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【手続きの手順・方法 】
相続時に必要な手続きについて手順や方法を説明しています。必要な手続きをせずにいると、後々相続トラブルに発展する可能性もあります。相続の手続きについて手順や方法を知っておきましょう。

2019年4月17日 水曜日

遺留分減殺請求とは?その効果と手続き方法を解説

身内の不幸は長い人生を生きていくうえでは、避けては通れない道です。

身内が亡くなった悲しみに暮れる間もなく、出てきた遺言書では配偶者への相続を認めない旨の遺言が書かれていることもあります。

意図せぬ相続財産の損失が発生した時、法定相続人は最低限の相続分を相続できる遺留分減殺請求という権利があることをご存じでしょうか。

法律の専門家でもない限りなかなか知る機会は少ないと思います。

しかし、法律は家族が亡くなったことで生活が困窮する人がいないように、未来の生活へと進めるようにと、相続人の権利を保障しているのです。

今回、遺留分について深く掘り下げるとともに、遺留分減殺請求の段取りについてご説明いたします。

遺留分減殺請求とは?

遺留分減殺請求とは、被相続人の遺言書に遺留分を侵害する内容の記述がある時、遺留分を求めて、法に定められた一定の割合をほかの法定相続人に請求することを指します。

先述した特定の法定相続人とは、被相続人の直系尊属と配偶者と子らの法定相続人のことです。

被相続人の兄弟姉妹は条件を満たせば法定相続人に該当しますが、遺留分とはまるで関係がありません。

つまり、原則として兄弟姉妹は遺留分が認められていません。

また、この権利は、法定相続人の間で相続の割合に金額差があった際に不服を主張できるという権利にすぎないので、たとえ遺留分を侵害されていても許容できる場合は遺留分減殺請求を取り行う義務は存在しません。

自らが先述した権利を有していて、かつ、特定の法定相続人で遺留分の侵害されている遺言に納得がいかない場合は、正当な権利の主張を検討してみてはいかがでしょうか。

遺留分とは

遺留分は被相続人と家族である以上、たとえ被相続人が配偶者等の法定相続人に相続を一切させない旨の記述を遺言書にしていても、その内容より優先されます。

遺留分の概念に相続財産によって残された家族の生活保障をする趣旨があるからです。

遺留分で相続できる割合は、本来相続できる分配量よりも少なくなります。

割合は細かく規定されているので後の項で後述します。

遺留分と法定相続分の割合比較

法定相続分の割合は法定相続人の数で変動します。

例えば、被相続人に子どもが多くいればいるほど、一人当たりの相続できる金額は減ります。

逆に法定相続人が配偶者一人しか存在しない場合なら、法定相続分は配偶者が100%ということになります。

そのほかのケースもありとあらゆるパターンが想定できますが、基本的には数で割るという作業で算出できます。

遺言等で被相続人の意思で、特定の法定相続人に多くの割合で財産を相続させる、または特定の親交のあった人物、団体に財産を遺贈する等の遺言が残されていた時、法定相続人が遺留分を求めて遺留分減殺請求を行えます。

遺留分は法定相続人に最低限の相続分を保証する ものにすぎないので、法定相続分よりも割合は当然少なくなります。

遺留分の割合に関する記述は、民法1028条で「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける」とあります。

一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

このように法律で法定相続人の中でも細かく相続できる遺産の量が定められています。

遺留分減殺請求が可能な人

遺留分減殺請求が可能な人は、法定相続人の中で直系尊属である両親、配偶者、そして子のみです。

被相続人の兄弟姉妹は法定相続人ではありますが、法の下で遺留分減殺請求権はありません。

遺留分減殺請求権があるのは自らの両親と配偶者、子の三者のみです。

かつての判例では上記三者以外にも認められたことがありますが、現在の法律では原則として上記の三者のみという認識で問題ありません。

遺留分減殺請求の期限

遺留分減殺請求権については,2つの期間制限があります。

一つ目は、遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年以内という縛りがあります。

二つ目は、相続が開始した時から10年以内に手続きを終えることです。

あくまで時効の発生は相続の開始等のいずれかを「知った時」からカウントしますから、相続が開始されていたことや、減殺すべき贈与があること、遺贈があったこと等を知らなければ消滅時効期間は進行しません。

もしも相続開始等から1年以上が経過していても、相続開始等を知らないままであれば時効によって消滅することはないということです。

遺留分減殺請求を真剣に考えておられるのであれば、速やかに遺留分の申し立てをすると良いでしょう。

遺留分はいくら?

