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【手続きの手順・方法 】
相続時に必要な手続きについて手順や方法を説明しています。必要な手続きをせずにいると、後々相続トラブルに発展する可能性もあります。相続の手続きについて手順や方法を知っておきましょう。

2019年4月3日 水曜日

相続トラブルを未然に防ぐ!財産目録の作成方法と作成期間

財産目録が無い状態での遺産分割協議は、残念ながら順調に完了する場合がほとんどありません。

身内の方がお亡くなりになられ、最初にやらなければならないのは「相続人の確定」と「相続財産分配の確定」です。

しかし、葬儀や諸々の手続き、関係各所への連絡などと同時進行で進めるのは難しく、また手間もかかる作業のため、相続税申告期限のぎりぎりになってしまうケースは珍しくありません。

大切な人を失くした中、時間が少ない状況でトラブルを起こさずに自身の冷静さを保つことは、多くの人にとって困難であると言えます。

そこで、相続人同士の協議や相続税申告に関するトラブルを減らすための知恵としておすすめしたいのが、財産目録の作成です。

財産目録という文書で表記することで、全ての財産の現状が明確になり、全員がどこから手をつけて行けばいいのかが理解できるようになります。

財産目録という単語は耳にするけれど、何から始めればよいか、その作成方法が分からないとなどお悩みの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そうした方のために財産目録の基礎知識を解説したいと思います。

財産目録とは

財産目録とは、亡くなった人(被相続人)の名義になっていた財産を一覧表の形式にまとめたものです。

財産目録には現預金や不動産などのプラスの財産の他に、借金や負債などのマイナスの財産も全て記載します。

財産目録を作成する人の都合によって、これは載せてこれは載せないといった選択肢はなく、全ての相続財産を全て記載します。

財産目録に抜けているものがあると、相続税のシミュレーションに誤差が生じるだけでなく、相続人に明かしていない財産が存在すると相続人同士の協議で揉め事が生じる恐れもあるため、必ず全ての相続財産を記載する様にしましょう。

財産目録を作成するメリット

財産目録は法律上で作成が義務付けられているものではありません。

ではなぜ手間のかかる財産目録をわざわざ作成する必要があるのか、そのメリットについてご説明します。

相続トラブルを防ぐ

財産目録は、相続人同士の話し合いをスムーズかつ円満に進めるために必要なものです。

遺産の分割を進めるための協議では、故人の財産を全て把握している相続人と、全く把握していない相続人との間で情報に格差が生じてしまうことがあります。

それにより、情報量の少ない相続人側が隠し財産があるのではないか、相続財産を管理している人が私的に使い込んでいるのではないか、などの猜疑心を持ってしまうこともあります。

また、知らされていない情報を後から知らされると、人は動揺を避けることができず、冷静な話し合いは不可能となるでしょう。

相続人同士の揉め事に発展してしまい、最悪の場合は家庭裁判所での調停や審判でないと解決ができない程、話がこじれてしまう可能性もあります。

遺産を管理している相続人は、相続人間の情報量の差、その他の相続人の心理状態を理解した上で、あらかじめ相続財産目録を作成し、遺産分割協議の冒頭で相続人全員に提示することが、円満に協議をまとめる上で重要な意味を持つことを認識しておく必要があります。

相続税の支払いがスムーズになる

相続税は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納付をしなければなりませんが、財産の総額が明確になっていないと、相続税の申告が必要なのかどうか、相続税はどのくらい発生しそうなのかを調べることができません。

また、相続人は葬儀や様々な手続きが発生する中で10ヶ月以内に相続財産の調査から始まり、各種必要書類の手配、相続人同士が納得した状態で協議をまとめるというのは至難の業です。

もし10ヶ月の申告期限を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあるため、期限内にスムーズに申告手続きを終えるためにも財産目録は必須のものと言えるでしょう。

