
■不動産
・登記簿謄本(全部事項証明書)
・間取り図
・地積測量図
・実測図
・固定資産税評価証明書
■上場株式
・株券の複写
・預り証
・配当金の通知書
・家族全員の取引明細
■生命保険
・保険金支払いに関する通知書
■貸付金
・貸借の契約書の複写と、その残高を示す書類
次に、被相続人の負債や葬儀代において必要となる書類をご紹介します。
■借入金
・貸借契約書の複写
・金融機関の残高証明書
■未払金
・領収書
・請求書
■葬儀代(葬儀社、お通夜などに関する費用)
・領収書
申告・納付方法
相続税の申請書には全部で第1表〜第15表までがあり、必ずしも数字の小さい順から準備をしていけばいいというものではありません。どの様式から記入していけよりスムーズに書類を作れるのでしょうか。また、実際に記入する内容はどんなものなのでしょうか。ここでは、記入していく順番と納書の記入内容についてご紹介します。
申告書記入の順番
まずは、申告書の第9〜第15表を作成します。これらは、相続する財産と債務についての書類です。
・第9表(生命保険金等)
・第10表(退職手当金など)
・第11・11の2表の付表1〜4(小規模宅地等の特例、特定計画山林の特定など)
・第11表(課税対象)
・第13表(債務・葬式費用等)
・第14表(相続開始前3年以内の贈与財産等)
・第15表(相続財産の種類別価額表)
次に、第1表と第2表を作成し、具体的な税額を求めていきます。
・第1表(課税価格、相続税額)
・第2表(相続税の総額)
そして最後に、第4〜8表を作成しましょう。これらは、相続税額の控除や加算を行うために書類です。作成できたら、第1・2表に「控除額」を加えることで、最終的な納税額を確定することができます。
・第4表(相続税額の加算金額の計算書)
・第4表の2(暦年課税分の贈与税控除額の計算書)
・第5表(配偶者の税額軽減)
・第6表(未成年者控除・障害者控除)
・第7表(相次相続控除)
・第8表(外国税額控除)
納付書の記入内容
相続税の納付する際には必ず、税務署でもらう納付書に記入をする必要があります。また、納付方法としては、銀行などの金融機関の窓口にて現金一括で納入することが原則です。ここでは、納付書に記入する内容について確認いきましょう。基本的に、相続税申告書の内容がきちんと作成されていれば、納付書の作成はスムーズに進むかと思います。
・相続開始年度
・税目番号(相続税は050)
・税務署名
・本税(納付すべき税額のこと)
・合計額(本税と同じ額を転記)
・納期等の区分(相続開始年度・月・日)
・被相続人と相続人の住所
・被相続人と相続人の氏名
・税目(「相続」と記入)
一部の相続税申告は電子申告に対応予定
上記で述べたように、相続税に関する電子申告は現在導入期間にあり、具体的にどれほど電子化されるかまだ明確ではありません。政府の「デジタル・ガバメント実行計画」によると、2019年10月頃から相続税で『e-Tax(電子申告システム)』の導入を開始するそうです。
それでは、具体的にどこからどこまでがオンライン化するのでしょうか?
政府は将来的にオンラインで一括処理できることを目標に
政府の計画では、死亡や相続時の行政手続について、オンラインで一括処理を可能にすることが最終目標のようです。
内容としては、少しでも分かりやすく相続財産を把握できるようにすること、必要となる手続を少しでも簡単にすること、そして手続き先を確認できるようにすることが挙げられます。
また、行政機関同士で連携を促すことによって、手続きの効率化を測ります。申請者に対しては、オンラインでどこからでも、いつでも手続きができる「ワンストップ化」も目指しており、相続人と行政機関や民間事業者のコミュニケーションを円滑にすることで手続きにかかるコストと負担を少しでも和らげることが目的のようです。
現在相続が発生した場合には通常、死亡届、年金手続、不動産の名義変更、相続税の申告などの行政手続が義務付けられています(遺産総額が基礎控除以上の場合に限る)。それらは全て書面で作成する必要があり、その提出先も地方公共団体、年金事務所、法務局、税務署などとバラバラになっているのが現状です。
被相続人の預金を調べる際にも、金融機遺産関に繰り返し戸籍等を提出する必要があり、手間がかかります。
これらの手続きに加え、相続財産を評価したり、遺産の分割方法を決定したりと、相続人の負担は大きいのです。
これらの書類手続に、相続税のオンライン化、ワンストップ化が導入されれば、かなり負担が和らぐことでしょう。
つまり、これから相続税申告を行う方々は、すでにこのオンライン手続きを念頭に入れた上で準備を行うと、よりスムーズに相続税申告が行えます。
ただし、完全にオンライン化されているという訳ではなく、一部の書類は別途税務署に提出するなどの対応が必要なので、国税省の最新情報にアンテナを張ると良いでしょう。
分からないことがあった場合は、専門家や機関に相談するのが無難
相続税については、実際に支払う当事者になってみると、分からないことがたくさんあります。そのため、疑問や不明点があったら、迷わず専門の機関や専門家に相談すると良いでしょう。
・税務署
税務署は全国に窓口があり、電話での匿名相談を受け付けているため、安心して相談することができます。国が運営している機関であるため、正しい情報を得ることができます。
・法テラス
法テラスは全国各地にある、法律の相談所です。こちらも国のお金で運営されており、さまざまな専門家を紹介してくれたり、そもそも誰に相談したらよいか分からない場合に指南してくれたりする機関です。同じ相談でも、3回までなら対面で相談に応じてくれるため、困ったときには相談してみると良いでしょう。
・税理士
税金の専門家である税理士なら、さまざまな相談に答えてきた実績があるため、迅速に、そして賢く相続税のお悩みを解決してくれます。また、お金を支払えば、実際に計算や書類の作成まで代行してくれます。最初の相談は無料で応じてくれる場合もあるため、気になった税理士事務所に問い合わせてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。2019年となり、政府が計画している相続税申告の電子はもう目前まできている状態です。しかし、新システムが導入された直後は試験的な運用が続いたり、電子申告と紙ベースの書類作成両方が必要なケースも考えられたり、かえって混乱を招く可能性もあります。現段階では、従来の申告方法をしっかり把握した上で、新システムを利用できる点は何かを判断することが大切です。