遺留分の額は、状況に応じて異なります。

もらえる金額は被相続人の基礎財産に依存するからです。

基礎財産とはどのようなものなのか、そしてどのように算出していくのかをみていきましょう。

基礎財産について

l 相続人が死亡時に有していた積極財産と呼ばれるプラスの財産の価額です。

これには被相続人が生命保険の受取人を自らに指定していた場合のみ、生命保険金も含まれます。

l 被相続人が相続開始前の1年間に贈与した財産の価値です。

l 贈与、受贈するお互いが遺留分権利者の遺留分を侵害すると認知した上で取り行われた贈与です。

遺留分権利者の遺留分が少なくなることを贈与する被相続人と受贈する人物の双方が知りながらなされた贈与も基礎財産に含まれます。

l 相続人が受けた特別受給です。

特別受給とは、例外はありますが、例えば婚姻の為の贈与であったり、生計の資本としての贈与を受けたりして被相続人にたらされた財産を指します。

この他にも遺贈による財産も基礎財産と認定します。

l 当事者らが遺留分を侵害することを知りながらなされた、不相当な対価による売買等の有償行為です。

以上に挙げた五つの事柄の合計金額、すなわち被相続人の全財産額から被相続人が負っていた債務を控除したものが基礎財産です。

計算例

まず法定相続人になりうるのは被相続人の直系尊属と配偶者、被相続人の兄弟姉妹、そして子らです。

しかし、先述したように被相続人の兄弟姉妹には遺留分を請求する権利がありません。

兄弟姉妹に遺留分を受け取る権利がない理由は、代襲相続が大きく関わっています。

代襲相続とは、被相続人の死亡よりも前に本来相続すべき相続人(子)が死亡している場合や、相続欠格・廃除によって相続権を失っている場合に、その相続人子供が代わりに相続することを指します。

これに該当する場合、被相続人の兄弟姉妹にまで遺留分を認めてしまうと、甥や姪にまで遺留分を受け取る権利が発生することになります。

あくまでこれからの生活を最低限度保証します、という趣旨の遺留分ですので、甥や姪にまで遺留分を保証するのはどうなのかという考え方から、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないのです。

以上の事を踏まえて、遺留分の計算例を記載します。

直系尊属だけが法定相続人の場合:

直系尊属の遺留分は被相続人の財産の三分の一で直系尊属以外の法定相続人、すなわち配偶者と子らの遺留分は被相続人の財産の二分の一です。

また、被相続人の兄弟姉妹には一切の遺留分が認められていないために、相続は出来ません。

法定相続人の該当者が複数人いるときは、各々の割合を、同順位の人数で均等分割します。

遺留分減殺請求の方法

まず初めに、相手に対し遺留分減殺通知をします。

遺留分減殺通知の方法にルールはなく、遺留分減殺請求の意思表示が出来たなら基本的にはそれで大丈夫です。

そのため電話やFax、もちろん直接会って意思を表明しても良いのですが、確実に証拠が残るように、内容証明郵便を利用するのが通例です。

内容証明郵便とは、郵便局と差出人の手元に相手に送ったものと同じ内容の控えが残る郵便のことです。

郵便局によって確定日付も記入されますし、配達証明をつければ相手に送達された日も証明することができるようになります。

内容証明郵便を使えば、いつどのような方法で遺留分減殺請求をしたのかが確実に証明できるようになります。

意思表示さえできれば遺留分減殺通知の役割は果たせますが、すんなり遺留分減殺請求が通るのは稀であるため、きちんと証拠の残る内容証明郵便にて相手に意思表示をすることは非常に大切なこととなります。