財産目録の記載内容

財産目録としての機能を果たすためにはプラスの財産とマイナスの財産を記載する必要がありますが、それぞれ何を記載すれば良いのでしょうか。

ここでは代表的な財産の種類を紹介していきます。

財産の種類

預貯金、不動産、有価証券、その他自動車などの資産(プラスの財産)と、借金などの負債(マイナスの財産)を記載します。

大切なことは、資産と負債の全ての財産を抜け落ちの無いよう記載することです。

種類別の記載内容

どのような情報を財産目録に書いておくと良いか、財産の種類別にご紹介します。

・預貯金、現金

一般的に預貯金については、預金通帳でチェックするのが基本となります。

通帳が未記帳になっている可能性もあるため必ず記帳しましょう。

銀行名、支店名、預金種目及び口座番号を記載し、相続開始時点の残高を記載しておきます。

また、ネットバンクの普及により預金通帳が発行されていない場合もありますので、金融機関からのハガキや郵便物、メール等が来ていないかを確認し、被相続人の口座がないか調べましょう。

「休眠預金等活用法」により、10年間動きのない預貯金は民間公益活動に活用されることになっています。

実は誰も知らない隠し口座があった…とならない様、預貯金の調査はしっかりと行う必要があります。

銀行名の入ったティッシュやボールペン、カレンダーなどのノベルティがある場合は口座がある可能性が高いので見落とさないようにしましょう。

・不動産

被相続人が不動産を所有していた場合には、まずは最寄りの市役所資産税課で名寄帳を取得し、そのついでに被相続人名義の固定資産評価証明書を交付してもらいましょう。

これらの書類を用意することで、不動産の種類と所在を明らかにし、不動産の評価額を確定することができます。

次に、法務局で登記簿謄本を請求します。

こうして見つけた不動産を財産目録に記載する際に土地は所在、地番、地目、地積、建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積、登記簿を見ながら正確に記載していきます。

・有価証券

株式や債券などの証券については、近年は現物の株券が発行されないケースがほとんどのため、取引先の証券会社に照会して確認します。

そして、証券会社名、銘柄名、口数などを正確に記載します。

なお、相続税評価額については相続開始日の最終価格、相続開始日を含む月、前月、前々月のそれぞれの平均価格の内もっとも低い単価を銘柄ごとに適用して計算を行います。

また、非上場株式の場合は、評価額がわからない場合がありますので、場合によっては税理士や公認会計士などの専門家に株の評価を依頼する必要があります。

・その他財産

その他の財産については、自動車や貴金属、美術品などがあります。

それぞれの貴金属の内容が明確になるように記載をしましょう。

どこまで詳細に書くか特にルールがありませんが、例えば車が2台ある場合には、車種やナンバープレート、走行距離、初年度登録日などを記載しておくと分かりやすいでしょう。

時価が分かるものはそれを評価額として、時価が分からないものは一度査定に出してみるのも手です。

・借金

借金は調査が難しい相続財産です。

どの相続方法を選択するかを判断する重要なポイントにもなりますし、相続する場合プラス財産とのバランスで誰が負債を相続するのか、ということも協議しなければなりません。

預貯金の入出金の動きや借用証の有無などをチェックし、さらには郵便物や書類、メモなどから幅広く調査をし、借金の種類、借入先、借入総額、返済残額などをできる限り詳細に把握する必要があります。

財産の所在・住所を明記

いずれの財産も、財産目録に記載する際には所在をはっきりさせる必要があります。

代表的なものをいくつか挙げておきます。

・土地:地番(〇〇番地〇)まで表示

・建物:家屋番号まであれば記入

・預金:銀行名・支店名・預金種目・口座番号を記入

・株式:銘柄・証券会社を記入

・ゴルフ会員権:ゴルフ場の名前、運営会社、会員番号を記入

財産目録のフォーマット

財産目録に正式な書式や形式はありません。

プラスの財産とマイナスの財産(負債)共にどの財産がどの程度あるかを相続人が把握できる書き方であれば、自由に作ることができます。

パソコンが得意な方はエクセルなどで自作されても良いですし、もしフォーマットに悩まれる場合は、インターネットや書籍から適当なフォーマットを探すか、裁判所が公開している遺産分割朝調停申立の雛形を参考に作成すると良いでしょう。

財産毎に記載を分け、必ず財産の内容と金額、金額の根拠、所在を明示することを意識して作成しましょう。

財産目録の作成期間

被相続人が亡くなった日を基準に、死亡届の提出や相続税申告の期限が決まります。

相続するのか、放棄するのか、その判断を行う際に財産目録が役立ちますが、いつ頃までに財産目録の作成を終えている必要があるのでしょうか。

まず、相続を放棄する場合ですが、これは自身の相続開始があった事を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し立てる必要があります。

相続開始後、相続人による手続きが何も行われない場合はプラスの財産とマイナスの財産を全て無条件で受け継ぐ「単純承認」とみなされてしまいます。

もし、財産目録がなく相続財産がどのくらいあるか把握出来ていない場合は、「限定承認」を選択することも可能です。

これは、相続人が相続した範囲内で債務の負担を負うもので、債務を返済後も財産が余った場合は相続が出来、万一マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は返済の必要はないというものです。

こちらも同様に相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。

相続税の申告・納税の観点からみれば10ヶ月以内に終わらせれば良いとも取れますが、単純承認か限定承認かを選択する必要があるならば、その判断材料として相続開始後3ヶ月以内には財産目録が準備できていると望ましいことがわかります。

手作りは大変

3ヶ月以内に作成しておくのが望ましいとはいえ、想像以上に財産目録の作成は大変です。

何が大変なのかいくつか理由をご紹介します。

・何が財産となるか判断が難しい

先程プラスの財産とマイナスの財産で代表的なものをいくつかご紹介しましたが、その他にもみなし財産というものがあります。

初心者に判断が難しいみなし財産とは、相続財産ではないが相続税の計算上、相続財産として入れなければならないものを指します。

例えば、受取人が指定されている生命保険金は相続財産ではありませんが、相続税の計算上この保険金も相続財産として計算にいれなければなりません。

このように相続手続きに精通していないと財産目録への記載漏れや間違いが発生する場合がありますので注意が必要です。

・評価方法が難しい

被相続人の不動産や貴金属にはどれくらいの価値があるのか、預貯金などとは異なり明確な基準がありません。

例えば不動産の場合、固定資産評価額を基準にしたり、相続税路線価を基準にしたり、同様の物件の中古売買価格を参考にしたりとケースによって使い分けをします。

また、非上場株式は場合によっては、税理士や公認会計士などの専門家に株の評価を依頼する必要があります。

・証拠書類の収集が難しい

相続税が発生する場合は、相続財産の証拠書類を集める必要があります。

ところが、金融機関や市町村役場は基本的に休日がお休みですし、会社勤めをされている方が葬儀を始めとする種々の手続きと並行して対応するにはかなり大変な作業だと思われます。

専門家に任せるという手段も

相続財産目録には、難しいきまりがあるわけではありませんが、慣れていない人が漏れや誤りの無いよう自分で作成しようとすると思いのほか時間がかかってしまうものです。

相続人調査や相続財産調査を専門家に依頼した場合には、速やかに必要書類を収集してもらえるだけでなく、相続関係説明図や相続財産目録も作成してもらえます。

相続の専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士等、様々な種類がありますが、財産目録の作成方法だけを相談したい場合は、行政書士が比較的安く対応してくれるようです。

事務所ごとに料金は異なりますので、事前の確認をおすすめします。

他の相談に付随して財産目録の作成を依頼したい場合は、主たる相談内容の専門家に、財産目録の作成も併せて依頼できないかどうか確認するとよいでしょう。

相続手続きはできるだけ自分たちで行いたいという場合でも、正確な財産目録を用意してもらう方が、後の手続きがスムーズに進められますので、ぜひ専門家のサポートを受けることをお勧めします。

まとめ

ここでは財産目録の重要性と作成方法について解説しました。

たとえ面倒であっても財産目録の作成がいかに重要なことかがお分かりいただけたかと思います。

2015年の相続税法の改正で基礎控除額が引き下げられたことにより、資産家でなくとも相続に悩む方が増えているようです。

あるはずのものがなかったり、ないはずのものが出てきたりすると、親族間で深刻なトラブルになる可能性もあるため、相続トラブルなどは決して他人事とは思わず、手間がかかっても財産目録の準備を周到に進めるべきです。

ぜひ参考にしてみてください。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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