内容証明郵便での通知

この方法が遺留分減殺通知をするうえで確実かつ安心です。

上記で述べたように、遺留分減殺請求の通知はその意思があることを相手に伝えられれば良いので、実際に出向いて相手方に直接話しても良いでしょう。

しかしこの場合、先方の出方によっては不快な思いをするケースがあります。

先方に法で定められた遺留分でさえ渡したくないという思いがあったり、自身との関係が悪く確執があったりするとなおさらです。

そのため、内容証明郵便で相手に遺留分減殺請求をする意思があること、きちんとした段取りで正当な権利を主張する、という思いも伝えることができます。

難航する場合は調停・裁判となる場合も

遺留分減殺請求の通知をし、話し合いの場を設けてすんなりと双方が納得する形が取られればなによりですが、もし交渉が難航する場合、調停や裁判になることも想定しておかなければなりません。

調停や裁判となる場合、訴訟する相手は身内となるケースが多いため、出来れば話し合いにて穏便に済ませられることが理想となります。

また、調停や裁判のケースになってしまった場合は、慎重に事を進める必要があります。

調停の場合、様々な書類が必要

遺留分減殺請求の調停を申し立てるにあたって、最低限以下に記載する書類が必要です。

【標準的な申立添付書類】

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・ 相続人全員の戸籍謄本

・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・不動産登記事項証明書

・遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し

【相続人に、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)が含まれている場合】

・相続人が父母の場合で、父母の一方が死亡しているときは、その死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・相続人が祖父母,曾祖父母の場合は、他に死亡している直系尊属(ただし、相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:祖母が相続人である場合、祖父と父母)がいる場合は、その直系尊属死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相談できる専門家を見つける

相談できる専門家が身内や近しい人にいるのなら幸運ですが、多くの場合そうはいきません。

専門家を依頼するということになると、当然費用が発生します。

しかし、遺留分の問題を速やかに解決したいと考えているのなら、専門家に任せたほうが気持ちの面でも安心できるでしょう。

ひと口に専門家といっても様々な種類があります。

相続内容とニーズを考えて専門家を選ぶと良いでしょう。

司法書士

司法書士に依頼をして相談するのは良い方法の1つです。

司法書士の大抵の事務所は初回の相談が無料となっているところが多いので、現在の状況や解決したい事柄を相談してみるのは非常に有効な手段です。

プロである第三者を介することで、今まで話し合いが滞っていたものが、すんなり進むことも考えられます。

弁護士

話し合いでの解決が見込めずに関係が劣悪なものになってしまい、いよいよ調停や裁判という運びになるという場合には弁護士に相談を依頼することも検討しましょう。

お互いの主張が対立しているわけですから交渉のプロである弁護士を立てることで、仮に話し合いがこじれ法廷に発展してしまったケースでも、心強くサポートしてくれることでしょう。

また、相手方が弁護士を立てるケースもあります。

その場合にもこちら側に弁護士がいないという状況では不利になることが想定されますので、弁護士を立てましょう。

費用は成功報酬として全体の何パーセントかを取られますが、弁護士事務所により程度の差がありますので、費用が気になる方は事前によく相談をしておくと良いでしょう。

まとめ

遺留分という最低限保証されている制度を知っておけば、万が一自分想定していない遺言が残されていて自身に相続分が入らないという記載があったとしても、自身が遺留分減殺請求をすることで相続が可能です。

知識がないことで本来受け取れる相続分を相続できないということはこれでもうないはずです。

しかし、いろんな種類の家族関係がありますので、少しでもご自身に懸念点があれば、すぐに弁護士にご相談されることをお勧めします。

多くの人にとって相続は数回しか経験しませんが、専門家は何十回も経験していますので、案外シンプルに解決するかもしれません。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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